一括受電(高圧一括受電)とは、マンションやオフィスビルなどの建物全体で高圧の電気を1つの契約でまとめて受け、建物内の設備で低圧に変えて、各戸・各テナントに再び供給する方式です。各戸・各テナントの契約相手は一括受電事業者(またはビルの所有者・管理組合など)になるため、電力会社と直接契約できず、自分で電力会社を選んで切り替えることもできません。
電気事業法上、受電設備を所有・維持管理する一括受電事業者は「需要家」と位置づけられ、一つの需要場所の中での電気のやりとりは法律の規制の対象外とされています。資源エネルギー庁の2019年の整理では、小売電気事業者のような登録(小売ライセンス)は不要とされ、供給条件の説明や苦情対応も法律上の義務としては課されていません。一方、経済産業省の指針は、小売電気事業者に求められるものと同等の保護措置を行うことを「望ましい」としています(2026年3月31日に改定)。個別の事案への当てはめは、経済産業省や専門家にご確認ください。
料金面では、国の調査(2018年12月以降、17社の自己申告)で、大宗の事業者が、共用部・専有部とも大手電力会社の標準料金メニュー単価から数%の割引を行っているとされています(専有部の申告幅は0〜24%程度)。「5〜10%安くなる」と言い切れるものではなく、共用部が割高になった例や、契約が長期で解約しにくいという苦情もあります。この記事では、仕組み、法的な位置づけ、メリットとデメリット、契約期間・解約・設備所有、北海道電力の単価(2026年11月1日実施予定)の考え方、入居者・テナント側の確認点を整理します。
この記事でわかること
・一括受電の仕組みと、各戸・各テナントが電力会社と直接契約できない理由
・電気事業法上の位置づけ(小売ライセンス不要の理由、2026年3月の指針改定)
・国の調査にもとづく割引の水準と、メリット・デメリット
・契約期間・解約・設備所有で確認すべき点と、最高裁判決(2019年)の考え方
・北海道電力の高圧・低圧単価(2026年11月1日実施予定)の見方と、入居者・テナント側の注意点
更新履歴
- 2026年10月27日:全面改訂。電気事業法上の位置づけ、国の調査にもとづく割引水準、契約期間・解約・設備所有、最高裁判決、北海道電力の2026年11月1日実施予定の単価、入居者・テナント側の確認点を追加。根拠を確認できなかった数値(「5〜10%削減」など)を削除
- 2024年9月17日:初版公開
1. 一括受電とは?なぜ各戸は電力会社と直接契約できないのか
通常、マンションの各戸やビルのテナントは、低圧で電気を受け、それぞれが電力会社(小売電気事業者)と契約します。一括受電では、建物に高圧の受電設備を置き、そこで受けた電気を各戸・各テナントに分けて供給します。北海道電力の高圧の標準電圧は6,000ボルトです。
| 項目 | 各戸が個別に契約する場合 | 一括受電の場合 |
|---|---|---|
| 電力会社との契約者 | 各戸・各テナントが契約 | 建物で1契約(受電設備を所有・維持管理する者が契約) |
| 受電の電圧 | 低圧(各戸ごと) | 高圧(建物で1か所) |
| 各戸の料金の請求元 | 契約した電力会社 | 一括受電事業者など |
| 電力会社の選択 | 各戸で選べる | 各戸では選べない |
表:個別契約と一括受電の違い(資源エネルギー庁「共同住宅等に対する電気の一括供給の在り方について」2019年3月27日、経済産業省「電力の小売営業に関する指針」をもとに作成)
図:一括受電の流れ(検針は月1回が全社、との調査結果にもとづく。資源エネルギー庁2019年3月27日資料)
各戸が電力会社を選べない理由
理由は、契約の当事者が違うことです。経済産業省の資料(2018年5月)は、一括受電マンションの最終需要家は自身が小売供給契約の当事者でないため、切り替えにはマンション管理組合の決議が必要になるなど、通常とは異なる手続が要ると説明しています。
同じ資料は、マンション管理者などが受変電設備を持たず、電気の使用者と整理できない(受電の実態のない)形の低圧一括受電は許容されていないとしています。資料が一括受電として整理しているのは、受電設備を所有・維持管理する受電の実態を有する者が高圧で受電する形です。個別の建物がこれに当たるかどうかは、経済産業省や専門家にご確認ください。
高圧で受ける理由の一つとして、同資料は、高圧一括受電では保安の責任分界点が引込線にあり、一般送配電事業者が受変電設備の設置コストと、受変電設備以降の保安義務を負わないことを挙げ、その分、低圧より割安な高圧向けの託送料金を適用できる余地があると整理しています(託送料金は「託送料金とは」で解説しています)。
2. 電気事業法上の位置づけ|小売ライセンスが要らない理由と指針
電気事業法では、小売供給は「一般の需要に応じ電気を供給すること」と定められています。資源エネルギー庁の2019年の資料は、受電の実態を有する高圧一括受電事業者は電気事業法上の需要家と位置づけられ、小売ライセンスは不要とされている、と整理しています(個別の事案への当てはめは、経済産業省や専門家にご確認ください)。
| 項目 | 一括受電事業者 | 小売電気事業者 |
|---|---|---|
| 電気事業法上の位置づけ | 「需要家」。受電設備の所有・維持管理という受電の実態がある | 小売供給を行う事業者 |
| 一つの需要場所内での電気のやりとり | 規制の対象外 | - |
| 供給条件の説明・苦情処理など | 法律上の義務は課されず、指針で「望ましい」とされる | 法律上求められる(報告徴収等の対象にもなる) |
表:一括受電事業者と小売電気事業者の違い(資源エネルギー庁2019年3月27日資料、経済産業省「電力の小売営業に関する指針」)
指針が求めていること(2026年3月31日改定)
経済産業省は2026年3月31日に「電力の小売営業に関する指針」を改定し、共同住宅等への電気の一括供給の在り方について、問題のある行為と望ましい行為を追加しました。改定後の指針では、マンションやオフィスビル等で需要家と最終的な電気の使用者が異なる場合を「高圧一括受電等」と呼び、マンション管理組合や一括受電事業者を含む、受電設備の所有・維持管理を行う者に、次を求めています。
・最終的な電気の使用者の保護のため、小売電気事業者に求められる需要家保護策と同等の措置を適切に行うことが望ましい
・利用の申込みを受けたときは、小売電気事業者に求められるものと同等の説明と書面交付を行うことが望ましい
・管理組合の集会で導入を決議するための住民説明会等が行われる場合は、小売電気事業者に求められるものと同等の説明・書面交付を適切に行うことが望ましい
・規制の対象外であっても、契約の内容、解除の手続、苦情・問合せへの対応が不適正で、最終的な使用者の利益が害されることはあってはならない
指針は、一括受電事業者側だけでなく、電気を供給する小売電気事業者の側も対象にしています。「問題となる行為」として、小売電気事業者が、高圧一括受電事業者等に対して需要家保護策を適切に行わないこと、契約上最終的な使用者への保護措置を負っているのに行わないこと、小売電気事業者と一括受電事業者等が同一である場合または密接な関係を有する場合で、営利の目的をもって反復継続的に共同して一括受電等のモデルを構築しているとき、保護措置が適切に行われるよう監督を行わず、結果として保護措置が行われなかったことなどが挙がっています。
経済産業省は、今回の改定にあたり、小売電気事業者等がその事業の一環として自己等に対して電気の供給を行う場合は、小売供給に含まれると解釈を明確化したと説明しています(資源エネルギー庁の2025年11月28日の資料では、これまで自己等への供給は小売供給に該当しないと解されてきたと整理されています)。この解釈が個々の一括受電の形態にどう当てはまるかは、本記事では判断できません。個別の事案は、経済産業省や専門家(弁護士など)にご確認ください。
受電設備の保安は設置者の義務
電力会社等から600ボルトを超える電圧で受電して電気を使う設備は、電気事業法の「自家用電気工作物」にあたります。設置者には、技術基準に適合するよう維持すること(第39条)、保安規程を定めて国に届け出ること(第42条)、電気主任技術者を選任して国に届け出ること(第43条)が求められます。一括受電では、これらの義務を負うのは受電設備の設置者です(各戸の住民やテナントではありません)。
3. 一括受電のメリット|国の調査でわかる割引の水準
「個別契約より5〜10%安くなる」と紹介されることがありますが、この数字の公的な根拠は確認できませんでした。確認できる公的資料は、資源エネルギー庁が高圧一括受電事業者17社に対して行った調査(ホームページで確認できた事業者、自己申告、2018年12月以降に実施)です。
| 区分 | 申告された割引の幅(大手電力会社の標準料金メニュー単価との比較) |
|---|---|
| 専有部(各戸・各テナント) | 0〜24%程度(17社の申告の下限と上限。同等程度を含む) |
| 共用部 | 同等〜55%程度(同上) |
表:高圧一括受電事業者17社の割引率(資源エネルギー庁「共同住宅等に対する電気の一括供給の在り方について」2019年3月27日。物件により異なるとした社、未回答の社もある)
同資料は、電気料金水準には幅があるものの、共用部・専有部とも、大宗の高圧一括受電事業者は大手電力会社の標準料金メニュー単価から数%の割引を行っており、共用部のほうが割引率が高い傾向にあるとしています。割引率は事業者と物件で大きく違い、調査から数年たっているため、今の水準を示すものではありません。
料金以外の利点として、一般には次の点が挙げられます(数値で確認できたものではありません)。
・建物全体の使用量を1か所で把握でき、請求や検針の事務を一元化できる
太陽光発電との組み合わせによる環境配慮や、今後の普及の見通しは、一括受電そのものの効果として公的資料では確認できませんでした。
4. 一括受電のデメリットと注意点
入居者・テナント側
・電力会社を選べない:個別に契約する建物なら、使い方に合うメニューを比べて切り替えられますが、一括受電の建物では自社の判断で切り替えられません。
・契約条件が見えにくい:国の調査には、契約内容を管理組合や一括受電事業者に問い合わせても答えてもらえない、請求金額が誤っていたという最終需要家の声が載っています。
・共用部が割高になる場合がある:マンション管理組合から、一括受電に切り替えたら専有部は割安になったが共用部が割高になり、合計では割高になったという声も出ています。
・説明や書面が不十分なことがある:同じ調査では、契約前の書面を交付していたのは17社中15社、契約後の書面は14社でした。
管理組合・ビルオーナー側
・解約しにくい:管理組合が一括受電事業者と長期契約を結んでいるため、当面の間、解約が困難という苦情が挙げられています。
・切り替えに決議が必要になる:小売全面自由化の後は、一括受電の最終需要家が小売電気事業者を選ぶために、管理組合の決議など通常と異なる手続が必要になります。
・設備の保安・計量の責任がある:受電設備の保安(電気事業法第39条・第42条・第43条の義務)に加え、料金の徴収に使う子メーターは計量法の検定の有効期間内のものでなければなりません。
最高裁判所第三小法廷は2019年(平成31年)3月5日の判決で、団地管理組合法人が電力会社と高圧電力の供給契約を結び、各所有者が管理組合法人から電力を受ける方式への変更に伴い、集会決議や規約で各所有者に個別契約の解約申入れを義務づけた事案を判断しました。最高裁は、変更が専有部分の電気料金を削減するものにすぎず、変更しなくても専有部分の使用に支障が生じたり、共用部分の適正な管理が妨げられたりする事情はうかがわれないとして、解約申入れをしないことは他の所有者に対する不法行為にならないとし、札幌高等裁判所の判決を破棄しました。
この事案は、判決文によると、札幌市内の区分所有建物5棟、総戸数544戸のマンション(団地)でした。判例解説(岡田愛、2019年4月)には、今後一括受電契約を締結する場合には全戸から同意を得なければならなくなる、との筆者の見解が示されています。なお、区分所有の団地の事案であり、オフィスビルの賃貸借にそのまま当てはまるわけではありません。
5. 契約期間・解約・設備の所有で確認すべきこと
契約期間の長さ、中途解約の条件、設備の譲渡・買取の条件について、公的資料には具体的な標準は示されていません。資源エネルギー庁の調査資料にも、契約期間の具体的な長さ、自動更新の条件、違約金の額、設備の譲渡・買取に関する記述はありませんでした。そのため、一般的な年数や相場は示せません。契約書で個別に確認することになります。
指針に沿って事業者が説明する項目として、調査では次が確認項目になっています。
| 確認項目 | 調査での説明状況(17社中) |
|---|---|
| 契約の更新、変更・解除の連絡先、解除の期間制限や違約金、解除の条件 | 17社全社が説明 |
| 事業者側から変更・解除できる条件 | 15社が説明 |
| 電気計器や配線工事などの費用負担 | 15社が説明 |
表:供給条件の説明項目と実施状況(資源エネルギー庁「共同住宅等に対する電気の一括供給の在り方について」2019年3月27日)
契約書では、次の点を確認します(設備の扱いは公的資料で確認できなかったため、一般的な確認項目として示します)。
・契約期間と、更新・自動更新の条件
・中途解約できる条件、違約金や精算の方法
・受電設備(変圧器、開閉器、計量器など)の所有者と、契約終了時に撤去・譲渡・買取のどれになるか
・設備の更新や修繕の費用を誰が負担するか
・電気主任技術者の選任や保安の委託先と、停電時の連絡・対応の窓口
6. 北海道電力の高圧・低圧単価での考え方(2026年11月1日実施予定)
一括受電事業者は、高圧の契約で電気を調達し、各戸・各テナントには低圧のメニューをもとにした料金で供給します。調査資料でも、割引の比較対象は「大手電力会社の標準料金メニュー単価」です。そこで、北海道電力の単価を見ておきます。
北海道電力は、北海道電力ネットワークの託送料金の見直しに伴い、2026年11月1日から電気料金を見直す予定です(低圧、高圧・特別高圧が対象)。規制料金については、特定小売供給約款の変更として2026年9月25日に経済産業大臣へ届出を行っています。2026年10月27日時点では実施前です。
| 契約種別 | 項目 | 現行 | 2026年11月1日実施予定 |
|---|---|---|---|
| 高圧 業務用電力(一般料金) | 基本料金(1kWにつき) | 2,693.20円 | 2,970.10円 |
| 電力量料金(1kWhにつき) | 23.40円 | 23.47円 | |
| 低圧 従量電灯B(30A) | 基本料金(1契約) | 1,254.00円 | 1,716.30円 |
| 120kWhまで(1kWh) | 35.69円 | 35.77円 | |
| 120kWh超280kWhまで | 41.98円 | 42.06円 | |
| 280kWh超 | 45.70円 | 45.78円 | |
| 低圧 低圧電力 | 基本料金(1kWにつき) | 1,413.06円 | 1,681.02円 |
| 電力量料金(1kWhにつき) | 28.95円 | 29.03円 |
表:北海道電力の単価の見直し(北海道電力「託送料金の見直しに伴う電気料金の見直しについて」、電気料金単価表。消費税等相当額を含み、燃料費等調整単価と再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は含まない)
単価表から読み取れること
・電力量料金(1kWhあたり)は、高圧の業務用電力が23円台、低圧の従量電灯Bが35〜45円台、低圧電力が29円台です。同じ1kWhでも、低圧と高圧で単価に差があります。
・一方、高圧は基本料金が1kWあたり約2,970円で、建物の契約電力(最大需要電力)に応じて決まります。デマンドの考え方は「電気のデマンドとは」をご覧ください。
・今回の見直しでは、電力量料金の上げ幅は0.07〜0.08円/kWh程度ですが、基本料金の上げ幅が大きくなっています(計算値で、業務用電力は約10%、従量電灯B・30Aは約37%、低圧電力は約19%の上昇)。
仮定の数字で見る「割引の元になる差」
一括受電が成り立つ仕組みを、仮定の数字で確かめます。実際の建物の金額ではありません。
高圧1契約の支払額 = 基本料金 × 契約電力 + 電力量料金 × 使用電力量
仮定:50戸(各戸 従量電灯B・30A、月250kWh)、共用部 月3,000kWh(個別契約なら低圧電力10kW)、建物の契約電力80kW(力率割引・燃料費等調整・再エネ賦課金は考慮しない)
高圧(11月実施予定の単価):2,970.10円 × 80kW = 237,608円、23.47円 × 15,500kWh = 363,785円 → 合計 約601,000円/月
個別契約:各戸 1,716.30円 + 120kWh × 35.77円 + 130kWh × 42.06円 = 11,476.5円 × 50戸 = 573,825円、共用部 1,681.02円 × 10kW + 29.03円 × 3,000kWh = 103,900円 → 合計 約678,000円/月
上の計算は、高圧は業務用電力(一般料金)で契約すると仮定した説明用の試算で、適用条件の確認や、力率割引・燃料費等調整・再エネ賦課金の反映はしていません。この仮定では、高圧1契約のほうが月約76,000円(約11%)低くなります。ただし、この差の中から、受電設備の費用、保守、検針、電気主任技術者の費用、事業者の利益などをまかなうことになります(推測)。国の調査で専有部の割引が数%にとどまる背景には、こうした費用が関係している可能性があります(推測)。建物の使用状況によって、差は大きくも小さくもなります。
北海道電力は、2026年11月分は、10月31日までの使用分に見直し前の単価、11月1日以降の使用分に見直し後の単価を適用し、日数に応じて日割計算するとしています。一括受電の建物で、各戸への請求単価がこの見直しにどう連動するかは、各戸と一括受電事業者との契約内容によります(推測)。料金の計算方法が「標準メニューからの割引」なのか、固定単価なのかを契約書で確認してください。
高圧と低圧の比較や切替の考え方は「高圧受電 vs 低圧受電、どっちがトク?」、今回の見直しの全体像は「北海道電力の託送料金・電気料金 値上げまとめ」で解説しています。
7. 入居者・テナント側が確認すること
一括受電の建物に入居する側は、電力会社を選べない代わりに、次の点を確認できます。
| 確認する時期 | 確認する内容 |
|---|---|
| 契約・入居前 | 電気の契約先(事業者の名称・連絡先)。国土交通省は、高圧一括受電など入居者が電力会社を選べない物件では、契約先の名称と連絡先も情報提供することが望ましい、と宅地建物取引業者団体に通知している |
| 契約・入居前 | 賃貸借契約書での電気料金の扱い(単価、基本料金、共用部分の費用の按分)、契約前に書面で説明を受けたか |
| 毎月の請求 | 使用量、単価、燃料費等調整や再エネ賦課金の扱い、検針日。請求が誤っていたという声が調査に載っている |
| 計量器 | 料金徴収に使う子メーターは、計量法の検定に合格し有効期間内のものでなければならない。電力量計の検定の有効期間は10年(種類により5年または7年) |
| 問合せ・苦情 | 窓口が書面やウェブサイトに示されているか。調査では、苦情・問合せの大半が入退去手続や支払い方法の変更で、停電時は全社が電話等で対応するとされている |
表:入居者・テナント側の確認項目(電力・ガス取引監視等委員会「よくある御質問とそれに対する考え方について」2016年4月、資源エネルギー庁2019年3月27日資料、山梨県計量検定所、東北地区証明用電気計器対策委員会の資料をもとに作成)
事業用のテナントは、使用量が多い時間帯や季節がはっきりしている場合があります。その場合は、基本料金の考え方や、電気料金の見直し(精算)の条件を、賃貸借契約の更新前に確認しておくと安心です。電気料金の仕組みの基本は「自由料金と規制料金の違い」もご覧ください。
8. よくある質問(FAQ)
A. 原則として、各戸が単独で選ぶことはできません。一括受電の最終需要家は小売供給契約の当事者でないため、切り替えにはマンション管理組合の決議など、通常と異なる手続が必要になるとされています(経済産業省、2018年5月)。ただし、一括受電を導入する際に個別契約の解約を義務づける決議について、最高裁は2019年3月5日の判決で、団地の事案で解約申入れの義務を認めませんでした。
A. 高圧一括受電は、電気事業法上許容されているものとして整理されています(電力・ガス取引監視等委員会の2015年12月の資料)。一括受電事業者は需要家と位置づけられ、一つの需要場所内での電気のやりとりは規制の対象外とされています。一方、受電の実態のない低圧一括受電などは許容されていないとされています(経済産業省、2018年5月)。
A. 契約と建物の形態によります。公的資料に一律のルールは示されていません。管理組合が長期契約を結んでいるため、当面の間、解約が困難という苦情が挙げられています。契約書の中途解約の条件、違約金、設備の扱い(撤去・譲渡・買取)を確認し、管理組合の場合は決議が必要になるかも確認してください。
A. 国の調査では、大宗の事業者が、共用部・専有部とも大手電力会社の標準料金メニュー単価から数%の割引を行っていました。専有部の申告された幅は0〜24%程度で、共用部は同等〜55%程度でした(2018年12月以降の自己申告)。専有部は割安でも共用部が割高になり、合計で割高になった例もあります。比較するときは、専有部と共用部の合計で見てください。
A. 北海道電力は2026年11月1日から、高圧・低圧とも基本料金と電力量料金を見直す予定です(実施前)。一括受電の各戸の料金が連動するかどうかは、一括受電事業者との契約内容によります(推測)。請求の計算方法(標準メニューからの割引か、固定単価か)を契約書で確認してください。
9. まとめ
- 一括受電は、建物全体で高圧の電気を1つの契約でまとめて受け、建物内の設備で低圧に変えて各戸・各テナントに供給する方式。契約相手は一括受電事業者などになり、各戸・各テナントが自分で電力会社を選んで切り替えることは原則としてできない
- 受電設備を所有・維持管理する一括受電事業者は電気事業法上「需要家」と位置づけられ、小売ライセンスは不要とされている。2026年3月31日の指針改定で、小売電気事業者に求められる需要家保護策と同等の措置を行うことが望ましいとされた
- 国の調査(2018年12月以降、17社の自己申告)では、大宗の事業者が標準料金メニュー単価から数%の割引。申告の幅は専有部で0〜24%程度、共用部で同等〜55%程度。「5〜10%安くなる」とは言い切れず、共用部が割高で合計では割高になった例もある
- デメリットは、電力会社を選べないこと、契約条件が見えにくいこと、長期契約で解約が難しい場合があること。契約期間・中途解約の条件・違約金・設備の扱いは、契約書で確認する
- 最高裁は2019年3月5日の判決で、団地の事案について、個別契約の解約申入れを義務づける決議があっても、解約申入れの義務は認められないとした
- 北海道電力は2026年11月1日に高圧・低圧の単価を見直す予定で、基本料金の上げ幅が大きい。各戸の料金が連動するかは一括受電事業者との契約内容しだい。入居者・テナントは、契約先、書面での説明、請求の計算方法、子メーターの検定を確認する
記事情報
公開日:2024年9月17日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・資源エネルギー庁「共同住宅等に対する電気の一括供給の在り方について」2019年3月27日(経済産業省)
・「電力の小売営業に関する指針」改定の新旧対照表、2026年3月31日(経済産業省)、同改定のお知らせ(経済産業省)
・制度設計ワーキンググループ資料、2025年11月28日(経済産業省)
・制度設計専門会合 資料5、2015年12月4日(電力・ガス取引監視等委員会)、「よくある御質問とそれに対する考え方について」2016年4月(電力・ガス取引監視等委員会)
・投資等WG 経済産業省説明資料、2018年5月8日(内閣府 規制改革推進会議)
・最高裁判所第三小法廷 平成31年3月5日判決(裁判所)、判例解説 2019年4月(Westlaw Japan)
・「自家用電気工作物の保安に関するご案内」(経済産業省)
・電力量計の検定有効期間(山梨県計量検定所)、子メーターに関するQ&A(東北地区証明用電気計器対策委員会)
・「託送料金の見直しに伴う電気料金の見直しについて」(北海道電力)、料金見直しに関するFAQ(北海道電力)
・高圧の業務用電力などの料金見直し資料、2026年11月1日実施予定(北海道電力)、規制料金の単価表(北海道電力)、高圧電力の重要事項説明(北海道電力)
※2026年10月27日時点の情報です。電気料金や制度の内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式資料でご確認ください。北海道電力の単価は2026年11月1日実施予定の内容で、計算例の数字はすべて仮定です。契約内容の判断は、契約書や事業者への確認にもとづいて行ってください。
