公表資料では、中東・イラン情勢に伴う原油の調達コストや、灯油の仕入れ価格の上昇が、値上がりの背景として示されています。北海道消費生活モニター調査では、2026年9月の灯油(配達)の全道平均は1Lあたり144.3円でした。前年同月の125.0円から19.3円、約15%上がっています。
さらにコープさっぽろは、2026年10月1日から札幌地区の定期配達価格を159円に引き上げます。暖房を止められない北海道の事業所にとって、灯油単価の上昇は冬の経費に直結します。
この記事では、公的機関の公表資料をもとに、値上がりの背景を「原油」「調達コスト」「円相場」「補助金」の4つに分けて整理します。あわせて、法人が今からできる試算と備えも紹介します。
この記事でわかること
✓ 北海道の灯油価格が、いつ・どれくらい上がったのか
✓ 2026年3月の値上げと、10月の追加値上げの経緯
✓ 補助金が続いているのに灯油が値上がりする仕組み
✓ 「円安のせい」「冬だから」だけでは説明できない理由
✓ 灯油単価の上昇が自社の年間コストに与える影響(早見表)
1. 北海道の灯油価格はいまいくら?2026年の値上がり状況
① 全道平均は1Lあたり144.3円(2026年9月)
結論から言うと、北海道の灯油価格は2026年3月を境に一段高い水準へ移りました。北海道が毎月公表している消費生活モニター調査の数値は次のとおりです。
| 全道平均(2026年9月) | 144.3円/L(配達価格・税込) |
| 前年同月(2025年9月) | 125.0円/L |
| 前年同月との差 | +19.3円/L(約15.4%上昇) |
| 調査の方法 | 北海道消費生活モニターによる調査(毎月10日現在の通常小売価格) |
| 出典 | 北海道「物価情報」 |
※上昇率は掲載値から当社で計算しています。
図:北海道の家庭用灯油(配達)全道平均価格の推移(出典:北海道消費生活モニター調査をもとに作成)
グラフのとおり、2025年度はおおむね124〜130円で推移していました。2026年4月分から142.9円に跳ね上がり、その後は144円前後で高止まりしています。
② コープさっぽろは10月1日から159円に
次の値上げも決まっています。コープさっぽろ(エネコープ)は、2026年10月1日から札幌地区の定期配達価格を1Lあたり159円に改定します。公式発表では、主な地域すべてで現行価格から15円の値上げとなっています。
124円/L
コープさっぽろ 札幌地区
(改定後144円から逆算)
159円/L
コープさっぽろ 札幌地区
半年で+35円(約28%上昇)
図:コープさっぽろ札幌地区の定期配達灯油価格(2026年3月16日に+20円、10月1日に+15円)
| 地域 | 2026年3月16日〜 | 2026年10月1日〜 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 144円 | 159円 | +15円 |
| 旭川 | 145円 | 160円 | +15円 |
| 函館 | 146円 | 161円 | +15円 |
| 釧路 | 146円 | 161円 | +15円 |
| 稚内 | 147円 | 162円 | +15円 |
| 帯広 | 145円 | 160円 | +15円 |
| 苫小牧 | 145円 | 160円 | +15円 |
| 北見 | 145円 | 160円 | +15円 |
※コープさっぽろ 定期配送灯油価格(1Lあたり・税込)。出典:コープさっぽろ プレスリリース「灯油価格改定について」
なお、159円はコープさっぽろの札幌地区の価格です。北海道全体の平均価格ではない点に注意してください。
| 地域 | 2025年9月 | 2026年9月 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 道央 | 124.0円 | 143.8円 | +19.8円 |
| 道南 | 129.6円 | 142.9円 | +13.3円 |
| 道北 | 126.4円 | 144.3円 | +17.9円 |
| オホーツク | 127.3円 | 149.6円 | +22.3円 |
| 十勝 | 123.3円 | 144.7円 | +21.4円 |
| 釧路・根室 | 124.6円 | 144.3円 | +19.7円 |
2026年9月の地域平均では、オホーツク地域が149.6円と最も高くなっています。旭川・北見・帯広・釧路など、札幌以外に拠点を持つ企業は地域ごとの単価差も確認しておくと安心です。
※北海道消費生活モニター調査(配達価格・税込)。差額は掲載値から当社で計算。モニター調査の性質上、月によりデータ数が異なります。
2. 灯油が値上がりしている理由は?公式資料で見る4つの背景
今回の値上がりは、1つの原因だけでは説明できません。公表資料から確認できる流れを図にすると、次のとおりです。
図:灯油価格が上がるまでの流れ(資源エネルギー庁・コープさっぽろの公表内容をもとに作成)
① 中東・イラン情勢による原油価格の高騰
出発点は、2026年3月以降の中東・イラン情勢の緊迫化です。北海道経済部の資料によると、原油価格の指標であるWTIは2026年2月の67.02ドルから、3月に101.38ドルへ急騰しました。
| 2026年 | WTI原油価格 (ドル/バレル) | 円相場 (円/ドル) |
|---|---|---|
| 1月 | 65.21 | 156.79 |
| 2月 | 67.02 | 155.23 |
| 3月 | 101.38 | 158.64 |
| 4月 | 105.64 | 159.28 |
| 5月 | 89.44 | 158.34 |
| 6月 | 69.50 | 160.69 |
| 7月 | 84.67 | 162.45 |
| 8月 | 85.76 | 158.81 |
※WTIは各月最終取引日の終値、円相場は月中平均。出典:北海道「原油・石油製品・円相場の価格推移」
コープさっぽろの公式発表でも、中東情勢の緊迫化に伴う原油コストの増大を受けて、3月16日に1Lあたり20円の値上げを実施したと説明しています。
WTIは国際的な原油市場の指標です。日本の元売が実際に支払う原油代や、灯油販売店の仕入れ価格そのものではありません。原油相場が6月にいったん下がっても灯油価格は下がりませんでした。その背景には、次に説明する調達コストなど別の要素もあると考えられます(当社の推測です)。
② 相場以上の「調達コスト」が上乗せされている
見落とされがちなのが、原油を確保するための追加費用です。資源エネルギー庁は、中東情勢の変化以降、元売事業者や輸入事業者が国際市場価格を上回る金額を払って原油等を調達するケースが増えていると説明しています。
中東産の代わりとなる原油を確保する「代替調達」では、市場価格を上回る費用(プレミアム)が発生しています。このため、ニュースで見る原油相場だけでは、実際の仕入れコストを説明しきれません。
国はこの費用を補助金の計算に反映する仕組みを2026年7月から導入しました。補助金に上乗せされる「調整単価」は、2026年10月分で1Lあたり3.7円です。
③ 円安も押し上げ要因。ただし影響の大きさは確認できない
円相場は、前年と比べると灯油価格を押し上げる方向に働いています。ただし、今回の値上げへの影響の大きさは公表資料から確認できません。
| 指標 | 2025年8月 | 2026年8月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| WTI原油価格 | 63.96ドル | 85.76ドル | 約34%上昇 |
| 円相場(月中平均) | 147.64円 | 158.81円 | 約8%の円安 |
※出典:北海道「原油・石油製品・円相場の価格推移」。変化率は掲載値から当社で計算。
指標の変化率では、原油価格の上昇幅のほうが円安の幅より大きくなっています。ただし、為替が灯油の仕入れ価格に反映される時期や度合いは公表されていません。円安が値上げ額の何円分にあたるかは、公表資料からは判断できません。
④ 9月からの仕入れ価格上昇が10月の追加値上げにつながった
コープさっぽろの公式発表によると、10月1日の追加値上げの理由は、9月に入ってからの仕入れ価格の上昇です。イラン情勢の長期化で想定を超える仕入価格の上昇が起きたと説明しています。そのうえで、経営努力のみでコスト増加分を吸収するのは極めて困難だとしています。
コープさっぽろは、3月16日の値上げ(+20円)も10月1日の追加値上げ(+15円)も、中東情勢に伴う原油コストの増大と仕入れ価格の上昇を背景に挙げています。10月の改定については、イラン情勢の長期化で9月から想定を超える仕入価格の上昇があったと説明しています。各要因が値上げ額の何円分にあたるかは、公表資料では確認できません。
3. 補助金があるのに、なぜ灯油は値上がりするの?
結論として、国の燃料油補助は「灯油の販売価格を一定に固定する制度」ではないためです。補助が続いていても、仕入れコストが上がれば販売価格は上がり得ます。
① 補助は元売に支給され、卸価格を抑える仕組み
資源エネルギー庁の「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」は、2026年3月19日出荷分から始まりました。補助金は利用者に直接給付されるのではなく、石油元売などに卸価格を抑える原資として支給されます。
図:燃料油補助(緊急的激変緩和措置)のお金の流れ(資源エネルギー庁の公表資料をもとに作成)
② 補助額はガソリン価格「170円程度」が基準
支給単価は、ガソリンの全国平均小売価格を170円程度に抑えることを軸に、毎週見直されています。灯油・重油にはガソリンと同額が支給されます。
| 制度名 | 中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置 |
| 開始 | 2026年3月19日出荷分から |
| 灯油・重油の支給単価 | 50.7円/L(2026年10月1日以降) |
| うち調整単価 | 3.7円/L(2026年10月分・調達費用の実態を反映) |
| 支給単価の考え方 | ガソリン全国平均を170円程度に抑える水準で週ごとに設定。軽油・重油・灯油はガソリンと同額 |
| 公式サイト | https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/ |
つまり、補助額は灯油の価格水準を目標に決めているわけではありません。灯油の仕入れコストや販売店の経費が上がれば、補助が続いていても店頭価格は上がり得ます。
2026年10月1日以降も、灯油・重油には1Lあたり50.7円の支援が示されています。今回の値上げを補助金の終了で説明するのは誤りです。支給単価は毎週変わるため、最新値は公式サイトで確認してください。
4. よくある誤解3つ|「円安」「補助金終了」「冬だから」
灯油の値上がりについては、原因を1つに決めつけた説明が見られます。公表資料と照らし合わせると、次のように整理できます。
| よくある説明 | 判定 | 公表資料から言えること |
|---|---|---|
| 円安が進んだから | 要因の一つ | 前年比では押し上げ要因です。ただし、今回の値上げへの影響の大きさは公表資料から確認できません。 |
| 補助金がなくなったから | 誤り | 10月1日以降も灯油・重油に50.7円/Lの支援が示されています。 |
| 冬が近づき需要が増えたから | 根拠不十分 | コープさっぽろの値上げ理由は仕入れ価格の上昇で、季節要因は挙げられていません。 |
| 中東情勢で調達コストが増えたから | 公表資料で 示された背景 | 原油高に加え、代替調達で国際市場価格を上回る費用が発生しています。 |
「15円のうち○円が円安の影響」といった分解は、公表資料からは確認できません。社内説明や取引先への案内では、要因の割合を断定しない表現にとどめるのが安全です。
5. 法人の灯油コストへの影響はいくら?年間使用量別の早見表
灯油単価の上昇は、使用量が多いほど経費に大きく響きます。自社の年間使用量に当てはめて、年間換算での影響額の目安をつかんでください。
| 年間使用量 | +15円/L (10月の追加値上げ幅) | +19.3円/L (全道平均の前年比) | +35円/L (コープ札幌:3月前比) |
|---|---|---|---|
| 年間3,000L使用の場合 | +4.5万円 | +約5.8万円 | +10.5万円 |
| 年間10,000L使用の場合 | +15万円 | +19.3万円 | +35万円 |
| 年間30,000L使用の場合 | +45万円 | +57.9万円 | +105万円 |
※試算例です。同じ単価差が1年間続き、使用量が変わらないと仮定した年間換算額です(税込単価の差をそのまま使用)。実際の負担増は、値上げの適用日以降の購入量と、その時点の契約単価で計算してください。
年間の灯油使用量(L)× 単価の上昇幅(円/L)= 年間換算の増加額
例えば年間8,000Lを使う事業所で、15円高い単価が1年間続いた場合、8,000L×15円=12万円の負担増です。値上げが年度の途中から適用される場合は、適用日以降の購入量で計算します。
6. 灯油の値上がりに法人が今からできる5つの備え
灯油価格そのものは自社で動かせません。一方で、「単価の確認」「使用量の把握」「使い方の見直し」は今日から始められます。
自社の灯油単価がいつ、どのように改定されるかを確認します。月ごとの改定か、市況連動か、改定の通知時期はいつかを把握しておくと、予算の見直しが早くなります。
まず過去1年分の納品書・請求書から、月別・拠点別の購入量を一覧にします。納品量は購入量のため、使用量を正確に把握する場合はタンク残量の変化も確認します。需要期(10月〜翌3月)にどれだけ集中しているかが見えると、影響額を試算しやすくなります。
前年の単価のまま予算を組んでいると、冬に大きく超過するおそれがあります。第5章の早見表を参考に、最新単価で計算し直します。
設定温度の見直し、使っていない部屋の暖房停止、ボイラやストーブの清掃・燃焼調整、すき間風の対策を進めます。設備管理の実務では、点検不足で燃料を余計に使っているケースが確認ポイントになります。
老朽化したボイラや暖房機は、高効率機器への更新で使用量を減らせる場合があります。国の省エネ補助金の対象となる設備もありますが、公募時期や要件は年度ごとに異なるため、公式情報で確認が必要です。
7. 北海道の事業者にとってのポイント
■ 暖房用は冬季の負担に注意。給湯・製造工程用は通年で確認
北海道経済産業局は、灯油の需要期を10月から翌3月としています。暖房用の灯油は、この時期に負担が集中します。10月1日の追加値上げは、需要期の始まりと重なります。一方、給湯や製造工程で使う灯油は、通年の使用量も確認が必要です。
■ 札幌以外は地域差も確認する
2026年9月の地域平均は、オホーツク149.6円、十勝144.7円、道央143.8円などと差があります。旭川・北見・帯広・函館・釧路などに複数拠点を持つ企業は、拠点ごとの単価で試算しましょう。
■ 家庭用の価格と法人の契約単価は別物
この記事で紹介した全道平均やコープの価格は、家庭向けの配達価格です。法人のローリー配送や大口契約の単価は、取引先ごとに異なります。自社の請求書に記載された単価で確認してください。
■ 重油を使う事業所も確認を
燃料油補助(緊急的激変緩和措置)の対象には重油も含まれ、10月1日以降の支給単価は灯油と同じ50.7円/Lです。ただし、販売価格を固定する制度ではない点は灯油と同じです。重油の契約単価も、あわせて確認しておきましょう。
■ 価格の「見える化」を定例業務にする
北海道の物価情報は毎月末、燃料油補助の支給単価は毎週更新されます。担当者が月1回確認する習慣をつくると、値上げの予兆をつかみやすくなります。
8. よくある質問(FAQ)
A. 北海道消費生活モニター調査では、2026年9月の灯油(配達)の全道平均は1Lあたり144.3円(税込)で、前年同月の125.0円から19.3円上がっています。コープさっぽろの札幌地区の定期配達価格は、2026年10月1日から159円です。
A. 公表資料では、中東・イラン情勢に伴う原油の調達コストや、灯油の仕入れ価格の上昇が背景として示されています。資源エネルギー庁は、元売事業者などが国際市場価格を上回る金額を払って原油等を調達するケースが増えていると説明しています。
A. 補助は石油元売などに支給して卸価格を抑える仕組みで、ガソリンの全国平均を170円程度に抑えることを軸に支給単価が決まります。灯油の販売価格を一定に固定する制度ではないため、仕入れコストが上がれば販売価格も上がり得ます。
A. 前年と比べると円安は押し上げ要因の一つです。ただし、今回の値上げに円安がどの程度影響したかは、公表資料からは確認できません。
A. 公表資料からは今後の価格を判断できません。原油価格、中東情勢、燃料油補助の支給単価、円相場の4つを継続して確認することが大切です。
9. まとめ|北海道の灯油高騰の背景は中東情勢と調達コスト
- 北海道の灯油(配達)の全道平均は、2026年9月に144.3円/Lで、前年同月より19.3円(約15%)上昇しています。
- コープさっぽろの札幌地区は、2026年10月1日から159円/Lに上がります(3月の改定前から+35円)。
- 公表資料で示された背景は、中東・イラン情勢に伴う原油高と、代替調達で生じる相場以上の調達コストです。
- 燃料油補助は10月以降も続きますが、販売価格を固定する制度ではありません。
- 法人は「単価の確認」「使用量の把握」「冬の予算の引き直し」から始めるのが現実的です。
記事情報
公開日:2026年9月30日
参照資料:
・北海道「物価情報」(北海道消費生活モニター調査・石油製品の価格推移)
・北海道「原油・石油製品・円相場の価格推移」
・資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」
・資源エネルギー庁「緊急的激変緩和措置の支給単価の算定方法変更について・調整単価の算定について」(PDF)
・エネコープ(コープさっぽろ)「札幌エリアの定期配達灯油価格」
・コープさっぽろ プレスリリース「灯油価格改定について」(2026年9月28日)
・北海道経済産業局「北海道における石油製品情報(価格・需給)」
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。価格や補助の支給単価は随時改定されるため、最新情報は各公式サイトをご確認ください。
