2026年5月の検針分から、電気料金に上乗せされる再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の単価が4.18円/kWhに改定されます。前年度の3.98円/kWhから0.20円の値上がりとなり、制度開始以来はじめて4円台に突入しました。
北海道で事業を営む企業にとって、電気使用量が大きい冬季を控えた今、この改定は電気料金にじわりと効いてきます。年間使用量が10万kWhの中規模事業所であれば年2万円、100万kWhの工場では年20万円の増加です。
本記事では、2026年度の再エネ賦課金単価の正確な数値、北海道の事業者が年間でどれだけ負担増になるかの試算、改定の構造的な背景、そして次に打つべき具体的な対策までを整理します。
この記事でわかること
✅ 2026年度の再エネ賦課金単価と適用期間の正確な情報
✅ 月別使用量ごとの年間負担額シミュレーション(北海道の中小企業向け)
✅ 「初の4円台」となった2026年度改定の構造的な理由
✅ 減免制度の対象になる事業者の現実的な要件
✅ 賦課金負担を減らすための3つの具体的な打ち手
1. 2026年5月の再エネ賦課金改定とは?
① 一言でいうと
2026年度の再エネ賦課金単価は、1kWhあたり4.18円です。経済産業省が2026年3月19日に公表しました。2026年5月検針分から2027年4月検針分までの1年間に適用され、全国一律で電気料金に上乗せされます。
② 制度の概要
| 正式名称 | 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金) |
| 2026年度単価 | 4.18円/kWh(前年度比 +0.20円/kWh) |
| 適用期間 | 2026年5月検針分 ~ 2027年4月検針分 |
| 明細への反映 | 2026年6月の請求分から確認可能 |
| 計算式 | 再エネ賦課金(円)= 電気使用量(kWh)× 単価(円/kWh) |
| 対象 | 電気を使用するすべての需要家(家庭・法人・全電力会社で一律) |
| 所管 | 経済産業省 資源エネルギー庁 |
| 制度の根拠 | 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法) |
再エネ賦課金は経済産業大臣が決定する全国一律の単価です。北海道電力でも新電力でも、同じ電気使用量であれば賦課金の負担額は変わりません。電力会社を切り替えてもこの部分は減らせない、という性質を持っています。
2. 2026年度は「初の4円台」突破。単価はどう推移してきたか
① 制度開始から2026年度までの単価推移
2012年7月の制度開始時の単価は0.22円/kWhでした。2026年度の4.18円/kWhは、その約19倍にあたります。2023年度に一時的に1.40円/kWhまで下落しましたが、これは化石燃料価格の高騰により「回避可能費用」が大きくなった結果の例外的な動きです。
| 適用年度 | 単価(円/kWh) | 適用年度 | 単価(円/kWh) |
|---|---|---|---|
| 2012年度 | 0.22 | 2020年度 | 2.98 |
| 2013年度 | 0.35 | 2021年度 | 3.36 |
| 2014年度 | 0.75 | 2022年度 | 3.45 |
| 2015年度 | 1.58 | 2023年度 | 1.40 |
| 2016年度 | 2.25 | 2024年度 | 3.49 |
| 2017年度 | 2.64 | 2025年度 | 3.98 |
| 2018年度 | 2.90 | 2026年度 | 4.18 |
| 2019年度 | 2.95 | — | — |
図:再エネ賦課金単価の推移(2012〜2026年度/資源エネルギー庁公表値より作成)
② 2026年度に4円台を突破した3つの構造要因
2026年度の単価上昇を「再エネが増えたから」だけで説明するのは正確ではありません。経産省の公表数値を分解すると、下記の3要因が組み合わさっていることがわかります。
| 算定要素 | 2026年度の数値 | 単価への影響 |
|---|---|---|
| 買取費用等 | 約4兆8,507億円 | 前年度比ほぼ横ばい(押し上げ要因ではない) |
| 回避可能費用等 | 約1兆6,495億円 | 減少(相殺額が縮小し、押し上げ要因) |
| 販売電力量(分母) | 約7,665億kWh | 減少(分母が縮み、押し上げ要因) |
つまり、必要費用を相殺する「回避可能費用」が縮み、割る相手である「販売電力量」も省エネ進展で減少したため、1kWhあたりの単価が上がりやすい構造になっています。
3. 北海道の事業者は年間でいくら増える?使用量別シミュレーション
① 月使用量別の年間負担額・年間増加額
2026年度(4.18円/kWh)と2025年度(3.98円/kWh)の差は0.20円/kWhです。月使用量の規模別に、年間の負担額と前年度比の増加額を試算しました。
| 月電気使用量 | 業態の目安 | 2025年度 年間賦課金 | 2026年度 年間賦課金 | 年間増加額 |
|---|---|---|---|---|
| 3,000 kWh | 小規模事務所・店舗 | 143,280円 | 150,480円 | +7,200円 |
| 10,000 kWh | 中規模オフィス・小規模工場 | 477,600円 | 501,600円 | +24,000円 |
| 30,000 kWh | 中規模ホテル・スーパー | 1,432,800円 | 1,504,800円 | +72,000円 |
| 50,000 kWh | 大型商業施設・中規模工場 | 2,388,000円 | 2,508,000円 | +120,000円 |
| 100,000 kWh | 大型工場・大規模施設 | 4,776,000円 | 5,016,000円 | +240,000円 |
※ 試算例。年間使用量 = 月使用量 × 12ヶ月で計算しています。実際の使用量は季節変動があり、北海道では冬季の使用量が大きくなる傾向があります。
② 中規模事業所のモデルケース(月10,000kWh)
年 477,600円
単価3.98円/kWh
年間使用量 120,000kWh
年 501,600円
単価4.18円/kWh
年間使用量 120,000kWh
同じ電気使用量でも、賦課金単価の改定だけで年24,000円の負担増となります。これは賦課金単独の影響であり、燃料費調整額や電力量料金の変動は別途加算されます。
北海道の事業所は、12月から3月の使用量が他季節の1.3〜1.7倍程度になることが珍しくありません(暖房・融雪・換気熱ロスの影響)。年平均ベースの試算より、冬季の月別請求書ではより大きな差を体感するケースが多くなります。試算する際は、年間の総使用量で計算するのが正確です。
4. 減免制度は使えるのか?北海道の中小企業の現実
① 減免制度の概要
電気を大量に使用する事業者には、賦課金の減免制度が用意されています。製造業・第一次産業・建設業などの第二次産業では4〜8割、その他の業種では2〜4割の減免を受けられます。ただし申請要件が厳しく、北海道の中小企業の大半は対象外になります。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 原単位の基準 | 電気の使用に係る原単位(電気使用量kWh ÷ 売上高千円)が基準値を超えること ※2025年11月受付の2026年度適用分では 4.96(年度ごとに変動) |
| 電気使用量の下限 | 申請事業所における申請事業の電気使用量が 年間100万kWhを超える こと |
| 申請事業の割合 | 申請事業の電気使用量が、申請事業所全体の電気使用量の 過半(50%超) を占めること |
| 原単位改善の取組 | 過去4事業年度の原単位変化率の平均が99%以下など、複数の要件のいずれかを満たし、かつ取組状況を公表すること |
| 申請窓口 | 北海道経済産業局 資源エネルギー環境部 エネルギー対策課(札幌市北区北8条西2丁目 札幌第一合同庁舎4F) |
| 申請期間 | 毎年11月1日〜11月30日 |
| 適用開始 | 申請翌年度の5月検針分から |
② 減免制度の申請フロー
| ステップ | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 11月1日〜11月30日 | GビズID取得後、減免認定申請システムからオンライン申請 |
| STEP 2 | 翌年1月頃 | 経済産業局による審査・認定通知書の交付 |
| STEP 3 | 翌年2月1日まで | 小売電気事業者(電力会社)への申し出 |
| STEP 4 | 翌年5月検針分〜 | 賦課金が減額された請求書の受領 |
申請事業の年間電気使用量が100万kWhを「超える」ことが要件です。月平均で約83,000kWh超に相当し、これは大型工場や大規模冷凍冷蔵倉庫レベルの規模感です。さらに「申請事業が事業所全体の過半を占める」「原単位が4.96超」という要件もあるため、一般的な中小企業の事務所・店舗・小規模工場では到底届きません。「電気代が高くて困っている」という主観だけでは申請できない制度設計になっている点に注意が必要です。
5. 賦課金負担を減らす3つの打ち手
賦課金単価そのものは全国一律で変えられません。負担を減らすには「電力会社から購入する電気の量を減らす」しかありません。具体的には3つの方向性があります。
① 自家消費型太陽光発電で買電量を直接減らす
事業所の屋根に太陽光発電を設置し、自社で発電・消費すれば、その分だけ電力会社からの購入量が減ります。自家消費した電気には再エネ賦課金が一切かかりません。屋根面積と日射条件にもよりますが、年間使用量の20〜40%を自家消費でまかなうことができれば、賦課金負担を同じ割合で削減できます。
北海道の太陽光発電は、冬季は積雪により発電量が大きく落ち込むものの、5〜9月の発電量は本州とほぼ同等です。冷房・除湿で電力消費が増える夏季の昼間ピーク削減に効果が出やすく、契約電力(基本料金)の引き下げにもつながる可能性があります。
② 省エネ・運用改善で総使用量を減らす
LED化、空調更新、断熱改修、デマンド管理、運用改善などにより、電力使用量そのものを削減します。賦課金は使用量に完全に比例するため、省エネ削減量がそのまま賦課金削減につながります。月10,000kWhの事業所が10%の省エネを達成すると、賦課金だけで年5万円超の削減効果になります。
③ 契約見直し・PPAなどの調達手段を組み合わせる
オンサイトPPA(第三者所有モデルでの自家消費太陽光)、オフサイトPPA、自己託送など、再エネ電源を確保する方法は近年多様化しています。初期投資を抑えながら賦課金がかからない自家消費分を増やせる可能性があります。事業規模・屋根面積・財務状況に応じて、最適な方式は異なります。
| 打ち手 | 賦課金削減効果 | 初期投資 | 適している事業所 |
|---|---|---|---|
| 自家消費太陽光(自社所有) | 大(自家消費分はゼロ) | 大 | 屋根面積が広く、長期投資が可能な企業 |
| オンサイトPPA | 大(自家消費分はゼロ) | なし | 初期投資を抑えたい企業 |
| 省エネ・運用改善 | 中〜大(使用量削減と同率) | 小〜中 | すべての事業者 |
| 契約見直し(プラン変更) | なし(賦課金単価は不変) | なし | 電力量料金単価の見直しが目的の場合 |
| 減免制度の申請 | 大(2〜8割減免) | なし | 年間100万kWh超の大規模事業者のみ |
6. 北海道の事業者にとってのポイント
■ ポイント1:冬季の請求書で実感する負担増を予測しておく
北海道の事業所は12月〜2月の電気使用量が年間平均の1.3〜1.7倍に膨らむ傾向があります。月20,000kWhの事業所であれば、冬季のピーク月だけで賦課金が10万円を超えることもあります。改定前の冬と比較して「請求書がさらに重く感じる」のは、この季節要因と賦課金改定が重なるためです。
■ ポイント2:減免制度は「期待しない」前提で立てる
減免制度は年間100万kWh超の規模が必要であり、北海道の中小企業の大多数は対象外です。「減免を狙う」のではなく、「使用量そのものを減らす」「自家消費を増やす」という現実的な戦略にリソースを集中させるのが合理的です。
■ ポイント3:自家消費太陽光は「夏型」で設計する
北海道の屋根設置太陽光は、冬季の積雪期は発電量が落ちます。一方で、5〜9月は本州と遜色ない発電量が得られ、冷房・除湿・冷蔵設備の電力ピークと一致しやすいのが特徴です。自家消費型を検討する場合は「夏季ピーク削減」と「契約電力(デマンド)引き下げ」を組み合わせて投資回収を考えると、北海道でも採算が成立しやすくなります。
■ ポイント4:燃料費調整額・激変緩和措置の動向もセットで把握する
電気料金の総額に効くのは、賦課金だけではありません。燃料費調整額(毎月変動)、激変緩和措置(政府の値引き支援)、容量拠出金などが複合的に作用します。賦課金改定だけに目を奪われず、年間の電気料金全体を「単価別の構成」で可視化しておくと、次の打ち手を判断しやすくなります。
7. よくある質問(FAQ)
A. いいえ、変わりません。再エネ賦課金単価は経済産業大臣が決める全国一律の単価です。北海道電力でも新電力でも、同じ電気使用量であれば賦課金の負担額は同じです。電力会社の切り替えで削減できるのは、電力量料金(基本料金や従量料金部分)です。
A. 2026年度の単価4.18円/kWhは、2026年5月検針分から適用されます。電気料金の請求書(明細)への反映は、検針タイミングによって2026年6月請求分からとなる場合が多くなります。
A. 形式的には事業者の規模を問いません。ただし「申請事業の年間電気使用量100万kWh超」「電気の使用に係る原単位が4.96超(2026年度適用分)」「申請事業が事業所全体の過半を占めること」など複数の要件があります。一般的な中小企業の事務所・店舗・小規模工場ではこの要件を満たすことが難しく、対象になるのは大型工場や大規模冷凍冷蔵倉庫などに限られます。
A. かかりません。再エネ賦課金は「電力会社から購入した電気」に対してのみ課金されます。屋根の太陽光発電で自家消費した分は購入していないため、賦課金もゼロです。
A. 当面は高水準が続く見通しです。FIT制度による高単価買取案件の買取期間が順次終了する2030年代以降は、緩やかに低下していく可能性があります。一方で、洋上風力や系統増強への費用負担が新たに加わる要素もあり、見通しは完全には固まっていません。
8. まとめ
2026年5月の再エネ賦課金改定 要点まとめ
✅ 2026年度の単価は4.18円/kWh(2025年度の3.98円から+0.20円、初の4円台)
✅ 適用期間は2026年5月検針分〜2027年4月検針分
✅ 月10,000kWh使用の事業所では年24,000円、月100,000kWhでは年240,000円の負担増
✅ 単価上昇は「回避可能費用の縮小」と「販売電力量の減少」が主因
✅ 減免制度は年間100万kWh超が要件で、中小企業の大半は対象外
✅ 削減策は「自家消費太陽光」「省エネ・運用改善」「契約・調達手段の組み合わせ」の3方向
賦課金単価そのものは下げられませんが、「電力会社から買う電気の量を減らす」打ち手はいくつもあります。冬季の請求書が届く前に、自社の年間電気使用量と賦課金負担額を可視化し、自家消費型太陽光や省エネ投資の検討を始めるタイミングとして適しています。
記事情報
公開日:2026年5月2日
参照資料:
・経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」(2026年3月19日)
・資源エネルギー庁「賦課金減免制度について(概要資料)」
・資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報は経済産業省ニュースリリースおよび資源エネルギー庁公式サイトをご確認ください。

