冷房COPとは、外気35℃・室内27℃という決められた条件(JISの定格条件)で、エアコンがカタログに表示された定格能力を出して運転したときの「冷房能力÷消費電力」です。定格能力は最大の能力ではありません。カタログで一番目立つ数字ですが、外気35℃という1つの条件での効率にすぎません。インバータ機の業務用エアコンは、多くの時間を能力を絞った「部分負荷」で運転するため、比べるときは中間能力・中間消費電力から計算する「中間COP」もあわせて見るのが基本です。
実際の仕様書で計算すると、同じ5馬力クラスでも定格COPは3前後、中間COPは5を超える例があり、数字は大きく変わります。ただし「中間COPは定格COPの何倍が普通」といった一律の目安はありません。中間COPと定格COPの比率は機種で違い、比率が大きいほど省エネ、とも言えません。
この記事では、JIS B 8616:2015の評価点、メーカーの公開仕様書、省エネ補助金(SII)の計算の手引き、気象庁の平年値をもとに、業務用エアコンのカタログから冷房COP・中間COPを読む方法と、北海道で冷房COPより暖房・低温時の性能が効いてくる理由を整理します。COPとAPFの基本的な違いは「COPとAPFの違いとは?」で解説しています。
この記事でわかること
・冷房COPの意味と、カタログの「定格」「中間」「最小」「中温」「低温」の評価点
・業務用エアコンの仕様書から中間COPを計算する方法(実在機種の公表値で確認)
・中間COP÷定格COPの比率だけで機種を選んではいけない理由
・APF、省エネ法のトップランナー基準、SII設備単位型でのCOP・APFの扱い
・北海道で冷房COPより暖房・低温時の性能を優先して見るべき場面
更新履歴
- 2026年10月27日:全面改訂。JIS B 8616:2015の評価点、三菱電機の公開仕様書(2023年作成のK3世代)による中間COPの計算例、寒冷地向け機種の極低温性能、SII設備単位型(令和7年度補正)の基準と指定計算での扱い、札幌と東京の平均負荷率の比較を追加。根拠を確認できない数値(中間COPは定格の1.3〜1.6倍、比率による判定表など)を削除し、参照資料を更新
- 2026年5月2日:初版公開
1. 冷房COPとは:決められた条件での「1点の効率」
COP(成績係数)は、消費電力1kWあたり何kWの冷房(暖房)ができるかを示す数字です。冷房COPは次の式で求めます。
冷房COP = 冷房能力(kW)÷ 冷房消費電力(kW)
カタログの「冷房COP」は、定格冷房標準能力 ÷ 定格冷房標準消費電力
業務用エアコン(パッケージエアコン)のカタログ値は、JIS B 8616の条件で測ります。冷房の定格は、室内側が乾球温度27℃・湿球温度19℃、室外側が乾球温度35℃です。つまり冷房COPは、外気35℃の条件で、定格能力(カタログに表示される能力)を出して冷やしているときの効率です。定格能力は最大能力ではなく、インバータ機は仕様書の「12.5(3.2〜14.0)」のように、定格より大きい能力も出せます。
インバータ機は、室温が設定に近づくと圧縮機の回転数を下げ、能力を絞って運転します。資源エネルギー庁は、能力が変化するインバータ機は定格条件だけでは実使用に近い評価が難しいため、エアコンの指標を通年の効率(APF)に変えたと説明しています。定格の1点だけを見ても、年間の電気代は読めません。
省エネ法のトップランナー基準は、エアコンをAPF(通年エネルギー消費効率)で評価しており、COPの一律の基準値はありません。COPは能力・形態・測定条件で変わるため、同じ能力クラス・同じ条件の値どうしで比べます。
2. 業務用カタログの評価点:定格・中間・最小と、標準・中温・低温
2015年3月に改正されたJIS B 8616(APF2015)では、業務用エアコンの性能を最大8つの評価点で測ります。カタログや仕様書の「中間冷房標準能力」「最小冷房中温能力」といった項目は、この評価点の名前です。
| 運転 | 評価点 | 室外の条件 | APF2006での扱い |
|---|---|---|---|
| 冷房 | 定格標準 | 35℃DB | あり |
| 冷房 | 中間標準 | 35℃DB | あり |
| 冷房 | 中間中温 | 29℃DB | 2015年に追加 |
| 冷房 | 最小中温 | 29℃DB | 2015年に追加 |
| 暖房 | 定格標準 | 7℃DB/6℃WB | あり |
| 暖房 | 中間標準 | 7℃DB/6℃WB | あり |
| 暖房 | 最小標準 | 7℃DB/6℃WB | 2015年に追加 |
| 暖房 | 最大低温(旧「暖房低温」) | 2℃DB/1℃WB | あり |
表:APF2015の評価点(日立グローバルライフソリューションズ「APF2015とは」、JIS B 8616:2015「3.2 用語及び定義」「8 試験」より。DBは乾球温度、WBは湿球温度。日立の資料に室外条件の記載がない中間冷房標準・最小冷房中温・中間暖房標準・最小暖房標準は、JISの試験条件の区分(標準・中温)に従い、同じ区分の評価点と同じ温度を記載。寒冷地向けの機種は「最大暖房極低温」が加わり最大9点)
「中間」は能力を約半分に絞った状態
業務用エアコンのトップランナー基準を検討した総合資源エネルギー調査会の小委員会の最終取りまとめ(JIS B 8616:2006によるAPFの算定方法を説明した資料)は、中間条件を「定格と同じ外気温度で、能力を2分の1に絞った状態」と説明しています。現行のJIS B 8616:2015も、中間冷房標準能力・中間暖房標準能力は定格の45%以上55%以下の範囲で設定すると定めています(3.2.6、3.2.20。最小能力を設定しない場合は55%を超えてもよい)。最小冷房中温能力・最小暖房標準能力は、定格の25%以上45%未満です(3.2.12、3.2.26)。実際の仕様書でも、定格冷房能力12.5kWの機種の中間冷房標準能力が5.7kW(定格の約46%)と、半分前後の値が載っています。
「中温」は外気29℃の条件で、APF2015で追加されました。「最小」は、その機種が連続運転できる小さい能力の点です。ダイキン工業のカタログ資料は、APF2006はインバータ機が低負荷で運転と停止をくり返す「発停運転」も連続運転とみなしていたのに対し、APF2015は発停を考えた、より厳密な計算になったと説明しています。最小能力を示していない機種は、中間能力以下を発停運転とみなすとしています。
3. 中間COPの計算:実在する2機種の仕様書で比べる
中間COPはカタログに直接書かれていないことが多いので、能力と消費電力から計算します。
中間冷房COP = 中間冷房標準能力(kW)÷ 中間冷房標準消費電力(kW)
暖房も同じく、中間暖房標準能力 ÷ 中間暖房標準消費電力で計算できます
三菱電機が公開している仕様書から、天吊形・5馬力クラス(定格冷房12.5kW)の2機種を計算しました。どちらも室内ユニットはPC-RP140KA19、電源は三相200V・60Hz、値はJIS B 8616:2015準拠です。
| 評価点 | PCZ-ZRMP140K3 (スリムZR系) |
PCZ-ERMP140K3 (スリムER系) |
|---|---|---|
| 定格冷房標準(35℃) | 12.5kW ÷ 3.75kW = 3.33 | 12.5kW ÷ 4.15kW = 3.01 |
| 中間冷房標準(35℃) | 5.7kW ÷ 0.990kW = 5.76 | 5.7kW ÷ 1.09kW = 5.23 |
| 中間冷房中温(29℃) | 6.0kW ÷ 0.830kW = 7.23 | 5.8kW ÷ 0.900kW = 6.44 |
| 最小冷房中温(29℃) | 3.2kW ÷ 0.430kW = 7.44 | 3.8kW ÷ 0.542kW = 7.01 |
| 定格暖房標準(7℃) | 14.0kW ÷ 3.85kW = 3.64 | 14.0kW ÷ 4.06kW = 3.45 |
| 中間暖房標準(7℃) | 6.6kW ÷ 1.12kW = 5.89 | 6.3kW ÷ 1.18kW = 5.34 |
| 最大暖房低温(2℃) | 14.0kW ÷ 6.05kW = 2.31 | 13.5kW ÷ 6.45kW = 2.09 |
| APF2015/APF2006 | 6.0/5.3 | 5.1/4.8 |
| 中間冷房COP ÷ 定格冷房COP | 約1.73 | 約1.74 |
表:仕様書の公表値から計算したCOP(三菱電機「PCZ-ZRMP140K3 仕様書」2023年1月13日作成、「PCZ-ERMP140K3 仕様書」2023年1月11日作成。COPは小数第3位を四捨五入。販売店の情報では、2026年10月時点の現行品はK6世代(室内ユニットPC-RP140KA22)です。K6の公式仕様書は確認できていないため、現行品の値とは異なる場合があります)
この2機種から、次の3つが読み取れます。
1つ目:同じ機種でも、定格COP(3.33)と中間COP(5.76)は大きく違います。定格COPだけで年間の電力量を見積もると、実態から外れやすくなります。
2つ目:中間COP÷定格COPの比率は、ZR系が約1.73、ER系が約1.74で、ほとんど差がありません。中間COPは5.76と5.23で差があるのに、比率にはその差が表れません。比率は定格COPと中間COPの両方で決まるため、理屈の上では定格COPが低い機種ほど大きく出ることもあります。比率が大きい=省エネ、とは言えません。比べるのは中間COPそのものです。
3つ目:暖房は、外気7℃の定格(3.64)から外気2℃の低温(2.31)になると、COPが大きく下がります。北海道で効いてくるのは、この低温側の数字です(6章)。
最小能力や中間暖房能力は、機種によって値が違います(上の表でも最小冷房中温は3.2kWと3.8kW、中間冷房中温は6.0kWと5.8kW)。COPを比べるときは、能力がそろっている評価点を優先し、能力が違う点は参考にとどめます。また、カッコ内の「12.5(3.2〜14.0)」は能力の変化幅(下限〜上限)です。定格の12.5kWが最大ではないことがわかります。カッコ内の値はCOPの計算には使いません。
4. 部分負荷で効率はどう変わるか:インバータ機・一定速機・年式
省エネ補助金(SII)の「省エネルギー量計算の手引き(電気式パッケージエアコン)」には、定格COPに対する中間性能の平均COP比を、負荷率と設置年ごとに示したグラフが載っています。グラフから読み取れる傾向は次のとおりです。
| 機種の種類 | 負荷率が下がったときのCOP(グラフからの読み取り) |
|---|---|
| 2015年以降の年式のインバータ機(店舗用・冷房) | 負荷率25%前後でCOP比が最も高く、定格の2倍前後。負荷率100%で1.0 |
| 1995年のインバータ機(店舗用・冷房) | 負荷率が下がるとCOP比は1.0を下回る |
| 一定速機(ノンインバータ) | 負荷率が下がるほどCOP比が下がり、負荷率0%付近で約0.75 |
表:部分負荷効率特性の傾向(SII「令和7年度補正予算 省エネルギー量計算の手引き【指定計算(電気式パッケージエアコン)(ガスヒートポンプエアコン)】」2026年10月、グラフ2「部分負荷効率特性を考慮した平均COP比」より読み取り)
つまり、新しいインバータ機は部分負荷で効率が上がり、一定速機や古い年式の機種は部分負荷で効率が上がりにくい、または下がるという前提で、補助金の省エネ量が計算されています。グラフは用途(店舗用・事務所用・設備用)と冷暖房で形が違い、店舗用・事務所用では、年式が新しいほどおおむねCOP比が高くなっています。古い機種から更新するときの効果が、定格COPの差だけでは読めない理由もここにあります。
APFの計算は低負荷側を高く見積もるという指摘もある
中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、日本冷凍空調工業会作成の資料(2009年3月掲載)を引用し、評価点から外気温度ごとのCOPを計算する方式では、定格能力以下で常に定格より高いCOPが算出されるため、インバータ機の低負荷時の能力などが過大に評価されている恐れがある、と紹介しています。これは5点で評価していたAPF2006の時期の指摘です。その後のAPF2015では、最小能力の評価点と発停運転の考慮が加わりました(2章)。それでも、APFやカタログ値は試験条件での値であり、実際の建物での値とは一致しない前提で使います。
5. APF・トップランナー基準・SII設備単位型での扱い
冷房COPや中間COPは機種を読み解くための数字で、制度上の判定はAPFで行われます。
| 制度 | 使う指標 | ポイント |
|---|---|---|
| 省エネ法 トップランナー基準(業務用エアコン) | APF(JIS B 8616の2006年版の方法) | 目標年度は2015年度以降。冷房能力50.4kW超、水冷式などは対象外 |
| SII設備単位型(令和7年度補正)の高効率空調・電気式パッケージエアコン | APF2006 | 店舗用・ビル用・設備用ごとに能力別の基準値。寒冷地仕様は基準値に0.9を掛けた値を満たせばよい。水冷式は対象外 |
| SII設備単位型 トップ性能枠 | トップランナー基準の達成率 | 店舗用111%以上、ビル用109%以上、設備用107%以上で、AI制御の導入もあわせて必要 |
表:制度での扱い(資源エネルギー庁「トップランナー制度 エアコンディショナー」、SII「令和7年度補正予算(Ⅲ)GX設備単位型/(Ⅲ)設備単位型 補助対象設備 製品型番登録要領 Ver.4.0」2026年9月より。2026年10月27日時点)
たとえばSIIの従来枠では、店舗用・4方向カセット形以外・定格冷房12.5kW(140形)の基準値は「APF2006で5.0以上」です。上の仕様書ではAPF2015とAPF2006が別の数字(ZR系は6.0と5.3)なので、補助金の基準を見るときはAPF2006の欄を確認します。補助対象になるかは、SIIへの製品型番登録の状況で確認してください。
SIIの指定計算では「定格COP×平均COP比」
SIIの指定計算は、定格能力÷定格消費電力で定格COPを求め、設置年と平均負荷率から決まる「平均COP比」を掛けて平均COPとします。平均負荷率は、事業所の住所・建物用途(事務所か店舗)・冷房か暖房かで自動で選ばれ、北海道は「札幌」の値が使われます。導入予定設備の性能値は、製品型番登録された値を使います。カタログの中間COPそのものを入力する方式ではありません。SII設備単位型の全体像は「省エネ補助金(SII)は設備単位型がおすすめ?」で整理しています。
6. 北海道では冷房COPより暖房・低温時の性能が効く
APFは東京の外気温度をモデルに計算され、冷房の評価点は外気35℃と29℃です。冷房COPは外気35℃の1点の値です。北海道の気温は、この前提と大きく違います。
| 地点 | 8月の日最高気温(平年値) | 8月の平均気温 | 1月の平均気温 | 1月の日最低気温 |
|---|---|---|---|---|
| 東京 | 31.3℃ | 26.9℃ | 5.4℃ | 1.2℃ |
| 札幌 | 26.4℃ | 22.3℃ | -3.2℃ | -6.4℃ |
| 旭川 | 26.6℃ | 21.2℃ | -7.0℃ | -11.7℃ |
表:気温の平年値(1991〜2020年)(気象庁「過去の気象データ検索」平年値より)
札幌の8月の日最高気温の平年値は26.4℃で、冷房の定格(35℃)はもちろん、中温(29℃)の評価点よりも低い値です。一方、1月の平均気温は-3.2℃で、暖房の低温の評価点(2℃)を下回ります。
SIIの手引きは、JIS B 8616の想定負荷と外気温度データから、代表12地域の月別の平均負荷率を示しています。事務所の8月の冷房の平均負荷率は、東京61.5%に対して札幌30.7%。逆に1月の暖房は、東京19.9%に対して札幌66.6%です。店舗では札幌の1月・2月の暖房が100.0%になっています。北海道の業務用エアコンは、冷房は低い負荷で短く、暖房は高い負荷で長く動く想定です。
資源エネルギー庁の省エネラベルガイドブック(2022年)でも、ルームエアコンの冷房・暖房の期間消費電力量に掛ける地域補正係数は、東京を1.0として札幌が冷房0.1、暖房4.4です(1年間の目安電気料金に掛ける通年の係数は3.1)。家庭用の目安のための数字で、暖房能力が足りない分は電熱ヒーターの電力量を加えて計算されていますが、北海道では冷房より暖房の電力量が大きいという方向は同じです。
このため、北海道で業務用エアコンを選ぶときは、冷房COPよりも先に、暖房低温(2℃)の能力とCOP、寒冷地向け機種かどうか、さらに低い外気温での能力を確認します。3章の2機種でも、暖房低温のCOPは2.31と2.09で、定格暖房よりかなり低い値です。
標準機の仕様書には、外気2℃より寒い条件での性能は載っていません。寒冷地向けの機種では、APF2015の評価点「最大暖房極低温」や、さらに低い外気温での暖房能力が仕様書に載っていることがあるので、その値を確認します。JIS B 8616:2015にも、極低温の条件での暖房能力と消費電力の試験が定められています(3.2.18など)。たとえば三菱電機の寒冷地向け機種PCZ-HRMP140K3(天吊形・定格冷房12.5kW、2023年1月6日作成の仕様書)では、最大暖房極低温能力16.2kW・消費電力8.82kW(COPに直すと約1.84)、室外湿球温度−15℃時の能力16.2kW、−20℃時の能力14.0kWが示されています。寒冷地向けエアコンの違いは「寒冷地エアコンとは?」、冬に暖房が止まる霜取り運転は「霜取り運転の仕組み」で解説しています。
冷房COPを重視してよい場面
北海道でも、冷房の比重が大きい用途はあります。たとえば、厨房やサーバー室など内部の発熱が大きい部屋、冷房だけで使う冷房専用機などです。こうした用途では、冷房の定格COPと中間COP(標準・中温)を優先して比べます。用途ごとの空調の選び方は「厨房・福祉施設・店舗の空調選び」もご覧ください。
7. 計算例:冷房と暖房、どちらの効率差が電気代に効くか(仮定の数字)
3章の2機種の公表値を使い、年間の電力量を試算します。負荷・運転時間・電気料金単価はすべて説明用の仮定で、実際の建物の値ではありません。また、運転中のCOPが評価点のCOPで一定と単純化しています。
年間の消費電力量(kWh)= 年間の冷房(暖房)熱量(kWh)÷ COP
仮定:冷房熱量1,600kWh/年(平均4.0kW×400時間)、暖房熱量15,000kWh/年(平均6.0kW×2,500時間)、電気料金30円/kWh
| 見積もりに使うCOP | ZR系 | ER系 | 差(電気代) |
|---|---|---|---|
| 冷房:定格COPで計算 | 1,600÷3.33=約480kWh | 1,600÷3.01=約532kWh | 約52kWh(約1,560円) |
| 冷房:中間COPで計算 | 1,600÷5.76=約278kWh | 1,600÷5.23=約306kWh | 約28kWh(約840円) |
| 暖房:低温(2℃)COPで計算 | 15,000÷2.31=約6,494kWh | 15,000÷2.09=約7,177kWh | 約683kWh(約20,490円) |
表:仮定の数字による試算(COPは三菱電機の仕様書の公表値から計算し、3章の表の小数第2位の値で割り算。kWhは四捨五入)
この仮定では、冷房の電力量は定格COPで見積もると中間COPの約1.7倍に膨らみます。機種の差も、冷房では年間数百〜千数百円程度ですが、暖房の低温側の効率差は2万円を超えます。北海道のように暖房の比重が大きい建物では、冷房COPの小さな差より、暖房、とくに低温時の性能の差のほうが電気代に効きやすいことがわかります。実際の比較では、月別の電力使用量や運転時間のデータをもとに見積もります。
8. カタログを読む手順と、よくある失敗
3章のとおり、比率は機種の効率の差を表しません(中間COPに約0.5の差がある2機種で、比率は約1.73と約1.74)。理屈の上では、定格COPが低い機種ほど比率が大きく出ることもあります。比率に「1.3以上なら良い」といった公的な目安もありません。中間COPの値で比べます。
定格COPは外気35℃・定格能力(最大能力ではない)での1点の効率です。年間の電力量を定格COPで割り戻すと、インバータ機では電力量を多く見積もりがちです。
暖房の低温能力が足りないと、真冬に室温が上がらない、補助暖房が必要になる、といった問題につながります。標準機で暖まらないときの原因は「業務用エアコンが暖まらない?」、更新全体の進め方は「北海道の業務用エアコン更新ガイド」で整理しています。
家庭用はJIS C 9612、業務用はJIS B 8616で、算定条件が違います。事務所に家庭用を付ける場合の考え方は「業務用エアコンと家庭用エアコンの違い」をご覧ください。
9. よくある質問(FAQ)
A. 冷房能力(kW)を消費電力(kW)で割った効率です。業務用エアコンのカタログの冷房COPは、JIS B 8616の定格条件(室内27℃DB/19℃WB、室外35℃DB)で、定格能力を出して運転したときの値です。定格能力は最大能力ではありません。外気35℃という1点の効率で、年間の平均ではありません。
A. 省エネ法の基準はAPFで決められており、COPの一律の目安はありません。たとえば三菱電機の5馬力クラス・天吊形の仕様書では、定格冷房COPは3.01と3.33、中間冷房COPは5.23と5.76でした。同じ能力・同じ条件の値どうしで比べてください。
A. 仕様書の「中間冷房標準能力」を「中間冷房標準消費電力」で割ります。中間は、定格と同じ外気温度で能力を約半分に絞った状態です(JIS B 8616:2015では定格の45〜55%)。APF2015の仕様書には、外気29℃の「中間冷房中温」の値も載っています。
A. おすすめしません。三菱電機の2機種では、中間COPが5.76と5.23で差があるのに、比率は約1.73と約1.74でほぼ同じでした。比率は定格COPの影響も受けるため、部分負荷の効率の良し悪しを表しません。比べるのは中間COPそのものです。
A. 一般的な事務所・店舗では暖房です。SIIの手引きの平均負荷率は、事務所の8月の冷房が札幌30.7%(東京61.5%)、1月の暖房が札幌66.6%(東京19.9%)です。暖房低温(2℃)の能力とCOP、寒冷地向け機種かどうかを先に確認します。厨房やサーバー室など冷房の比重が大きい部屋は、冷房COPも重視します。
A. 令和7年度補正の設備単位型では、電気式パッケージエアコンの基準はAPF2006の値で決められています(寒冷地仕様は基準値×0.9)。省エネ量の指定計算では、定格COPに設置年と平均負荷率から決まる平均COP比を掛けて計算します。2026年10月27日時点の資料に基づく内容です。
10. まとめ
- 冷房COPは外気35℃・定格能力(最大能力ではない)での1点の効率。年間の電気代は定格COPだけでは読めない
- 仕様書の中間能力・中間消費電力から中間COPを計算でき、定格COPと大きく違う(例:3.33と5.76)
- 中間COP÷定格COPの比率は機種選びの物差しにならない。中間COPそのものを比べる
- 制度の判定はAPFで行われ、トップランナー基準とSII設備単位型の基準はAPF2006が基本
- 北海道では冷房の負荷は低く、暖房の負荷が高い。冷房COPより、暖房低温(2℃)の能力・COPと、寒冷地向け機種の極低温性能を優先して確認する
記事情報
公開日:2026年5月2日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・日立グローバルライフソリューションズ「APF2015とは」(日立グローバルライフソリューションズ)
・総合資源エネルギー調査会 省エネルギー基準部会 エアコンディショナー判断基準小委員会「最終取りまとめ」(省エネルギーセンター 掲載PDF)
・資源エネルギー庁「トップランナー制度 エアコンディショナー」(資源エネルギー庁)
・資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ 2018年冬版(エアコン)」(省エネ型製品情報サイト)
・資源エネルギー庁「2022年 省エネラベルガイドブック」(省エネ型製品情報サイト)
・三菱電機「パッケージエアコン 基礎知識」(三菱電機)
・三菱電機「PCZ-ZRMP140K3 仕様書」2023年1月13日作成(三菱電機)
・三菱電機「PCZ-ERMP140K3 仕様書」2023年1月11日作成(三菱電機)
・三菱電機「PCZ-HRMP140K3 仕様書」2023年1月6日作成(三菱電機)
・日本産業規格 JIS B 8616:2015「パッケージエアコンディショナ」3.2 用語及び定義、8 試験(規格本文の掲載ページ)
・ダイキン工業 業務用エアコン カタログ「省エネ基準について」(ダイキン工業)
・中小企業基盤整備機構 J-Net21「空調機の性能表示のCOPとAPFの違いは?」(J-Net21)
・環境共創イニシアチブ(SII)「令和7年度補正予算 省エネルギー量計算の手引き【指定計算(電気式パッケージエアコン)(ガスヒートポンプエアコン)】4次公募用」2026年10月(SII)
・環境共創イニシアチブ(SII)「令和7年度補正予算(Ⅲ)GX設備単位型/(Ⅲ)設備単位型 補助対象設備 製品型番登録要領 Ver.4.0」2026年9月(SII)
・気象庁「過去の気象データ検索」平年値 札幌(気象庁)・東京(気象庁)・旭川(気象庁)
※2026年10月27日時点の情報です。機種の数値は、各仕様書の作成時点の公表値で、現行機種の値とは限りません。最新の値は各メーカーのカタログ・仕様書で、補助金の基準と計算方法はSIIの最新の公募資料でご確認ください。文中の計算例は「仮定の数字」による説明用の試算です。
