自衛的燃料備蓄補助金とは、大規模災害で電気・都市ガス・水道がすべて止まっても、医療施設や福祉施設、避難所が機能を維持できるよう、LPガス災害バルクや石油製品タンクなどの導入費用を国が補助する制度です。北海道の医療・福祉施設にとって、災害時の備えを進める有力な選択肢になります。
北海道では、冬季の停電により暖房や給湯が停止すると、医療施設・福祉施設の利用者の安全確保に大きな影響が出る可能性があります。だからこそ、災害時にも稼働できる燃料備蓄設備への関心が高まっています。
この記事では、令和7年度補正・令和8年度の自衛的燃料備蓄補助金について、補助金額・対象施設・申請手順・必要書類・スケジュール・前年度からの変更点を、申請の手引き(一次情報)に基づいて整理します。
この記事でわかること
● 自衛的燃料備蓄補助金の目的と全体像
● 補助金額(交付限度額)と補助率はいくらか
● 対象になる施設・設備の条件
● 申請手順・必要書類・公募スケジュール
● 令和7年度補正・令和8年度の主な変更点(履行補助者は行政書士に限定)
1. 自衛的燃料備蓄補助金とは?目的と全体像
① 一言でいうと「災害時のライフライン維持のための補助金」です
自衛的燃料備蓄補助金とは、災害で系統電力・都市ガス・水道がすべて途絶した場合でも、施設の機能を3日間以上維持させることを目的に、燃料備蓄設備の導入経費の一部を補助する制度です。実施するのは一般財団法人エルピーガス振興センターで、原資は経済産業省から交付決定を受けた公的資金です。
対象となるのは、避難が困難な人が多数生じる医療・福祉施設、市区町村が指定する公的避難所、そして一時避難所となり得る施設です。これらの施設にLPガスや石油製品の安定供給を確保し、災害時にも機能を保つことがねらいです。
| 正式名称 | (LPガス災害バルク・石油製品タンク等)自衛的燃料備蓄補助金 |
| 実施機関 | 一般財団法人エルピーガス振興センター(経済産業省の補助事業) |
| 目的 | 災害で電気・都市ガス・水道が途絶しても、施設機能を3日間以上維持すること |
| 対象設備 | LPガス災害バルク等、または石油製品タンク等とその関連設備 |
| 交付限度額 | 設備の組み合わせにより 1,000万円〜5,000万円 |
| 補助率 | 補助対象経費の1/2以内(対象施設①の中小企業者等は2/3以内となる場合あり) |
| 公募期間(1回目) | 令和8年5月27日(水)〜令和8年6月16日(火) |
| 事業HP | https://saigaibulk.net/ |
2. 補助金額はいくら?交付限度額と補助率
補助金の交付額は、税抜きの補助対象経費に補助率を乗じた金額です。導入する設備の組み合わせによって、1件あたりの上限額(交付限度額)が変わります。
① LPガス災害バルク等の交付限度額
| 導入する設備の組み合わせ | 交付限度額 |
|---|---|
| ① LPガスを貯蔵する容器と供給設備のみ | 1,000万円 |
| ② 上記①+補助対象LPガス設備(下記③を除く) | 3,000万円 |
| ③ 上記①+発電機(コジェネ含む)+空調機器 | 5,000万円 |
② 石油製品タンク等の交付限度額
| 導入する設備の組み合わせ | 交付限度額 |
|---|---|
| ① 石油製品を貯蔵する容器のみ | 1,000万円 |
| ② 石油製品を貯蔵する容器+接続する燃焼機器・発電機 | 5,000万円 |
図:LPガス災害バルク等の交付限度額イメージ
③ 補助率は原則1/2、対象施設①の中小企業者等は2/3の場合も
補助率は原則として補助対象経費の1/2以内です。ただし、避難が困難な人が多数生じる施設(後述の①の施設)に該当し、かつ中小企業者等として要件を満たす事業は、2/3以内となる場合があります。
一方、③の一時避難所となり得る施設などは、区分によって補助率の扱いが異なります。自施設がどの区分・補助率に当たるかは、申請前に公式手引きで必ず確認してください。
ここでいう中小企業者は中小企業基本法第2条第1項の規定を準用しますが、資本金や出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%株式を保有される事業者、直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者は除かれます。2/3補助を受けるには、主要株主3者の持株比率や過去3年度の平均課税所得額を示す書類の提出が必要です。
なお、医療法人・社会福祉法人・学校法人などが「中小企業者等」に該当するかは、法人形態や制度上の定義によって判断が分かれます。2/3補助の可否は、申請前に公式手引きや事務局への確認が必要です。
3. 対象になる施設は?3つの区分を解説
補助対象施設は、次の3区分に分かれます。③の「一時避難所となり得るような施設」は、令和8年度のみ申請可能な新しい区分です。
| 区分 | 施設の例 |
|---|---|
| ① 避難が困難な人が多数生じる施設 | 入院設備のある医療施設、人工透析クリニック、老人ホーム等の福祉施設、障害者施設、0歳児を受け入れる保育所等 (※災害拠点病院、特定機能病院など一部の医療施設は除く) |
| ② 公的避難所 | 市区町村が災害時の避難所として指定した施設(自治体庁舎、公立学校、公民館、体育館等の公共施設・民間施設)、または避難所として使用する協定を締結した民間施設 |
| ③ 一時避難所となり得るような施設 令和8年度のみ | 市区町村が災害時に避難所として活用できると認知している民間の事務所・工場・商業施設・私立学校・宿泊施設・マンション等 |
民間施設であっても、市区町村による指定や協定等により、災害時に避難所として活用される施設は対象となる場合があります。ただし、それが②公的避難所に該当するか、③一時避難所となり得る施設に該当するかは、市区町村の指定・協定内容・運営実態によって異なります。災害時に市区町村が主体となって避難所運営を行う場合は公的避難所、それ以外の場合は一時避難所となるのが基本です。自施設の区分は申請前に確認してください。
申請者または共同申請者の直近2期のいずれかの決算が債務超過の場合は申請できません。また、同じ補助対象経費に対して他の国の補助金を重複して受領している場合や、地方公共団体からの補助金との合計額が補助対象経費を上回る場合も対象外です。事前に自施設の状況を確認しておきましょう。
4. 補助対象になる設備・経費は?
補助対象となる設備は、災害時に電気・都市ガス・水道がすべて停止しても稼働できることが前提です。購入する容器・機器・設備は、すべて新品で未使用のものに限られます。
① LPガス災害バルク等の対象設備
LPガスを貯蔵する容器と供給設備が中心です。シリンダー容器で供給する場合は50kg容器を6本以上設置するのが基本で、バルク容器の場合は容量290kg〜3,000kg未満の機器が対象です。これに加えて、LPガス発電機(コジェネレーション含む)、GHP等のLPガス空調機器、炊き出しセットやコンロ・ボイラー等のLPガス燃焼機器が対象になります。
② 石油製品タンク等の対象設備
消防法令に基づく「少量危険物」以上に該当する石油製品の貯蔵容器が対象です。実質容量はガソリン90L以上、軽油450L以上、灯油450L以上、重油900L以上が求められます。これに接続する設置型発電機や、災害時のみ使用する調理・炊飯・暖房機器も対象です。
| 補助対象になる主な経費 | 補助対象外の主な経費 |
|---|---|
| ・設備の購入費 ・設置工事費(基礎工事、保安距離確保の障壁等) ・足場や養生費 ・石油タンクの油面計・漏洩検知装置、防油堤工事 |
・既存設備の撤去・処分費用 ・常用/非常用のガス配管・電気配線の設備費・工事費(切替盤を除く) ・備蓄する燃料代そのもの ・一般管理費、諸経費、雑費、交通費等 |
LPガスは、申請するLPガス容器の貯蔵上限量の50%で、災害時に使うすべての設備を3日分以上7日分以下稼働できることが要件です。石油製品は、災害時に稼働させる燃焼機器の3日分以上の燃料を備蓄することが要件となります。この日数は別紙9「燃料消費量計算書」で計算します。
5. 補助金の仕組み(お金の流れ)
補助金は、国(経済産業省)が振興センターに予算を交付し、振興センターが審査を経て申請者に補助金を交付する流れです。申請者は設備の購入者またはリースを受ける者で、施設の所有・運営状況に応じて共同申請者を立てることがあります。
図:自衛的燃料備蓄補助金のスキーム(お金の流れ)
6. 申請の手順|準備から補助金交付までの流れ
申請は、公式サイトから申請書類一式(Excel)をダウンロードし、必要事項の入力と書類の準備を行ったうえで、Dropboxを通じて提出します。交付決定後に発注・工事を行い、完了後に実績報告をして補助金を受け取ります。
公式サイトから「bulk_shinsei」フォルダをダウンロードし、確認シート・入力シート・別紙9(燃料消費量計算書)・別紙10(運用計画)に入力します。
見積書3者分、図面、決算書、登記簿謄本などを各フォルダに保存します。図面では補助対象設備を赤線で囲む必要があります。
公式サイトのリンクからDropboxにフォルダをアップロードします。締切時間を過ぎると提出できなくなるため、余裕を持って提出します。
振興センターの審査委員会が審査します。修正が必要な場合は、申請者・共同申請者・履行補助者にメールで依頼があります。
交付決定を受けてから発注します(交付決定前の発注は対象外)。発注書・請書・契約書の日付は時系列になるよう作成します。
事業完了後、期限までに実績報告書を提出します。経費をすべて支払い終えた日が「事業完了日」となります。
交付決定を受けてから発注する必要があります。交付決定前に発注・契約した設備や工事は補助対象になりません。各書類(発注書・請書・納品書・受領書・請求書)の日付が時系列で整合しているかも審査されます。
7. 申請に必要な書類は?
申請時には、申請書類(Excel)に加えて多くの添付書類が必要です。施設の区分によって必要書類が一部異なります。主なものを整理します。
| 書類 | 主な注意点 |
|---|---|
| 補助金申請書類(Excel) | 全シートをセットしたまま提出。確認シート→入力シートの順に記載 |
| 見積依頼書と見積書(3者分) | 設備費と工事費、補助対象と対象外を判別できるよう小計を記載 |
| 履歴事項全部証明書(法人) | 申請日から遡って3カ月以内に取得したもの |
| 直近2カ年の決算報告書 | いずれかの期が債務超過の場合は申請不可 |
| 役員名簿(法人) | 役職・氏名・生年月日を必ず記載 |
| 各種図面(配置図・平面図・配管図・配線図) | 補助対象設備を赤線で囲み、対象外は黒線で図示 |
| 燃料消費量計算書・運用計画書 | 備蓄日数の要件を満たすことを示す |
| 履行補助者(行政書士)の資格証 | 令和8年度の新要件 登録番号の記載と証憑の提出が必要 |
8. 公募スケジュールと期限はいつ?
令和7年度補正1回目と令和8年度1回目は同一の公募期間です。優先順位等によって、交付決定が令和7年度補正か令和8年度かが決まります。なお、令和7年度補正から先に交付決定されます。
| 項目 | 1回目 | 2回目 |
|---|---|---|
| 公募期間 | 令和8年5月27日〜6月16日 | 予算未達の場合に別途設定 |
| 交付決定予定日 | 令和8年7月上旬予定 | 令和8年8月上旬予定 |
| 事業完了日 | 令和8年11月下旬予定 | 令和8年12月下旬予定 |
| 実績報告書提出期限 | 令和8年12月下旬予定 | 令和9年1月下旬予定 |
募集期間内であっても予算に達すると締め切られ、超過した場合は優先順位に基づいて採択されます。また、中東情勢を踏まえ、設備や工事の納期を十分に考慮し、事業完了日に遅延が生じないよう申請するよう手引きで案内されています。事業完了日に遅れそうな場合は、14日前までに計画遅延等承認申請書の提出が必要です。
1回目の事業完了日は令和8年11月下旬の予定です。北海道では11月にはすでに降雪・凍結が始まる地域が多く、屋外の基礎工事や設置工事に天候の影響が出やすくなります。交付決定(7月上旬予定)後は速やかに着工できるよう、設備の選定・見積取得・施工業者の確保を公募期間中から進めておくことが、遅延を避けるうえで重要です。
9. 令和7年度補正・令和8年度の主な変更点
今年度は前年度から複数の変更が加わりました。特に北海道の事業者が注意すべき主な変更点を整理します。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 履行補助者は行政書士に限定 | 手続きを補助する履行補助者は行政書士であることが必要となり、入力シートへの登録番号の記載と資格証の提出が求められます |
| 「一時避難所となり得るような施設」の新設 | ③の区分が新たに追加され、令和8年度のみ申請可能になりました |
| 所有・運営要件の追加 | ①と③の施設の申請者・共同申請者は、設置先建物を所有し、かつ自ら運営している者とされました |
| 建物の全部事項証明書の提出 | ①・③の施設は、所有を示す建物の全部事項証明書(申請日から3カ月以内取得)の提出が必要になりました |
| 優先順位の細分化 | 採択の優先順位が第1〜第9優先まで細かく定められました |
今年度から、申請手続きを補助する「履行補助者」を置く場合は、行政書士であることが必要とされました。入力シートへの登録番号の記載と、資格を確認できる証憑の提出が求められます。
申請書類の作成自体は事業者自身でも行えるため、自施設で申請する場合まで必ず行政書士への依頼が必要とまでは言い切れません。ただし外部支援を受ける場合は、行政書士への相談を前提に進めると安全です。誰に何を依頼できるかを早めに整理しておくと、申請準備がスムーズになります。
10. よくある失敗と回避策
申請の手引きでは、審査でつまずきやすい「よくある間違い」が示されています。事前に把握しておくことで、差し戻しや不受理を避けられます。
① 見積書で費目が判別できない
設備費と設置工事費、補助対象と補助対象外の区別が明確でない見積書は、修正を求められます。費目ごとに小計を記載し、一式50万円以上の費目は内訳(単価・数量)を示すことが必要です。値引きがある場合は、各費目に値引き後の金額を記載します。
② 図面で補助対象設備を赤線で囲っていない
配置図では補助対象設備をすべて赤線で囲み、GHP室内機の場所も明示します。補助対象外のLPガス配管や電気配線は黒の実線で図示するなど、対象・対象外を色で判別できるようにします。
③ 役員名簿の記載漏れ
役員名簿で役職や生年月日が未記載のケースが散見されると手引きで指摘されています。申請日時点の役員全員について、役職・氏名・生年月日を漏れなく記載します。
入力シートに空白があったり、エラーメッセージが残った状態では、様式第1の項目が表示されず、申請が受け付けられません。確認シートをすべて回答したうえで、入力シートを最後まで埋めることが前提です。
11. 北海道の事業者にとってのポイント
北海道は、災害時の燃料備蓄の必要性が全国的にも高い地域です。寒冷地ならではの事情を踏まえて、本補助金の活用を検討する価値があります。
■ 冬季の停電は利用者の安全確保に直結します
北海道では冬季に暖房や給湯が止まると、医療施設や福祉施設で入院患者・入所者の安全確保に大きな影響が出る可能性があります。系統電力・都市ガス・水道がすべて停止する想定でも稼働できる燃料備蓄設備は、寒冷地の施設にとって特に意義が大きい備えです。
■ LPガス・石油は施設単位で備蓄しやすい燃料です
LPガスや灯油・重油は、都市ガス導管に依存せず、施設単位で備蓄しやすい燃料です。北海道では暖房・給湯に灯油やLPガスを使う施設が多く、既存設備と組み合わせて災害対応力を高めやすい環境にあります。
■ 工事の着手時期は天候を見据えて逆算します
1回目の事業完了日は令和8年11月下旬の予定です。札幌や旭川など降雪の早い地域では、屋外工事が天候に左右されます。交付決定後すぐ着工できるよう、公募期間中から施工業者と段取りを詰めておくことをおすすめします。
■ 2/3補助の可否は早めに確認しておきます
対象施設①に該当し、かつ中小企業者等の要件を満たす事業は、補助率が2/3となる場合があります。ただし、医療法人・社会福祉法人などが「中小企業者等」に該当するかは法人形態や制度上の定義によって判断が分かれます。自施設が2/3補助の対象になるかは、申請前に公式手引きや事務局へ確認しておくと安心です。
12. よくある質問(FAQ)
A. 避難が困難な人が多数生じる医療・福祉施設、市区町村が指定する公的避難所、一時避難所となり得る施設の3区分です。③の一時避難所は令和8年度のみ申請できます。
A. 設備の組み合わせにより、1件あたり1,000万円〜5,000万円が交付限度額です。補助率は補助対象経費の1/2以内、①の施設で中小企業者の場合は2/3以内です。
A. 1回目の公募期間は令和8年5月27日〜6月16日です。予算に達しなかった場合は、再度募集期間が設けられ公式サイトで案内されます。
A. 申請手続きを補助する「履行補助者」を置く場合は、行政書士であることが必要です(登録番号の記載と資格証の提出が必要)。自施設で申請書類を作成・提出する場合まで必ず行政書士が必要とは言い切れませんが、外部支援を受ける場合は行政書士への相談を前提に進めると安全です。
A. いいえ。交付決定を受けてから発注する必要があります。交付決定前に発注・契約した設備や工事は補助対象になりません。
13. まとめ
自衛的燃料備蓄補助金は、災害時にも施設の機能を維持するための燃料備蓄設備を、国の補助で導入できる制度です。要点を整理します。
この記事のまとめ
● 災害で電気・都市ガス・水道が止まっても施設機能を3日間以上維持するための補助金
● 交付限度額は1,000万円〜5,000万円、補助率は原則1/2以内(対象施設①の中小企業者等は2/3の場合あり)
● 対象は医療・福祉施設、公的避難所、一時避難所(③は令和8年度のみ)
● 1回目の公募期間は令和8年5月27日〜6月16日
● 今年度から、履行補助者を置く場合は行政書士に限定
北海道の医療施設・福祉施設・避難所運営者にとって、冬季災害への備えは経営と安全の両面で重要なテーマです。制度の詳細や最新情報は、必ず公式の申請の手引きと公式サイトで確認したうえで、計画的に準備を進めることをおすすめします。
記事情報
公開日:2026年5月28日
参照資料:一般財団法人エルピーガス振興センター「(LPガス災害バルク・石油製品タンク等)自衛的燃料備蓄補助金 令和7年度補正・令和8年度 申請の手引き(令和8年5月)」、同 補助金申請手続きページ
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報および詳細な要件は公式サイトを必ずご確認ください。
