GHPのメーカー比較|ヤンマー・アイシン・パナソニックの違い

結論からお伝えすると、日本冷凍空調工業会(JRAIA)が公表するGHP(ガスヒートポンプエアコン)のメーカーは5社あり、そのうち開発・製造の中心を担うのはヤンマー・アイシン・パナソニックの3社です。3社は東京ガス系・大阪ガス・東邦ガスと共同で高効率シリーズ「GHP XAIR(エグゼア)」を開発しており、低GWP冷媒R32に対応した最新機「XAIR Ⅳ」は2026年4月から順次販売・受注が始まっています(機種により出荷時期は異なります)。

北海道の法人にとってGHPは、排熱利用により厳寒期でも暖房能力が落ちにくく、消費電力がEHP(電気式)の約10分の1(同容量の室外機同士の比較)という、寒冷地と相性の良い空調方式です。しかし「メーカーごとに何が違うのか」を正面から比較した情報は多くありません。

本記事では、GHPメーカー3社の成り立ちと特徴、機能ラインアップの違い、そして北海道の事業者がメーカーを選ぶ際の実務的な視点を整理します。

この記事でわかること
✅ 国内のGHPメーカーは実質何社か(開発3社と販売ブランドの構図)
✅ ヤンマー・アイシン・パナソニック各社の特徴と得意分野
✅ 発電機能付き・停電対応・ハイブリッドなど機能ラインアップの違い
✅ 最新動向:パナソニック×ヤンマーの合弁設立とR32対応「XAIR Ⅳ」
✅ 北海道の事業者がGHPメーカーを選ぶ4つの実務チェックポイント

1. GHPのメーカーは何社ある?開発3社と販売ブランドの構図

① JRAIA掲載メーカーは5社、開発の中心は3社

日本冷凍空調工業会(JRAIA)が公表するGHPメーカーは、アイシン、ダイキン工業、パナソニック HVAC & CCシステムズ、三菱重工サーマルシステムズ、ヤンマーエネルギーシステムの5社です。このうち、最新モデル「GHP XAIR Ⅳ」の共同開発に関わるメーカーは、アイシン・パナソニック・ヤンマーの3社で、東京ガスエンジニアリングソリューションズ・大阪ガス・東邦ガスのガス3社とともに開発を担っています。

GHPとはガスエンジンで圧縮機を駆動するヒートポンプ空調。都市ガス・LPガスの両方に対応
開発・製造メーカーヤンマーエネルギーシステム、アイシン、パナソニック(空質空調社)
共同開発の枠組みガス3社(東京ガスES・大阪ガス・東邦ガス)×メーカー3社で「GHP XAIR」シリーズを開発
最新モデルGHP XAIR Ⅳ(低GWP冷媒R32対応、2026年4月から順次販売・受注開始。機種により出荷時期は異なる)
最大の特長消費電力がEHP(電気式)の約10分の1(同容量の室外機同士の比較)。排熱利用で寒冷地の暖房に強い

② ダイキン・三菱重工もGHPを販売

JRAIA掲載5社のうち、ダイキン工業・三菱重工サーマルシステムズのブランドで販売されるGHPは、開発3社と供給・協力関係のもとで展開されているのが業界の構図です(※供給関係の詳細は各社非公開のため、個別の製造元は推測になります)。なお、過去には日立ブランドのGHPも流通していましたが、現行のJRAIA掲載メーカーには含まれていません。

GHP「XAIR」シリーズの共同開発体制 ガス3社 東京ガスES・大阪ガス・東邦ガス メーカー3社 ヤンマー・アイシン・パナソニック 共同開発 GHP XAIR Ⅳ(R32対応・2026年4月〜) 全国のガス会社・各メーカーブランドを通じて販売

図:GHP XAIRシリーズの共同開発と販売の流れ(各社プレスリリースに基づき作成)

2. ヤンマー・アイシン・パナソニックの違いは?3社の特徴比較

① 3社の比較一覧

項目ヤンマーアイシンパナソニック
正式社名ヤンマーエネルギーシステム株式会社アイシンパナソニック HVAC & CC(旧・空質空調社)※
母体・系列ヤンマー(エンジン専業メーカー)トヨタグループパナソニックグループ
GHP事業の歴史1985年頃から参入1987年から参入1985年に業界初のGHP第1号機を開発
国内シェア(推定)約30%弱—(公表データなし)約30%弱
強み・特色エンジン技術、遠隔監視サービス(RESS)、施設園芸向けGHPハイブリッド空調「スマートマルチ」、リニューアル対応機の充実GHPのパイオニア、室内機ラインアップ、3WAYマルチ(冷暖同時)

※シェアは2024年のパナソニック・ヤンマー合弁合意発表時の報道(両社それぞれ約30%弱)に基づきます。アイシンのシェアは公表情報が確認できないため記載していません。
※パナソニックの空質空調社とコールドチェーンソリューションズ社は、2026年4月1日付で再編され、事業会社「パナソニック HVAC & CC株式会社」が発足しました。業務用空調機器の開発・製造・販売は、グループのパナソニック HVAC & CCシステムズ株式会社が担っています。

② ヤンマー:エンジン屋の技術と遠隔監視サービス

ヤンマーは発動機(エンジン)専業として創業したメーカーで、GHPの心臓部であるガスエンジン技術に強みがあります。24時間の遠隔監視情報サービス「RESS」により、機器の運転状態を常時見守る保守体制を展開しています。また、農業大国・北海道と親和性の高い施設園芸向けGHP(ハウス空調)やGHPチラーなど、業務用途の裾野が広いのも特徴です。

③ アイシン:ハイブリッドとリニューアルに強いトヨタ系

アイシンはトヨタグループの部品メーカーで、1987年からGHP事業を展開しています。GHP(16馬力相当)とEHP(8馬力相当)を同一冷媒系統に接続するハイブリッド空調「スマートマルチ」は、ガスと電気の最適運転制御を行うアイシンの代表的なシステムです。既設冷媒配管を洗浄不要でそのまま再利用できるリニューアル対応機をフルラインアップしており、更新工事のコストを抑えたい場合に選択肢となります。

④ パナソニック:GHPのパイオニア

パナソニックは1985年に業界に先駆けてGHP第1号機を開発・製造したパイオニアです。家庭用・業務用空調で培った室内機のラインアップが厚く、1台の室外機で暖房と冷房の同時運転ができる「3WAYマルチ」など、ビル用途向けのシステム展開に特色があります。なお、GHP事業を担ってきた空質空調社は、2026年4月1日付でコールドチェーンソリューションズ社と統合・再編され、新事業会社「パナソニック HVAC & CC株式会社」として発足しています。

3. 最新動向:パナソニック×ヤンマーの合弁と「XAIR Ⅳ」

① パナソニックとヤンマーが開発・製造の合弁会社を設立(2025年4月)

2024年8月、パナソニックとヤンマーエネルギーシステムは、GHP室外機の開発・製造に関する合弁会社を2025年4月に設立することで合意したと発表しました。その後、2025年4月に「パナソニック・ヤンマーGHP開発製造株式会社」が設立されています。出資比率はパナソニックHD51%・ヤンマーES49%で、パナソニックの群馬工場とヤンマーの岡山工場を拠点とします。合意発表時の報道によれば、合弁会社はGHP室外機の設計製造ベースで約60%の国内シェアを握るとされています。

2023年までの両社の累計出荷実績は約66.6万台に達しており、合弁の狙いは2027年の新冷媒対応を見据えた開発力の結集にあります。販売ブランドは従来どおり各社で継続されるため、ユーザーから見た選択肢がすぐに減るわけではありません。

② 2026年4月から最新機「XAIR Ⅳ」の販売・受注開始

2026年1月、ガス3社とメーカー3社は低GWP冷媒R32に対応した最新モデル「GHP XAIR Ⅳ」を発表し、2026年4月から順次販売・受注が始まっています(機種・メーカーにより出荷時期は異なります)。フロン排出抑制法により、GHPは2027年度から冷媒のGWP規制が始まるため、XAIR ⅣはGWPを従来冷媒の3分の1以下(GWP=675)に抑えて新基準に適合させたモデルです。消費電力がEHPの約10分の1という節電性を維持しながら、従来機比で運転効率を約5%改善しています(※メーカー・機種により公表値が異なるため、個別機種では最新カタログの確認が必要です)。

ポイント:これから導入するなら「R32対応かどうか」を確認

2027年度からの冷媒規制を見据えると、これから新設・更新するGHPはR32対応の最新世代(XAIR Ⅳ)を軸に検討するのが合理的です。旧世代機は価格面で有利な場合がありますが、将来の冷媒補充・機器更新の観点も含めて比較してください。

4. 機能ラインアップの違い|発電・停電対応・ハイブリッド

GHPは基本性能に加えて、発電機能や停電対応などの派生システムがメーカーごとに展開されています。名称と対応状況を整理します。

システム内容展開例(名称)
発電機能付きGHPエンジン余力で発電し、建物側に電力を供給。空調時の消費電力を実質ゼロに近づけるハイパワーエクセル(パナソニック・ヤンマー)ほか
停電対応GHP(電源自立型)停電時も自立運転で空調+照明・通信機器等への電力供給が可能。BCP・避難所対応ハイパワープラス(アイシン・ヤンマーほか)、エクセルプラス(パナソニック)
ハイブリッド空調GHPとEHPを同一冷媒系統で最適運転制御スマートマルチ(アイシン、ヤンマーも展開)
室外機2台連結マルチ低負荷時は1台運転で省エネ。1台故障時のバックアップ運転も可能にこマルチ(ヤンマー)、まとマルチ(アイシン)、Wマルチ(パナソニック)
リニューアル対応機既設冷媒配管を再利用し、更新工事費と工期を低減アイシンがフルラインアップ。他社も展開

※名称・対応機種は販売ルート(ガス会社経由・メーカー直系)により異なる場合があります。導入検討時は最新カタログでご確認ください。

ポイント:北海道胆振東部地震の経験から見直される「停電対応GHP」

2018年の北海道胆振東部地震によるブラックアウトを経験した北海道では、停電時に自立運転できる電源自立型GHPのBCP価値が再評価されています。学校・福祉施設・避難所指定のある施設では、空調更新と防災対策を同時に実現できる選択肢です。

5. 北海道でGHPメーカーを選ぶ4つの実務チェックポイント

弊社が北海道の法人のお客様のGHP導入・更新を支援する際に確認している観点を、4つに整理します。

① 道内の保守・メンテナンス体制

GHPはガスエンジンを搭載するため、エンジンオイル交換などの定期メンテナンスが前提の機器です。メーカーの技術力と同じくらい、設置場所をカバーする道内のサービス網と保守契約の内容が重要になります。遠隔監視サービスの有無、緊急時の駆け付け体制、部品供給を必ず確認してください。

② 積雪対応機能の標準/オプションの違い

XAIRシリーズには積雪時の運転継続機能(室外機ファンによる雪飛ばし制御)がありますが、プレスリリースの注記によれば、パナソニック製・ヤンマー製ではこの機能がオプション扱いです。北海道の多雪地域では、この機能の有無・費用と、防雪フード・高置台などの現地対策をセットで見積に織り込む必要があります。

③ ガス種(都市ガス/LPG)と燃料単価

GHPは都市ガスとLPガスの両方に対応しますが、北海道は都市ガスエリアが札幌圏など一部に限られ、LPG利用の事業所が多いのが実情です。LPG利用の場合はガス単価がランニングコストを大きく左右するため、機器選定とガス調達条件の見直しを同時に行うことが、GHP導入の経済性を高める鍵になります。

④ EHPとの個別シミュレーション比較

GHPかEHPかは、電気料金・ガス料金・運転パターンによって有利不利が変わります。契約電力(デマンド)の削減効果や受変電設備の増強回避まで含めた個別シミュレーションで判断してください。用途別の向き不向きは「厨房・福祉施設・店舗の空調選び|EHPとGHP」で詳しく解説しています。

注意:GHPもフロン排出抑制法の点検対象です

GHPはフロン類を冷媒に使うため、フロン排出抑制法に基づく管理者の簡易点検(3か月ごと)が必要です。定期点検の要否は、EHPと異なり電動機ではなく原動機(エンジン)の定格出力で区分を判断します。詳しくは「業務用エアコンの3ヶ月点検義務」をご覧ください。

北海道でのGHPメーカー選定ポイント(まとめ版)

暖房面の強みは3社共通です:エンジン排熱利用により、氷点下でも暖房能力低下と霜取り停止がほとんど起きない特性は、メーカーによらずGHP共通の強みです。
差が出るのは保守体制と付帯機能です:道内サービス網、遠隔監視、雪飛ばし制御の標準/オプション、停電対応の有無で比較してください。
更新案件はリニューアル対応機を検討します:既設配管を再利用できれば、冬期施工が高コストになりがちな北海道で工期・費用を圧縮できます。
補助金の活用余地を先に確認します:高効率GHPへの更新はSII省エネ補助金等の対象になる場合があり、EHPより高くなりがちな初期費用の負担を軽減できます。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. GHPのメーカーはどこですか?
A. 日本冷凍空調工業会(JRAIA)が公表するGHPメーカーは、アイシン、ダイキン工業、パナソニック HVAC & CCシステムズ、三菱重工サーマルシステムズ、ヤンマーエネルギーシステムの5社です。このうち開発・製造の中心はヤンマー・アイシン・パナソニックの3社で、ガス3社と共同で高効率シリーズ「GHP XAIR」を開発しています。
Q2. GHPメーカーでシェアが高いのはどこですか?
A. 2024年8月の合弁合意発表時の報道によれば、パナソニックとヤンマーがそれぞれ国内シェア約30%弱とされ、2025年4月に設立された両社の合弁会社は室外機の設計製造ベースで約60%のシェアを握るとされています。北海道限定のシェアデータは公開されていません。
Q3. パナソニックとヤンマーが統合すると、選択肢は減りますか?
A. 合弁の対象は室外機の開発・製造で、販売ブランドは従来どおり各社で継続されます。当面はブランド・保守窓口の選択肢は維持される見通しですが、機種構成は今後変わる可能性があるため、導入時は最新のラインアップを確認してください。
Q4. 北海道の寒さでもGHPの暖房は効きますか?
A. 効きます。GHPはガスエンジンの排熱を暖房に利用するため、外気温が氷点下でも暖房能力の低下が小さく、EHPで課題になる霜取り運転による暖房停止もほとんど起きません。北海道の学校・福祉施設・厨房などで採用が進んでいる方式です。
Q5. これから導入するならどの世代の機種を選ぶべきですか?
A. 低GWP冷媒R32に対応した最新世代「GHP XAIR Ⅳ」(2026年4月から順次販売・受注開始。機種により出荷時期は異なります)を軸に検討するのが合理的です。フロン排出抑制法によりGHPは2027年度から冷媒のGWP規制が始まるため、新基準適合機を選ぶことで将来の冷媒対応リスクを避けられます。

7. まとめ

本記事の要点を整理します。

✅ JRAIA掲載のGHPメーカーは5社、開発の中心はヤンマー・アイシン・パナソニックの3社です
✅ ヤンマーはエンジン技術と遠隔監視、アイシンはハイブリッドとリニューアル機、パナソニックはパイオニアとしての室内機展開に特色があります
✅ パナソニックとヤンマーは2024年8月に合弁合意を発表し、2025年4月に開発・製造の合弁会社を設立しました
✅ 2026年4月からR32対応の最新機「XAIR Ⅳ」の販売・受注が順次始まっています
✅ 北海道では保守体制・積雪対応・ガス種・EHPとの個別比較の4点で選定します

記事情報
公開日:2026年7月6日
参照資料:
・東京ガス/大阪ガス/東邦ガス「低GWP冷媒R32に対応したガス冷暖房システムの最新モデル『GHP XAIR(エグゼア)Ⅳ』を開発」(2026年1月15日プレスリリース) https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20260115-01.html
・東京ガスほか「GHP XAIR Ⅲ」開発プレスリリース(2020年2月4日)
・株式会社アイシン「ガスヒートポンプエアコンの新モデルHシリーズ『GHP XAIR Ⅳ』を発売」(2026年)
・パナソニック・ヤンマーエネルギーシステムの合弁に関する各社発表・報道(2024年8月合意発表、2025年4月「パナソニック・ヤンマーGHP開発製造株式会社」設立)
・パナソニック「パナソニック HVAC & CC株式会社が発足」(2026年4月1日プレスリリース) https://news.panasonic.com/jp/press/jn260401-2
・一般社団法人日本冷凍空調工業会「ガスヒートポンプ(GHP)メーカー」 https://www.jraia.or.jp/product/g_heatpump/maker.html
・ヤンマーエネルギーシステム/アイシン各社公式サイト(製品情報)
本記事を読む際の前提:
・シェアの数値は報道時点の推定値であり、調査年・集計方法により変動します。
・各システムの名称・対応機種・オプション設定は販売ルートにより異なる場合があります。導入検討時は必ず最新カタログ・見積でご確認ください。
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報は各社公式サイトをご確認ください。