北海道では高齢化が全国平均を上回るペースで進んでおり、多くの中小企業で60歳以上の労働者が重要な戦力となっています。しかし、加齢による身体機能の低下は、転倒・腰痛・熱中症といった労働災害のリスクを高めます。特に夏場の暑熱環境での作業は、高年齢労働者にとって深刻な問題です。
こうした課題に対し、厚生労働省が提供する「エイジフレンドリー補助金」を活用すれば、空調設備やスポットクーラーの導入を含む職場環境改善に最大100万円の補助を受けることが可能です。本記事では、令和7年度(2025年度)の最新情報をもとに、制度の概要から北海道企業が活用すべきポイントまで詳しく解説します。
この記事でわかること
✅ エイジフレンドリー補助金の最新制度概要と4つのコース
✅ 空調設備(スポットクーラー・空調服など)が補助対象になる仕組み
✅ 北海道企業が押さえるべき申請要件とスケジュール
✅ 転倒防止・腰痛予防・熱中症対策の具体的な活用方法
北海道では高齢化率が全国上位に位置し、建設業・製造業・介護業界を中心に高年齢労働者が欠かせない存在です。近年は夏場の気温上昇も著しく、札幌市でも真夏日が続くことが珍しくなくなりました。エイジフレンドリー補助金は、こうした環境変化に対応する空調設備の導入にも活用できる、北海道の中小企業にとって見逃せない制度です。
1. エイジフレンドリー補助金とは?北海道の中小企業が知るべき基本情報
エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者(60歳以上)の労働災害防止を目的とした厚生労働省の補助金制度です。中小企業が安全な職場環境を整備するための設備導入や専門家による指導に対し、費用の一部を国が補助します。
令和7年度からは制度が拡充され、新たに「総合対策コース」が新設されました。全4コースから企業の課題に合わせて1つを選んで申請する仕組みとなっています。
| 制度名 | エイジフレンドリー補助金 |
| 所管 | 厚生労働省 |
| 事務局 | 一般社団法人 日本労働安全衛生コンサルタント会 |
| 対象者 | 中小企業事業者(60歳以上の労働者を常時1名以上雇用) |
| 補助率 | コースにより1/2~4/5 |
| 上限額 | 最大100万円(消費税を除く) |
| 申請回数 | 1年度につき1回まで(複数コースの併用は不可) |
① 対象となる中小企業の範囲
業種ごとに「常時使用する労働者数」または「資本金」のいずれかの基準を満たせば、中小企業として申請可能です。
| 業種 | 労働者数 | 資本金 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業等 | 300人以下 | 3億円以下 |
| 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
| サービス業 | 100人以下 | 5,000万円以下 |
| 小売業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
さらに以下の要件も満たす必要があります。
・労災保険に加入していること
・1年以上事業を実施していること
・60歳以上の労働者が常時1名以上就労していること(コースⅢ・Ⅳは年齢制限なし)
2. 令和7年度の4つのコースと補助内容を比較
令和7年度のエイジフレンドリー補助金は、企業の課題やニーズに応じて4つのコースが用意されています。それぞれの補助率・上限額・対象が異なるため、自社に最適なコースを選ぶことが重要です。
| コース名 | 補助率 | 上限額 | 対象労働者 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ 総合対策コース (令和7年度新設) | 4/5 | 100万円 | 60歳以上 |
| Ⅱ 職場環境改善コース | 1/2 | 100万円 | 60歳以上 |
| Ⅲ 転倒防止・腰痛予防のための 運動指導コース | 3/4 | 100万円 | 年齢制限なし |
| Ⅳ コラボヘルスコース | 3/4 | 30万円 | 年齢制限なし |
① Ⅰ 総合対策コース(令和7年度新設)
令和7年度から新たに設けられたコースです。労働安全衛生の専門家によるリスクアセスメント(職場の危険性の洗い出し)の費用と、その結果に基づいて優先順位の高い対策を実施する費用をセットで補助します。
補助率は4/5と最も高く、「まず何から手をつければいいかわからない」という企業にとって、専門家の診断から始められる使いやすいコースです。
② Ⅱ 職場環境改善コース ― 空調設備もここで申請!
60歳以上の高年齢労働者が安全に働けるよう、身体機能の低下を補う設備・装置の導入や工事の費用を補助するコースです。補助率は1/2、上限額は100万円となっています。
このコースでは、熱中症予防対策として空調設備の導入も補助の対象となります。具体的には以下のような設備が該当します。
・スポットクーラー(作業空間を局所的に冷却する機器)
・ミストファン(ミスト噴射で体感温度を下げる装置)
・空調服・冷却ベスト(体温を下げる機能のある作業着)
・冷却装置・給水設備(効率的に身体冷却を行う機器)
・ウェアラブルデバイス(労働者の健康状態を監視するシステム)
いずれも「高年齢者の身体機能を補う」という観点から評価されるため、暑熱環境での作業が多い企業にとって非常に有用な補助制度です。
空調設備以外にも、以下のような幅広い対策が補助の対象です。
| 対策カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 転倒・墜落災害防止 | 床や通路の段差解消、滑り防止床材の導入、階段への手すり設置 |
| 腰痛予防 | 重量物搬送機器・リフトの導入、パワーアシストスーツの導入 |
| 暑熱環境対策 | スポットクーラー、空調服、ミストファン、冷却装置の導入 |
| 介護作業の負担軽減 | 移乗介助機器、入浴介助機器の導入 |
③ Ⅲ 転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース
理学療法士や健康運動指導士などの専門家を職場に招き、労働者の身体機能チェックと運動指導を行う費用を補助するコースです。「測定→指導→効果確認」までを一貫して補助対象としています。
このコースの大きな特徴は、年齢制限がない点です。60歳未満の労働者も含め、全従業員を対象に転倒防止・腰痛予防の運動プログラムを実施できます。
④ Ⅳ コラボヘルスコース
コラボヘルスとは、医療保険者と事業主が連携して労働者の健康増進に取り組む手法です。このコースでは、健康スコアリングレポートの活用や栄養指導、保健指導など、データに基づく健康管理の費用を補助します。年齢制限はありませんが、上限額は30万円となっています。
3. 空調設備の導入にエイジフレンドリー補助金を活用する方法
2025年6月からは企業の熱中症対策が法令上の義務となりました。高年齢労働者は体温調節機能が低下しやすいため、暑熱環境対策は特に急務です。エイジフレンドリー補助金の「職場環境改善コース」を活用すれば、空調設備の導入コストを大幅に抑えることができます。
① 補助対象となる空調関連設備
職場環境改善コースの「熱中症予防対策プラン」として、以下の設備が補助対象になります。
| 設備区分 | 対象設備の例 | 備考 |
|---|---|---|
| 作業空間の冷却機器 | スポットクーラー、ミストファン | 屋外・高温屋内作業向け |
| 身体冷却ウェア | 空調服(ファン付き作業服)、冷却ベスト | 60歳以上の人数分が上限 |
| 冷却設備 | 身体冷却装置、給水設備 | 休憩施設の整備を含む |
| 健康管理システム | ウェアラブルデバイス | 体温・心拍等のモニタリング |
空調服(ファン付き作業服)は補助対象ですが、以下のルールがあります。
・対象は60歳以上の高年齢労働者の人数分(1人1着)に限られます
・洗い替え用の予備ウェアは補助対象外です
・速乾性アンダーウェアなど、熱中症予防効果が不十分なものは対象外です
・保冷剤は対象外ですが、冷凍ストッカー(保冷剤用)は対象となるケースがあります
② 活用シミュレーション:空調設備の導入例
例えば、製造工場で60歳以上の労働者5名が高温環境で作業している場合を考えてみましょう。
| 導入設備 | スポットクーラー2台 + 空調服5着 |
| 概算費用(税抜) | 約60万円(クーラー20万円×2台 + 空調服4万円×5着) |
| 補助率 | 1/2(職場環境改善コース) |
| 補助金額 | 約30万円 |
| 実質負担 | 約30万円 |
このように、設備費用の半額を国の補助で賄うことができます。上限は100万円のため、より大規模な空調設備の導入にも対応可能です。
4. 転倒防止・腰痛予防にも活用できる具体策
空調設備以外にも、エイジフレンドリー補助金は高年齢労働者に多い転倒事故や腰痛の予防対策に幅広く活用できます。
① 転倒・墜落災害防止の対策例
高年齢労働者の労働災害で最も多いのが「転倒」です。滑りやすい床材の改善や段差の解消など、職場環境そのものを改善する取り組みが補助対象となります。
・作業場の床や通路の段差解消スロープの設置
・滑りにくい床材への張り替え
・階段や傾斜のある通路への手すり設置
・十分な照度を確保するための照明器具の改善
② 腰痛予防の対策例
介護施設や倉庫業では、重量物の取り扱いによる腰痛が深刻な問題です。以下のような設備導入で作業負担を大幅に軽減できます。
・パワーアシストスーツの導入
・重量物搬送用リフト・コンベアの設置
・介護現場における移乗介助機器の導入
・入浴介助用のリフト・機器の導入
③ 運動指導による予防アプローチ
「運動指導コース」を選択すれば、専門家による身体機能のチェックと運動プログラムの指導を受けられます。このコースは年齢制限がないため、全従業員の健康維持に活用できるのが魅力です。
5. エイジフレンドリー補助金の申請の流れ
補助金の申請は、交付決定を受ける前に設備の発注や工事を行うと補助が受けられなくなるため、手順を正しく理解することが大切です。
① 職場環境改善コースの申請手順
エイジフレンドリー補助金事務センターのホームページから書類をダウンロードし、必要事項を記入して郵送または宅配便で提出します。
事務センターにて随時審査が行われます。審査を経て交付が決定されます。
交付決定後に、補助対象となる設備の発注・購入・工事を行います。交付決定前の着手は補助対象外となるため要注意です。
すべての取組が完了した後に業者へ代金を支払います。「前払い」は補助対象外です。
期限までに支払請求書類を事務センターに提出し、補助金を受け取ります。
・交付決定前に着手した費用は一切補助されません
・業者への前払い(取組完了前の支払い)も補助対象外です
・予算上限に達した場合、申請期間中でも受付が終了する可能性があります
・申請は郵送または宅配便のみ(メール申請は不可)
・同一年度に複数コースの併用はできません
② 総合対策コースの申請手順
総合対策コースは2段階の申請手続きが必要です。まず「リスクアセスメント」の交付申請を行い、専門家による診断を受けます。その後、診断結果に基づく「労働災害防止対策」の交付申請を別途行います。他コースより手続きに時間がかかるため、早めの準備が重要です。
6. 令和7年度の申請スケジュール
| 申請受付期間 | 令和7年(2025年)5月15日~10月31日 |
| 申請先 | 一般社団法人 日本労働安全衛生コンサルタント会 エイジフレンドリー補助金事務センター |
| 電話(申請担当) | 03-6381-7507 |
| 電話(支払担当) | 03-6809-4085 |
| 受付時間 | 平日 10:00~12:00、13:00~15:00(土日祝休み) |
| 事務センターHP | https://www.jashcon-age.or.jp/ |
エイジフレンドリー補助金は毎年度実施されている制度で、令和6年度は申請が殺到し、予定より1ヶ月早く受付が終了しました。令和7年度も一部コースで早期に予算上限に達しています。次年度の申請を検討される場合は、公募開始前から準備を進めておくことをおすすめします。
7. 北海道企業がエイジフレンドリー補助金を活用するメリット
① 労働災害の減少と安全な職場環境の実現
転倒防止のための床材改善や手すりの設置、腰痛予防のためのアシストスーツの導入により、労働災害のリスクを大幅に軽減できます。労災事故が減れば、保険料の抑制や人材の定着にもつながるでしょう。
② 熱中症対策の義務化への対応
2025年6月から企業の熱中症対策が法令で義務化されました。スポットクーラーや空調服の導入は、法令遵守と従業員の安全確保を同時に実現する効果的な手段です。補助金を活用すれば、導入コストの負担を抑えながら対応できます。
③ 従業員の健康維持と生産性の向上
運動指導コースやコラボヘルスコースを活用すれば、従業員の健康維持・増進をデータに基づいて推進できます。健康な従業員が長く働ける環境は、人手不足に悩む北海道の企業にとって経営上の大きな武器になります。
④ 企業イメージの向上
高年齢労働者の安全と健康に投資する姿勢は、従業員からの信頼はもちろん、取引先や地域社会からの評価にもつながります。「健康経営」を推進する企業として、採用面でのアピールポイントにもなるでしょう。
エイジフレンドリー補助金は毎年度予算に限りがあり、人気のコースは早期に締め切られる傾向があります。北海道の中小企業がこの補助金を最大限活用するために、以下の準備を進めておきましょう。
・自社の高年齢労働者(60歳以上)の人数と、従事している業務内容を確認する
・職場の労働災害リスク(転倒しやすい箇所、暑熱環境の有無、重量物の取り扱い状況)を洗い出す
・必要な設備(空調設備、手すり、床材、アシストスーツ等)と概算費用を見積もる
・次年度の公募開始(例年5月頃)に備えて、申請書類の準備を始める
8. まとめ
エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者が安心して働ける職場環境を整えるための心強い支援制度です。令和7年度からは総合対策コースが新設され、4つのコースから企業の課題に合った対策を選べるようになりました。
特に注目すべきは、「職場環境改善コース」で空調設備(スポットクーラー・空調服・ミストファンなど)の導入が補助対象になる点です。2025年6月からの熱中症対策義務化も踏まえ、空調設備の整備は法令遵守とコスト削減の両面で大きなメリットがあります。
北海道の中小企業にとって、高年齢労働者の安全を守ることは、貴重な人材を長く活かし続けるための経営戦略でもあります。次年度の公募に向けて、今から準備を始めてみてはいかがでしょうか。
記事情報
公開日:2026年3月24日
参照資料:厚生労働省「エイジフレンドリー補助金」、令和7年度エイジフレンドリー補助金リーフレット、令和7年度エイジフレンドリー補助金Q&A
※本記事は令和7年度(2025年度)の制度情報に基づいて作成しています。最新情報は厚生労働省公式サイトおよびエイジフレンドリー補助金事務センターをご確認ください。

