灯油は、石油元売会社から特約店、販売店を通って届くのが基本の流れです。大口の需要家には、元売が直接販売する「直売」もあります。価格は、原油の価格、為替、税、輸入や調達にかかる費用、配送などの流通費が重なって決まります。国の補助(燃料油価格激変緩和措置)は、利用者への給付ではなく、元売などの卸価格を抑える形で入ります。
資源エネルギー庁の調査では、2026年10月19日時点の北海道の灯油(給油所の配達価格)は18Lあたり2,859円(1Lあたり158.8円、税込)でした。全国は2,763円で、北海道のほうが96円高い水準です。1年前(2025年10月20日調査)の北海道は2,305円だったので、554円高くなっています。補助は、2026年10月22日以降は灯油1Lあたり42.8円、10月29日以降は52.4円が元売などに支給されています。2026年10月29日時点で、公式サイトに補助の終了日は載っていません。
この記事では、流通の仕組み、価格の決まり方、北海道の価格水準、法人が見積や契約で確認する点(単価の決め方、配送条件、タンク容量)、ホームタンクの点検と水抜き、補助の現状を整理します。公的な価格統計は、18L単位の小売の現金価格が中心で、法人のローリー契約の単価を直接示すものではありません。特定の販売会社の比較や、価格の交渉方法は扱いません。
この記事でわかること
・灯油の流通経路(元売・特約店・販売店・配送)と、公的な価格統計が測っている段階
・価格を左右する要素(原油・為替・税・調達コスト・流通費)
・北海道の灯油価格の水準(資源エネルギー庁の調査、2026年10月19日調査)
・見積・契約で確認する点(単価の決め方、配送条件、タンク容量)
・ホームタンクの点検・水抜きと、燃料油価格激変緩和措置の現状(2026年10月29日時点)
更新履歴
- 2026年10月29日:燃料油補助の支給単価を更新
- 2026年10月27日:全面改訂。流通経路、価格の構成要素、北海道の価格水準(2026年10月調査)、見積・契約の確認項目、ホームタンクの点検、燃料油価格激変緩和措置の現状を追加。根拠を確認できなかった記述(価格が自由料金で規制がないという説明、価格を柔軟に変えやすい、といった一般論など)を削除
- 2025年1月6日:初版公開
1. 灯油の流通経路|元売・特約店・販売店・配送
石油製品の売り方は、大きく「直売」と「特約店販売」に分かれます。直売は、石油元売会社が大口の需要家へ直接販売する形です。特約店販売は、元売会社と販売契約を結んだ卸売の業者(特約店)を通じ、場合によってはその傘下の販売店を通じて、主に一般の消費者へ販売する形です(ENEOS「石油便覧」)。
JOGMECの用語辞典によると、C重油やナフサなどの産業用のエネルギーほど直売の比率が高く、消費単位の小さいガソリンや灯油などほど特約店販売の比率が高くなっています。灯油は、使う世帯に配達して販売する方法の割合が大きく、昔から燃料小売商が流通に加わってきたと、石油便覧は説明しています。
原油は国内の製油所で精製されます。国内で精製された石油製品のほか、輸入された石油製品(輸入灯油)も流通します。
製油所から出荷された石油製品は、タンカーやタンクローリーで、油槽所を経て、または直接、給油所や最終の需要家に届けられます。
元売会社と売買契約を結び、石油製品を仕入れて販売する業者です。給油所を中心とする店、販売店への卸が中心の店、卸と小売の兼業店、給油所を持たずに灯油や重油を販売する店などの形があります。
灯油を小売りする業者です。店頭での販売のほか、配達販売の割合が大きいのが灯油の特徴です。
販売店などが事業所まで配達し、タンクに給油します。大口の需要家には、元売が直接納入する直売もあります。
図:灯油の主な流通経路(ENEOS「石油便覧」、JOGMEC「用語辞典 特約店」、資源エネルギー庁の審議会資料(2014年)をもとに作成。実際の経路は取引先ごとに異なります)
1-1. 公的な価格統計は、どの段階の価格を測っているか
資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」には、流通の段階ごとに別の調査があります。ニュースで見る「灯油の価格」がどの段階の価格かを知っておくと、自社の請求書の単価と比べるときの誤解を減らせます。
| 流通の段階 | 対応する調査 | 価格の範囲 |
|---|---|---|
| 元売から特約店への卸 | 卸価格調査(毎月) | 元売会社の特約店向け卸価格(仕切価格)。給油所への届け価格で、消費税を含まない |
| 給油所の店頭・配達 | 給油所小売価格調査(毎週) | 現金価格。灯油は18L単位で、消費税を含む |
| 給油所以外(燃料店・生協・量販店) | 民生用灯油価格調査(毎月15日現在) | 一般客向けの現金価格。18L単位で、消費税を含む |
| 事業所へのローリー納入 | 灯油を対象にした調査は確認できない | 産業用価格調査の対象は軽油とA重油 |
表:灯油の流通段階と対応する公的統計(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」の公表資料・調査概要をもとに作成)
統計の価格は、18L単位の小売の現金価格です。事業所のローリー納入の単価は、数量や配送条件、契約の内容によって決まるため、統計の数字をそのまま自社の単価と比べることはできません。統計は「相場の方向」を見る参考にして、比較は自社の請求書や見積書の単価で行います。
2. 灯油の価格はどう決まるか|原油・為替・税・調達コスト・流通費
灯油の価格は、次の要素が重なって決まります。国内の石油製品価格は、従来、原油の輸入価格にほぼ連動して決まってきたと、日本エネルギー経済研究所 石油情報センターは説明しています(2024年12月の資料)。
| 要素 | 内容 | 確認できる情報 |
|---|---|---|
| 原油価格 | 価格の土台になる | 国内の石油製品価格は、従来、原油輸入価格にほぼ連動(石油情報センター) |
| 為替(円相場) | 原油の国際価格はドル建てのため、円安だと円建てのコストが増える | 原油70ドル/バレルの場合、円建ての原油価格は1ドル=100円で1Lあたり44円、150円で66円(石油情報センター) |
| 石油石炭税(地球温暖化対策のための税率の特例を含む) | 原油・石油製品にかかる税。特例の部分が、一般に「地球温暖化対策税」と呼ばれる | 1kLあたり2,800円(本則2,040円+特例760円)。1Lあたり2.8円(国税庁、環境省) |
| 消費税 | 販売価格にかかる税 | 小売価格の統計は消費税(10%)込み |
| 輸入灯油・調達コスト | 2026年は、輸入灯油の価格と、原油の調達にかかる追加費用が論点になっている | 経済産業大臣の会見、資源エネルギー庁の資料(2-1で後述) |
| 配送・流通・在庫の費用 | 輸送、保管、人件費など | 内訳を示した公的統計は確認できない。参考として、給油所の配達価格と店頭価格の差は、2026年10月19日調査で全国が190円/18L(約10.6円/L)、北海道が56円/18L(約3.1円/L)(当社計算)。配達費用そのものの内訳ではない |
表:灯油の価格を左右する主な要素(石油情報センター「わが国の灯油価格について」2024年12月、国税庁「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例等について」令和8年4月改訂、環境省「地球温暖化対策のための税」、資源エネルギー庁の公表資料をもとに作成)
石油石炭税は、原油や石油製品を輸入などで引き取る段階で課され、1kLは1,000Lなので1Lあたり2.8円です(国税庁)。環境省は、地球温暖化対策のための税を、石油石炭税に税率を上乗せする形で課税するもので、平成28年4月1日に最終の税率へ引き上げが完了したと説明しています。為替は、ドル建ての原油価格が同じでも円建てのコストを大きく変えますが、これは原油そのもののコストです。灯油の販売価格にどのくらい反映されるかは、時期や取引によって異なり、公表資料からは判断できません。
2-1. 2026年に加わった事情:輸入灯油と調達コスト
経済産業大臣は、2026年10月16日の閣議後記者会見で、灯油を含む石油製品は日本全体として必要な量を確保できており、供給不足に陥る状況にはないと述べました。そのうえで、一部の卸売事業者などで例年の需要を大幅に上回る注文を行う動きがあること、国際的な精製能力の低下に伴い、原油に比べて輸入灯油の価格が高止まりしていることを挙げました。国内の灯油価格も輸入価格の影響を大きく受ける可能性があるとして、対策を強化すると説明しています。
資源エネルギー庁の資料「支給単価の算定方法変更について」も、中東情勢の変化以降、元売事業者や輸入事業者が原油などを調達する際に国際市場価格を上回って支払う金額が増えていると説明しています。これらの要因が、灯油1Lあたり何円分にあたるのかは、公表資料では示されていません。
2-2. 卸価格と小売価格の差
資源エネルギー庁の卸価格調査(2026年8月分)では、灯油の元売の特約店向け卸価格(消費税を含まない)は、北海道が1Lあたり111.8円、全国が111.0円で、差は0.8円でした。一方、同じ8月の給油所の店頭価格(税込)は、北海道が18Lあたり約2,622円、全国が約2,534円で、北海道のほうが約88円(1Lあたり約4.9円、消費税を除くと約4.4円)高くなっています(当社計算)。
8月は、卸価格の地域差よりも、小売価格の地域差のほうが大きい状況でした。この差の内訳は公表されていません。輸送距離や在庫の保管などが関係している可能性はありますが、推測の域を出ません(推測)。
3. 北海道の灯油価格の水準|資源エネルギー庁の調査で見る
ここでは、資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」(調査の結果)の数字を示します。給油所小売価格調査は、原則として毎週月曜日に調査し、水曜日に公表されます。2026年10月28日には10月26日時点の調査結果が公表されました。次回の公表予定日は、資源エネルギー庁の調査結果のページで、2026年11月5日(木)14時と案内されています。
| 項目 | 北海道 | 全国 | 北海道と全国の差 |
|---|---|---|---|
| 店頭(円/18L) | 2,803 | 2,573 | +230 |
| 店頭(円/L) | 155.7 | 142.9 | +12.8 |
| 配達(円/18L) | 2,859 | 2,763 | +96 |
| 配達(円/L) | 158.8 | 153.5 | +5.3 |
表:灯油の給油所小売価格(2026年10月19日調査、現金価格、消費税込み)(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」、北海道は北海道経済産業局管内。差は当社計算)
2026年10月28日に公表された10月26日調査では、北海道庁が掲載している北海道分の価格(北海道「原油・石油製品・円相場の価格推移について」)が、店頭156.2円/L(前週比+0.5円)、配達159.2円/L(前週比+0.4円)でした。本文の表と地域別の値は、全国値と地域別の値がそろう10月19日調査のものです。10月26日調査の全国値と地域別の値は、資源エネルギー庁の結果ページで確認してください。
3-1. 1年前と、今年の動き
| 調査日 | 北海道の配達(円/18L) | 全国の配達(円/18L) |
|---|---|---|
| 2025年10月20日 | 2,305 | 2,396 |
| 2026年3月9日 | 2,332 | 2,448 |
| 2026年3月16日 | 2,762 | 2,951 |
| 2026年6月1日 | 2,658 | 2,716 |
| 2026年9月28日 | 2,667 | 2,721 |
| 2026年10月5日 | 2,794 | 2,737 |
| 2026年10月13日 | 2,847 | 2,749 |
| 2026年10月19日 | 2,859 | 2,763 |
表:灯油の給油所の配達価格の推移(消費税込み)(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」の週次ファイルより抜粋)
北海道の配達価格は、2026年3月9日調査の2,332円から、3月16日調査で2,762円に上がりました。6月から9月は、おおむね2,650円台から2,670円台で推移しています。10月に入ってからは再び上がり、10月5日調査で2,794円、10月19日調査で2,859円です。
1年前の2025年10月20日調査(2,305円)と比べると、北海道は554円(約24%)、全国は367円(約15%)の上昇です(当社計算)。3月は全国のほうが大きく上がりましたが、10月は北海道の上がり方が目立ちます。
3-2. 道内の地域差と、給油所以外の価格
| 地域 | 配達(円/18L) | 店頭(円/18L) |
|---|---|---|
| 道北 | 2,828 | 2,787 |
| 道央 | 2,841 | 2,788 |
| 道東 | 2,910 | 2,766 |
| 日勝 | 2,913 | 2,898 |
| 道南 | 2,853 | 2,816 |
| 全道 | 2,859 | 2,803 |
表:北海道の地域別灯油価格(2026年10月19日調査、消費税込み)(北海道経済産業局「北海道の地域別灯油価格」2026年10月21日公表。道北は宗谷・留萌・上川、道央は石狩・空知、道東はオホーツク・釧路・根室、日勝は日高・十勝、道南は胆振・後志・檜山・渡島)
給油所以外(燃料店・生協・量販店)の価格を調べる「民生用灯油価格調査」(毎月15日現在)の2026年9月の結果は、北海道が店頭2,653円・配達2,691円(18Lあたり)、全国平均が店頭2,583円・配達2,757円でした。
1. 国も、北海道の価格が高く上昇傾向にあると認識しています。経済産業大臣は2026年10月16日の会見で、北海道は他の都府県と比べて灯油の小売価格が高く、上昇傾向にあることを承知していると述べました。
2. 道内でも地域差があります。2026年10月19日調査の配達価格は、道北の2,828円から日勝の2,913円まで、85円の幅がありました(当社計算)。複数の拠点がある場合は、拠点ごとの単価で考えます。
3. 北海道は、配達と店頭の差が小さい傾向です。同じ調査で、配達と店頭の差は、北海道が56円、全国が190円でした(当社計算)。理由は公表されていません。
4. 法人が見積・契約で確認する点
灯油の見積は、1Lあたりの単価だけでは比べられません。単価の決め方、配送条件、タンクの容量をそろえて、書面で確認します。公的な資料で標準的な契約条件は示されていないため、以下は確認項目の整理です。
4-1. 単価の決め方
| 確認項目 | 確認すること |
|---|---|
| 単価の表示 | 1Lあたりか。消費税込みか税抜きか。配送料は含まれるか。公的統計には、税込(小売)と税抜(卸)の両方があるため、比べるときは税の扱いをそろえる |
| 単価の決まり方 | 一定期間の固定か、納品日の価格か、月ごとの改定か、仕入れ価格に連動するか。連動する場合は、何に連動するのか |
| 改定の通知 | 改定の何日前に、どの方法(書面・メールなど)で知らされるか |
| 補助の扱い | 見積の単価に、国の補助(第6章)の効果が含まれているか。補助が見直されたとき、単価をどう改定するか |
| 見積の有効期限 | 価格が変動しやすい時期は、いつまでその単価が有効か |
表:灯油の単価について見積・契約で確認する項目(確認項目の整理)
4-2. 配送条件と数量
| 確認項目 | 確認すること |
|---|---|
| 配送の方法 | 定期的な巡回か、注文ごとか。注文から納品までの日数はどのくらいか |
| 最低納入量・追加料金 | 1回の最低納入量、少量のときの追加料金、配送料、緊急配送の費用 |
| 冬の運用 | 悪天候で配送が遅れるときの連絡方法と代替の手段。搬入路や給油口の除雪はだれが行うか |
| 数量の確認 | 納品書にリットル数が記載されるか。納品前後のタンクの残量と合っているか。ローリーの燃料油メーターには検定の有効期間があり、期間を過ぎたメーターを取引に使うことは計量法で禁止されている |
| 支払条件 | 締め日、支払期日、請求書の記載項目(単価・数量・配送料・税) |
| 供給の継続 | 契約期間、更新と解約の条件、供給が逼迫したときの取り扱い |
表:灯油の配送条件と数量について見積・契約で確認する項目(確認項目の整理。燃料油メーターについては、沖縄県計量検定所の案内と計量法第16条による)
4-3. タンク容量と注文量
1回に納入できる量は、タンクの空き容量で決まります。冬のピーク時の使用量に対して、何日分の容量があるかを把握しておくと、注文の間隔を決めやすくなります。
持たせられる日数 =(タンクの容量 − 切らしたくない最低残量)÷ ピーク時の1日あたり使用量
仮定の数字の例:容量500L、最低残量50L、ピーク時の使用量40L/日なら、(500 − 50)÷ 40 = 約11日
タンクの容量は、消防法の区分にも関わります。灯油は、消防法で第4類の第2石油類(引火点が21度以上70度未満)に当たり、非水溶性の第2石油類の指定数量は1,000Lです(危険物の規制に関する政令 別表第三)。指定数量以上の危険物は、許可を受けた貯蔵所以外で貯蔵できません(消防法第10条)。指定数量未満の貯蔵・取扱いの基準は、市町村の条例で定められています(消防法第9条の4)。必要量を超えてタンクに入れる前に、容量と貯蔵量の区分を確認してください。札幌市の少量危険物の届出や設置基準は「灯油タンクの設置基準|札幌市の少量危険物の届出・防油堤・屋内設置」で整理しています。
あわせて、タンクの所有者(自社か、販売店からの貸与か)、点検や洗浄の費用をだれが負担するか、残量をどう確認するか(ゲージ、自動検針など)も、契約の前に確認しておきます。
4-4. 年間コストで比べる
年間コスト = 年間使用量(L)× 単価(円/L)+ 配送料・追加料金の年間合計
税込と税抜、配送料込みと別を、そろえてから比べる
| 項目(仮定の数字) | 見積A | 見積B |
|---|---|---|
| 年間使用量 | 10,000L | 10,000L |
| 単価(税抜) | 140円/L(配送料込み) | 136円/L |
| 配送料 | なし | 1回3,000円 × 年20回 = 60,000円 |
| 年間コスト(税抜) | 1,400,000円 | 1,360,000円 + 60,000円 = 1,420,000円 |
| 年間コスト(税込10%) | 1,540,000円 | 1,562,000円 |
表:単価と配送料を合わせた年間コストの比較例(数字はすべて仮定。実在の見積ではありません)
この例では、見積Bの単価のほうが4円/L安くても、配送料を含めると見積Aより年間2万円(税抜)高くなります。単価が低い見積でも、配送料や最低納入量の条件で総額が逆転することがあります。
5. ホームタンクと燃焼機器の点検・水抜き
日本ガス石油機器工業会(JGKA)は、ホームタンクを使用しているときは、年に数回、水抜きを行うよう呼びかけています。また、変質した灯油(持ち越した灯油など)や、汚れた灯油、水の混じった灯油は、使わないよう求めています。不完全燃焼や異常燃焼など、予想しない事故が発生するおそれがあるためです。
札幌市消防局のリーフレットは、ストレーナー(灯油をこす部品)にひび割れがあれば交換し、定期的に水を抜くよう呼びかけています。同じリーフレットのチェックシートには、「タンク内面の錆により、ストレーナーが汚れていないか」「水抜き栓やバルブが開放状態になっていないか」などの項目があります。
札幌市消防局のリーフレットは、ストレーナーが古くなったり、中の水が凍ったりすると割れることがあり、そこから灯油が漏れると注意しています。灯油が漏れると、火災のおそれがあるほか、上下水道への混入や土壌汚染にもつながる、とも書かれています。
水抜きの手順は、タンクの型式によって違うため、タンクの取扱説明書に従います。タンクの洗浄の方法や、道内で公開されている洗浄料金の目安は、「灯油ホームタンクの洗浄と水抜き|結露・サビの原因と料金の目安【北海道】」で整理しています。
点検の主な目的は、灯油漏れや不良灯油による事故・トラブルの予防です。
6. 灯油の補助|燃料油価格激変緩和措置の現状(2026年10月29日時点)
6-1. 仕組み:補助は元売の卸価格を抑える形で入る
現在の補助は、資源エネルギー庁の「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」です。2026年3月19日に開始され、ガソリン、軽油、重油、灯油、航空機燃料が対象です。公式サイトは、実施期間中、燃料油の元売に価格引下げの原資として補助金を支給すると説明しています。資源エネルギー庁と公正取引委員会の依頼文(2026年3月19日)も、補助額を含めた実質的な卸価格が下がるとしています。公式サイトで、事業所が個別に申請する仕組みは確認できません。
金額は、ガソリンを基準に決まります。ガソリンは、全国平均小売価格が170円程度を超える見込みとなった場合に、その水準を超えないよう、170円を超える部分の補助を行います。灯油・軽油・重油には、ガソリンと同額の補助が支給されます(2026年3月11日の資源エネルギー庁の資料)。同じ資料の注記には、補助金の効果は徐々に小売価格に反映され、補助金のほか、原油価格の動向などの影響も受ける、とあります。
| 時期 | 灯油に関する内容 |
|---|---|
| 2026年3月19日より前 | 定額引下げ措置。灯油は1Lあたり5円 |
| 2026年3月19日から | 緊急的激変緩和措置を開始。灯油は、ガソリンと同額の補助に変更 |
| 2026年7月2日から | 調達費用の実態を反映する「調整単価」を支給単価に反映。7月分は4.9円/L。以後は月次で算定 |
| 2026年10月22日以降 | 支給単価は、灯油・重油ともに42.8円/L(ガソリン、軽油も同額)。2026年10月分の調整単価は3.7円/L |
| 2026年10月29日以降 | 支給単価は、灯油・重油ともに52.4円/L(ガソリン、軽油も同額)。2026年11月分の調整単価は7.2円/L |
表:灯油の補助の経緯(資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」の公式サイトと説明資料をもとに作成。支給単価は毎週改定されます)
6-2. 2026年10月16日に発表された追加の対策
経済産業大臣は、2026年10月16日の会見で、灯油に関する対策の強化として、次の3点を挙げました。
| 対策 | 会見での説明 |
|---|---|
| 販売・注文量の要請 | 石油元売事業者、輸入商社、卸売事業者などに、前年同月比で同量の販売・注文を要請する |
| 灯油直販スキームの新設 | 供給の偏りや流通の目詰まりが発生する場合に、石油元売事業者から直接販売を実施する |
| 輸入灯油調整単価の導入 | 輸入価格と国内卸価格の差額を「輸入灯油調整単価」として補助する制度を導入する |
表:2026年10月16日の追加対策(経済産業省「閣議後記者会見の概要」2026年10月16日)
会見の概要には、実施の時期や補助の単価は記載されていません。詳細は、公式サイトの更新で確認してください。
6-3. 補助の「終わり」と、見積への影響の見方
2026年10月29日時点で、資源エネルギー庁の公式サイトには、緊急的激変緩和措置の終了日は掲載されていません。支給単価は毎週改定されるため、補助の水準は今後も変わります。補助は元売の卸価格に入るため、販売価格にどう反映されるかは、取引先ごとに確認が必要です。見積書では、第4章の「補助の扱い」を確認しておくと、補助が見直されたときの単価の変わり方を把握できます。
最新の支給単価は、公式サイトで確認できます。この措置と灯油価格の関係は、「北海道の灯油価格はなぜ高騰?2026年の値上げ理由と企業の対策」でも解説しています。
7. よくある失敗・注意点
・統計の価格を、自社の契約単価と直接比べる(統計は18L単位の小売の現金価格。比較は請求書・見積書の単価で行う)
・税込と税抜が混ざったまま比べる(小売の統計は税込、卸価格の統計は税抜)
・単価だけで比べ、配送料や最低納入量を見落とす(年間コストで比べる。4-4)
・補助があれば価格が下がると思い込む(補助は元売の卸価格に入り、効果は徐々に小売に反映される。原油価格の動向などの影響も受ける)
・供給への不安から、必要量を超えて注文する(タンク容量と消防法の貯蔵量の区分を超えない範囲で。経済産業大臣は、例年を大幅に上回る注文の動きに言及している)
8. よくある質問(FAQ)
A. 資源エネルギー庁の2026年10月19日調査では、北海道の給油所の配達価格が18Lあたり2,859円(1Lあたり158.8円)、店頭価格が2,803円(155.7円)で、いずれも消費税込みの小売の現金価格(18L単位の価格を1Lあたりに直したもの)です。事業所のローリー納入の単価とは別のものです。最新の値は、毎週水曜日に公表される調査の結果で確認できます。
A. 公表資料から、今後の価格を断定することはできません。判断の材料として、資源エネルギー庁の週次の小売価格、補助の支給単価(公式サイトで毎週更新)、原油価格と為替、10月16日に発表された追加対策の詳細、の4つを継続して確認します。
A. 2026年10月29日時点で、資源エネルギー庁の公式サイトに終了日は掲載されていません。支給単価は毎週改定されます。2026年10月29日以降の灯油の支給単価は、1Lあたり52.4円です(10月22日以降は42.8円)。最新の情報は公式サイトで確認してください。
A. この措置は、元売会社などに補助金を支給して卸価格を抑える仕組みです。事業所が個別に申請する仕組みは、公式サイトでは確認できません。事業所には、販売価格への反映という形で影響します。
A. 日本ガス石油機器工業会は、ホームタンクを使用しているときは、年に数回、水抜きを行うよう呼びかけています。札幌市消防局は、ストレーナーの水を定期的に抜くよう呼びかけています。手順はタンクの取扱説明書に従ってください。
9. まとめ
- 灯油は、元売から特約店、販売店を通って届くのが基本で、大口の需要家には直売もあります。
- 価格は、原油、為替、税(1Lあたり2.8円)、調達コスト、流通費が重なって決まります。要因ごとの金額は公表されていません。
- 2026年10月19日調査の北海道の配達価格は18Lあたり2,859円で、全国より96円、1年前より554円高い水準です。統計は18L単位の小売の現金価格で、法人の契約単価とは別です。
- 見積・契約では、単価の決め方、配送条件、タンク容量を同じ条件にそろえ、年間コストで比べます。
- 補助は元売の卸価格に入る仕組みで、2026年10月29日以降の灯油の支給単価は52.4円/L(10月22日以降は42.8円/L)です。終了日は公式サイトで確認できず、10月16日の追加対策の詳細も今後の発表を確認します。
- ホームタンクは、年に数回の水抜きとストレーナーの点検が基本です。
記事情報
公開日:2025年1月6日
最終更新日:2026年10月29日(燃料油補助の支給単価を更新)
参照資料:
・資源エネルギー庁「石油製品価格調査 調査の結果」(資源エネルギー庁)、同「給油所小売価格調査 結果概要」2026年10月21日公表(Word)、同「結果詳細版」(Excel)、同「週次ファイル」(Excel)、同「民生用灯油 概要ファイル(9月分)」(Excel)、同「卸価格調査概要(8月分)」(Excel)
・北海道「原油・石油製品・円相場の価格推移について」2026年10月28日公表分(北海道分の価格)、北海道経済産業局「北海道の地域別灯油価格」2026年10月21日公表(PDF)
・資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」(公式サイト)、同「イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について」2026年3月11日(PDF)、同「緊急的激変緩和措置の支給単価の算定方法変更について・調整単価の算定について」(PDF)、同・公正取引委員会「イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について(依頼)」2026年3月19日(PDF)
・経済産業省「赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」2026年10月16日(経済産業省)
・国税庁「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例等について」令和8年4月改訂(PDF)、環境省「地球温暖化対策のための税」(環境省)
・日本エネルギー経済研究所 石油情報センター「わが国の灯油価格について」東北地方石油懇談会資料、2024年12月(PDF)
・ENEOS「石油便覧 第1編第3章第2節 石油製品の市場」(ENEOS)
・JOGMEC「用語辞典 特約店」(JOGMEC)
・資源エネルギー庁「石油流通における現状と課題について」2014年6月(PDF)
・e-Gov法令検索「消防法」(e-Gov)、「危険物の規制に関する政令」(e-Gov)、「計量法」(e-Gov)
・沖縄県計量検定所「燃料油メーターには有効期間があります!」(PDF)
・日本ガス石油機器工業会「不良灯油の使用禁止」(JGKA)
・札幌市消防局「ホームタンクチェックシート」リーフレット(PDF)
※価格の統計は2026年10月27日時点、補助の支給単価は2026年10月29日時点の情報です。統計は毎週(調査は月曜日、公表は水曜日)、補助の支給単価は毎週更新されるため、最新の値は各公式サイトでご確認ください。計算例の数字はすべて仮定です。契約条件や消防法上の手続きは、契約先や所轄の消防署にご確認ください。
