「総務さん、今の温度設定だと寒くて仕事になりません!」 「いや、こっちの席は暑いくらいなんだけど……」 「社長からは、今月の暖房費が高すぎるから設定温度を下げろと言われているし……」
札幌をはじめ、北海道内の企業様であれば、冬場に一度はこのような会話が飛び交った経験があるのではないでしょうか。
総務・経理担当者様や施設管理者様にとって、冬の「室温管理」は非常に悩ましい問題です。従業員の快適性を取れば光熱費(エネルギーコスト)が跳ね上がり、コスト削減を優先すれば「寒すぎる」というクレームや、風邪による欠勤リスクを招いてしまいます。特に北海道の冬は厳しく、暖房コストは経営を圧迫する大きな要因です。
しかし、実は「快適さ」と「省エネ」は、正しい知識とルール作りがあれば両立可能です。 重要なのは、単に設定温度を「◯℃」と決めることではなく、体感温度をコントロールする環境作りと、全員が納得できる運用ルールを策定することです。
この記事では、北海道の法人向けエネルギーコンサル会社「totoka」が、クレームを生まない「室温ルール」の具体的な決め方と、今すぐ実践できる対策、そしてプロに任せるべきポイントを徹底解説します。これを読めば、明日から社内の「空調論争」を終わらせるヒントが見つかるはずです。
北海道のオフィスで「設定温度20℃」がうまくいかない理由
省エネの指針としてよく耳にする「暖房時の室温20℃設定」。環境省の推奨するウォームビズでも馴染みのある数字ですが、北海道のオフィスや店舗でこれをそのまま適用すると、多くの現場で「寒い」という不満が噴出します。
なぜ、マニュアル通りの温度設定ではうまくいかないのでしょうか。まずはその原因を「北海道特有の事情」から紐解いていきましょう。
「室温」と「体感温度」の大きなギャップ
エアコンや暖房機のリモコン設定が20℃になっていても、従業員が座っている場所の温度が20℃とは限りません。特に北海道の建物は、外気温がマイナス10℃を下回ることも珍しくないため、窓際や壁際の温度は極端に低くなります。
人間が感じる暖かさ(体感温度)は、以下の計算式で簡易的に表すことができます。
体感温度(作用温度)の目安
≒(室温 + 周りの壁・床・天井などの平均表面温度)÷2※空気の流れが弱い普通の室内環境での、おおよその目安です
例えば、室内の空気が20℃あっても、冷え切った窓ガラスや壁の表面温度が10℃だった場合、体感温度は「15℃」程度にしか感じられません。これでは、いくら設定温度を守っても「寒い」と感じるのは当然です。 北海道においては、単に空気を暖めるだけでなく、「冷えの侵入(コールドドラフト)」を防ぐ視点が不可欠なのです。
暖房方式による「温度ムラ」の発生
北海道のオフィスや施設では、FF式石油ストーブ、セントラルヒーティング(パネルヒーター)、業務用エアコンなど、多様な暖房機器が使われています。 特に、天井が高い空間で温風暖房(エアコンやファンヒーター)を使っている場合、暖かい空気はすべて天井付近に溜まり、足元は冷え切ったままという「温度ムラ」が発生しやすくなります。 「頭はのぼせるのに足先は凍える」という状態は、不快指数が高いだけでなく、仕事のパフォーマンス低下にも直結します。
クレームゼロを目指す!「室温ルール」策定の3ステップ
では、具体的にどのような手順でルールを決めればよいのでしょうか。総務担当者が主導して進めるべき3つのステップをご紹介します。
ステップ1:現状の「見える化」から始める
いきなり「明日から20℃固定です」と通達を出すのはNGです。まずは、社内の現状を正確に把握しましょう。
- 温度計・湿度計の設置: 部屋の中央だけでなく、窓際、出入り口付近、部屋の隅など、複数箇所に温湿度計を設置してデータを取ります。 (※デジタル式の安価なもので構いません)
- 「寒い場所」の特定: 従業員へのアンケートやヒアリングで、具体的に「どの席が寒いのか」「どの時間帯が辛いのか」を特定します。
このデータがあることで、「窓際の席は寒くなりやすいから、そこに合わせて対策をしよう」という建設的な議論が可能になります。
ステップ2:法的基準と快適性のバランスを知る
労働安全衛生法(事務所衛生基準規則)では、室温について以下のように定められています。
「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない」
法律上の下限は17℃ですが、デスクワークで17℃は寒すぎます。 一般的に、執務空間における快適な室温は22℃〜24℃前後と言われています。 北海道の冬場においては、外気温との差が大きすぎるとヒートショックのリスクもあるため、「22℃前後」を一つの基準ラインとして設定し、そこから±1〜2℃の調整幅を持たせるのが現実的です。
ステップ3:数字ではなく「運用」をルール化する
「設定温度」をルールにするのではなく、「快適に過ごすための運用」をルール化します。
- NG例: 「暖房の設定温度は20℃厳守。変更禁止。」
- OK例: 「室温目安は22℃。ただし、席によって感じ方が違うため、寒さを感じる場合は『◯◯(共有の羽織りもの)』の使用や、サーキュレーターの稼働を優先。それでも寒い場合は、総務へ報告の上で温度調整可とする。」
このように「逃げ道」と「手順」を用意することで、従業員のストレスは大幅に軽減されます。
【即実践】コストをかけずに体感温度を上げるテクニック
設定温度を上げずに、従業員の「寒い」という声を減らす具体的なテクニックをご紹介します。これらは明日からすぐに試せるものばかりです。
1. 湿度のコントロール(加湿)
ここが見落とされがちですが、非常に重要です。 体感温度は湿度が上がると上昇します。同じ室温でも、湿度が30%の時より50%の時の方が暖かく感じます。
北海道の冬は乾燥しやすく、暖房を使うと湿度はさらに下がります。加湿器を適切に配置し、湿度40〜50%をキープすることで、設定温度を1〜2℃下げても快適さを維持できる場合があります。ウイルス対策の観点からも推奨されます。
2. サーキュレーターで空気を撹拌(かくはん)する
暖かい空気は上にたまります。天井付近の暖かい空気を床に下ろすだけで、足元の温度は劇的に改善します。 サーキュレーターや扇風機を上に向けて回し、空気を循環させましょう。これだけで、暖房効率が上がり、無駄なエネルギー消費を抑えられます。
3. 窓際の「コールドドラフト」対策
窓ガラスで冷やされた空気は、重くなって床を這うように室内に流れ込みます(コールドドラフト現象)。 これを防ぐために、以下のような対策が有効です。
- 窓際に衝立(パーティション)を置く
- 厚手のカーテンに変える(裾を床に垂らす長さにする)
- 市販の断熱シートや断熱ボードを窓下に設置する
4. 服装の自由化(ウォームビズの推進)
「室温ルール」とセットで考えるべきなのが「服装ルール」です。 制服がある場合でも、冬場はカーディガンやフリース、ひざ掛けの使用を積極的に認める、あるいは会社側で支給するといった配慮が必要です。 「首・手首・足首」の3つの首を温めることが体感温度アップの鍵ですので、ネックウォーマーやレッグウォーマーの使用を許可するのも一つの手です。
専門家に相談すべき「設備」と「契約」の見直し
ここまでは「運用」での対策をお伝えしましたが、建物の構造や設備の老朽化、契約プラン自体に問題がある場合は、社内の努力だけでは限界があります。 以下のような兆候がある場合は、エネルギーの専門家による診断をおすすめします。
1. 暖房機器が10年以上前のものである
北海道の暖房機器(ボイラー、空調機)の進化は目覚ましいものがあります。 15年前のエアコンと最新の寒冷地向けエアコンでは、省エネ性能(APFなど)に大きな差があります。 古い機器を使い続けることは、燃費の悪い車に乗り続けているのと同じです。入れ替えのイニシャルコストがかかっても、月々のランニングコスト削減分で数年で回収できるケースも多々あります。
2. 建物の断熱性能が低い
「窓際がどうしても寒い」「暖房を切るとすぐに冷える」 これは建物の断熱性能不足が原因かもしれません。 大規模な改修工事をしなくても、内窓(二重窓)の設置や、ガラスへの遮熱・断熱フィルム施工など、比較的安価で効果の高い方法は存在します。これらは補助金の対象になることも多いため、専門知識に基づいた判断が必要です。
3. 電力・ガスの契約プランが実態に合っていない
「うちは昔からこのプランだから」と、契約内容を何年も見直していない企業様は非常に多いです。 使用する時間帯やピーク時の電力使用量(デマンド値)に合わせた最適なプランに変更するだけで、設備投資ゼロで年間数十万円〜数百万円のコスト削減につながるケースも、北海道内の中小企業様で実際に起きています。
北海道での成功事例:A社(札幌市・卸売業)のケース
ここで、totokaがお手伝いした札幌市内の企業様の事例を簡単にご紹介します。
- 課題: 3階建ての自社ビル。冬場のガス代が高騰しており、かつ3階のオフィスが暑く、1階の倉庫兼事務所が寒いという温度ムラに悩んでいた。
- 対策:
- 現状診断: エネルギー診断を実施し、ガスの契約プランが使用状況に対して割高であることを発見。
- 契約変更: 北海道の地域特性に合った新電力・ガスプランへ切り替え。
- 設備調整: 1階の搬入口にビニールカーテンを設置し、冷気の侵入を抑制。3階にはサーキュレーターを導入。
- 結果: 従業員の体感温度が改善され、「寒い」というクレームが激減。さらに、年間の光熱費は約15%(約80万円)の削減に成功しました。
このように、少しの工夫とプロの視点が入ることで、劇的な改善が見込めるのがエネルギーコストの世界です。
4. まとめ
本記事では、北海道のオフィスにおける「室温ルール」の決め方と、省エネ対策について解説しました。 重要なポイントを振り返ります。
- 設定温度=体感温度ではない。 北海道では「壁からの冷気(輻射熱)」と「隙間風(コールドドラフト)」対策が必須。
- 一律の温度管理はNG。 場所ごとの温度ムラを把握し、席替えやサーキュレーターで調整する。
- 湿度は天然の暖房。 加湿することで体感温度を上げ、ウイルスの抑制にもつなげる。
- 運用だけで限界ならプロに相談。 設備の老朽化や契約プランの見直しは、最も手っ取り早いコスト削減策になる。
【まずはここから!総務担当者がやるべき3ステップ】
- 現状把握: 直近1年間の電気・ガス・灯油の明細を用意し、月ごとのコスト変動を確認する。
- 現場チェック: 温湿度計を持って社内を回り、「寒い場所」「暑い場所」を地図に落とし込む。
- 専門家診断: 「これ以上は自力では難しい」と感じたら、明細を持って専門家に無料診断を依頼する。
5. totokaへの相談導線
「今の光熱費は適正なの?」「うちのオフィスの寒さはどうすれば解決できる?」 そう思われたら、まずは北海道の法人向けエネルギーコンサル会社「totoka(トトカ)」にご相談ください。
totokaでは、北海道の気候やエネルギー事情に精通したアドバイザーが、御社の「見えない無駄」を徹底的に洗い出します。
【totokaの無料エネルギー診断】 以下の資料をご用意いただければ、無料で診断・シミュレーションが可能です。
- 過去12ヶ月分の電気・ガス等の明細書
- (可能であれば)現在の設備機器の型番や図面
「何か新しい機器を売りつけられるのでは……」というご心配は無用です。 まずは「現状の契約の見直し」や「運用の改善」など、コストのかからない方法から優先的にご提案いたします。
おとなりで一緒に考える相談役として、まずは御社の「困った」をお聞かせください。

