北海道企業の断熱について解説!!窓まわり省エネ(内窓/ブラインド/フィルム)の正解

はじめに:北海道の建物で“窓”が特別な理由

北海道のオフィスや店舗・工場では、暖房期間が長く、外気温が低い日が続きます。外壁や屋根をいくら断熱していても、窓が弱いままだと「足元がスースーする」「窓際だけ寒い」「結露で内装が傷む」といった不満が残りがち。近年は夏の高温日も増え、西日や眩しさ対策も無視できません。
本稿では、内窓(=二重窓)/ブラインド(内付・外付)/窓用フィルムの3系統を、北海道の気候でどう使い分けるのが合理的かを、回収期間の目安まで踏み込んで解説します。専門用語はできるだけ噛み砕き、出てきた用語も簡単に補足します。


まず押さえる基礎(むずかしい話を簡単に)

  • U値(熱貫流率):窓が「どれだけ熱を逃がすか」を示す数値(W/㎡K)。小さいほど暖かい
  • 日射熱取得率(η値 / SHGC):太陽の熱をどれだけ室内に通すか。小さいほど夏に涼しい
  • 気密:すき間風の少なさ。気流が止まると体感温度が上がる
  • 放射(輻射):冷たい窓面に体の熱が奪われる現象。内窓で“面”を暖かくできると快適。

北海道は暖房優先の地域です。よって基本は「U値を下げて、気流と放射での不快を断つ」が王道。夏の眩しさや西日は外側で遮る発想が効きます。


三つの手段をざっくり比較(結論の骨子)

  • 内窓(樹脂枠×Low-Eガラス推奨)
    断熱・結露・騒音・体感改善まで一気に効く“本命”。費用はかかるが、暖房費の削減効果と快適性が大きい。

  • ブラインド
    • 外付ブラインド/スクリーン:夏の日射遮蔽に最強(“熱”をそもそも入れない)。北海道では西日対策に特に有効。風雪への配慮が必要。
    • 内付(ベネシャン/ハニカム):眩しさ・体感向上に効く。ハニカム(蜂の巣構造)は冬の冷気だまりを抑え、簡易断熱としても優秀。
  • 窓用フィルム
    目的別の選択が肝。**断熱系(Low-E)**は冬のロスを抑える助けに、遮熱系は夏の冷房削減に。UVカット/飛散防止など副次効果も魅力。

内窓が効くメカニズム(体感がガラッと変わる)

内窓は既存サッシの室内側にもう一枚の窓を追加する工法です。

  • 空気層が“断熱材”の役割を果たし、U値が大幅に改善。
  • 窓面の表面温度が上がって、放射冷却感が消える。
  • すき間風(コールドドラフト)が抑えられ、足元の冷えが軽減。
  • 室内側ガラスが暖かくなるため結露も大幅に減る。
  • 遮音(外騒音・路面音)にも効き、会議や接客の質が上がる。

北海道で“とりあえず一手”なら、樹脂枠×Low-E複層の内窓が第一候補です。


ブラインドの使いどころ(外で止めるか、中で整えるか)

外付ブラインド/外付スクリーン

太陽熱はガラスの外で止めるのが最も効果的。日射が室内に入る前に反射・遮蔽できるので、冷房の負担を直接下げます。

  • 西日が強い開口、夏季の暑さを嫌うオフィスに特に有効。
  • 雪・風・着氷への対策(収納・固定・材質選定)が不可欠。
  • 投資額は内付より高めだが、ピーク電力カットにも寄与。

内付(ベネシャン/ハニカム)

  • ベネシャン(横型):眩しさを抑えながら明るさを確保。視環境の改善に最適。
  • ハニカム:セル構造の空気層が冷気の落下(ダウンドラフト)を緩和し、**“簡易内窓”**的に体感を底上げ。既存サッシがそこそこ良いなら費用対効果が出やすい。

フィルムの使いどころ(“貼るだけ”は魅力、でも選定が命)

  • 断熱(Low-E)フィルム:室内側の長波放射を反射し、冬の熱損失を抑える方向に効く。窓のグレードが低いほど相対効果が出やすい。
  • 遮熱フィルム:可視・近赤外をカットし、夏の冷房負荷を低減。北海道では西日が強い窓や庇のない大開口に的を絞ると良い。
  • UV/飛散防止:内装劣化の抑制や防災面の安心が得られる。
  • 注意点:ワイヤー入りガラスや網入りガラスは熱割れリスクや防火規制の確認が必要。管理組合・オーナーの承認が要るケースも。

北海道での“正解の型”(建物タイプ別のおすすめ)

① アルミ単板サッシが多い年季物件

最優先は内窓。樹脂枠×Low-Eガラスで断熱・結露・体感を一気に改善。客席や執務エリアなど人が長時間いる窓から順に
夏の日射が気になる面は、外付スクリーン(収納式)を併用すると万全。

② 既にペアガラスだが窓際が寒いオフィス

ハニカム+内窓のハイブリッドが効く。まずハニカムで低コストの体感改善→効果を確認後、予算に応じて内窓を重点窓だけ追加。眩しさ対策はベネシャンで。

③ 賃貸・短期占有・予算が限られる

断熱系フィルム+ハニカム。施工性が高く、退去時の原状回復も容易。コスト/効果/可逆性のバランスがよい。

④ ショールーム・店舗(採光重視)

高透過のLow-E内窓+ベネシャンで明るさを保ちつつ体感を改善。外付ブラインドでピーク抑制と眩しさコントロール。


回収期間の考え方(ざっくりでも「見える化」)

計算の前提(例)

  • 窓面積:25㎡
  • 室内設定温度:20℃
  • 暖房期:180日×24時間=4,320時間(概念的な平均)
  • 平均温度差:20K(例:外0℃、室内20℃)
  • 既存:単板アルミサッシ(U=6.5) → 改修:内窓Low-E(U=1.6)

手順(数字は“熱損失=U×面積×温度差×時間”の単純化)

  1. 現状の窓熱損失:6.5 × 25 × 20 × 4,320 = 14,040,000 Wh(=14,040 kWh)
  2. 改修後の窓熱損失:1.6 × 25 × 20 × 4,320 = 3,456,000 Wh(=3,456 kWh)
  3. 年間削減量:14,040 − 3,456 = 10,584 kWh(窓由来の暖房負荷の減少)

暖房が灯油ボイラー(効率85%)の場合、灯油1Lあたり約8.66 kWhの有効熱。
10,584 ÷ 8.66 ≒ 1,220 L/年の灯油削減
灯油単価を130円/Lとすると、約158,000円/年の削減。

例えば内窓工事費が120〜150万円(25㎡)なら、回収期間は概ね8〜10年が目安。
既存がペア(U=3.0)
→内窓(U=1.6)なら、同様計算で約3,024 kWh/年の削減。灯油換算約350 L/年45,000円/年程度の削減で、回収はやや長めになります。
※上記は“窓由来の伝導損失”に絞った概算です。実際は気密改善・放射快適性向上による暖房設定温度の引き下げ(1℃下げで約10%前後の削減目安)が効いて、実削減はもう一段良くなるケースが少なくありません。

ブラインド・フィルムの回収

  • 外付ブラインド:北海道では冷房期が短いため単体ROIは長め(6〜12年程度)になりがち。ただしピーク電力抑制・視環境改善・西日対策の価値が大きく、居住性と省エネの両立で採用されやすい。
  • 内付ハニカム:窓が古いほど相対効果が出やすい。体感改善が主目的で、削減は5〜15%/窓由来を見込むイメージ。費用が低ければ回収5〜10年も。
  • 遮熱系フィルム西面・大開口・空調稼働の長い空間に限るとROIが出やすい。電力単価35円/kWh、10㎡の強日射窓で年間100〜300kWh程度の冷房削減を狙え、3〜8年が目安。
  • 断熱系フィルム:暖房優先の北海道と相性が良い。窓グレードが低いほど有利で、5〜10年程度が多い印象。
    ※窓の方位・庇・稼働時間・在室密度で大きくブレるため、事前の簡易シミュレーションが肝です。

結露・カビ・内装劣化をどう止める?

  • 内窓で室内側ガラスを暖かくできると、露点(空気中の水蒸気が水滴になる温度)に達しにくくなり、結露が激減。内装・什器の寿命を延ばし、清掃・補修コストも下げます。
  • ただし、中間空気層の湿気処理(換気口や微通気、開閉運用)は設計の勘所。完全に密閉しすぎる施工は避け、逃げ道を考えます。

法令・安全・運用で見落としやすいポイント

  1. 防火設備の指定:避難経路や防火戸に近い窓は、フィルム・内窓の可否を事前確認。
  2. 熱割れリスク:網入り・熱線吸収系ガラスに遮熱フィルムを貼る場合は、ガラス仕様と方位のチェックが必須。
  3. 風雪対策(外付):収納・固定・材質。着氷時の操作禁止ルールを運用マニュアルに。
  4. 清掃性:外付やハニカムは清掃手順と周期を明文化。
  5. 防犯・避難:内窓の施錠位置、非常時の開放手順を共有。
  6. 景観・日照権:商業地・住宅隣接で外観変更がある場合は合意形成。

“費用対効果”を最大化する順番

  1. 熱損失が大きい窓から(面積×U値×使用時間の大きい順)。
  2. 在室時間が長いゾーンから(体感価値が高い)。
  3. 西面/無庇の大開口外付遮蔽でピーク対策。
  4. 残る不快(眩しさ・チラつき)はベネシャンで微調整。
  5. 短期回収を狙う窓には断熱系フィルムで攻める。

ひとつの工法で“全部を解決”しようとせず、役割分担で組み合わせるのが正解です。


参考:概算コスト感(目安)

  • 内窓(樹脂×Low-E)45,000〜60,000円/㎡(開口・仕様で差)。
  • 外付ブラインド/スクリーン30,000〜60,000円/㎡+支持金物。
  • ハニカム(内付)12,000〜20,000円/㎡
  • 断熱/遮熱フィルム8,000〜18,000円/㎡(ガラス種による)。
    ※足場・高所・防火仕様の有無で上下します。補助金適用で回収は1〜3年短縮も。

失敗しない“事前チェックリスト”

  • 窓の方位・面積・ガラス種/サッシ種(アルミ・樹脂)
  • 在室人数・在室時間/不快感の出る時刻・天候
  • 夏のピーク電力(何時台?)/西日の有無
  • 冬の結露・カビ履歴/窓際の温度・気流感
  • 清掃動線・メンテ性/操作のしやすさ
  • 法令(防火・景観)/管理者の承認フロー
  • 目標:省エネkWh・ピークkW・快適性(窓際着席可)・結露ゼロ …など定量+定性で。

よくある質問(簡潔に)

Q. どれから始めるのが正解?
A. 断熱優先なら内窓。冷房・眩しさに困っている窓は外付遮蔽を併用。短期で費用対効果を出したい窓は断熱系フィルム

Q. すべての窓に同じ対策をするべき?
A. いいえ。窓ごとに役割と使用実態が違うので、重点化が基本。

Q. 既にペアガラスだが効果は出る?
A. 内窓の“気流止め+放射改善”で体感は大きく改善。数値以上の満足が得られやすい。

Q. 結露を完全になくせる?
A. 発生条件(温度・湿度・表面温度)を踏まえた内窓+換気・加湿管理で大幅減。運用の見直しもセットで。


補助金・資金調達で初期費用を分散

  • 国・自治体の省エネ補助金:内窓・ブラインド・フィルムが対象になる枠も。
  • リース・割賦・ESCOキャッシュを温存しながら導入可能。
  • 補助金は省エネ率の根拠仕様適合が肝。採択される企画書づくりはプロと進めるのが近道です。

まとめ:北海道の“窓戦略”はこう組む

  1. 断熱の主役=内窓。体感・結露・騒音まで一挙に改善。
  2. 日射遮蔽の王道=外側。西日・ピーク電力は外付ブラインド/スクリーン。
  3. 調整役=内付ブラインド。眩しさ・視環境・簡易断熱はハニカムが有効。
  4. 低コストの一手=フィルム。窓のグレードと方位で断熱/遮熱を使い分け。
  5. 費用対効果は“重点窓”から。面積×U値×在室時間の三拍子で優先度を決める。

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  • 図面または窓一覧(寸法・方位・ガラス/サッシ種)
  • 暖房方式(燃料・効率、空調の有無)
  • エネルギー請求書(直近12か月)
  • 結露・眩しさ・温熱不満のある時間帯・場所のメモ

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