北海道で省エネ設備の更新を検討するとき、多くの企業がまず「設備の購入費・工事費に補助金が出ないか」を調べます。しかし、その前段階にあたる「省エネ診断」「設備の設計」「導入可能性の調査」にも、北海道独自の補助金があることはあまり知られていません。
それが、北海道(経済部GX推進局GX推進課)が実施する「省エネルギー設備導入計画等作成支援事業費補助金」です。設備導入を前提とした設計・調査・計画づくりにかかる委託費などを、補助率1/2・上限100万円で支援する制度です。令和8年度(2026年度)の公募が、2026年6月12日(金)を期限に受付中です。
このコラムでは、北海道企業の経営者・施設管理者の方が申請可否を判断できるよう、制度の概要・対象要件・補助額・必要書類・スケジュールを、公式の公募案内に基づいて整理します。「設備導入の補助金」との違いや、省エネ診断が審査で有利になる理由まで解説します。
この記事でわかること
✅ 「省エネルギー設備導入計画等作成支援事業費補助金」の制度概要と公募スケジュール
✅ 補助率・上限額・対象になる経費(委託費・調査費なども対象)
✅ 「設備導入支援補助金」との違いと、2つの制度の使い分け
✅ 面的取組・サプライチェーン・年率20%削減という対象要件
✅ 6月12日の締切までに準備すべき必要書類と、省エネ診断の審査優遇
1. 北海道省エネ計画作成支援補助金とは?
① 一言でいうと
北海道省エネ計画作成支援補助金とは、省エネ設備を導入する「前段階」の設計・調査・計画づくりにかかる費用を、補助率1/2・上限100万円で支援する北海道の補助金です。正式名称は「省エネルギー設備導入計画等作成支援事業費補助金」といいます。
設備そのものの購入費ではなく、専門家への委託費や調査費が補助対象になる点が大きな特徴です。設備投資の入口にあたる「計画づくり」のコストを抑えられる制度といえます。
② 制度の目的と背景
北海道は「ゼロカーボン北海道」の実現を掲げ、省エネルギーの促進に取り組んでいます。その一環として、高い省エネルギー効果が期待できる設備の導入を前提とした設計、導入可能性調査に対して、予算の範囲内で補助するものがこの制度です。
質の高い省エネ設備の導入には、現状把握・効果算定・設計といった準備が欠かせません。その準備段階を後押しすることで、実効性のある省エネ投資につなげる狙いがあります。
| 正式名称 | 令和8年度(2026年度)「省エネルギー促進総合支援事業」 省エネルギー設備導入計画等作成支援事業費補助金 |
| 実施主体 | 北海道 経済部GX推進局GX推進課 |
| 補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
| 上限額 | 100万円 |
| 補助対象者 | 道内に事務所・事業所を有する法人等、またはそのコンソーシアム |
| 対象事業 | 省エネ設備の導入を前提とした設計・調査・導入可能性調査 |
| 公募受付期間 | 2026年4月22日(水)〜6月12日(金) |
2. 「設備導入補助金」との違い|どちらを先に使う?
北海道のGX推進課は、名前のよく似た2つの補助金を用意しています。「計画作成支援」が前段、「設備導入支援」が後段という関係です。混同しやすいため、まず違いを整理します。
| 項目 | 計画作成支援補助金 (本記事の制度) | 設備導入支援補助金 |
|---|---|---|
| 支援する段階 | 導入前の 設計・調査・計画づくり | 省エネ設備の 導入そのもの |
| 補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
| 上限額 | 100万円 | 500万円 (コンソーシアム1,000万円) |
| 主な対象経費 | 委託料・報償費・ 旅費・備品購入費 ほか | 設備費・工事費 など |
| 令和8年度の公募期限 | 2026年6月12日(金) | 2026年6月12日(金) |
2つの制度は連動しています。本事業の採択事業者は、策定した計画を利用することで、省エネルギー設備導入支援事業費補助金の審査優遇の対象(3年以内)となりますと、北海道の制度案内では説明されています。つまり、計画作成支援で「設計図」をつくり、その計画をもとに設備導入支援で「実際の設備」を入れる、という二段構えの活用が想定されています。ただし、審査優遇は採択を保証するものではありません。
図1:2つの補助金の関係(前段の計画づくり → 後段の設備導入)
設備の導入そのものを対象とする「省エネルギー設備導入支援事業費補助金」(上限最大1,000万円)については、totokaのコラム「【令和8年度】北海道の省エネ補助金(最大1000万円)対象要件とスケジュール」で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
3. 補助率・上限額・対象経費はいくら?
① 補助率は1/2、上限は100万円
補助率と上限額はシンプルです。補助率は補助対象経費の1/2以内、限度額は100万円です。たとえば設計・調査の委託費が合計200万円かかった場合、その半額にあたる100万円が補助の上限になります。
図2:補助金額のイメージ(補助率1/2・上限100万円)
② 対象になる経費(委託費も対象)
この制度の魅力は、対象経費の幅広さです。補助対象経費は、報償費、旅費、消耗品費、印刷製本費、通信運搬費、使用料及び賃借料、委託料、備品購入費ほかとされています。
特に重要なのが委託料です。公募案内の別表では、委託料について設備の設計を委託する際に支払われる経費、その設計に伴う調査・研究等を委託する際に支払われる経費が対象と明記されています。専門事業者に設計や調査を依頼する費用が補助対象になる、ということです。
| 補助対象になる主な経費 | 対象にならない経費 |
|---|---|
| ・委託料(設計・調査の委託費) ・報償費(専門家への謝金) ・旅費(調査等に要する旅費) ・備品購入費 ・使用料及び賃借料 ・印刷製本費・消耗品費・通信運搬費 |
・食糧費などの個人消費的な経費 ・常用雇用者にかかる人件費 ・(設備そのものの購入費・工事費は 別制度「設備導入支援補助金」の対象) |
本補助金は、省エネ設備本体の導入費・設置工事費を直接補助する制度ではありません。対象は、設備導入を前提とした設計・調査・導入可能性調査等に必要な経費です。設備本体の導入費を補助で賄いたい場合は、別制度の「設備導入支援補助金」を検討してください。
4. 対象になる事業の条件|面的取組・サプライチェーン・年率20%削減
どんな事業でも対象になるわけではありません。公募案内では、対象事業に複数の要件が設けられています。特に重要な3つの条件を解説します。
① 「面的取組」または「サプライチェーン」であること
最初の関門が事業の「広がり」です。公募案内では、道内の複数の建物、街区、エリア等を対象に取り組む事業、又は、サプライチェーンを構成する複数の事業者によって行う事業であることが求められています。
1つの建物・1拠点だけの省エネは、原則として対象になりにくい設計です。複数拠点をまとめて取り組む「面的取組」か、取引先と連携する「サプライチェーン型」のいずれかの形を組む必要があります。
② 年率20%以上のエネルギー削減が見込まれること
省エネ効果のハードルも明確です。エネルギー消費量について、設備導入前と比較して年率20%以上の削減効果が見込まれる設備の導入を前提とした設計等を行う事業であることが要件です。
ここでいうエネルギーは、省エネ法上の燃料・熱・電気が対象です。将来導入する設備で20%以上の削減が見込めることを、客観的に示せる事業である必要があります。
③ その他の主な要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 客観性 | 省エネルギー効果を客観的に示すことができる事業であること |
| 公表 | 事業の進捗状況・課題・成果等を公表することができる事業であること |
| 重複なし | 他の道事業に採択されたことがない事業であること |
| 普及啓発 | 補助事業終了後、補助事業者自らが事業成果等の普及啓発を行うこと |
北海道は事業所が広域に分散しやすく、市内に複数の店舗・施設を構える企業や、振興局をまたいで拠点を持つ企業が少なくありません。本制度が求める「面的取組」は、こうした複数拠点をまとめて省エネ化したい道内企業と相性のよい設計です。道内の複数施設、あるいは取引先を含めたグループ全体での取り組みとして検討する価値があります。
5. 申請から補助金受領までの流れ
申請の全体像を押さえておきましょう。事業計画書を提出し、審査・認定を経て、交付申請・交付決定の後にようやく事業に着手できる流れです。
図3:申請から補助金受領までの流れ
事業内容・事業費・波及効果などを記載した事業計画書を、添付書類とともに提出します。
審査会で有識者の意見を聴取し、予算の範囲内で事業計画を認定します。結果は認定・不認定いずれも通知されます。
計画の認定後、交付申請書を提出し、知事の交付決定を受けます。
事業は交付決定後に開始し、令和9年(2027年)2月末日までに完了させます。完了後は実績報告書を提出します。
道の調査で補助金額が確定した後、口座振替で支払われます。先に費用を支出する「後払い」である点に注意が必要です。
公募案内では、事業に着手できるのは交付決定後ですと明記されています。交付決定を待たずに設計や調査を始めてしまうと、その費用は補助対象外になるおそれがあります。スケジュールには十分な余裕を持ってください。
6. 6月12日までに準備すべき必要書類
申請でつまずきやすいのが書類の準備です。事業計画書(別記第1号様式)に加えて、多数の添付書類が必要になります。主なものを整理します。
| 区分 | 主な書類 | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 法人の基本書類 | 法人事業概要説明書(確定申告書類)、決算書(直近2期分) | 貸借対照表・損益計算書を用意 |
| 登記関係 | 商業登記簿謄本、対象設備が所在する建物の登記事項証明書 | いずれも発行から6か月以内の原本 |
| 事業概要 | 会社案内など、業種・資本金・従業員数がわかる資料 | 該当ページに付箋・マーキング |
| 設備関係 | 導入設備のカタログ・仕様書、3者以上の見積書(税抜き)、見積結果一覧 | 1者のみの場合は随意契約理由書が必要 |
| 省エネ効果 | 省エネルギー効果の算定資料 | 外部機関等による客観的な算定 |
| 計画書類 | 総合計画や設備導入計画、改修計画等/(該当時)コンソーシアム協定書の写し | 計画の全体像がわかる資料 |
公募案内によると、提出部数は電子データ及び正本1部、副本9部とされています。ただし副本9部は、事業計画書(別記第1号様式)と一部の計画資料について提出が求められるもので、すべての添付書類を9部用意するわけではありません。提出方法は、電子データをメールで送付したうえで、正本・副本を持参または郵送します。
7. 省エネ診断を受けると審査で有利になる理由
申請を有利に進める鍵が「省エネ診断」です。公募案内では、省エネ診断を受診し、その診断結果に基づく設備更新である場合は審査優遇の対象となりますと明記されています。
診断を受けている場合は、診断結果報告書の表紙と該当箇所の写しを添付します。診断結果という客観的な根拠があることで、「省エネ効果を客観的に示せる」という対象要件にも応えやすくなります。
① 活用できる主な省エネ診断
| 診断の種類 | 実施機関 |
|---|---|
| 省エネ最適化診断 | 一般財団法人 省エネルギーセンター |
| 省エネお助け隊の診断 | 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) |
| 省エネクイック診断 | 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) |
このほか、民間事業者による省エネ診断やソリューションでも、上記と同等以上の有効性が認められるものは活用できるとされています。
北海道は暖房・給湯のエネルギー使用量が大きく、削減余地も大きい地域です。やみくもに設備を入れ替えるより、まず省エネ診断で現状を把握し、効果の大きい設備を見極めてから計画を立てる方が、年率20%という削減目標にも到達しやすくなります。「診断 → 計画づくり(本補助金)→ 設備導入」という順序を意識すると、補助制度を無理なくつなげられます。
8. 申請でよくある失敗と注意点
制度を活用するうえで、つまずきやすいポイントを5つ挙げます。事前に把握しておくことで、不採択や対象外を避けやすくなります。
① 「設備費が出る」と思って申請してしまう
最も多い誤解です。本補助金は設計・調査・計画づくりが対象であり、設備の購入費・工事費は対象外です。設備費を補助で賄いたい場合は「設備導入支援補助金」を検討します。
② 1拠点・単独事業のまま申請する
対象は「複数の建物・街区・エリアを対象にした面的取組」または「サプライチェーン型」です。1拠点だけの取り組みでは要件を満たせないため、複数拠点や取引先との連携を組み立てる必要があります。
③ 見積書が3者未満になっている
導入設備の経費明細は、3者以上の見積書の写しが原則です。3者を集められない場合は、その理由を整理した随意契約理由書の添付が求められます。
④ 登記事項証明書などの原本が古い
商業登記簿謄本や建物の登記事項証明書は、発行から6か月以内の原本が必要です。早く取りすぎると締切時点で期限切れになることもあるため、取得タイミングに注意します。
⑤ 締切間際に準備を始める
副本9部の用意や電子データの送付、コンソーシアムの場合は協定書の締結など、準備には相応の時間がかかります。6月12日の締切から逆算し、早めに着手することが重要です。
9. 北海道の事業者にとっての活用ポイント
最後に、北海道で事業を営む企業がこの制度を活用するうえでの実務的なポイントを整理します。
■ 設備投資の「入口コスト」を抑えられる
省エネ設備の更新は、設計や効果算定といった準備に専門的な費用がかかります。本補助金はその委託費を補助率1/2・上限100万円で支援するため、設備投資の検討に踏み出す入口のハードルを下げられます。
■ 「計画作成支援 → 設備導入支援」の二段活用を設計する
計画作成支援の採択者は、設備導入支援補助金の審査優遇対象になると案内されています。ただし、審査優遇は採択を保証するものではありません。最初から2つの制度を視野に入れ、前段で質の高い計画をつくり、後段で設備費の補助につなげる流れを描くと効果的です。
■ 複数拠点・グループ・取引先での連携を検討する
「面的取組」「サプライチェーン型」が要件のため、道内の複数施設、グループ会社、取引先との連携余地を早めに洗い出すことが採択への近道です。北海道は拠点が分散しやすいぶん、面的に束ねる発想が活きます。
■ 6月12日の締切から逆算して動く
令和8年度の公募受付期限は2026年6月12日(金)です。決算書・登記書類・3者見積・省エネ効果算定資料・副本9部など、準備物は多岐にわたります。診断の受診を含めると、今から逆算して動き出すことをおすすめします。
10. totokaが支援できること
株式会社totokaは、北海道を拠点に法人向けのエネルギー全般の支援を行っています。経済産業省の「パートナー省エネ支援機関」として登録され、SII認定の省エネ診断機関でもあります。代表は1級管工事施工管理技士などの資格を保有し、設備の技術的な観点からの支援が可能です。
本補助金との関係では、次のような場面で技術的な支援ができます。
| 場面 | totokaの支援内容 |
|---|---|
| 現状把握 | 省エネ診断による現状のエネルギー使用状況の把握 |
| 効果の根拠づくり | 年率20%以上の削減効果の算定・客観的な裏づけ資料の整理 |
| 計画・設計 | 設備導入を前提とした設計・調査・計画づくりの委託先としての対応 |
| 制度の見極め | 計画作成支援・設備導入支援のどちらをどう使うかの整理 |
「自社の取り組みがこの補助金の対象になるか分からない」「面的取組やサプライチェーン型の組み立て方を相談したい」といった段階からでも対応しています。北海道で省エネ設備の更新・補助金活用を検討中の企業様は、totoka公式サイト(https://www.totoka.jp/)よりお気軽にお問い合わせください。
11. よくある質問(FAQ)
A. いいえ。本補助金が対象とするのは設計・調査・計画づくりです。設備の購入費や工事費は、別制度「省エネルギー設備導入支援事業費補助金」(上限最大1,000万円)の対象になります。
A. 対象は「道内の複数の建物・街区・エリアを対象にした面的取組」または「サプライチェーンを構成する複数事業者による事業」です。1拠点のみの取り組みでは要件を満たしにくいため、複数拠点や取引先との連携を組む必要があります。
A. 後払い(精算払い)です。交付決定後に事業を実施し、令和9年(2027年)2月末日までに完了・実績報告を行い、道の調査で補助金額が確定した後に口座振替で支払われます。
A. 必須ではありません。ただし、省エネ診断を受診し、その結果に基づく設備更新である場合は審査優遇の対象になります。受けておくと申請を有利に進めやすくなります。
A. 公募案内によると、補助事業の完了年度の翌年度から起算して3年度以内に、当該設計に基づく省エネルギー設備の建設工事を完了させる必要があります。
12. まとめ
北海道の「省エネルギー設備導入計画等作成支援事業費補助金」は、省エネ設備を導入する前段階の設計・調査・計画づくりを支援する制度です。要点を整理します。
この記事のまとめ
✅ 補助率は1/2以内、上限額は100万円。委託費・調査費なども対象
✅ 設備費そのものは対象外。設備費は別制度「設備導入支援補助金」を活用
✅ 「面的取組」または「サプライチェーン型」で、年率20%以上の削減が要件
✅ 省エネ診断の結果に基づく設備更新は審査優遇の対象
✅ 令和8年度の公募受付期限は2026年6月12日(金)。書類準備は早めに
設備導入の「入口コスト」を抑えつつ、後段の設備導入支援補助金へつなげられるのが本制度の強みです。複数拠点を持つ道内企業や、取引先と連携できる企業にとっては、検討する価値の大きい制度といえます。最新の公募案内・交付要綱・申請様式は、必ず北海道庁の公式情報でご確認ください。
記事情報
公開日:2026年5月19日
参照資料:令和8年度(2026年度)「省エネルギー促進総合支援事業」省エネルギー設備導入計画等作成支援事業費補助金 公募案内(北海道 経済部GX推進局GX推進課)
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。公募内容は変更される場合があります。最新の公募案内・交付要綱・申請様式は、北海道の制度ページ「省エネルギー設備導入計画等作成支援事業費補助金」を必ずご確認ください。
