北海道で新電力を選ぶなら「損失率」を見ろ!見積もりの安さに隠された「5%の罠」を徹底解説

はじめに:なぜ、北海道の企業は「損失率」を知らないと損をするのか

「新電力に切り替えたのに、思ったほど安くならなかった」

「市場連動プランの見積もりが、会社によって全然違う計算式になっている」

もしあなたが北海道で工場やオフィスビルを経営しており、このような疑問を持ったことがあるなら、その原因は「電気の損失率(送配電ロス)」にあるかもしれません。

広大な土地を持つ北海道エリアにおいて、電気を運ぶコストとリスクは他地域以上にシビアです。しかし、多くの電力会社の提案書や見積書において、この「損失率」は非常に分かりにくく記載されていたり、あるいは意図的に隠されていたりします。

本コラムでは、電力業界のプロしか知らない「損失率の正体」を、物理的な仕組みから契約実務、そして悪質な見積もりの見抜き方まで徹底的に解説します。これを読めば、北海道における「正しい新電力の選び方」が完全に理解できるはずです。


第1章:そもそも「電気の損失率」とは何か?

まずは基礎知識から整理しましょう。損失率には「物理的な意味」と「お金(契約)の意味」の2つがあります。

1. 物理的な損失(電気が消える現象)

発電所で作られた電気が、電線を通ってあなたの会社(需要場所)に届くまでの間に、一部の電気は熱となって空気中に消えてしまいます。これを「送配電ロス」と呼びます。

  • ジュール熱の法則: 電線には必ず電気抵抗があります。電気が流れると摩擦のようなものが起き、熱が発生します(スマホの充電中にケーブルが温かくなるのと同じ原理です)。
  • 変電ロス: 電圧を変える変圧器(トランス)でも、わずかにエネルギーロスが発生します。

発電所が「100」の電気を送っても、長い電線を旅する間に「5」くらいがこぼれ落ちてしまい、あなたの会社には「95」しか届かない。これが物理的な損失です。

2. 契約上の損失率(誰が負担するのか)

ビジネスにおいて重要なのは、「途中で消えた5の電気代を、誰が払うのか?」という点です。

現在の日本の電力制度では、原則として「小売電気事業者(新電力など)が、需要家(あなた)の代わりに調達して負担する」というルールになっています。

つまり、あなたがメーターで「95」の電気を使ったとしても、電力会社は発電所から「100」を仕入れなければなりません。この差分を計算するための係数が「損失率」です。


第2章:北海道エリアの損失率と特異性

日本全国どこでも損失率は発生しますが、北海道エリアには特有の事情があります。

1. 北海道電力ネットワークエリアの損失率数値

送配電事業者(北海道電力ネットワーク)が定める損失率は、電圧(契約種別)によって異なります。直近の目安(2024年〜2025年時点)は以下の通りです。

契約種別対象イメージ損失率の目安
低圧家庭、商店、小規模事務所約 7.9% 〜 8.6%
高圧工場、ビル、スーパー約 4.7%
特別高圧大規模工場、データセンター約 2.0%

※この数値は年度や約款改定により変動します。

2. なぜ北海道はロスが論点になるのか

北海道は広大です。発電所(例えば泊原発や苫東厚真発電所など)から、電気を使う需要地(札幌、旭川、函館、帯広など)までの「送電距離」が物理的に長くなる傾向があります。

距離が長ければ長いほど、電気抵抗によるロスは増えます。

首都圏のように発電所と需要地が密接しているエリアに比べ、北海道において「いかに効率よく電気を運ぶか」は、そのままコスト直結の課題となります。

あなたが北海道で高圧電力(工場など)を使っている場合、「使った電気の約5%は、運んでいる最中に消えている」という事実をまずは認識してください。


第3章:【実務編】損失率はどう計算されるのか?

ここからは、実際に経営に直結する「お金の計算」の話です。

多くの人が勘違いしている計算式を正しましょう。

1. 間違いやすい計算

「損失率が4.7%だから、使用量に 1.047 を掛ければいい」

これは近似値としては近いですが、厳密には間違いです。

2. 正しい計算式(逆算の論理)

「メーターで計測された使用量(需要端)」から「発電所が出すべき量(発電端)」を求めるには、以下の式を使います。

発電に必要な量 = メーターの使用量 ÷( 1 - 損失率 )

【シミュレーション:北海道の高圧工場で 10,000 kWh 使った場合】

損失率を仮に 4.7% (0.047) とします。

10,000 ÷ (1 - 0.047) = 10,493 kWh

つまり、10,000 kWh の電気を使うために、電力会社は 10,493 kWh を市場や発電所から調達しています。

差分の 493 kWh が送電ロスです。

この「493 kWh分のコスト」が、あなたの電気料金単価の中に含まれているか、別途請求されているかを確認することが、新電力選びの最大の肝となります。


第4章:市場連動型プランにおける「損失率の罠」

昨今、北海道でも多くの企業が検討している「市場連動型プラン(JEPX連動)」。

実は、このプランの見積もりにおいて、損失率を利用した「価格を安く見せるトリック」が横行しています。

ここが本コラムで最も重要なパートです。

1. 「リンゴの仕入れ」で考えるトリック

仕組みを分かりやすくするために、電気を「リンゴ」に例えます。

  • あなたは「100個」のリンゴを食べたい(使用量)。
  • 運んでいる途中で、必ず「5個」腐って消えてしまう(損失率)。
  • 電力会社は、市場で「105個」仕入れる必要がある。

市場のリンゴ価格が 1個10円 だとします。

パターンA:正直な見積もり(損失率あり)

「100個届けるために105個買うので、その分を請求します」

  • 10円 × 1.05(係数) = 10.5円
  • これに会社の手数料(2円)を足す → 請求単価 12.5円

パターンB:安く見せる見積もり(損失率なし)

「市場価格そのままで計算します!係数は掛けません!」

  • 10円 × 1.00 = 10.0円
  • これに会社の手数料(3.5円)を足す → 請求単価 13.5円

2. 比較検討の落とし穴

見積書パッと見ると、パターンBの会社は「市場価格に余計な係数を掛けていない!良心的だ!」と見えます。

しかし、実際には消えた5個分のコスト(赤字)を埋め合わせるために、「固定手数料(マージン)」を高く設定しています。

さらに悪質なのは、固定手数料を安く見せておきながら、契約書の隅に小さな文字で「託送調整費として別途請求」や「事後調整」と書いているケースです。

【北海道の新電力選び・鉄則】

「市場連動プランの計算式に、損失率(約1.05)が入っていない会社は、その分固定手数料が高くないとおかしい。もし両方とも安いなら、どこかに隠れ項目があるか、契約後に値上げされるリスクが高い」


第5章:【チェックリスト】見積もりの見極め方

北海道で新電力を選ぶ際、営業担当者に必ず確認すべき事項をリスト化しました。これをメールで送るだけで、相手は「この客は騙せない」と背筋を伸ばすはずです。

Q1. 市場調整単価の計算式を教えてください

  • 回答A:JEPX × (1+消費税) × 調達調整係数(約1.05) です。
    • 判定: 健全です。マージン単価(2.0円前後など)だけで比較検討できます。
  • 回答B:JEPX × (1+消費税) そのままです。係数は掛けません。
    • 判定: 要注意。マージン単価が3.5円〜4.0円以上でないと計算が合いません。もし「マージン1円です」などと言われたら、託送料金や別項目での請求がないか徹底的に確認してください。

Q2. 北海道電力ネットワークの託送料金値上げ時の対応は?

  • これはどの会社も原則「パススルー(そのまま転嫁)」です。損失率とは別の話ですが、基本料金や電力量料金に含まれる託送分がどう変動するか確認しておきましょう。

Q3. 「調達調整費」や「リスクプレミアム」の内訳は?

  • 損失率を計算式に入れない代わりに、これらの名称で固定費を徴収している場合があります。名前は何でも良いですが、「結局、1kWhあたりトータルでいくら上乗せされるのか」を把握することが重要です。

第6章:CO2排出量算定(Scope 2)と損失率の関係

近年、脱炭素経営(GX)に取り組む北海道の企業が増えています。

実は、CO2排出量の算定にも損失率は深く関わっています。

1. Scope 2(自社使用電気の排出量)の計算

自社が排出したCO2を計算する際、「使用量(検針値)」ベースで計算するのが一般的ですが、より厳密なサプライチェーン排出量を計算する場合や、再エネ証書を購入する場合、「発電端(損失率加味前)」の数値が必要になることがあります。

2. 再エネ比率の考え方

「再エネ100%プラン」を契約していても、損失率分の電気がどう処理されているかは確認が必要です。

厳密には、損失分も含めて再エネ証書(非化石証書)を償却しているプランでないと、「完全なCO2ゼロ」とは言えないケースがあるからです(※制度設計によります)。

環境価値を重視する企業こそ、この「消えた5%の電気」がカーボンフリーなのかどうか、電力会社に問うレベルに達しつつあります。


第7章:北海道ならではの「賢い電力の使い方」

最後に、損失率の知識を応用した、北海道企業向けのコスト削減・防衛策をお伝えします。

1. 高圧受電のキュービクル管理

高圧電力の場合、敷地内の変圧器(キュービクル)でのロスは「需要家負担」となります。

古い変圧器(トップランナー基準以前のもの)を使っていると、何もしていなくても電気をロスし続けています。これを高効率な変圧器に更新することは、電力会社との契約上の損失率とは別に、自社でコントロールできる「ロス削減」=「電気代削減」になります。

2. デマンドコントロールと力率改善

北海道電力エリアの料金体系では、基本料金決定の仕組みにおいて「力率(りつ)」が重要です。

力率を85%から100%に近づけることで、基本料金が割引になります。これは損失率(ロス)を減らす物理的な貢献に対するインセンティブです。

コンデンサの適切な設置で力率を改善することは、最も確実な投資対効果を生みます。

3. 「オール電化」や「融雪電力」との兼ね合い

北海道では冬場の暖房・融雪で電力消費が跳ね上がります。

市場連動プランを選ぶ際、冬場のJEPX価格高騰は最大のリスクです。損失率を加味した実質単価が高い会社を選んでしまうと、冬の電気代だけで年間利益が吹き飛ぶこともあり得ます。

  • 夏場: 北海道の夏は比較的冷涼で、本州ほどJEPXが高騰しない傾向にあったが、近年は猛暑とエアコン普及で事情が変わってきている。
  • 冬場: 暖房需要で逼迫しやすく、夕方の点灯帯に価格が跳ねる。

この季節変動を見越して、「固定単価プラン」と「市場連動プラン」のどちらが、自社の操業パターン(稼働時間)に合っているか、損失率込みの単価でシミュレーションする必要があります。


まとめ:見えない「5%」を制する者が、北海道の電力を制する

たかが5%、されど5%。

北海道エリアの高圧電力における4.7%という損失率は、年間電気代が1,000万円の工場であれば、約50万円の差を生む数字です。

新電力への切り替えや契約更新の際、営業マンの「安くなりますよ」という言葉だけで契約書にハンコを押さないでください。

  1. 「見積もりの計算式」を出させる。
  2. 「損失率(係数)」が入っているか確認する。
  3. 入っていないなら、その分のコストが「固定手数料」に含まれているか計算する。

この3ステップを踏むだけで、あなたは「悪質な見積もり」を瞬時に見抜き、本当に自社にとってメリットのある電力会社を選び抜くことができるでしょう。

広大な北海道でビジネスを続けるために、電気というインフラを「賢く、安く、透明に」調達する力を身につけてください。