北海道の企業様にとって、近年のエネルギーコスト上昇は大きな課題となっています。電気代削減に向けLED照明交換の費用、税務上の扱いは?修繕費か資本的支出か徹底解説
北海道の企業様にとって、近年のエネルギーコスト上昇は大きな課題です。電気代削減の有効な手段として、古い照明器具を消費電力の少ないLED照明へ交換することを検討されている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。照明のLED化は、高い省エネ効果だけでなく、ランプの長寿命化によるメンテナンスコスト削減にも繋がり、企業経営に貢献します。
しかし、LED照明への交換工事を行う際、その費用を税務上どのように処理すべきかという点は非常に重要です。費用を一括で経費として計上できる「修繕費」と判断されるか、あるいは資産として複数年にわたって費用計上する「資本的支出」と判断されるかによって、その年度の税負担や会計処理が大きく変わってきます。
本コラムでは、LED照明の交換費用に関する基本的な税務上の考え方について、国税庁の見解や専門家の解説を基に、分かりやすく詳しくご説明します。
第1章: 修繕費と資本的支出 ~基本を理解する~
まず、税務上の「修繕費」と「資本的支出」の基本的な違いを理解することが、適切な会計処理の第一歩です。
修繕費とは?
修繕費とは、固定資産の通常の維持管理や原状回復(元の状態に戻す)のために支出される費用を指します。
- 会計処理: 原則として、支出した年度の損金(必要経費)として一括で計上できます。
- 具体例:
- 建物の壁の塗り替え、壊れたガラスの交換
- 機械の故障部品の取り替え
- おおむね3年以内の周期で行われる定期的な修理・改良
- 一つの修理・改良等の費用が20万円未満の場合
- 災害により毀損した資産の原状回復費用
資本的支出とは?
資本的支出とは、固定資産の資産価値を増加させたり、その耐久性(耐用年数)を延長させたりする工事の費用のことです。
- 会計処理: 支出額は資産として計上し、その資産の耐用年数にわたって**減価償却(毎年少しずつ費用化)**を行う必要があります。
- 具体例:
- 建物の避難階段の取り付けなど、物理的に新たな機能や設備を付け加える費用
- 用途変更のための大規模な模様替え、改造、改装の費用
- 機械の部品を特に品質や性能の高いものに取り替え、その結果として機械の価値や耐用年数が著しく向上した場合の、通常の取替え費用を超える部分
判断のポイントは「実質」
修繕費と資本的支出の区別は、工事の名称(例:「改修工事」「改良工事」)ではなく、その支出の「実質」が何であるかによって判定されます。つまり、その支出が固定資産の現状を維持するためのものなのか、それとも価値を高めるものなのか、という観点が重要になります。
第2章: LED照明交換費用の税務上の扱い
それでは、本題である蛍光灯などの従来の照明をLED照明に取り替える費用は、どのように扱われるのでしょうか。ケース別に見ていきましょう。
ケース1: LEDランプのみの交換(原則:修繕費)
既存の照明器具はそのまま使用し、蛍光灯管や電球などの光源(ランプ)部分のみをLEDランプに交換する場合は、原則として「修繕費」として処理できる可能性が高いです。
- 国税庁の見解とその根拠: 国税庁は、事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた事例において、その費用は修繕費として処理することが相当であるとの見解を示しています。その理由として、LEDランプへの交換によって節電効果や使用可能期間が向上するとしても、それはLEDランプという「部品」自体の性能が高いことによるものであり、照明設備(建物付属設備)全体の価値や耐久性が著しく向上したとまでは言えない、と判断されるためです。
- 安定器(蛍光灯用)のバイパス工事やLED専用電源ユニットの扱い: 従来の蛍光灯には安定器が不可欠でしたが、多くのLEDランプは蛍光灯用の安定器を必要としません。そのため、LEDランプに交換する際には、
- 既存の安定器を取り外したり、電気回路から切り離すバイパス工事
- LEDランプを点灯させるための専用の小型電源ユニット(LEDドライバーなど)の接続 といった作業が発生することが一般的です。これらの工事がLEDランプへの交換と一体不可分であり、照明機能の維持・回復(新しい光源を使えるようにするための措置)の範囲内とみなされる場合、LEDランプ本体の費用と合わせて修繕費として処理できる可能性が高いと考えられます。
- 高額な場合でも: 例えば、多数の蛍光灯ランプをLEDランプに一斉交換し、総額が100万円を超えるようなケースでも、上記の「部品交換」の範疇であると実質的に判断されれば、修繕費として認められることがあります。
ケース2: 照明器具全体の交換(原則:資本的支出)
ランプだけでなく、照明器具本体ごと新しいLED照明器具に取り替える場合は、単純なランプ交換とは異なり、原則として「資本的支出」と判断される可能性が高まります。
- 資本的支出と判断される理由: 照明器具全体を新しいものに交換することで、単なる部品交換にとどまらず、その固定資産(建物付属設備としての照明設備)の価値が向上したり、機能が向上したり、耐用年数が実質的に延長されたとみなされやすいためです。例えば、よりデザイン性の高い器具への変更、明るさや配光性能の向上、調光・調色機能の追加などがこれに該当する可能性があります。
ケース3: さらに大規模な改修が伴う場合(資本的支出の可能性増)
LED照明への交換工事が、単に照明器具の取り替えにとどまらず、建物全体の電気設備に関わるような大規模な改修を伴う場合は、さらに資本的支出と判断される可能性が高まります。
- 具体例:
- LED照明導入に合わせて、建物全体の配線を見直す工事
- 分電盤の増設や交換
- 照明制御システムの新規導入
これらの工事は、明らかに建物の機能向上や価値増加に繋がるため、資本的支出として扱われるのが一般的です。
第3章: 判断に迷ったときの道しるべ
LED照明交換費用が修繕費か資本的支出か、個別のケースで判断に迷うこともあるでしょう。そのような場合は、以下の方法で検討を進めることをお勧めします。
- 国税庁の情報を活用する: 国税庁のウェブサイトには、修繕費と資本的支出の区分に関するフローチャートや質疑応答事例が掲載されています。これらを参考にすることで、基本的な考え方を整理できます。
- 専門家(税理士)への相談が最も確実: 最終的な税務判断は、個別の事実関係に基づいて行われます。そのため、判断に迷った場合や、金額が大きい場合、工事内容が複雑な場合は、必ず顧問税理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしてください。これが最も確実で安全な方法です。
- (補足)管理会社からの情報収集: マンションやビルを管理会社に委託している場合、管理会社が同様の工事の税務処理について過去の経験や情報を持っていることがあります。ただし、管理会社は税務の専門家ではないため、あくまで参考情報として捉え、最終的な判断は税理士に確認しましょう。

第4章: 知っておきたい「少額減価償却資産」の特例
LED照明への交換費用に関連して、特に中小企業の皆様には「少額減価償却資産の特例」という制度も関わってくる場合があります。
- 制度の概要とメリット: 取得価額が一定金額未満の減価償却資産について、通常の減価償却を行わず、取得した年度に全額を損金(経費)として算入できる特例制度です。(例:取得価額10万円未満の資産。中小企業者等については、取得価額30万円未満の資産について年間合計300万円まで損金算入できる特例があります。適用には青色申告者であるなどの要件があります。)
- LED照明交換における適用可能性と判定単位: LED照明設備は通常「建物付属設備」の一部として扱われますが、例えばスイッチでコントロールされる範囲ごとや、部屋ごとなどを一つの取得単位とみなし、その単位あたりの取得価額が上記の基準額未満であれば、この特例を適用できる可能性があります。
- 注意点:
- たとえ個々の単位が基準額未満であっても、全体の交換工事が一つの契約で一体として行われ、実質的に一つの資産取得とみなされる場合や、全体の取得価額が非常に高額になる場合は、適用が認められないケースもあります。
- 修繕費として処理できる場合は、そもそもこの特例を検討する必要はありません。資本的支出と判断された場合に、この特例の適用を検討することになります。
- 適用には細かな要件があるため、この特例の利用を検討する場合も、必ず税理士に相談してください。
まとめ
LED照明への交換費用を税務上どのように処理するかは、企業の税負担に直接影響する重要な問題です。
- ランプのみの交換(付随するバイパス工事等を含む)は、原則として修繕費。
- 照明器具全体の交換は、原則として資本的支出。
- 判断の鍵は、その支出が「現状維持・原状回復」なのか、「価値増加・耐久性向上」なのかという「実質」にあります。
最終的な税務判断は、個別の工事内容、契約形態、金額、企業の状況など、様々な要素を総合的に勘案して行われるため、自己判断は禁物です。正確な会計処理と適切な節税のためには、必ず事前に税理士などの専門家にご相談ください。
LED照明への交換工事そのものの計画や実施についてご検討の際には、省エネ効果のシミュレーションから最適な器具の選定、信頼できる工事業者の紹介まで、株式会社totokaがお手伝いできます。お気軽にお問い合わせください。