「高圧にすると電気代が安くなるらしい」——そんな話を聞いたことのある北海道の中小企業経営者の方も多いのではないでしょうか。確かに、高圧電力は1kWhあたりの単価が低圧より安い傾向があります。
しかし、高圧契約にはキュービクル(高圧受電設備)の設置・維持費用がかかるため、すべての企業にとってお得とは限りません。本記事では、契約電力50kW前後の北海道の中小企業に向けて、高圧と低圧の違いと、どちらが得になるかの判断基準をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
✅ 高圧電力と低圧電力の基本的な違い
✅ 高圧に切り替えるメリットとデメリット
✅ 「高圧の方が安くなる」損益分岐ラインの考え方
✅ 逆に「高圧→低圧」に戻した方が得なケースとは
1. 高圧電力と低圧電力の違いを整理しよう
まず、両者の基本的な違いを押さえておきましょう。契約電力の大きさによって、電力会社との契約が「高圧」か「低圧」かに分かれます。
図:高圧は自社で変圧(キュービクル必要)、低圧は電力会社が変圧してくれる
| 項目 | 低圧電力 | 高圧電力 |
|---|---|---|
| 契約電力 | 50kW未満 | 50kW以上2,000kW未満 |
| 供給電圧 | 100V / 200V | 6,600V |
| 変圧設備 | 不要 | キュービクルが必要 |
| 電力量単価の目安 | 約20〜30円/kWh | 約15〜20円/kWh |
| 保守管理 | 不要 | 電気主任技術者の選任・法定点検が必要 |
北海道の中小企業では、冬場の暖房で電力使用量が増加し、契約電力が50kWを超えるケースがあります。「夏場は40kW程度なのに冬だけ55kW」という場合、高圧契約にせざるを得ない状況になっていることも。まずは、自社の月ごとの電力使用量を把握することが第一歩です。
2. 高圧契約のメリット
① 電力量単価が安い
高圧電力の最大のメリットは、kWhあたりの単価が低圧より安い点です。仮に月間の電力使用量が10,000kWhで、単価差が1kWhあたり8円だった場合、月8万円、年間で約96万円のコスト差が生まれます。
② 電力会社を自由に選べる
高圧電力は2004年から電力自由化の対象となっており、新電力を含む複数の電力会社から供給先を選ぶことが可能です。
③ 契約が一本化される
低圧では「電灯契約」と「動力契約」を別々に契約する必要がありますが、高圧なら受電契約が1つになり、管理がシンプルになります。
3. 高圧契約のデメリット(見落としがちなコスト)
① キュービクルの設置費用
小規模な場合で200万円前後。基礎工事や電力会社との接続工事を含めると、さらに費用がかさむこともあります。
② 保守管理費(ランニングコスト)
保安協会や保守管理会社への外部委託費用が月額1〜3万円程度。さらに年次点検や修繕費も必要になります。
③ 設置スペースの確保
法令で定められた離隔距離を確保する必要があり、敷地に余裕のない市街地では設置場所の確保が難しい場合もあります。
高圧から低圧に切り替える場合、不要になったキュービクルの処分が必要です。古いキュービクルの内部機器にはPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている可能性があり、メーカーへの確認と行政への届出が求められます。
4. どちらが得か?判断フローチャート
高圧と低圧のどちらが経済的かを判断するための基本的なフローチャートです。自社の状況と照らし合わせてみてください。
図:契約電力と電力使用量から、最適な契約を判断するフロー
高圧契約を維持しながら、電力会社の切替(新電力への相見積もり)や、キュービクル保守契約の見直しによって、ランニングコストを下げる方法もあります。「高圧か低圧か」の二択だけでなく、現在の契約内容を最適化するアプローチも検討してみましょう。
北海道では冬の暖房需要が大きいため、デマンド値が冬場だけ跳ね上がるケースがよくあります。高圧契約では、たった一度のデマンド超過が1年間の基本料金を引き上げてしまいます。契約区分の見直しと同時に、暖房設備の省エネ化やデマンドコントロールも合わせて検討すると、より大きな削減効果が期待できるでしょう。
5. まとめ:「電力使用量」と「維持費」のバランスで判断を
高圧と低圧、どちらが得かは「電力使用量によるコスト削減額」と「キュービクルの導入・維持費」のバランスで決まります。まずは毎月の電気料金の請求書を確認し、契約電力とデマンド値の推移を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
記事情報
公開日:2026年3月28日
参照資料:経済産業省 資源エネルギー庁「電力の小売営業に関する指針」、各電力会社の約款・料金表
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。具体的な料金は契約先の電力会社や料金プランにより異なります。

