北海道の企業必見!瞬停・瞬低の原因と仕組み【雷・雪・カラス営巣まで徹底解説】

「工場の制御盤が一瞬で落ちて、ライン全体が止まってしまった」「事務所の照明が一瞬チラついた直後、サーバーが再起動した」――。北海道で事業を営まれている方なら、こうした経験が一度はあるのではないでしょうか。

普段意識することは少ないものの、電気の「品質」が事業に与える影響は決して小さくありません。とくに数十ミリ秒〜数秒だけ電圧が落ちる「瞬停(しゅんてい)」「瞬低(しゅんてい)」は、停電に比べて発生頻度が高く、生産設備や情報機器に思わぬ被害を及ぼします。

本記事では、北海道の中小企業の経営者・施設管理者向けに、瞬停・瞬低が起こる原因と仕組み、そして北海道特有の事情について、電力会社・JIS規格などの公的情報をもとにわかりやすく整理します。

この記事でわかること
✅ 「瞬停」「瞬低」「停電」の違い(JIS規格による定義)
✅ 瞬停・瞬低が起こる主な原因(自然現象・生物・人為・需要家側)
✅ 北海道特有の発生要因(着雪・暴風雪・カラス営巣など)
✅ 自社設備で意外と多い「構内側」の原因

1. そもそも「瞬停」「瞬低」とは?──まずは用語を整理

「瞬停」と「瞬低」は読み方がどちらも「しゅんてい」のため、現場では混同されがちです。しかし、両者は厳密には別の現象を指します。

① 瞬低(瞬時電圧低下)の定義

瞬低は「瞬時電圧低下」の略で、電圧が一瞬下がるものの、ゼロにはならない現象を指します。日本産業規格(JIS C 61000-4-11)では「電圧ディップ」という用語で定義されており、電力系統のある地点で半周期から数秒程度(1分を超えない範囲)続く突然の電圧低下とされています。

② 瞬停(瞬時停電・短時間停電)の定義

一方の瞬停は、電圧が一時的にゼロまで落ちる現象です。同じJIS規格では「短時間停電」として、概ね1分を超えない供給電圧の消失と定義されています。電力会社の現場用語では「瞬時停電」とも呼ばれます。

③ 停電との違い

1分以上にわたって電圧がゼロのまま継続するものは「停電」と区別されます。瞬停・瞬低は短時間で自動復旧することが多いため、電力会社の停電統計には載らないケースもあります。

区分電圧の状態継続時間の目安主な復旧方法
瞬低低下するがゼロにはならない半周期〜数秒(1分以内)故障区間の切り離しで自動回復
瞬停一時的にゼロまで低下1分以内自動再閉路で復旧
停電ゼロのまま継続1分以上原因排除後に手動復旧

※ 出典:JIS C 61000-4-11、各電力会社の定義に基づく

ポイント:実務上は「瞬停」が広く使われる

本記事のタイトルにも使われている「瞬停」は、現場では瞬低・瞬停・短時間停電の総称として使われることも多くあります。以下では、両者を併記しつつ整理していきます。

2. 瞬停・瞬低の主な原因──大半は「雷」

① 雷が圧倒的多数を占める

瞬停・瞬低の発生要因として、最も多いのが落雷です。音羽電機工業の整理によれば、瞬低の発生要因のうち雷が約83%、雷を含む自然災害が全体の90%以上を占めるとされています。

雷以外の自然災害 その他(人為等) 約83% 約7% 約10%以下 ※ 雷を含む自然災害が全体の90%以上を占める(音羽電機工業の整理より作図)

図:瞬時電圧低下の発生要因の内訳イメージ

② 瞬低が起こるメカニズム

送電線に落雷があると、電線と鉄塔の間で短絡(ショート)や地絡(アース)といった故障が発生します。電力会社は被害が広がらないよう、故障区間を電力系統から自動的に切り離します。北陸電力関西電力送配電の解説によれば、流れは次のとおりです。

STEP 1 送電線に落雷 STEP 2 短絡・地絡で電圧低下 STEP 3 保護リレーが検出 STEP 4 遮断器で切離→復旧

図:落雷による瞬時電圧低下の発生メカニズム

STEP2〜STEP4までのごく短い時間(一般に0.05〜0.2秒、最長でも2秒程度)が、需要家側で観測される瞬低・瞬停の継続時間にあたります。九州電力送配電の説明では、影響を受ける範囲は事故の発生した送電線の電圧階級が高いほど広域に及ぶとされています。

③ 発生頻度の目安

音羽電機工業の整理によれば、瞬低の頻度は1施設あたり全国平均で年に約3〜6回、雷多発地域では年に10〜20回以上発生することもあるとされています。一方の停電(1分以上)は全国平均で約7年に1回(0.17回/年・電気事業連合会調べ)と、瞬低と比較するとはるかに稀な事象です。

3. 雷以外の原因──自然現象・生物・人為要因

雷が圧倒的多数とはいえ、それ以外の要因も無視できません。とくに北海道では、後述するように冬季・春先に独自のリスクがあります。

① 雪・氷・風による送電線への影響

送電線に着雪した雪が落下すると、電線が大きく跳ね上がり、上下の電線が接触して短絡を起こすことがあります(ギャロッピングや着雪振動と呼ばれます)。また、強風による電線の自由振動でも電線同士が接近し、瞬低の原因となります。指月電機製作所の解説でも、雷以外の主要因として「着雪の落下に伴う送電線の跳ね上がり」「強風による送電線の自由振動」が挙げられています。

② 鳥獣・樹木の接触

関西電力送配電をはじめ各電力会社が指摘しているとおり、送電線への鳥獣接触や樹木接触も瞬低の原因となります。とくに北海道では、後述するカラスの営巣による事故が春先に多発します。

③ 飛来物・自然災害・人為要因

台風や暴風で飛ばされたトタン・看板などの飛来物による電線断線、地震・土砂崩れ、車両衝突による電柱の倒壊なども、瞬停や停電の引き金になります。

分類主な原因発生しやすい時期・状況
気象落雷・着雪・着氷・強風・台風夏季の雷雲、冬季の暴風雪
生物鳥獣(カラス営巣含む)・樹木接触春〜初夏(営巣期)、台風後の倒木
人為・事故車両衝突、電柱付近の火災、飛来物通年(強風時に増加)
地殻変動地震、土砂崩れ不定期

4. 構内(自社設備側)が原因の瞬停もある

電力会社からの送電が安定していても、需要家(自社)側の設備が原因で瞬低・瞬停が発生するケースがあります。Wikipediaの「瞬断」項目や山洋電気・東阪電子機器など複数の解説で挙げられている、代表的な構内側要因は次のとおりです。

① 大電力機器の起動による電圧降下

大型モーターや電気炉、コンプレッサーなど、大電力を必要とする機器の起動時に大きな突入電流が流れ、同じ系統につながる他機器の電圧が一瞬低下することがあります。古い設備や容量に余裕のない受電設備では、こうした負荷変動に追従しきれず、制御機器が停止してしまうケースが見られます。

② 配線・受電容量の不足

電源配線の容量が需要に対して不足している場合、ピーク時に電圧が落ちやすくなります。設備を増設したのに受電容量や幹線サイズを見直していないケースは要注意です。

③ ケーブルや端子の接触不良

経年劣化したケーブルや、端子の緩み・腐食による接触不良も、瞬停を引き起こす要因の一つです。とくにキュービクル(高圧受電設備)の老朽化が進んでいる場合、内部端子の劣化が瞬停・地絡事故の引き金になることがあります。

注意:構内側の瞬停は「自社で対策すべき」領域

電力会社側の瞬停対策には限界があり、ある程度は受け入れざるを得ません。一方、構内側が原因の瞬停は、自社の設備更新・点検・容量見直しによって減らすことができます。原因の切り分けが対策の第一歩です。

5. 北海道特有の事情──寒冷地・広域系統・冬季の事故

北海道には、瞬停・瞬低を考えるうえで本州とは異なる特有の事情があります。

北海道 広大な配電網と冬季リスク

北海道電力ネットワークの供給区域面積は78,421km²で、一般送配電事業者10社のうち東北電力ネットワークに次ぐ第2位の広さです(Wikipedia「北海道電力ネットワーク」より)。送電線の総延長は8,457km、支持物(鉄塔等)は45,611基(2020年4月時点)にのぼります。これだけ広域な設備を、冬季の暴風雪・着雪・着氷から守りながら運用していることになります。

① 着雪・着氷・暴風雪による送電線事故

北海道は本州以南と比べて積雪量・着雪量が多く、冬季には送電線への着雪・着氷が頻繁に発生します。着雪が落下した際の電線跳ね上がりや、暴風雪時の電線振動は、瞬低の典型的な誘因です。

② カラス営巣による配電線事故

春から初夏にかけては、カラスの営巣による事故リスクが高まります。ほくでんネットワーク(北海道電力ネットワーク)によれば、巣の材料にハンガーや針金などの金属が使われると、電線に触れて停電・瞬停を引き起こす可能性があります。同社は電柱への風車設置などの対策を行っていますが、カラスは学習能力が高く、対策効果が長続きしないこともあるとされます。

ポイント:電柱のカラス巣を見つけたら通報を

ほくでんネットワークは、電柱のカラス営巣について地域からの情報提供を呼びかけています。電柱には個別の「電柱番号」札が付いており、番号と一緒に最寄りの事業所へ連絡することで、停電の未然防止に協力できます。

③ 雷サージによる構内事故

北海道でんき保安協会が公表している電気事故事例には、雷サージが原因で高圧気中開閉器(PAS/UGS)の絶縁が劣化し地絡・短絡に至ったケースや、誘導雷で高圧ガス開閉器内部が絶縁破壊して地絡したケースが含まれています。系統側の落雷だけでなく、雷サージが構内設備に侵入することで、自社のキュービクルから波及事故を起こすリスクも見逃せません。

北海道 季節ごとの主なリスク

春:カラス営巣による配電線事故
夏:雷雲発達による落雷(道内も雷日数は少なくない)
秋:台風・低気圧通過による飛来物・倒木
冬:着雪・着氷・暴風雪による送電線事故、冬季雷

6. 瞬停・瞬低が事業に与える影響

瞬停・瞬低は短時間とはいえ、事業への影響は決して小さくありません。一般家庭の家電製品はある程度耐性がありますが、産業用機器・情報機器は影響を受けやすい傾向にあります。

製造業の生産設備制御機器の停止、ロボットや工作機械の非常停止、ライン全体の復旧に時間がかかる
サーバー・ネットワーク機器再起動、データ破損、通信障害
商業施設・オフィス照明のちらつき、レジ・POS・空調制御の停止
医療・介護施設医療機器・記録システムの停止リスク
農業・畜産・水産加工冷蔵・換気・給餌システムの停止リスク

北海道の中小企業でも、無人運転している深夜・早朝に瞬停が発生し、翌朝出社して機械が止まっているのを発見するケースは珍しくありません。日中であっても、設備復旧に1〜2時間かかれば、人件費と機会損失の両面で大きな影響が出ます。

7. まとめ──まずは原因の理解から

本記事の要点を整理します。

本記事のまとめ
✅ 瞬低は電圧が低下する現象、瞬停は電圧がゼロになる現象(JIS C 61000-4-11)
✅ 瞬低の発生要因は雷が約83%、雷を含む自然災害が90%以上
✅ 雷以外では着雪・強風・鳥獣接触・樹木接触などが主な原因
✅ 構内(需要家側)でも、大電力機器起動・容量不足・接触不良で発生する
✅ 北海道では「冬の暴風雪・着雪」「春のカラス営巣」が特有のリスク

瞬停・瞬低は、自然現象が大きく関与するため完全になくすことはできません。しかし、原因が「電力会社側」なのか「自社構内側」なのかを切り分けるだけでも、取るべき対策は大きく変わります。まずは自社の受電設備の状況・経年・容量を一度棚卸ししてみることが、対策の第一歩になります。

記事情報
公開日:2026年4月27日
参照資料:JIS C 61000-4-11、関西電力送配電「瞬時電圧低下について」、九州電力送配電「瞬時電圧低下」、北陸電力「瞬時電圧低下の発生メカニズム」、音羽電機工業「瞬低対策 瞬時電圧低下補償装置」、指月電機製作所「瞬低とは?」、北海道電力ネットワーク「カラスの営巣防止」、北海道でんき保安協会「電気事故」、Wikipedia「瞬断」「北海道電力ネットワーク」
※ 本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報は各公式サイトをご確認ください。