はじめに:なぜ北海道の企業の暖房費は「運用」で変わるのか
北海道の冬は、外気温がマイナス10度、20度になることも珍しくありません。この「室内外の温度差(ΔT)」が大きければ大きいほど、熱は逃げようとします。
多くの企業が、「ボイラーが古いから」「建物が古いから」と諦めています。確かに断熱改修や最新機器への入れ替えは効果絶大ですが、数百万〜数千万円の投資が必要です。しかし、実は「使い方のムダ」をなくすだけで、暖房費の10%〜20%を削減できるケースは珍しくありません。
省エネの基本は「必要な場所を、必要な時間だけ、必要な温度にする」こと。そして「作った熱を逃さない」ことです。この基本を北海道の環境に合わせて徹底するための具体策を見ていきましょう。
第1章:空気の流れを制するものが暖房費を制す
暖房費削減で最初に見直すべきは、ボイラーの設定温度ではなく「空気の循環」です。
1. 「温度成層」の破壊(サーキュレーターの活用)
暖かい空気は軽いため、天井付近に溜まります。特に北海道の工場、倉庫、天井の高いオフィスでは、床付近(人がいる場所)が18℃でも、天井付近は30℃近くになっていることがよくあります。これを「温度成層」と呼びます。
【対策】
- サーキュレーターや扇風機の冬期活用: 天井に向かって風を送る、または高い位置から空気を撹拌することで、天井の熱を床に下ろします。
- シーリングファンの設定確認: 逆回転(冬用モード)になっているか確認してください。風を直接人に当てず、空気を壁伝いに循環させます。

省エネポイント: 設定温度を1℃下げると、約10%の燃料削減になると言われています。天井の熱を下に下ろすだけで、体感温度は上がり、設定温度を無理なく下げることができます。
2. コールドドラフト(冷気流)の遮断
北海道の窓辺は、冷やされた空気が滝のように床を這う「コールドドラフト現象」が起きます。これが足元の寒さの原因であり、「設定温度を上げろ」というクレームの主因です。
【対策】
- 窓際の遮熱: ロールスクリーンやブラインドは、夜間だけでなく、日中も(採光に支障がない範囲で)下ろすことで、冷気の降下を防げます。
- パーティションの配置: 窓とデスクの間にパーティションを置くだけで、冷気の直撃を防げます。
- 簡易断熱: 梱包用のプチプチ(気泡緩衝材)や専用の断熱シートを窓ガラスに貼るだけでも、驚くほど効果があります。バックヤードや倉庫の窓で即実践してください。
第2章:換気と給排気の「見えないムダ」を塞ぐ
コロナ禍以降、換気が重要視されていますが、北海道の冬において「過剰な換気」は「現金を窓から捨てている」のと同じです。外気-10℃を室内20℃にするには、30℃分の加熱エネルギーが必要です。
1. CO2センサーによる「必要十分」な換気
多くの現場で、換気扇が「回しっぱなし」になっています。
【対策】
- CO2モニターの設置: 室内の二酸化炭素濃度を可視化します。1,000ppmを超えない範囲であれば、換気量を絞っても衛生上問題ありません。
- 間欠運転: 常時換気ではなく、1時間に5分〜10分といったルールを決めて換気を行う運用に変えます。
2. 給気口と排気口のバランス
飲食店や工場でよくあるのが、「排気ファン(キッチンの換気扇など)」は強力なのに、「給気口」が閉まっている、あるいは不足しているケースです。これでは室内が負圧になり、ドアの隙間や窓のサッシから冷たい隙間風が猛烈に吸い込まれます。
【対策】
- 給気口の開放とフィルター清掃: 適切な場所から空気を取り入れ、適切に温めてから室内に入れるルートを確保してください。隙間風による局所的な冷え込みを防ぎます。
第3章:機器メンテナンスが生む利益
「壊れていないからそのまま使う」は、暖房機器においては大きな損失です。汚れた機器は、燃費の悪い車と同じです。
1. フィルター清掃は「コスト」ではなく「投資」
エアコンやファンコイルユニットのフィルターが詰まると、風量が落ちます。すると、設定温度に達するまでに時間がかかり、無駄なエネルギーを消費し続けます。
【対策】
- 2週間に1回の清掃(理想): 少なくとも月に1回は必須です。
- 室外機の雪対策: ヒートポンプ式の場合、室外機が雪に埋もれていませんか?周辺の除雪を行うだけで、熱交換効率が回復します。
2. ボイラーの空気比調整(専門的運用)
ボイラーをお使いの企業様。メンテナンス業者任せにしていませんか?ボイラーの燃焼には最適な空気の量があります。空気が多すぎると排ガスとして熱を捨ててしまい、少なすぎると不完全燃焼になります。
【対策】
- 定期点検時の確認: メンテナンス業者に「空気比(O2濃度)は適正ですか?」と尋ねてみてください。
第4章:北海道ならではの「タイムマネジメント」運用
1. 予熱時間の最適化(早め過ぎない)
「始業時に寒いから」と、2時間も前から暖房を入れているケースがあります。建物の断熱性能にもよりますが、本当に2時間必要でしょうか?
【対策】
- 30分ずらしのテスト: 始動時間を30分遅くしてみてください。それで問題なければ、さらに15分遅くします。これだけで、年間の稼働時間を大幅に削減できます。
- タイマー設定の厳格化: 休日明けと平日でタイマー設定を変えるなど、きめ細やかな設定がカギです。
2. 残業時間の集約(ゾーニング)
ダラダラと広いフロア全体を暖め続ける残業時間は、最もエネルギー効率が悪いです。
【対策】
- 残業エリアの限定: 「18時以降は、Aブロックのみ暖房稼働」とし、残業する人はそこに集まって仕事をするルールにします。
- 個別空調への切り替え: 全館空調を止め、個別の電気ヒーターやひざ掛け、ウォームビズで対応する方が安上がりな場合があります。
第5章:湿度コントロールによる体感温度アップ
北海道の冬は乾燥します。湿度が低いと、汗が蒸発しやすく体感温度が下がります。
【対策】
- 加湿の実践: 湿度を10%上げると、体感温度は1℃上がると言われています。加湿器を併用することで、暖房の設定温度を下げても「暖かい」と感じる環境を作れます。インフルエンザ対策にもなり一石二鳥です。
第6章:社員を巻き込む「省エネの可視化」
最後に、最も難しい「人の意識」についてです。「節約しろ」という命令だけでは、モチベーションは続きません。
1. ウォームビズの「本気」推奨
北海道では室内をTシャツで過ごせるほど暖かくする文化がありますが、これは改めるべきです。
【対策】
- 機能性インナーの支給: 会社ロゴ入りのフリースや、高品質な機能性インナーを会社経費で支給するのも一つの手です。暖房費より安く済む場合が多いです。
2. 数値の共有
「今月の電気代・ガス代」を貼り出すだけでは足りません。
【対策】
- 「昨年対比」と「削減額の使い道」を提示: 「昨年より◯万円削減できました。この分は社員の懇親会費(または設備投資)に回します」など、社員に還元されるメリットを提示することで、協力体制が築けます。
チェックリスト:明日からできるアクションプラン
最後に、すぐに取り組めるアクションをまとめました。
- [ ] サーキュレーター・扇風機を設置し、天井の空気を撹拌したか?
- [ ] 窓のブラインド・ロールスクリーンを適切に活用しているか?
- [ ] フィルター掃除はいつ行ったか記録されているか?
- [ ] 誰もいない部屋(倉庫、会議室)の暖房が入ったままになっていないか?
- [ ] CO2センサーで換気状況をチェックしたか?(換気しすぎていないか?)
- [ ] 湿度計を設置し、湿度40%〜50%を維持できているか?
- [ ] 始業前の予熱運転時間を、あと15分短縮できないかテストしたか?
それでも下がらない、もっと抜本的に見直したい場合は
ここまでご紹介した「運用改善」は、即効性があり、コストもかからない重要なステップです。しかし、建物の構造上の問題や、設備の老朽化、あるいは契約プランの不適合など、専門的な診断・分析を行わなければ解決できない課題も多く存在します。
特に北海道のエネルギー事情は特殊です。寒冷地特有の設備知識と、最新の補助金情報、そして電力・ガス契約の専門知識を掛け合わせる必要があります。
「自社でできることはやった。でも、もっとコストを下げたい」 「プロの目で、今の設備と運用が適正なのか診断してほしい」 「省エネ補助金を使って、賢く設備更新をしたい」
そのようにお考えの企業の担当者様、経営者様。 ぜひ一度、totoka(トトカ)にご相談ください。
totokaは、北海道の企業のエネルギーコスト削減を全力でサポートするパートナーです。現状の診断から、運用改善のサポート、最適な設備の提案まで、ワンストップでお手伝いします。
エネルギーコストの悩みから解放され、本業に集中できる環境を一緒に作りましょう。まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。

