「電気代が上がった」「燃料費が高くなった」——。北海道で事業を営む皆さまにとって、エネルギーコストの上昇は経営に直結する切実な問題ではないでしょうか。
しかし、なぜ電気代は上がるのでしょうか。その答えは、日本の電力を支える化石燃料の「輸入先」にあります。日本は石炭・原油・LNG(液化天然ガス)のほぼ全量を海外から輸入しており、国際的な燃料価格や為替の変動が、そのまま電気料金に反映されるのです。
この記事では、日本の石炭・原油・LNGの輸入先を円グラフでわかりやすく示しながら、それぞれの燃料が発電にどう使われているのかを解説します。エネルギーコスト対策を考えるうえで、まず「全体像」を把握することが大切です。
この記事でわかること
✅ 石炭・原油・LNGの輸入先トップ国と依存割合(2024年度実績)
✅ 日本の電源構成(火力・再エネ・原子力の比率)
✅ 化石燃料の輸入依存が電気料金に影響する仕組み
✅ 北海道の企業がエネルギーコスト対策として知っておくべきこと
北海道は冬場の暖房需要が高く、灯油や電気の使用量が本州に比べて多い地域です。そのため、化石燃料の価格変動による影響を受けやすい特徴があります。エネルギーの「調達構造」を知ることは、コスト対策の第一歩になります。
1. 日本のエネルギー自給率はわずか約13%
日本のエネルギー自給率は、OECD諸国の中でも極めて低い水準にあります。2023年度の自給率は約15.3%にとどまり、一次エネルギーの約8割を化石燃料に依存しています。
つまり、日本で使われるエネルギーのほとんどは海外から輸入された石油・石炭・天然ガスです。「どの国からどれだけ買っているのか」が、エネルギーの安定供給と価格の安定に直結するのです。
エネルギー自給率とは、国内で消費する一次エネルギーのうち、自国内で産出・確保できる割合のことです。日本は約13%前後で推移しており、ドイツ(約35%)やフランス(約55%)などと比べても低い水準です。
2. 石炭の輸入先 — オーストラリアに7割超を依存
石炭は日本の発電において重要な燃料のひとつです。2024年度の一般炭輸入量は約1億546万トンで、そのほぼ全量を海外から輸入しています。
グラフが示すとおり、日本の石炭輸入はオーストラリアが72.4%と圧倒的な割合を占めています。次いでインドネシア(12.9%)、アメリカ(5.6%)、カナダ(4.2%)と続きます。
オーストラリア1国への集中度が高いため、同国の鉱山事故や洪水、政策変更などが起きると、日本の石炭供給に大きな影響を与えるリスクがあります。
3. 原油の輸入先 — 中東依存度は約96%
原油は発電だけでなく、自動車の燃料やプラスチック製品の原料など、幅広い用途に使われます。2024年度の原油輸入量は約1億3,629万キロリットルです。
原油の輸入は中東地域が95.9%を占めています。UAE(アラブ首長国連邦)が43.6%、サウジアラビアが40.1%と、この2国だけで8割以上に達します。
中東地域の政情不安や紛争が発生すると、原油の供給が滞り価格が急騰する可能性があります。1970年代のオイルショックは、中東情勢の不安定化が引き金でした。現在も中東依存度は約96%と高く、地政学リスクへの脆弱性は変わっていません。
4. LNG(液化天然ガス)の輸入先 — 比較的分散されているが課題も
LNG(液化天然ガス)は、天然ガスを-162℃まで冷却して液体にした燃料で、石炭や石油よりもCO2排出量が少ないのが特徴です。2024年度のLNG輸入量は約6,587万トンでした。
LNGは石炭や原油と比べると、輸入先が比較的分散されています。最大の輸入先はオーストラリア(38.4%)ですが、マレーシア(15.7%)やアメリカ(8.8%)、ロシア(8.6%)など複数国から調達しています。
ただし、ロシアからの輸入(8.6%)については、ウクライナ情勢の影響で今後の動向が不透明な面もあります。政府はLNGの調達先多角化や長期契約の確保を進めている状況です。
石炭はオーストラリアに7割超、原油は中東に約96%と、特定地域への依存度が極めて高い状況です。一方、LNGは比較的分散されていますが、それでもオーストラリアが約4割を占めています。いずれも「ほぼ全量を海外に依存している」という点は共通です。
5. 輸入した化石燃料は「発電」にどう使われているのか?
① 日本の電源構成(2024年度)
では、輸入した化石燃料は日本の発電にどのくらい使われているのでしょうか。2024年度の電源構成を見てみましょう。
重要 2024年度の電源構成では、火力発電が全体の約64.6%を占めています。内訳はLNG火力(29.1%)と石炭火力(28.3%)がほぼ同じ割合で、石油等(7.2%)を合わせると、発電の約3分の2が化石燃料に頼っている構造です。
再生可能エネルギーは約26.6%まで上昇し、原子力は約8.8%。残りのおよそ65%は、すべて「海外から輸入した燃料」で電気を作っていることになります。
② 化石燃料と発電の関係を整理
| 燃料の種類 | 主な用途 | 発電での割合 (2024年度) | 輸入依存の特徴 |
|---|---|---|---|
| LNG | 火力発電、都市ガス | 29.1% | 比較的分散(豪州中心) |
| 石炭 | 火力発電、鉄鋼 | 28.3% | 豪州に7割超集中 |
| 石油 | 発電、輸送、化学原料 | 7.2% | 中東に約96%集中 |
発電に最も多く使われているのはLNG(天然ガス)です。LNGは石炭に比べてCO2排出量が約4割少ないため、「移行燃料」として位置づけられています。石炭火力は効率のよいものも含めて段階的な削減が進められていますが、2024年度時点ではまだ約28%を占めているのが現状です。
6. 輸入燃料の価格変動がもたらす電気料金への影響
① 燃料価格 → 電気料金の仕組み
電気料金には「燃料費調整制度」が適用されています。これは、発電に使う化石燃料の輸入価格が変動した場合に、その変動分を電気料金に反映させる仕組みです。
原油、LNG、石炭の国際市場価格は、需給バランスや地政学リスクで上下します。
円安が進むと、同じ量を輸入してもコストが上がります。為替変動もダブルで影響します。
電力会社は燃料費の変動を「燃料費調整額」として毎月の電気料金に反映させます。
2022年にはロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに化石燃料の国際価格が急騰し、日本の電気料金も大幅に上昇しました。これは、日本が化石燃料の輸入に大きく依存していることの影響が直接表れた事例です。
① 燃料の国際価格の上昇 — 産油国の減産や紛争により原油・LNG価格が高騰
② 円安の進行 — 輸入額がドル建てのため、円安時はコスト増
③ 再エネ賦課金の上昇 — 再生可能エネルギーの固定価格買取費用が電気料金に上乗せ
7. 今後のエネルギー政策と2030年目標
政府は2030年度のエネルギーミックスとして、再生可能エネルギーの割合を36〜38%、原子力を20〜22%、火力を41%以下とする目標を掲げています。
| 電源 | 2024年度(実績) | 2030年度(目標) |
|---|---|---|
| 再生可能エネルギー | 約26.6% | 36〜38% |
| 原子力 | 約8.8% | 20〜22% |
| 火力(化石燃料) | 約64.6% | 41%以下 |
現状の火力約65%を41%以下に引き下げるのは大きな挑戦です。再生可能エネルギーの拡大と原子力発電の再稼働が両輪となりますが、どちらも課題を抱えています。再エネは送電網の制約や出力変動の問題があり、原子力は安全審査や地元同意のプロセスに時間がかかっています。
8. 北海道の企業が取るべきエネルギーコスト対策
化石燃料の輸入構造を理解したうえで、北海道の企業が今からできる対策を整理します。
① 電力契約の見直し — 新電力を含めた電力会社の比較で、燃料費調整の仕組みが異なる場合があります。契約内容を定期的に見直すことが大切です。
② 省エネ設備の導入 — LED照明や高効率空調への更新は、灯油やガスの使用量削減にもつながります。北海道では冬季の暖房負荷が大きいため、省エネの効果が出やすい地域でもあります。
③ 再生可能エネルギーの活用 — 太陽光発電の自家消費モデルは、電力の一部を自社で賄うことでき、燃料費変動リスクの低減に貢献します。北海道は広い土地を活かした太陽光・風力のポテンシャルが高い地域です。
④ 補助金・支援制度の活用 — 国や北海道が実施する省エネ補助金、設備更新助成金の情報を定期的にチェックしましょう。
9. まとめ — エネルギーの「仕入れ先」を知ることが経営判断の第一歩
この記事では、日本の石炭・原油・LNGの輸入先と、発電との関係を解説しました。
石炭はオーストラリアに7割超、原油は中東に約96%、LNGもオーストラリアを中心に海外に全面依存しています。そして、日本の発電の約65%がこれらの化石燃料で賄われている以上、国際燃料価格や為替の動向は電気料金に直結します。
北海道の企業にとって、エネルギーコストは避けて通れない経営課題です。まずは「日本のエネルギーがどこから来ているのか」を理解し、自社でできる対策(電力契約の見直し、省エネ設備の導入、再エネ活用など)を一つずつ検討していくことが重要でしょう。
記事情報
公開日:2026年3月23日
参照資料:資源エネルギー庁「資源・エネルギー統計年報」、財務省貿易統計、エネ百科「日本が輸入する化石燃料の相手国別比率」(2024年度実績)、ISEP「国内の2024年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報は資源エネルギー庁の公式サイトをご確認ください。

