パッシブ技術とは?外皮断熱・日射遮蔽・自然採光とZEBの関係|北海道の法人向け

パッシブ技術とは、断熱・日射遮蔽・自然換気・昼光利用といった「建物のつくり方」の工夫で、空調や照明に必要なエネルギー(負荷)そのものを減らす技術です。環境省のZEB PORTALでは、建築計画的な技術で建物の負荷を抑え、光や風などの自然エネルギーを活かすものと説明されています。高効率な空調や照明を入れる「アクティブ技術」とは役割が違います。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の考え方では、まずパッシブ技術で負荷を減らし、次に設備を高効率にし、最後に太陽光などで創エネするという順番が基本です。外壁や窓などの「外皮」は、建てた後に替えにくい部分です。そのため、新築や大規模改修のときに、外皮の性能を決めておくことが重要になります。

この記事では、環境省・資源エネルギー庁のZEBの定義、建築物省エネ法での外皮の扱い(2025年4月の省エネ基準適合義務化を含む)、北海道の地域区分(1〜3地域)をもとに、北海道の事務所・店舗・施設で押さえたい外皮断熱・日射遮蔽・日射取得・自然採光・自然換気の基本を整理します。情報は2026年10月27日時点のものです。

この記事でわかること
・パッシブ技術とアクティブ技術・創エネ・エネマネの違い
・ZEB(ZEB Ready・Nearly ZEB・ZEB・ZEB Oriented)の定義とパッシブ技術の位置づけ
・2025年4月の適合義務化で、非住宅の外皮(PAL*)がどう扱われるか
・北海道の地域区分(1〜3地域)と、冬の日射・積雪を踏まえた考え方
・既存の事務所・店舗で取り組む順番と、よくある失敗

更新履歴

  • 2026年10月27日:全面改訂。ZEBの定義、建築物省エネ法(2025年4月の適合義務化、2026年4月の中規模非住宅の基準引上げ)での外皮の扱い、北海道の地域区分、日射取得・自然換気、既存建物での取り組み方、FAQを追加。根拠を確認できない記述を削除
  • 2023年5月8日:初版公開

1. パッシブ技術とは?アクティブ技術・創エネ・エネマネとの違い

環境省のZEB PORTALでは、ZEBを実現する技術を「省エネ技術」と「創エネ技術」に分け、さらに省エネ技術を「パッシブ技術」と「アクティブ技術」に分けています。運用段階では、エネルギーの使い方を管理する「エネマネ技術」も重要とされています。

分類 役割 主な技術の例
パッシブ技術(省エネ) 建物が必要とするエネルギー(負荷)を減らす 外皮断熱(高性能断熱材、Low-E複層ガラスなどの高性能断熱・遮熱窓)、日射遮蔽(ブラインド、ルーバー、庇、高性能ガラス)、自然採光(トップライト、ライトシェルフ、光ダクト)、自然換気
アクティブ技術(省エネ) 必要なエネルギーを無駄なく使う 高効率空調、LED照明と照明制御(人感センサー・明るさセンサーなど)、全熱交換器などの高効率換気
創エネ技術 エネルギーをつくる 太陽光発電(屋上設置、建材一体型など)
エネマネ技術 運用段階で無駄を見つけ、継続的に減らす BEMS(ビルエネルギー管理システム)

表:ZEBを実現する技術の分類(環境省 ZEB PORTAL「ZEBを実現するための技術」「用語集」をもとに作成)

ZEB PORTALの用語集では、パッシブ技術を「断熱、日射遮蔽、自然換気、昼光利用といった建築計画的な技術」と説明しています。設備を「効率よく動かす」のではなく、そもそも設備を動かす必要を小さくするのがパッシブ技術です。

ZEBで検討する順番

資源エネルギー庁のZEBロードマップ検討委員会の資料では、ZEBの実現に向けたアプローチを次の順で示しています。

1
負荷の抑制:高断熱化、日射遮蔽など(パッシブ技術)
▼
2
自然エネルギーの利用:自然換気、昼光利用など(再生可能エネルギーは含まない)
▼
3
設備システムの高効率化:高効率空調・照明など(アクティブ技術)
▼
4
エネルギーの創出:太陽光発電など(創エネ技術)

図:ZEB実現のアプローチ(資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会におけるZEBの定義・今後の施策など」をもとに作成)

ポイント:順番を逆にしない

負荷が大きいまま設備だけを高効率にすると、必要以上に大きな設備を選ぶことになりがちです(推測)。まず負荷を減らしてから設備の容量を決める、という順番がZEBの基本的な考え方です。

2. ZEBの定義とパッシブ技術の位置づけ

ZEBは、資源エネルギー庁のZEBロードマップ検討委員会(2015年12月とりまとめ)で定義されました。建物の一次エネルギー消費量を、省エネ基準の基準値からどれだけ減らしたかで4段階に分けます。

区分 再エネを除いた削減率 再エネを含めた削減率 その他の条件
ZEB 50%以上 100%以上 ―
Nearly ZEB 50%以上 75%以上100%未満 ―
ZEB Ready 50%以上 ― ―
ZEB Oriented 事務所等・学校等・工場等:40%以上
ホテル等・病院等・百貨店等・飲食店等・集会所等:30%以上
― 延べ面積10,000㎡以上。未評価技術の導入

表:ZEBの定量的な定義(環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」をもとに作成。ZEB Orientedは2019年3月のZEBロードマップフォローアップ委員会で追加)

評価の対象になる一次エネルギーは、空調・換気・照明・給湯・昇降機です。OA機器などの「その他」は含みません。再生可能エネルギーは敷地内(オンサイト)のものに限られます。

パッシブ技術は、この定義の中で次のように位置づけられています。

  • ZEB PORTALでは、ZEB Readyを「外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物」と説明しています。
  • 資源エネルギー庁の資料では、建築計画的な手法(パッシブ手法)を最大限に活用すること、長寿命で改修が難しい建築外皮を高度化することが求められています。

つまり、ZEBの「50%以上の削減」は設備の高効率化だけで目指すものではなく、外皮で負荷を減らすことが前提になっています。ZEBの基本は「ZEB(ゼロエネルギービル)の条件とメリット」でも解説しています。

3. 建築物省エネ法での外皮の扱い(2025年4月の適合義務化)

2025年4月1日に改正建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)が全面施行され、原則すべての住宅・非住宅の新築・増改築で、省エネ基準への適合が義務になりました。ただし、非住宅建築物(事務所・店舗・施設など)の場合、適合が求められる基準は一次エネルギー消費量の基準です。

適合義務の対象 2025年4月1日以降に工事に着手する、原則すべての建築物の新築・増改築(空調設備を設ける必要がない用途や、政令で定める小規模なものなどは除く)
増改築の扱い 増改築する部分のみが基準に適合すればよい(以前は既存部分を含む建物全体)
非住宅の省エネ基準 一次エネルギー消費量の基準(BEI)のみ。外皮の基準(PAL*)は省エネ基準に含まれない。仕様基準はなく、計算で適合を示す
住宅の省エネ基準 外皮の基準(UA値・ηAC値)と一次エネルギー消費量の基準の両方
非住宅の誘導基準 外皮:BPI 1.0以下(2022年10月から)。一次エネルギー:事務所等・学校等・工場等はBEI 0.6以下、ホテル等・病院等・百貨店等・飲食店等・集会所等はBEI 0.7以下(再エネを除く)
今後の方向 遅くとも2030年度までに省エネ基準をZEH・ZEB水準に引き上げ、2030年度以降に新築される建築物でZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す

表:建築物省エネ法での外皮と一次エネルギーの扱い(国土交通省「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する基本的な方針」、同「大規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げ…」、札幌市「建築物省エネ法改正」、国土交通省補助事業の講習テキストなどをもとに作成)

非住宅の一次エネルギー基準は規模と用途で引き上げ済み

非住宅の一次エネルギー消費量の基準は、BEI(設計値÷基準値)で判定します。大規模(2,000㎡以上)は2024年4月から、中規模(300㎡以上2,000㎡未満)は2026年4月1日以降に省エネ適合性判定を申請するものから、次の水準に引き上げられています。

用途 大規模(2,000㎡以上)
2024年4月〜
中規模(300㎡以上2,000㎡未満)
2026年4月〜
小規模(300㎡未満)
工場等 0.75 0.75 1.0
事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等 0.80 0.80 1.0
病院等・飲食店等・集会所等 0.85 0.85 1.0

表:非住宅建築物の省エネ基準(BEI)の水準(国土交通省「大規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げ…」「中規模非住宅建築物の省エネ基準の見直しについて」、国土交通省住宅局 事務連絡「令和8年度からの中規模非住宅建築物の省エネ基準の引き上げについて(周知)」をもとに作成)

注:ここでのBEIは、設計値・基準値とも「その他一次エネルギー消費量」(OA機器など)を除いて計算します。国土交通省の資料では、大規模の水準(2024年4月〜)と2,000㎡未満の1.0の水準は、太陽光発電設備やコージェネレーション設備の発電量のうち自家消費分を含めて判定すると注記されています。一方、ZEBの判定(50%以上削減など)や誘導基準(BEI 0.6・0.7)は再生可能エネルギーを除いて評価するため、同じ「BEI」でも数字の意味が違います。

PAL*(パルスター)とBPIとは

PAL*は、非住宅建築物の外皮性能を表す指標で、建物の屋内周囲空間(外周部の空間)の床面積あたりの年間熱負荷です。BPIは「設計PAL* ÷ 基準PAL*」で、1.0以下なら基準どおりの外皮性能があることを示します。

BPI = 設計PAL* ÷ 基準PAL*

BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量(いずれも、その他一次エネルギー消費量を除く)

重要 「外皮基準が義務でない」=「外皮は関係ない」ではない

非住宅の一次エネルギー消費量の計算でも、空調の評価には外壁・屋根・窓などの外皮の入力が必要です。小規模版のモデル建物法では、窓の仕様、ブラインドや庇の有無も入力します。

一方、国土交通省補助事業のモデル建物法(小規模版)の講習テキストでは、申請時に外皮の仕様をどこまで示すかを説明するなかで、「非住宅用途の場合、外皮性能が最終結果に及ぼす影響は小さい」としています。これは小規模版の計算結果についての説明で、外皮の重要性一般を評価したものではありません。基準への適合(計算上の評価)と、窓際の寒さ・結露・暖房のききといった実際の室内環境は、分けて考える必要があります。

4. 北海道の地域区分(1〜3地域)と寒冷地の考え方

省エネ基準では、全国を気象条件で1〜8の地域に分け、地域ごとに基準値を設定しています。北海道の市町村は、最も寒い1地域から3地域に入ります。1〜3地域は、暖房度日(18-18)で次のように分けられています。

地域区分 暖房度日(18-18) 北海道の主な例(令和元年11月16日以降の区分)
1地域 4,500℃・日以上 夕張市、士別市、名寄市 など
2地域 3,500〜4,500℃・日 札幌市、小樽市、帯広市、釧路市、苫小牧市、北見市、千歳市 など(北海道で最も多い区分)
3地域 3,000〜3,500℃・日 函館市、室蘭市、松前町、江差町 など

表:北海道の地域区分(国土交通省「地域区分の見直し」、住宅の省エネ改修関係資料「別表1 地域区分(令和元年11月16日以降)」、国土交通省補助事業「住宅の省エネルギー設計と施工2023(1〜3地域版)」をもとに作成)

地域区分は、令和元年(2019年)11月16日から新しい区分になっています。伊達市・八雲町・枝幸町・幕別町のように、同じ市町村でも旧町村の区域で地域区分が分かれるところがあります。設計や計算では、建物の所在地の区分を国土交通省の資料で確認してください。

北海道 北海道では「冬の日射を取り込む」視点も大切

国土交通省補助事業の1〜3地域向けテキストでは、十勝・釧路・根室地域は暖房期の日射に恵まれ、日射の少ない地域でも多い地域の7〜8割程度の日射が得られるとしています。室内に入る日射は、夏は暑さの原因になる一方、冬は暖房負荷を減らします。

ただし、冬は太陽高度が低いため、周囲の建物や樹木で日射がさえぎられることがあります。南面の軒の出や庇は、太陽高度の季節変化を利用して、夏は日射を遮り、冬は取り入れる手段として挙げられています。テキストは住宅向けですが、日射の性質そのものは事務所・店舗でも同じです。

北海道庁は、断熱・気密性能が高く、全室暖房と計画換気を採用する「北方型住宅」の考え方を示しています。これは住宅の考え方で、事務所・店舗にそのまま当てはまるものではありません。

北海道立総合研究機構(道総研)建築研究本部の研究(平成28〜30年度)では、非住宅建築物の寒冷地の省エネ技術のうち、自然換気、アースチューブ、氷冷熱利用が一般的な計算法に含まれない技術として挙げられています。パッシブな工夫の中には、省エネ計算の数字に表れにくいものがある点も覚えておくとよいでしょう。

5. 外皮断熱:断熱材と窓(開口部)

外皮断熱は、外壁・屋根・床・窓など、室内と屋外を仕切る部分の断熱性能を高めて、熱の出入りを減らす技術です。北海道では、冬に室内の熱が逃げるのを防ぐことが中心になります。

断熱材の種類

ZEB PORTALでは、断熱材の主な種類として次のものを挙げています。

系統 主な断熱材
繊維系 グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー
発泡系 押出法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム

表:断熱材の主な種類(環境省 ZEB PORTAL「ZEBを実現するための技術」をもとに作成)

窓は外皮の中で熱の出入りが最も多い

ZEB PORTALでは、建物の開口部(窓)は外皮の中で最も熱の出入りが多いとしています。窓から入る日射熱は、屋根や外壁から伝わる熱より大きくなりやすいとも説明しています。高性能な窓の例として、Low-E複層ガラスが挙げられています。

Low-E複層ガラスには、日射熱の扱いが違う2つのタイプがあります。国土交通省補助事業のテキスト(1〜3地域の住宅向け)では、次のように説明されています。

タイプ 特徴 効果的な場面
日射遮蔽型 遮熱高断熱Low-E膜を主に室外側のガラスに使う。ガラスの日射熱取得率0.49以下 断熱性を高め、夏の日射の侵入も減らす(冬の日射熱の取得も減る)
日射取得型 高断熱Low-E膜を主に室内側のガラスに使う。ガラスの日射熱取得率0.5以上 日射を室内に通し、室内からの放射熱を反射して暖房効果を高める

表:Low-E複層ガラスの2つのタイプ(令和5年度国土交通省補助事業「住宅の省エネルギー設計と施工2023(1〜3地域版)」第3章をもとに作成)

日射遮蔽型は、夏の日射を減らす代わりに、冬に取り込める日射熱も減らします。テキストは住宅向けですが、ガラスの性質そのものは事務所・店舗でも同じです。北海道の建物では、冬の日射が入る面か、夏の西日や室内の発熱で冷房が必要な面かを分けて考えることになります(推測)。

既存の建物で窓を替えにくい場合は、内窓・窓用フィルム・ブラインドなどの方法があります。比較は「窓まわり省エネ(内窓/ブラインド/フィルム)の正解」、窓際の寒さの原因は「コールドドラフトとは?」で解説しています。

6. 日射遮蔽と日射取得:夏と冬で役割が逆になる

日射遮蔽は、窓や屋根・外壁から入る日射を遮って、冷房負荷を抑える技術です。ZEB PORTALでは、夏は一度室内に日射熱が入ると、その熱を冷やすために冷房エネルギーを大量に使うと説明しています。一方で、冬は日射熱を取り込めたほうが暖房負荷の抑制につながるとしています。

北海道の建物では、暖房期間が長いため、「遮る」だけでなく「冬は取り込む」ことも同時に考える必要があります。ZEB PORTALで日射遮蔽の手法として挙げられているものを、夏と冬の役割で整理すると次のとおりです。

手法 夏の役割 冬の考え方
庇(ひさし) 高い位置からの日射を遮る 低い位置からの日射は取り入れられる(南面で効果を出しやすい)
ブラインド・制御型ブラインド 日射とまぶしさを調整する 日中は開けて日射を取り込み、夜は閉めて窓からの熱の逃げを抑える使い方ができる(推測)
ルーバー・可動ルーバー 外側で日射を遮る 可動式なら角度を変えて日射を取り込める(推測)
高性能ガラス 日射遮蔽型は冷房負荷を抑える 日射取得型は暖房効果を高める。面ごとに選ぶ(推測)

表:日射遮蔽の手法と夏・冬の役割(環境省 ZEB PORTAL、国土交通省補助事業テキストをもとに作成。「推測」は一般的な使い方の見立て)

ポイント:ブラインドは「運用」で効果が変わる

ブラインドは設置するだけでなく、季節と時間帯に合わせて操作して初めて役割を果たします。費用をかけずに始めやすいパッシブな工夫です。運用面の見直しは「設備投資ゼロ(運用改善)からの暖房費削減」も参考にしてください。

7. 自然採光と自然換気

自然採光(昼光利用)

自然採光は、昼の光を室内に取り入れて、照明に使う電気を減らす技術です。ZEB PORTALでは、人工照明のエネルギー消費量は、一般的なオフィスビルで空調の次に多いとされています。主な手法は次のとおりです。

  • トップライト:空間の上部に開口部(天窓)を設ける
  • ライトシェルフ:庇の上面で太陽光を反射させ、天井側に光を入れて室内を明るくする
  • 光ダクトシステム:光を建物の奥まで導く

注意点として、ZEB PORTALは、自然光が必要以上の明るさをもたらすことがあり、執務室では直射光を遮る必要があるとしています。ZEB PORTALは、昼光で必要な明るさを確保できれば、照明の消灯や明るさの調整でエネルギー消費量を減らせるとしています。自然採光で照明の電気を減らすには、昼間に照明を消す・調光する運用や、明るさセンサーによる自動調光(アクティブ技術)と組み合わせる必要があります。照明の考え方は「タスクアンビエント照明」でも解説しています。

北海道 積雪地のトップライトは雪と結露の検討を

積雪のある地域では、屋根面のトップライトが雪で覆われる、ガラス面で結露する、窓まわりから熱が逃げる、といった点を設計段階で確認しておく必要があります(推測)。壁面の窓やライトシェルフなど、屋根に頼らない採光方法も選択肢になります。

自然換気

ZEB PORTALの用語集では、自然換気を「自然通風や建物内の温度差で空気を流動させ、換気すること」と説明しています。窓の配置や吹き抜けなどを使い、機械に頼らずに空気を入れ替える方法です。

北海道では、外気が冷たい冬に換気で熱が逃げることが課題になります。冬の換気では、ZEB PORTALがアクティブ技術として挙げている全熱交換器を使い、自然換気は中間期や夏に使う、という季節での使い分けが考えられます(推測)。換気方式の違いは「第一種・第二種・第三種換気システムの違いと選び方」で解説しています。

8. 既存の事務所・店舗で取り組む順番

パッシブ技術は新築のときに最も取り入れやすい技術ですが、既存の建物でもできることがあります。ZEBのアプローチ(負荷の抑制 → 自然エネルギーの利用 → 設備の高効率化 → 創エネ)に沿うと、次の順番で考えると整理しやすくなります。

1
現状を把握する:月ごとの電気・ガス・灯油の使用量、窓際の寒さや暑さ、結露の場所、日が当たる面を確認する
▼
2
運用で負荷を減らす:ブラインドの開け閉め、換気量や運転時間の見直しなど、費用をかけずにできることから始める
▼
3
窓まわりを改善する:内窓、窓の改修、日射を調整する部材など、熱の出入りが最も多い開口部を優先する
▼
4
設備更新と組み合わせる:空調・照明を更新するときは、負荷を減らした後の状態で容量を決める
▼
5
大規模改修で外皮を見直す:屋根や外壁の改修時期に合わせて断熱を強化する

既存建築物のZEB化や省CO2改修には、国の補助事業もあります。制度の内容は「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」「業務用建築物ストックの省CO2改修調査支援事業」で解説しています。公募の時期や条件は年度ごとに変わるため、最新の公募要領で確認してください。

9. よくある失敗・注意点

注意 夏の日射遮蔽だけを考えて、冬の日射まで遮ってしまう

本州向けの「遮熱」対策をそのまま当てはめると、冬に取り込めたはずの日射まで遮ることがあります。日射遮蔽型と日射取得型のガラスは役割が逆です。面ごと・季節ごとに考えてください。

注意 「非住宅は外皮基準が義務でない」から外皮を軽く見る

2025年4月以降も、非住宅で適合が義務になっているのは一次エネルギー消費量の基準です。ただし、誘導基準ではBPI 1.0以下が求められ、ZEB Readyは外皮の高断熱化を前提にしています。外皮は後から替えにくいため、新築時の判断が長く影響します。

注意 自然採光を入れたのに照明を消さない・調光しない

昼の光が入っても照明がついたままでは、電気は減りません。昼間に窓際の照明を消す・調光するといった運用を決めておくか、明るさセンサーによる調光や窓際の照明の回路分けなど、照明側の仕組みと組み合わせてください。

注意 地域区分を思い込みで決める

北海道でも1〜3地域に分かれ、同じ市町村でも旧町村の区域で区分が違うところがあります。計算や設備選定の前に、国土交通省の地域区分の資料で確認してください。

10. よくある質問(FAQ)

Q1. パッシブ技術とは何ですか?

A. 断熱・日射遮蔽・自然換気・昼光利用など、建築計画の工夫で建物が必要とするエネルギー(負荷)を減らす技術です。環境省のZEB PORTALでは、建物の負荷を抑え、光や風などの自然エネルギーを活かす技術として説明されています。

Q2. パッシブ技術とアクティブ技術の違いは何ですか?

A. パッシブ技術は「必要なエネルギーを減らす」技術、アクティブ技術は高効率な空調・照明・換気設備などで「必要なエネルギーを無駄なく使う」技術です。ZEBでは、まずパッシブ技術で負荷を減らし、その後にアクティブ技術、創エネ技術の順で検討します。

Q3. ZEBとパッシブ技術はどう関係しますか?

A. ZEB Ready以上は、再エネを除いて一次エネルギー消費量を基準から50%以上減らすことが条件です。ZEB PORTALではZEB Readyを「外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物」と説明しており、外皮などのパッシブ技術で負荷を減らすことが前提になっています。

Q4. 2025年4月から、事務所や店舗にも外皮の基準が義務になりましたか?

A. いいえ。2025年4月1日から原則すべての新築・増改築で省エネ基準への適合が義務になりましたが、非住宅建築物の省エネ基準は一次エネルギー消費量の基準(BEI)で、外皮の基準(PAL*)は含まれていません。外皮の基準(BPI 1.0以下)は誘導基準で使われます。住宅は外皮と一次エネルギーの両方が基準です。

Q5. 北海道は省エネ基準の何地域ですか?

A. 北海道の市町村は1〜3地域に入ります。たとえば札幌市・小樽市・帯広市・釧路市などは2地域、函館市・室蘭市は3地域、夕張市・士別市・名寄市は1地域です(令和元年11月16日以降の区分)。同じ市町村でも旧町村の区域で区分が分かれる場合があります。

Q6. 寒冷地でも日射遮蔽は必要ですか?

A. 夏の冷房負荷を抑えるには必要です。ただし北海道は暖房期間が長く、冬の日射は暖房負荷を減らします。南面の庇のように夏は遮って冬は取り入れる方法や、面ごとに日射遮蔽型・日射取得型のガラスを選ぶなど、遮ると取り込むの両方を考えることが大切です。

11. まとめ

  • パッシブ技術は、断熱・日射遮蔽・自然換気・昼光利用などで、建物が必要とするエネルギー(負荷)そのものを減らす技術です。
  • ZEBでは「負荷の抑制 → 自然エネルギーの利用 → 設備の高効率化 → 創エネ」の順で検討します。ZEB Readyは外皮の高断熱化が前提です。
  • 2025年4月から原則すべての新築・増改築で省エネ基準の適合が義務になりましたが、非住宅で義務になっているのは一次エネルギー消費量の基準で、外皮(PAL*)は誘導基準での扱いです。
  • 北海道は1〜3地域に入ります。窓は外皮の中で熱の出入りが最も多く、冬の日射を取り込む視点も欠かせません。
  • 既存の建物では、現状の把握と運用の見直しから始め、窓まわり、設備更新、大規模改修時の外皮強化へと順に進めると整理しやすくなります。

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国の補助制度を使った省エネ診断で、工場・店舗・事務所の設備と運用の改善策をまとめています。

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記事情報
公開日:2023年5月8日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・環境省「ZEBを実現するための技術」(環境省 ZEB PORTAL)
・環境省「ZEBの定義」(環境省 ZEB PORTAL)
・環境省「用語集」(環境省 ZEB PORTAL)
・資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会におけるZEBの定義・今後の施策など」(資源エネルギー庁)
・国土交通省「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する基本的な方針」(国土交通省)
・国土交通省「大規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げ及び分譲マンションに係る住宅トップランナー基準の設定について」(国土交通省)
・国土交通省「中規模非住宅建築物の省エネ基準の見直しについて」(令和6年10月16日公布)(国土交通省)
・国土交通省住宅局 事務連絡「令和8年度からの中規模非住宅建築物の省エネ基準の引き上げについて(周知)」(令和7年11月13日)(国土交通省)
・令和7年度国土交通省補助事業「建築物省エネ法 講習テキスト(小規模非住宅建築物設計者用)」(国土交通省)
・国土交通省「地域区分の見直し」(国土交通省)
・国土交通省 住宅の省エネ改修関係資料「別表1 地域区分(令和元年11月16日以降居住の用に供する場合)」(国土交通省)
・令和5年度国土交通省補助事業「住宅の省エネルギー設計と施工2023(1〜3地域版)」(国土交通省)
・札幌市「【令和7年(2025年)4月施行】建築物省エネ法改正」(札幌市)
・北海道「省エネガイド:住宅も省エネにしよう」(北海道)
・北海道立総合研究機構 建築研究本部「非住宅建築物及び住宅の省エネ適合義務化対応と将来目標水準に関する研究」(道総研)
※2026年10月27日時点の情報です。省エネ基準の水準や地域区分、補助制度は改正・見直しされることがあります。設計・申請の際は、国土交通省・所管行政庁・各制度の最新資料で確認してください。