北海道の企業経営や総務を担当されている皆様、電気料金の高騰や設備の老朽化、そして環境規制への対応に頭を悩ませていませんか?特に、事業所で稼働している変圧器は、電力供給の要でありながら、古い設備であるほど多くの電力を消費し、電気料金を押し上げる要因となります。さらに、昭和52年頃までに製造された油入変圧器には、有害物質であるPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている、あるいは汚染されている可能性があり、2027年3月31日という処分期限が迫っています。この期限を過ぎると、PCB汚染変圧器を処分することができなくなり、法的なリスクや事業継続への影響が懸念されます。
電気代の削減も喫緊の課題であり、省エネ性能の高い最新設備への更新を検討されている企業も多いでしょう。しかし、設備の交換には多額の費用がかかり、投資判断が難しいと感じているかもしれません。
ご安心ください。こうした北海道企業の皆様の課題解決を後押しする国の補助金制度があります。それが、「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(地域共生型廃棄物発電等導入促進事業(うち PCBに汚染された変圧器の高効率化による CO2削減推進事業))」です。この補助金は、PCBに汚染された変圧器を高効率変圧器に交換することで、エネルギー起源のCO2排出量を削減するとともに、交換によって発生するPCB廃棄物を早期に処理し、災害時の環境汚染リスクを低減するという、複数の政策目的を同時に達成することを目的としています。
本コラムでは、この補助金制度の詳細と活用方法を、北海道の企業担当者の皆様に分かりやすく解説します。この補助金を活用することで、電気代の削減、CO2排出量の削減、そして法規制への対応(PCB廃棄物の適正処理)を同時に、かつ費用負担を抑えながら実現することが可能となります。
基礎知識:PCB汚染変圧器と高効率変圧器の基本
PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、人工的に作られた、主に油状の化学物質です。絶縁性が高く、燃えにくいという特性から、電気機器の絶縁油などに広く使用されていました。しかし、毒性が強く、環境中に長く残留し、生物に蓄積されやすい(生物濃縮率が高い)ことから、人の健康に重大な影響を及ぼすことが明らかになりました。このため、日本では昭和47年(1972年)に製造・使用が原則禁止されています。
変圧器とPCB汚染のリスク
昭和28年(1953年)から昭和47年(1972年)にかけて国内で製造された変圧器の一部には、意図的にPCBが使用されていました。さらに、昭和52年(1977年)頃までに製造された油入変圧器の中には、製造工程において微量のPCBが混入してしまった可能性のあるものも存在します。特に、平成5年(1993年)以前に製造された油入変圧器は、低濃度PCB汚染の疑いがあります。

これらのPCB汚染変圧器は、現在使用中であっても、法に基づき適切に管理し、期限までに処分する必要があります。低濃度PCB廃棄物の処分期間は、令和9年(2027年)3月31日までと定められており、この期限を過ぎると処分ができなくなります。
高効率変圧器による省エネ効果
変圧器は、事業所の電力使用に不可欠な設備です。古い変圧器は、変換ロスが大きく、多くの無駄な電力を消費しています。一方、最新の高効率変圧器は、エネルギー変換効率が大幅に向上しており、電力ロスを削減することで電気料金の削減に貢献します。
本補助金制度の対象となる高効率変圧器は、省エネルギー基準達成率125%以上を達成しているものです。このような高効率変圧器への交換は、継続的なエネルギーコスト削減とCO2排出量削減に繋がります。
補助金制度の概要:地域共生型廃棄物発電等導入促進事業
本補助金は、環境省が所管する事業で、「PCBに汚染された変圧器の高効率化によるCO2削減推進事業」は、PCB汚染変圧器対策と省エネ・CO2削減を同時に推進することを目的としています。
補助対象となる事業の種類
本補助金の対象となる事業は、以下の3種類です。
- 変圧器のPCB分析調査事業(調査事業): PCB含有の有無を確認するための分析調査費用を補助。
- PCB汚染変圧器を高効率変圧器に交換する事業(交換事業): PCB汚染が判明した変圧器を高効率変圧器に交換する費用を補助。リースも対象。
- 変圧器のPCB分析調査及び交換を行う事業(調査交換事業): 上記の調査と交換を一体的に行う事業。
補助対象となる経費
補助の対象となる経費は、人件費、業務費、工事費、設備費、事務費など、事業区分によって定められています。
補助金の交付対象者
民間事業者(民間企業、個人事業主、個人を含む)、一般社団法人・財団法人、法律により設立された法人、リース事業者などが対象です。
補助金の交付額(補助率)と上限
- 調査事業: 対象経費の10分の1
- 交換事業: 対象経費の3分の1(ただし変圧器1台あたり100万円が上限)
- 調査交換事業: 上記の合計額


補助金活用の具体策と申請プロセス

補助金活用のステップ
- 調査(STEP 1): 古い油入変圧器のPCB濃度を分析調査します(「調査事業」を活用可能)。
- 判別(STEP 2): 分析結果に基づき、PCB汚染の有無を判別します。
- 交換・処分(STEP 3): PCB汚染が判明した場合、高効率変圧器への交換工事を行い、PCB廃棄物を適正に処理します(「交換事業」または「調査交換事業」を活用可能)。
対象となる変圧器の要件
補助の対象は、現在使用中で電路に接続されているものです。交換対象はPCB汚染が判明した変圧器で、新設する高効率変圧器は省エネルギー基準達成率が125%以上である必要があります。
申請期間と提出方法
令和7年度の公募は、一次と二次に分けて実施されます。
- 一次公募期間: 令和7年5月20日(火)から令和7年7月31日(木) 15時まで
- 二次公募期間: 令和7年9月1日(月)から令和7年10月31日(金) 15時まで
予算額に達し次第、受付を終了する場合があるため早期の申請が推奨されます。申請は原則としてjGrants(電子申請システム)を利用します。
申請に必要な主な書類
交付申請書、実施計画書、経費内訳、変圧器一覧表、図面、CO2削減量計算表、見積書(2者以上必須)、写真など、多くの書類が必要です。
補助金申請から交付までの流れ
- 交付申請: 申請期間内にjGrants等で申請。
- 交付決定: 財団による審査後、交付決定通知書が送付されます。事業の開始(発注・契約)は必ずこの通知の後に行います。
- 事業実施: 計画に基づき、分析調査や交換工事を実施。
- 完了実績報告: 事業完了後、速やかに完了実績報告書を提出(期限:令和8年1月30日)。
- 額の確定・支払い: 報告書審査後、補助金額が確定し、請求書提出後に指定口座へ振り込まれます。
事業完了後の義務
事業完了後も、3年間のCO2削減効果の報告や、帳簿・証拠書類の5年間保存、取得財産の適正管理などの義務があります。
北海道企業における導入事例・シミュレーション
高効率変圧器への交換は、電気代削減と環境対策を同時に実現します。例えば、500kVA超の油入変圧器を交換した場合、年間約20万円以上の電気料金削減が期待できるケースもあります。本補助金を使えば、その交換費用の一部(最大1/3、100万円/台)が補助されるため、投資回収期間を大幅に短縮できます。また、リース方式の活用も可能で、初期投資を抑えられます。
PCB処理助成金との比較と併用について
中小企業向けには、日本産業廃棄物処理振興センターの「低濃度PCB助成金」もあります。これはPCB廃棄物の収集運搬・処分費用が対象です。 本補助金と低濃度PCB助成金は、PCB分析調査費用について併用はできません。ただし、本補助金で「交換費用」の補助を受け、低濃度PCB助成金で「処分費用」の補助を受ける、といった組み合わせは考えられます。それぞれの要件をよく確認し、計画的に進めることが重要です。
低濃度PCB助成金はこちらの記事
申請にあたっての留意事項
- 交付決定前の事業着手は厳禁です。契約・発注は必ず交付決定通知後に行ってください。
- 業者選定は原則2者以上の見積合わせが必要です。
- 補助対象外の費用(既設変圧器の撤去費用、PCB廃棄物の処理費用など)があります。
- 暴力団排除に関する誓約が必要です。
よくある質問(Q&A)
Q1: 申請に必要な書類は何ですか?
A1: 交付申請書、計画書、見積書など多くの書類が必要です。詳細は財団HPのチェックリストをご確認ください。
Q2: 補助金はいつ頃受け取れますか?
A2: 事業完了後の実績報告・審査を経て支払われます。事業完了から交付までには一定の期間がかかります。
Q3: 交付決定前に着手した費用は対象になりますか?
A3: いいえ、対象となりません。必ず交付決定通知の後に事業を開始してください。
Q4: リースでの導入も対象になりますか?
A4: はい、対象となりますが、リース契約に所定の要件があります。
Q5: PCB分析調査のみでも補助対象になりますか?
A5: はい、対象です。補助率は対象経費の10分の1です。
Q6: 低濃度PCB助成金との併用は可能ですか?
A6: 分析調査費用は併用不可です。交換費用と処分費用でそれぞれの制度を組み合わせることは考えられますが、要件の確認が必要です。
Q7: 申請期間はいつまでですか?
A7: 一次公募は令和7年7月31日、二次公募は令和7年10月31日までです。予算に達し次第終了します。
まとめ:北海道企業の変圧器対策は今がチャンス
電気代高騰とPCB処理期限という二つの課題に直面する北海道の企業にとって、本補助金はこれらの課題を同時に解決する絶好の機会です。高効率変圧器への交換による電気代削減と、PCB汚染リスクの除去を、費用負担を抑えながら実現できます。
申請には専門的な知識と多くの工数が必要ですが、株式会社totokaは、最適な補助金活用計画の策定から申請、完了報告までトータルでサポートいたします。お悩みやご不明な点があれば、ぜひtotokaにご相談ください。