北海道の企業経営者や総務担当者の方にとって、エネルギーコストの最適化は欠かせない経営課題です。特に冬場の暖房需要が高い北海道では、電気代や燃料費の負担が収益を圧迫しがちでしょう。同時に、脱炭素経営への転換もますます重要になっています。
こうした課題に取り組む苫小牧市内の企業にとって、「苫小牧市ゼロカーボン推進事業補助金」は非常に心強い支援制度です。省エネ設備の導入で最大100万円、再エネ設備では太陽光発電や蓄電池の導入に対して手厚い補助が受けられます。
令和8年度の省エネ設備補助金は令和8年4月1日から受付中で、先着順での受付となっています。本コラムでは、令和8年度の最新情報に基づき、制度の概要から申請方法までを詳しく解説します。
この記事でわかること
✅ 苫小牧市ゼロカーボン推進補助金の制度概要と2つの補助メニュー
✅ 省エネ設備・再エネ設備それぞれの補助金額・上限・要件
✅ 省エネルギー診断の役割と必要性
✅ 申請に必要な書類と手続きの流れ
✅ よくある質問(FAQ)
1. 苫小牧市ゼロカーボン推進事業補助金とは?
苫小牧市ゼロカーボン推進事業補助金は、市内の中小企業が省エネルギー設備や再生可能エネルギー設備を導入する際に、経費の一部を補助する制度です。企業のCO2排出削減を支援し、苫小牧市が目指す「ゼロカーボンシティ」の実現に寄与することを目的としています。
「ゼロカーボンシティ」とは、2050年までにCO2の実質排出量をゼロにすることを目指す自治体のことです。苫小牧市もこの目標に向けて、企業活動における脱炭素化を積極的に推進しています。
① 補助金の2つのメニュー
本補助金には、「省エネルギー設備導入補助」と「再生可能エネルギー設備導入補助」の2つのメニューがあります。対象設備は、地球温暖化の防止に資する未使用の設備であり、事業の用にのみ供するものと定められています。
| 制度名称 | 苫小牧市ゼロカーボン推進事業補助金 |
| 補助メニュー | ①省エネルギー設備導入補助 ②再生可能エネルギー設備導入補助 |
| 省エネ設備の受付期間 | 令和8年4月1日(水)~令和9年2月26日(金) |
| 再エネ設備の受付 | 環境省の交付内示後に公募開始(時期未定) |
| 受付方法 | 先着順(予算額に達し次第、受付終了) |
| 問い合わせ先 | 苫小牧市役所 産業経済部 企業政策室 工業雇用政策課 電話:0144-32-6436 |
北海道は全国と比べてもエネルギー消費量が高い地域です。苫小牧市は工業都市としての側面も持ち、多くの事業所がエネルギーコストの負担を抱えています。老朽化した空調やボイラー、照明設備を省エネ設備に更新すれば、CO2の削減と光熱費の抑制を同時に実現できます。本補助金は、その設備投資のハードルを下げてくれる制度です。
2. 省エネルギー診断の重要性
省エネ設備導入補助を受けるには、事前に省エネルギー診断の受診が必須です。省エネ診断とは、環境省告示に定められた技術資格を有する専門家が、事業所の設備の稼働状況やエネルギー使用量を調査・分析し、具体的な改善提案を行うものです。
この診断は、単に補助金申請のための形式的な手続きではありません。エネルギー使用の現状を客観的に把握し、具体的な改善策とCO2削減効果、さらには投資回収期間の試算までを得られる貴重な機会です。
以前に省エネルギー診断を受けたことがある場合、その診断が過去3年以内のものであれば、改めて受診する必要はありません。診断結果に基づく設備導入であれば、そのまま補助金の申請に利用できます。
3. 補助対象となる事業者の要件
本補助金は、苫小牧市内の中小企業を対象としています。以下のすべての要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 事業所の所在 | 苫小牧市内に事務所または事業所を有すること |
| 企業規模 | 中小企業基本法に定める中小企業であること |
| 市税の納付 | 市税を滞納していないこと |
| その他 | 風俗営業に該当しないこと、暴力団関係者でないこと |
中小企業の定義は業種ごとに異なります。製造業・建設業・運輸業等は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下です。社会福祉法人や医療法人、個人事業主も要件を満たせば対象となります。
国または地方公共団体が出資する企業・団体は補助対象外です。また、同一法人での申請は1回限りとなっています(1回の申請で複数設備の導入は可能)。
4. 省エネルギー設備導入補助の要件と補助金額
① 補助の要件
省エネ設備導入補助を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 省エネ診断 | 技術資格を有する者による省エネルギー診断を受診済みであること(過去3年以内) |
| CO2削減率 | 現行設備と比較して20%以上のCO2排出削減が見込まれること(照明設備は30%以上) |
| 補助対象経費 | 経費総額が30万円以上(税抜)であること |
| 設備の条件 | 新品・未使用品であること(中古品・リース品は対象外)。既存設備の更新であること |
| 設置場所 | 苫小牧市内に設置され、事業用のみに供する設備であること |
② 補助金額と上限
補助率は補助対象経費の2分の1以内です。令和8年度からは、省エネ診断の種類と導入設備の組み合わせによって補助上限額が4段階に分かれています。
| 診断の種類 | 導入設備 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 事業所全体の省エネ診断 | 照明以外の設備を含む | 2分の1 | 100万円 |
| 照明設備のみ | 80万円 | ||
| 設備単位の省エネ診断 | 照明以外の設備を含む | 50万円 | |
| 照明設備のみ | 40万円 |
図:省エネ設備導入における診断種類・設備別の補助上限額
設備単位の省エネ診断に比べて、事業所全体の省エネ診断を受けた場合は補助上限額が大幅に高くなります。空調・照明・ボイラーなど複数設備の更新を検討しているなら、事業所全体の診断を選ぶ方が有利です。今後の設備更新計画全体を見据えた判断が大切になります。
5. 再生可能エネルギー設備導入補助の要件と補助金額
再エネ設備導入補助は、環境省の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を活用して実施されます。太陽光発電設備や蓄電池の導入が対象です。
再エネ設備導入補助は、環境省から苫小牧市への交付内示後に公募が開始されます。令和8年度の公募開始時期は未定です。苫小牧市の公式ページで最新情報をご確認ください。
① 太陽光発電設備の補助金額
太陽光発電設備の補助金額は、最大出力値 × 7.5万円/kWで算出されます。最大出力値は、太陽光パネルの公称最大出力合計とパワーコンディショナーの定格出力合計のうち、いずれか低い方の値(kW表示・小数点以下切捨て)です。
例えば、太陽光パネルの公称最大出力合計が10.5kW、パワーコンディショナーの定格出力合計が10kWの場合、低い方の10kWに7.5万円を乗じた75万円が補助金額となります。
② 蓄電池の補助金額
蓄電池は、蓄電池の価格(円/kWh)の2分の1以内が補助されます。
| 蓄電池の種類 | 単価上限(工事費込み・税抜き) |
|---|---|
| 家庭用(20kWh未満) | 14.1万円/kWh |
| 業務用(20kWh以上) | 16万円/kWh |
③ 再エネ設備の主な要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 設備の条件 | 商用化・導入実績のある新品であること(中古品は対象外) |
| 太陽光の自家消費率 | 発電量の50%以上を自家消費すること(全量売電は対象外) |
| 太陽光の出力 | 50kW未満であること |
| FIT/FIP制度 | FIT・FIP制度の認定を取得しないこと |
| 蓄電池 | 太陽光発電設備と同時に設置すること(蓄電池単体は対象外) |
| 設置場所 | 苫小牧市内に設置し、事業用のみに供すること |
6. 補助対象となる経費と対象外の経費
① 補助対象経費
| 経費区分 | 内容 | 省エネ | 再エネ |
|---|---|---|---|
| 工事費 | 設備・機械の設置工事等に要する経費 | 対象 | 対象 |
| 設備費 | 設備・機械の購入等に要する経費 | 対象 | 対象 |
| 業務費 | 調査・設計等に要する経費 | 対象 | 対象 |
| 諸経費/事務費 | 事業実施に必要な経費 | 諸経費 | 事務費 |
② 補助対象外の主な経費
以下の経費は補助対象外ですので、予算計画を立てる際にご注意ください。
| 対象外となる経費 |
|---|
| 国・道が助成する事業と重複する経費 |
| 消費税および地方消費税 |
| 省エネルギー診断に係る診断費用 |
| 事業所等の管理費・維持費・人件費・水道光熱費 |
| 土地購入費、建物および設備賃借料、各種手数料・保険料 |
| 食糧費、遊興費、中止・廃止に伴うキャンセル料 |
補助事業の実施にあたっては、2社以上の事業者から見積書を取得し、うち少なくとも1社は市内事業者からの見積もりを取ることとされています。また、施工は原則として市内事業者の活用が推奨されています。
7. 申請から交付までの流れ
補助金の申請は、受付期間内に必要書類を苫小牧市役所へ持参して提出します。申請から交付までの手続きは以下のステップで進みます。
図:苫小牧市ゼロカーボン推進補助金の申請から交付までの流れ
① 提出先と受付期間
| 窓口 | 苫小牧市役所 7階 産業経済部 企業政策室 工業雇用政策課 |
| 住所 | 〒053-8722 苫小牧市旭町4丁目5番6号 |
| 電話番号 | 0144-32-6436 |
| 受付時間 | 平日 8:45~17:15(土日・祝日を除く) |
| 省エネ設備の受付期間 | 令和8年4月1日(水)~令和9年2月26日(金) |
② 主な提出書類
| No. | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 交付申請書(様式第1号) | 市HPからダウンロード可能 |
| 2 | 実施計画書(別紙1または別紙2) | 省エネ:別紙1、再エネ:別紙2 |
| 3 | 補助対象経費等内訳(別紙3) | |
| 4 | 見積書 | 2社以上(うち1社は市内事業者が望ましい) |
| 5 | 法人の登記事項証明書 | |
| 6 | 重要事項確認書 兼 市税納付状況調査同意書 | 市HPからダウンロード可能 |
| 7 | 導入設備の仕様がわかる書類 | メーカーのカタログやHP等 |
| 8 | 現況写真 | 既存設備・設置予定場所・事業所外観 |
| 9 | 設備設置予定場所の配置図 | 任意様式 |
③ 省エネ設備の追加書類
| No. | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 10 | 省エネルギー診断の結果書類 | 過去3年以内の診断。診断者の資格証明写しも必要 |
| 11 | CO2の削減量を示す資料 | 導入前後のCO2排出量・削減量(任意様式) |
④ 再エネ設備の追加書類
| No. | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 10 | 電力会社との契約書 | 余剰電力を売電する場合のみ |
| 11 | 結線図(蓄電池の場合) | 太陽光発電設備との接続を証明 |
| 12 | 発電電力の消費量計画書 | 年間の発電・自家消費・売電見込量 |
申請書類の提出は原則として直接持参が必要です(郵送は原則不可)。やむを得ず郵送する場合、到着日に予算が尽きた際は持参の方が優先されます。提出した書類は返却されませんので、必ずコピーを手元に保管してください。また、申請書は市が定める所定の様式を使用する必要があります。
8. 交付決定後の手続きと義務
① 事業完了報告
工事完了後は、速やかに事業完了報告書(様式第4号)を提出します。領収書の写しや実施状況の写真も添付が必要です。なお、支払いは銀行振込で行い、手形・小切手による支払いは認められません。
② 書類の保管義務
関係書類は、事業完了年度の翌年度から5年間保管する義務があります。取得した財産(単価50万円以上の機械・器具・備品等)は、所定の期間中、承認なく目的外使用や譲渡、担保設定などを行うことはできません。
③ 事後調査
事業完了年度から2年間、CO2削減目標の達成状況を報告書(様式第5号)で報告する義務があります。目的外使用や不正行為が判明した場合は、補助金の返還を求められることがあります。
9. よくある質問(FAQ)
① 省エネ診断に関する質問
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| オンラインのセルフ診断は有効? | 対象外です。所定の技術資格を持つ専門家による診断が必須です |
| 診断報告書にない設備を導入したい場合は? | 原則対象外ですが、同等性能の証明があれば対象となる可能性があります |
| 複数機器の更新でも1台ごとにCO2削減率を満たす必要がある? | はい。設備単体で20%以上(照明は30%以上)の削減が必要です |
| 省エネ診断の費用は補助対象? | 対象外です。診断費用は自己負担となります |
② 再エネ設備に関する質問
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 蓄電池だけ導入できる? | 対象外です。太陽光発電設備との同時設置が条件です |
| 全量売電は対象になる? | 対象外です。発電量の50%以上を自家消費する必要があります |
| リース/PPAモデルは対象? | 対象になる場合があります。補助額相当の控除と耐用年数末までの継続使用が条件です |
| 既存太陽光の入替や増設は? | 対象外です。新規導入のみが対象です |
③ 共通の質問
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 同一法人で複数回申請できる? | 1申請のみです(1回内で複数設備の導入は可能) |
| 交付決定は受付順? | はい。不備なしの先着順で、予算到達で終了です |
| 年度内に完了しなかったら? | 交付取消のリスクがあります。工程管理が重要です |
10. まとめ
苫小牧市ゼロカーボン推進事業補助金は、省エネ設備の導入で最大100万円、再エネ設備では太陽光の出力に応じた補助や蓄電池の費用補助が受けられる、市内の中小企業にとって非常に活用しやすい制度です。
令和8年度は、省エネ設備の補助上限が診断種類別に4段階となり、事業所全体の省エネ診断を受ければ最大100万円まで補助を受けられるようになりました。省エネ設備補助の申請は受付中であり、先着順のため早めの対応が重要です。
設備の老朽化や光熱費の増加に課題を感じている企業は、まず省エネ診断を受けて自社のエネルギー使用状況を把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。
■ 省エネ設備の申請は早めに準備を
令和8年度の省エネ設備補助金は先着順です。予算額に達した時点で受付終了となりますので、書類の準備は早めに進めましょう。
■ 省エネ診断がまだなら、すぐに手配を
省エネ設備の補助には省エネ診断の受診が必須です。過去3年以内の診断結果が有効ですが、まだ受けていない場合は早めの手配をおすすめします。
■ 空調・LED・ボイラーの更新を検討中なら、事業所全体の診断がおすすめ
複数の設備更新を予定しているなら、事業所全体の省エネ診断を選ぶことで補助上限額が最大100万円になります。個別に診断を受けるより有利になるケースが多いでしょう。
■ 再エネ設備の公募開始情報をチェック
太陽光発電や蓄電池の導入を検討している場合は、再エネ設備の公募開始を見逃さないよう、苫小牧市の公式ページを定期的に確認してください。
記事情報
初回公開日:2025年7月20日
最終更新日:2026年4月4日(令和8年度情報に更新)
参照資料:苫小牧市「ゼロカーボン推進補助金について」公式ページ、苫小牧市ゼロカーボン推進事業補助金交付要綱、省エネ設備導入補助交付要領
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報は苫小牧市公式ページをご確認ください。

