北海道は冬が長く、就業時間帯の点灯時間が本州より伸びやすい地域です。同じ台数でも、LED化の効果が出やすいという前提を押さえておきましょう。本稿は、月別の点灯時間差まで考慮した実務シミュレーションと、選定~施工~運用最適化までをまるっと解説します。
- 北海道でLEDが効きやすい理由(季節・低温・屋外環境)
- 「代表ケース」の削減額・回収年の目安
- 誰でもできる省エネ効果の手計算(公式と例題)
- 工事前の配光・IP等級・低温対策などの落とし穴回避
北海道でLEDが効きやすい3つの理由
- 点灯時間の季節差が大きい
冬(11~2月)は就業時間帯の人工照明ニーズが高く、kWh削減が積み上がりやすい。 - 低温環境への適応
蛍光灯は低温で光束や始動特性が悪化しやすい一方、LEDは低温側で光束の立ち上がり・安定性に優位です(ただし製品の使用温度範囲内・結露不可)。 - 屋外・軒下の厳しい環境
降雪・結露・飛沫環境ではJIS C 0920(IEC 60529)のIP等級を満たす器具選定が不可欠。用途に応じてIP65等級などを検討。
シミュレーションの前提
- 台数:100台
- 既設→LEDの消費電力:86W/台 → 36W/台
- 従来FLR40形×2灯(ラピッド等)の器具は86Wの代表値が用例として公表されています。
- LEDは2灯相当で30~40W台の製品が一般的で、従来比 約60%省エネのメーカー公表もあります。
- 電力単価:30円/kWh(契約プラン毎に異なるので変更が必要)
- 点灯率(在室・採光補正):0.9
- 稼働日:22日/月
- 月別点灯時間(札幌相当の体感値・Excelで編集可):
1月11h/2月10.5h/3月10h/4月9h/5月8.5h/6月8h/7月8.5h/8月9h/9月10h/10月10.5h/11月11h/12月11h - CO2排出係数:0.532 kg-CO2/kWh(北海道電力 2023年度確報・温対法の調整後排出係数)
誰でもできる!試算の計算方法(公式と手計算例)
1. 入力する数字(自社の値に置き換える)
- N:器具台数(台)
- Wf:既設(蛍光)の消費電力(W/台)
- Wl:LEDの消費電力(W/台)
- p:電力単価(円/kWh)
- u:点灯率(在室・採光補正の係数、0〜1)
- hm:各月の「1日あたり点灯時間(h)」
- dm:各月の稼働日数(日)
- m:年間の保守費削減(円/台/年)
- C:導入単価(円/台)
- EF:CO2排出係数(kg-CO2/kWh)
2. 月ごとの「点灯時間」を出す
- 各月の月間点灯時間(h/月)= hm × dm × u
(例:1月は11h/日 × 22日 × 0.9 = 217.8 h/月)
3. 1台あたりの月間削減kWh
- ΔW(W/台)= Wf − Wl
- 1台あたり月間削減(kWh)= ΔW ÷ 1000 × 月間点灯時間
(例:ΔW=86−36=50W、1月は 0.05 kW × 217.8 = 10.89 kWh/月)
4. 全台数・年間の削減kWh
- 全台数の月間削減(kWh)= 1台あたり月間削減 × N
- 年間削減(kWh)= 12か月分の合計
(例:N=100台 → 1月は 10.89×100=1,089 kWh。12か月合計=11,583 kWh/年)
5. 電気代の年間削減額
- 年間電気代削減(円)= 年間削減kWh × p
(例:11,583 × 30円 = 347,490 円/年)
6. 保守費の削減を足す
- 年間保守費削減(円)= m × N
(例:@500円/台 → 500×100=50,000 円/年)
7. 合計の年間削減額
- 年間合計(円)= 電気代削減 + 保守費削減
(例:347,490 + 50,000 = 397,490 円/年)
8. 回収年・ROI
- 初期費用(円)= C × N(例:1万円×100台=1,000,000 円)
- 単純回収(年)= 初期費用 ÷ 年間合計削減額(= 約 2.5 年)
- 目安ROI(年率)= 年間合計削減額 ÷ 初期費用(= 約39.7%/年)
9. CO2削減量
- 年間CO2削減(kg)= 年間削減kWh × EF
(例:11,583 × 0.532 = 6,162 kg ≒ 6.16 t-CO2/年)
工事前チェック:配光・照度・グレア
- 必要照度と均斉度:業務内容に見合う照度(ルクス)と均斉度(最小/平均)を確保。
- 器具間隔Sと高さH:S/H比でムラやグレアの発生をチェック。
- 雪面反射の眩しさ:冬季は反射が強い。配光(カットオフ・ルーバー等)で対策。
屋外・軒下・低温環境の注意
- IP等級の確認:JIS C 0920(IEC 60529)の防塵・防水等級(例:IP65)を用途に応じて選定。
- 防湿・防雨形の採用:軒下・開放通路・厨房などは該当ラインアップを。
- 低温特性の理解:蛍光は低温で不利、LEDは低温寄りで有利(仕様範囲内・結露不可)。
- 低温倉庫の知見:LEDは低温下でも効率よく発光し、場合によっては冷凍負荷低減にも寄与。
よくある落とし穴(回避リスト)
- 既設Wの見積もりミス:安定器損を含めず「40W×2=80W」で見積もると誤差拡大。86Wの代表値(実機例)を参考に型式確認を。
- 屋外・寒冷要件の不足:IP等級・使用温度・結露条件の未確認は早期故障の原因。
- 眩しさ・配光の軽視:雪面反射、作業面グレア。配光カーブ・ルーバーで対策。
- 運用ルール不在:人感・スケジュール設定、朝の一斉起動回避の明文化が必須。
見積~導入~運用のステップ(テンプレ)
- 現地調査:台数・形式・高さ・既設W・使用時間・ゾーニングを棚卸し。
- 簡易シミュ:本記事の式 or Excelで、kWh/円/CO2・回収年を算出。
- 配光・器具選定:照度・均斉度・グレア・保守性、屋外はIP等級を確認。
- 契約・資金計画:一括・レンタル・リース、補助金併用。
- 施工:休業日・夜間施工の計画、完了後の検査・設定。
- 運用最適化:人感・スケジュール・段調光で“上乗せ”、朝の一斉点灯は避ける。
- 効果検証:請求書・BEMSのデータで実測の省エネ率を確認し、次の区画に横展開。
施設タイプ別の着眼点(北海道版)
- オフィス・小売:入口・バックヤードなど常時点灯区画から着手。昼光利用で点灯率を下げる。
- 倉庫・物流:天井高と低温に配慮。人感+遅延消灯でムダ点灯削減。
- 屋外・外灯:耐寒・IP等級・配光(雪面反射)に配慮。冬季は点灯時間が長い。
- 冷蔵・低温空間:LEDの低温適性を活用。頻繁なON/OFFでも蛍光より劣化影響が小さい傾向。
- 共用部・非常用:法令基準に適合する非常用照明・電源方式を選定。点検周期を運用ルール化。
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