悪質なデマンド営業に騙されないために|デマンドの仕組みと7つの確認ポイント

「電気の使用量はそれほど増えていないのに、基本料金が下がらない」——北海道の中小企業でこうした悩みを抱える経営者の方は少なくありません。その原因の多くは「デマンド値」にあります。

デマンドコントロールとは、30分単位で見た電力使用のピーク(デマンド値)を抑えることで、高圧電力の基本料金を引き下げる取り組みです。高圧契約の基本料金は「どれだけ使ったか」ではなく「30分単位で見たピークがどれだけ高いか」で決まるため、仕組みを理解すれば管理できるコストになります。

一方で、この仕組みを逆手に取り、「デマンド監視装置」「デマンドコントローラー」を強引に売り込む訪問・電話営業も増えています。この記事では、デマンド値の正確な計算方法を解説したうえで、装置の営業に騙されずに正しく意思決定するための判断基準をまとめます。

この記事でわかること
  • デマンド(最大需要電力)の計算方法と、基本料金が決まる仕組み
  • デマンドを下げると基本料金がいくら変わるのか(試算)
  • デマンドを下げる3つの方法と、それぞれの費用の目安
  • 「電気代が下がる」という営業トークのからくりと見抜き方
  • デマンド監視装置・コントローラー導入前の7つのチェックポイント

1. デマンドコントロールとは?基本料金が「ピーク」で決まる仕組み

① デマンド値とは「30分間の平均使用電力」

デマンド値(最大需要電力)とは、30分間の平均使用電力(kW)のことです。電力会社のスマートメーターは、30分ごとに使った電力量を計測し、その平均値をデマンド値として記録しています。

高圧電力の基本料金は、この「30分単位で見たピーク」を基準に決まります。電力会社は契約者のピーク需要に合わせて送配電設備を準備する必要があるため、ピークが高い事業所ほど基本料金が高くなる仕組みです。

デマンド値の定義30分間の平均使用電力(kW)。30分間の使用電力量(kWh)×2 で求められます
月間最大需要電力その月のデマンド値(30分単位)のうち、最も高かった値
契約電力(高圧500kW未満)当月を含む直近12か月の最大需要電力のうち、最も高い値(実量制)
基本料金基本料金単価 × 契約電力 ×(力率による割引・割増)で算出
対象となる契約主に高圧電力(工場・ビル・病院・店舗など)。低圧契約の多くは30分デマンドで契約電力が自動的に決まる方式ではありません(契約メニューにより異なる)
ポイント:「使用量」と「デマンド」は別物です

1か月の合計使用量(kWh)が同じでも、電力を平らに使う事業所と、特定の30分に集中させる事業所では、契約電力=基本料金が大きく変わります。デマンドコントロールは「使う総量」ではなく「使い方(ピーク)」を見直す取り組みです。

2. デマンド値の計算方法|30分デマンドと契約電力の決まり方

装置の営業を正しく判断するには、まず「デマンド値がどう計算され、基本料金にどうつながるか」を理解することが欠かせません。流れは次の4ステップです。

STEP 1 30分ごとに計測 デマンド値(kW) STEP 2 その月の最大値 月間最大需要電力 STEP 3 直近12か月の最大 = 契約電力が決定 STEP 4 基本料金が確定 12か月間ほぼ固定

図:デマンド値が契約電力・基本料金になるまでの流れ

① 30分デマンドの計算例

デマンド値は「30分間の使用電力量(kWh)を2倍した値(kW)」です。たとえば、ある30分間に150kWhの電力を使った場合、その時間帯のデマンド値は 150kWh × 2 = 300kW となります。

30分間ずっと一定で使う必要はありません。前半15分で多く使い、後半15分で少なく使っても、その30分の「平均」が評価されます。だからこそ「ピークを30分の枠の中で分散させる」ことが対策になります。

② 契約電力を決める「直近12か月ルール」

高圧電力(契約電力500kW未満)では、契約電力は「実量制」で自動的に決まります。具体的には、当月を含む直近12か月の月間最大需要電力のうち、最も高い1つの値がそのまま契約電力になります(500kW以上は電力会社との協議制)。

つまり、ある月にたった一度の高いピークを出してしまうと、その後12か月間、基本料金がその水準に固定されてしまいます。これがデマンド管理で最も重要なポイントです。

契約電力ライン(直近12か月の最大デマンド) 300kW 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 2月の一度のピーク(300kW)が、その後12か月の基本料金を決めてしまう

図:月別デマンド値の推移と契約電力の決まり方(※北海道の電気暖房中心の事業所を想定した試算イメージ)

③ 基本料金の計算式

契約電力が決まると、基本料金は次の式で計算されます。電力会社の高圧電力供給約款に共通する考え方です。

基本料金(月額)= 基本料金単価(円/kW)× 契約電力(kW)×(185 − 力率)÷ 100 ※力率は「電気を効率よく使えているかの指標」。基準は85%です。

式の最後の「力率」部分は、力率割引・割増を表します。力率が85%のときは(185−85)÷100=1.00で割引も割増もなし、力率が90%なら(185−90)÷100=0.95で5%割引になります。力率が基準を下回ると割増です。

ポイント:力率は「契約電力」とは別の節約レバー

力率は進相コンデンサの設置などで改善でき、基本料金の割引につながります。ただし、これはデマンド(契約電力)を下げる話とは別の対策です。営業で「デマンド対策」と「力率改善」が混同して説明されることがあるため、どちらの話なのかを分けて確認しましょう。

3. デマンドを下げると基本料金はいくら変わる?(試算)

デマンドを下げる効果は、契約電力の削減分にそのまま比例します。契約電力300kWの事業所が、ピーク対策で270kW(30kW削減)まで下げられたケースを試算します。

対策前

月 約51万円

契約電力:300kW
基本料金(試算)

対策後

月 約46万円

契約電力:270kW
基本料金(試算)

この試算(基本料金単価1,800円/kW・力率90%と仮定)では、30kWのデマンド削減で基本料金が月額約5万円、年間で約62万円下がる計算になります。基本料金は契約電力に連動するため、削減効果は「契約電力を実際に何kW下げられたか」で決まります。

重要 試算の前提を必ず確認

基本料金単価は契約する電力会社・プランによって異なります。上記はあくまで仮定の数値による試算例です。実際の削減額は、自社の電気料金請求書に記載された「基本料金単価」「契約電力」をもとに計算してください。営業資料の試算も、前提条件が自社の契約と合っているかを必ず確認します。

4. デマンドを下げる3つの方法と費用の目安

デマンドを下げる方法は、大きく3つあります。まず費用ゼロの「運用の工夫」から始めるのが鉄則です。装置はその次の選択肢として検討します。

方法内容費用の目安向いている事業所
① 運用の工夫機器の起動時間をずらす、大型機器の同時使用を避けるなど、使い方の見直し0円すべての事業所(最初に試すべき)
② デマンド監視装置目標デマンドを超えそうなときに警報・メールで知らせる。制御は人が行う(手動制御)数万円〜20万円程度小規模事業所/まず見える化したい場合
③ デマンドコントロールシステム設定した優先順位に従い、空調・照明などを自動で制御する(自動制御)数十万円〜100万円超中規模以上/人手をかけられない施設
ポイント:起動時間をずらして負荷集中を避ける

空調機を3台同時に起動するのではなく、5〜10分ずつ起動時間をずらすことで、立ち上がり時の負荷集中を避けられる場合があります。月曜朝や営業開始直後など、複数設備が一斉に動く時間帯では特に有効です。ただし、デマンドは「30分間の平均」のため、実際に月間最大デマンドが下がるかは、30分単位の使用状況を確認して判断する必要があります。設備投資の前に、まず運用の工夫で「自社のデマンドがどこまで下げられるか」を試すことをおすすめします。

5. 「電気代が下がる」のからくり|営業トークに騙されないために

デマンド監視装置・デマンドコントローラーは有用な設備です。一方で、効果を誇張した訪問・電話営業も見られます。その典型が「電気代が30〜50%下がる」というトークです。

① デマンド対策で下がるのは主に「基本料金」

高圧電力の電気料金は、主に「基本料金」「電力量料金」「再エネ賦課金・燃料費調整など」で構成されます。デマンドコントロールで下げられるのは、このうち基本料金の部分が中心です。

基本料金 約30% 電力量料金 約55% 賦課金・燃調など 約15% デマンド対策が効くのは 「基本料金」部分が中心

図:高圧電力の電気料金の内訳イメージ(※稼働状況により大きく変動する試算例)

デマンドコントロールで直接効果が出やすいのは、主に基本料金です。設備を停止・抑制する運用を伴う場合は使用電力量(電力量料金)が下がることもありますが、「電気代全体が大幅に下がる」とは限りません。「基本料金が30%下がる」と「電気代全体が30%下がる」はまったく違う話です。営業の試算がどちらをベースにした数字なのかを必ず確認してください。

② よくある営業トークと、確認すべきこと

装置の営業でよく聞かれるトークと、その実態・確認ポイントを整理します。

よくある営業トーク実態・確認すべきこと
「電気代が30〜50%下がります」下がるのは主に基本料金部分。電気代全体に対する割合か、基本料金に対する割合かを確認。電力量料金が大きく減るとは限りません。
「初期費用0円・実質無料です」多くはリース契約。リース総額(月額×期間)は機器の本体価格を上回るのが通常。「無料」ではなく「分割」です。
「補助金が使えるので負担なし」補助金には要件・審査・期限があります。「必ず通る」前提の説明は要注意。誰がいつ申請するのかも確認します。
「今日契約すれば特別価格」その場での即決を迫る勧誘は典型的な注意サイン。価格や条件は持ち帰って検討します。
「電力会社も推奨しています」電力会社名・担当部署・公式資料・委任関係の有無を確認。特定の業者・機器を本当に推奨しているのか、口頭説明だけで判断しないことが重要です。
「効果は保証します」保証の算定根拠・条件・未達時の対応を書面で確認。口頭の保証は後で証明が困難です。
重要 その場での契約は避ける

不安をあおる、即決を迫る、社名や連絡先がはっきりしない——こうした勧誘は注意が必要です。事業のために締結した契約は、特定商取引法のクーリング・オフの対象外となる場合があり、契約後の解約は容易ではありません。だからこそ「契約前」の慎重な判断が決定的に重要です。

6. デマンド監視装置・コントローラー導入前の7つのチェックポイント

装置の導入は「悪い選択」ではありません。問題は、仕組みを理解しないまま不利な条件で契約してしまうことです。導入を検討する前に、次の7点を確認してください。

導入前の7つのチェックポイント
  • 自社の契約種別を確認したか(高圧=実量制か/低圧か)
  • 直近12か月の「最大需要電力」を電気料金請求書で確認したか
  • ピークが立つ時間帯・原因となる設備を特定したか
  • まず運用改善(起動時間の分散)で目標を達成できないか試したか
  • 提示された削減額は「基本料金」ベースか「電気代全体」ベースか
  • リースなら総支払額(月額×期間)を本体価格と比較したか
  • 中途解約条件・効果保証の内容を書面で確認し、複数社で相見積もりを取ったか

① 「実質無料」「リース契約」で必ず確認すべきこと

「初期費用0円」の提案は、その多くがリース契約です。リースは「無料」ではなく、機器代金・金利・手数料を月額に分割して長期で支払う仕組みです。契約前に次の点を確認します。

確認項目内容
総支払額月額リース料 × 総回数を計算し、機器の本体価格と比較する
リース期間5〜7年などの長期が一般的。期間中の解約可否を確認
中途解約多くは中途解約不可、または残リース料の一括請求が発生
効果と支払いの関係期待した削減効果が出なくても、リース料の支払い義務は残る
契約満了後再リース・買取・返却のいずれになるかを確認
保守・故障対応保守費用がリース料に含まれるか、別途かを確認
ファイナンス・リースは中途解約が難しい

特にファイナンス・リースの場合、契約期間中の中途解約は原則として難しく、解約時には残期間のリース料や違約金を一括で支払う必要が生じることがあります。「効果が出なければやめればよい」とは考えず、契約前に解約条件を必ず書面で確認してください。

② そもそも装置が不要・効果が薄いケース

デマンド監視装置・コントローラーの効果は、事業所の契約形態や電力の使い方によって大きく変わります。「効果が出やすい事業所」と「効果が限定的な事業所」を見極めることが、無駄な投資を避ける鍵です。

装置の検討余地がある事業所装置の効果が限定的な事業所
・高圧受電(500kW未満の実量制)
・電気空調(ヒートポンプ・EHP)が主力
・大型機器を同時に起動しがち
・デマンド値が月により大きく変動する
・低圧契約(30分デマンドで契約電力が自動的に決まる方式ではない場合が多い)
・灯油・ガス暖房が中心で電気のピークが小さい
・稼働が平準的でピークがほぼ一定
・運用の工夫だけで目標を達成できる規模
・電力量料金の比率が極端に高い
低圧契約への「デマンドコントローラー」営業に注意

低圧契約の多くは、高圧500kW未満のように30分デマンド値で契約電力が自動的に決まる料金体系ではありません。北海道電力の一般的な低圧電力では、主開閉器や負荷設備をもとに契約電力を決める方式が案内されています。低圧契約の事業所にデマンドコントローラーを勧められた場合は、その効果の根拠を慎重に確認してください。ただし、小売電気事業者や料金メニューによって扱いが異なる場合があるため、必ず自社の契約メニューを確認することが大切です。

7. 北海道の事業者が知っておきたいデマンド対策のポイント

北海道の事業所は、冬場のデマンド管理が特に重要です。気候特性を踏まえた判断が、基本料金の差につながります。

北海道 月曜朝の「暖房一斉起動」がピークを生む

北海道の事業所で最もデマンドが跳ね上がりやすいのは、週末に暖房を切っていた建物を月曜朝に全館一斉稼働させるタイミングです。週末に冷え切った建物を一気に暖めようとして、電力のピークが立ちやすくなります。

北海道 デマンド対策・装置検討のポイント

■ 冬の一度のピークが翌冬まで響く
直近12か月ルールにより、2月などに出した高いピークは、その後の夏も含めて1年間の基本料金を押し上げます。冬季のピーク管理が年間コストを左右します。

■ 暖房方式で装置の効果は変わる
ヒートポンプ・EHPなど電気暖房が主力の事業所はデマンド対策の効果が出やすい一方、灯油・ガス暖房が中心の事業所は電気のピークが小さく、装置の効果は限定的になりがちです。

■ 月曜朝の運用見直しは費用ゼロ
金曜の退勤時に暖房を完全オフにせず、設定温度を10〜15℃程度に下げて維持する方法があります。週末のわずかな電力で建物の極端な冷え込みを防ぎ、月曜朝のピークを抑えられます。

■ 秋の「営業シーズン」前に自社データを把握
冬の電気代が話題になりやすい時期は、装置の営業も増える傾向があります(※当社が現場で見聞きする一般的な傾向であり、統計データではありません)。営業を受ける前に、自社の請求書でデマンド値の推移を把握しておくと、提案の妥当性を冷静に判断できます。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. デマンドコントローラーを入れれば、必ず電気代は下がりますか?

A. 必ず下がるとは限りません。下がるのは主に基本料金部分で、効果は契約電力を実際に何kW下げられるかで決まります。運用や設備の状況によっては効果が小さいこともあります。

Q2. 低圧契約でもデマンドコントローラーは効果がありますか?

A. 低圧契約の多くは、30分デマンドで契約電力が自動的に決まる料金体系ではないため、効果は限定的になりがちです。ただし、小売電気事業者や料金メニューによって扱いが異なります。まず自社の契約メニューを電気料金請求書や契約先で確認してください。

Q3. 「実質無料」と言われましたが、本当に負担はゼロですか?

A. 多くはリース契約で、月額料金として長期にわたり支払います。月額×契約期間の総支払額を計算し、機器の本体価格と比較して判断してください。

Q4. 自社のデマンド値は自分で確認できますか?

A. できます。電気料金の請求書(検針票)に「最大需要電力」「契約電力」が記載されています。12か月分を並べると、どの月にピークが立っているかが分かります。

Q5. 訪問販売で契約してしまった場合、解約できますか?

A. 事業のために締結した契約は、特定商取引法のクーリング・オフの対象外となる場合があります。法人契約・事業用契約で困った場合は、まず契約書を確認し、弁護士や中小企業支援機関への相談を検討してください。個人事業主などで判断に迷う場合は、消費者ホットライン188や地域の相談窓口に確認する方法もあります。

9. まとめ

デマンドコントロールは、高圧電力の基本料金を「管理できるコスト」に変える取り組みです。装置の営業に騙されず、正しく意思決定するための要点を整理します。

1
仕組みを理解する
基本料金は30分デマンドの最大値(直近12か月)で決まる。一度のピークが12か月響く。
2
まず費用ゼロの運用改善から
機器の起動を5〜10分ずらすなど、運用の工夫で下げられる範囲をまず試す。
3
営業トークの「ベース」を確認
「電気代が下がる」のか「基本料金が下がる」のか。「実質無料」はリース総額を計算する。
4
契約前に7つのチェックと相見積もり
事業者契約は解約が難しい。即決せず、複数社の見積もりと第三者の意見を取る。

高圧契約の基本料金は、仕組みを理解すれば自社で管理・削減できるコストです。まずは電気料金の請求書を手元に用意し、過去12か月のデマンド値の推移を確認するところから始めてみてください。北海道の事業者は、冬場のピーク管理が一年の基本料金を左右します。

記事情報
公開日:2026年3月28日/最終更新日:2026年5月16日(全面改訂)
参照資料:中小機構 J-Net21「契約電力と30分デマンド値の関係について教えてください。」/北海道電力「電力契約標準約款(高圧)」/北海道電力「契約電力の決定方法のご案内(低圧電力・低圧時間帯別電力)」/消費者庁「特定商取引法ガイド 訪問販売」/公益社団法人リース事業協会「リース契約の特徴」/消費者庁「消費者ホットライン188」
※基本料金単価・契約条件は電力会社やプランにより異なります。本記事の試算は仮定の数値による試算例です。最新の制度内容は各公式情報をご確認ください。