トップランナー変圧器2026とは|第三次判断基準の対象・基準値・切替時期

トップランナー変圧器の新しい基準(第三次判断基準)は、2026年度(2026年4月1日)から適用されています。対象は、キュービクルなどで使う油入変圧器とモールド変圧器(定格一次電圧が600Vを超え7,000V以下)です。目標年度は2026年度で、2026年10月31日時点では、すでに適用が始まっています。

この基準を守る義務を負うのは、変圧器の製造事業者と輸入事業者です。使用中の変圧器を交換する義務は、使う側にはありません。一方で、更新や新設の際に選べる製品は新基準のものになり、損失が小さくなる反面、寸法や質量、価格に影響が出る場合があります。

この記事では、経済産業省・資源エネルギー庁の告示と資料、日本電機工業会(JEMA)の公表資料をもとに、制度の仕組み、対象範囲、基準値の見方、更新時の確認点を整理します。北海道は商用周波数が50Hzなので、50Hzの区分の数値で例を示します。

この記事でわかること
・第三次判断基準の目標年度、告示の公布日、対象範囲
・変圧器の「全損失」と基準値の考え方、第一次〜第三次の推移
・北海道(50Hz)の三相変圧器で、第二次と第三次の基準値がどう違うか
・使用者に義務がない点と、更新時に確認したい寸法・見積・並列運転の注意点
・よくある質問(既設の扱い、現行品の入手、対象外の変圧器)

更新履歴

  • 2026年10月31日:全面改訂。目標年度・対象範囲・基準値を告示と経済産業省資料で確認して書き直し、適用開始後の内容に変更。根拠を確認できなかった数値と、空調・ガスヒートポンプに関する記述を削除
  • 2025年9月26日:初版公開

1. 結論:何が、いつから変わったか

項目 内容
制度 省エネ法のトップランナー制度。変圧器の基準エネルギー消費効率(損失)の目標を定める
告示 2023年10月27日公布、10月31日施行(変圧器の判断基準等を定めた告示の一部改正)
目標年度 2026年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)。油入変圧器・モールド変圧器の両方
対象 定格一次電圧が600Vを超え7,000V以下で、交流の電路に使う変圧器(油入・モールド)
達成の判定 製造・輸入事業者が、区分ごとに出荷台数で加重平均した損失を、基準値の加重平均以下にする
平均的な改善の見込み 2019年度の実績値に対して約11.4%(区分・容量ごとの出荷構成が変わらない前提)

表:第三次判断基準の概要(経済産業省のプレスリリース、告示、変圧器判断基準ワーキンググループの資料をもとに作成)

業界の製品名は「2026トップランナー変圧器」です。JEMAの資料によると、規制上の呼称は「第三次判断基準」ですが、製品の通称には「第三次」は入っていません。以前の製品は、第一次が「トップランナー変圧器」、第二次が「トップランナー変圧器2014」と呼ばれていました。

切り替えのタイミングは、JEMAの資料で「2026年4月1日製造業者出荷分から」とされています。JEMAの別の資料は、製造事業者によっては2026年1月ごろから切り替え、現行品の出荷を止める場合があるとしています。

2. 変圧器の「損失」と基準値の考え方

変圧器は、電圧を変換する際に一部のエネルギーを熱として失います。基準では、この損失を全損失(W)で表します。全損失は、無負荷損と負荷損の和です。

  • 無負荷損:負荷の大小に関係なく生じる損失(式の Wi)
  • 負荷損:流れる電流に応じて生じる損失(式の Wc)。負荷率の2乗に比例する

エネルギー消費効率(全損失)E = Wi + (m/100)² × Wc

m:基準負荷率。500kVA以下は40、500kVA超は50(告示による)

基準値は、区分ごとに「E = 係数 × S指数」の算定式で定められています。S は定格容量(kVA)です。区分は、油入かモールドか、単相か三相か、50Hzか60Hzか、三相は500kVA以下か超か、標準仕様か準標準仕様か、の5つの要素で分かれ、全部で24区分あります。準標準仕様(JISの標準仕様以外)の基準値は、標準仕様の算定式の値に、油入は1.10、モールドは1.05を掛けます。

算定値は有効数字4桁(100W未満は3桁)で切り捨てて使います。

3. 第一次から第三次への推移

変圧器のトップランナー基準は、これまで2回見直されています。資源エネルギー庁の資料から、平均的な全損失(標準品)の推移を整理します。

時期 目標年度・実績年度 全損失の値(1台あたり)
制度導入前の平均 ― 818 W
第一次の目標基準値 2006・2007年度 717 W
第二次の目標基準値 2014年度 629 W
実績値 2019年度 501.1 W(導入前から約38.7%の改善)
第三次の目標基準値 2026年度 444.1 W(2019年度実績から約11.4%の改善見込み)

表:変圧器の全損失の推移(経済産業省「事業用変圧器の新たな省エネ基準に関する報告書」資料をもとに作成。標準品が対象)

2014年度の目標は、2009年度比で約12.5%の効率改善と、資源エネルギー庁のページに記載されています。第二次の基準は、2014年度から2025年度(2026年3月31日まで)の各年度に適用されていました。

経済産業省のプレスリリースは、事業用変圧器の損失を送電端電力量の2〜3%と推計しています(2019年度の推計)。また、資源エネルギー庁が変圧器判断基準ワーキンググループに示した資料には、変圧器は更新推奨20年、期待寿命30年で設計されていると記載されています。使用期間の長い設備なので、基準は出荷される新しい製品の損失を下げる形で定められています。

4. 対象になる変圧器、ならない変圧器

基準の対象範囲は、第二次から変わっていません。資源エネルギー庁のページとJEMAの資料から整理します。

区分 内容
対象 定格一次電圧が600Vを超え7,000V以下の油入変圧器・モールド変圧器。JEMAの資料では、高圧の一次側(6kV・3kV)、低圧の二次側(100〜600V)の配電用変圧器
対象外 ガス絶縁式、H種絶縁材料を使うもの、スコット結線、3以上の巻線を持つもの、柱上変圧器、風冷式・水冷式
容量の範囲外 単相で5kVA以下または500kVA超、三相で10kVA以下または2,000kVA超
二次電圧の範囲外 定格二次電圧が100V未満または600V超

表:トップランナー基準の対象範囲(資源エネルギー庁「変圧器」のページ、JEMA資料をもとに作成)

JEMAのFAQは、整流器用変圧器や海外規格を適用した品も非適用とし、特殊な短絡インピーダンスや励磁突入電流を指定した品は、製造事業者との協議で非適用にできる場合があるとしています。特殊な仕様の変圧器が対象かどうかは、製造事業者に確認するのが確実です。

5. 基準値の数値:北海道(50Hz)の三相変圧器で比べる

北海道電力ネットワークの託送供給等約款(令和6年4月1日実施版)は、標準周波数を50ヘルツと定めています。北海道では、50Hzの区分を見ます。三相の油入・モールド変圧器について、第二次と第三次の算定式は次のとおりです(標準仕様、告示の表2・表3)。

種別・容量 第二次(2014年度〜) 第三次(2026年度〜)
油入・三相・50Hz・500kVA以下 E=16.6 S0.696(区分2-3) E=14.5 S0.694(区分3-3)
油入・三相・50Hz・500kVA超 E=11.1 S0.809(区分2-4) E=10.6 S0.797(区分3-4)
モールド・三相・50Hz・500kVA以下 E=23.9 S0.659(区分2-9) E=16.9 S0.699(区分3-9)
モールド・三相・50Hz・500kVA超 E=22.7 S0.718(区分2-10) E=31.2 S0.659(区分3-10)

表:三相・50Hz・標準仕様の算定式(告示の別表。E は基準エネルギー消費効率〔W〕、S は定格容量〔kVA〕)

この式に容量を代入した値を、次に示します。代入して計算した参考値であり、メーカーの個別製品の実測値ではありません。

定格容量 油入:第二次→第三次(約) モールド:第二次→第三次(約)
100kVA 409W → 354W(約13.5%減) 497W → 422W(約15.0%減)
200kVA 663W → 573W(約13.6%減) 784W → 685W(約12.6%減)
300kVA 879W → 759W(約13.6%減) 1,025W → 910W(約11.2%減)
500kVA 1,254W → 1,082W(約13.7%減) 1,435W → 1,301W(約9.3%減)
1,000kVA 2,967W → 2,607W(約12.1%減) 3,236W → 2,959W(約8.6%減)

表:基準値(全損失)の比較。算定式に容量を代入した計算値で、小数点以下は切り捨て。減少率は計算値どうしの比較

平均で約11.4%という経済産業省の見込みに対し、算定式を直接比べると、容量や種別によって約9〜15%と幅があります。基準値が下がる幅は、製品ごとに一様ではありません。

重要基準値は「個々の製品の上限」ではない

達成の判定は、製造・輸入事業者が区分ごとに出荷台数で加重平均して行います。基準値は、製品1台ごとに必ず下回らなければならない値ではありません。選ぶ変圧器の損失は、メーカーのカタログや選定資料に表示されるエネルギー消費効率で確認してください。表示事項には、区分名、定格容量、基準負荷率、規格名などが定められています。

6. 使用者(施設管理者・経営者)への影響

6-1. 使用中の変圧器には直接の規制はない

JEMAのFAQは、稼働中の変圧器を使い続けることに直接の規制はなく、新基準品の不採用に対する直接の罰則も使用者にはないとしています。基準を達成できなかった製造事業者には、改善勧告などの措置が取られます。資源エネルギー庁のページによると、勧告・命令の対象になるのは、国内向けの年間生産量または輸入量が100台以上の製造・輸入事業者です。

6-2. 更新や新設で変わること

  • 見積書の記載:JEMAのFAQは、見積書に「2026トップランナー変圧器」の適用が書かれていれば問題ないとしています。「目標年度以降無効」とある見積は、再見積もりが必要です
  • 継続案件:2026年4月以降の継続案件は、新基準品での対応か、適用後の再見積もりが必要とされています
  • 現行品の扱い:現行品の製造事業者からの出荷は2026年3月までとされています。2026年3月までに製造事業者の管理を離れた現行品は、適用年度の後でもキュービクルへ組み込んで出荷できます
  • 寸法・質量:JEMAの資料は、損失を一層小さくすると、鉄心の断面積や導体の面積が増え、寸法と質量が大きくなる傾向があると説明しています。機種によって差があるため、メーカーのカタログで確認します
  • 価格:JEMAのFAQは、性能向上に伴い製造原価が上がるため価格が見直されているとしています。具体的な金額は資料にありません
  • 並列運転:旧品との混在は基本的に問題ないとされています。並列運転する場合は、短絡インピーダンス、結線、タップ電圧の確認が必要です

6-3. 更新時期の目安

資源エネルギー庁の資料は、変圧器は更新推奨20年、期待寿命30年で設計されていると説明しています。JEMAのFAQは、約25年経過した変圧器を更新時期の目安としています。更新の判断は、使用年数のほか、点検の結果、負荷の状況、キュービクル全体の計画をあわせて行います。キュービクルの更新時期の考え方は「北海道の中小企業向け|キュービクルの寿命は何年?更新時期の判断基準とリスクを解説」にまとめています。

7. 損失の差を金額で見る(仮定の数字)

基準値の差が、電気料金でどの程度になるかを、仮定の数字で試算します。次の計算は、標準仕様の三相・50Hz・油入変圧器の基準値どうしの比較であり、実在する製品の実測損失ではありません。

  • 定格容量:300kVA(仮定)
  • 基準値(全損失、基準負荷率40%):第二次 約879W、第三次 約759W → 差は約120W
  • 通電時間:年間8,760時間、つねに基準負荷率40%相当で運転(仮定)
  • 年間の損失電力量の差:120W × 8,760時間 = 約1,050kWh
  • 電力量料金の単価:1kWhあたり25円(仮定)
  • 料金の差:約1,050kWh × 25円 = 約26,000円/年

実際の差は、変圧器の実負荷率、稼働時間、電力量単価、メーカーの実測値によって変わります。JEMAのFAQは、選定にあたって使用負荷率での省エネ計算を行うことを勧めています。負荷率は、変圧器の容量を決める際にも重要な数字です。「キュービクル更新前に確認すべき3つの数字|力率・負荷率・契約電力」も参考にしてください。

8. 北海道の施設で確認したいこと

北海道 50Hzの区分で比べ、実際の負荷率で評価する

北海道電力ネットワークの託送供給等約款は、標準周波数を50ヘルツと定めています。メーカーの資料や見積書で変圧器の区分を確認するときは、50Hzの区分の基準値を見ます。60Hz向けの算定式とは係数と指数が異なります。

基準値は、基準負荷率(500kVA以下で40%、500kVA超で50%)での全損失です。自社の施設の実際の負荷率はこれと異なるため、選定時には使用する負荷率での損失を、メーカーに確認します。更新の費用に使える国・北海道・札幌市の補助制度は「キュービクル補助金2026|変圧器の更新に使える国・北海道・札幌市の制度」で整理しています。

更新や新設の前に、次の点を整理しておくと、見積の比較がしやすくなります。

1
現在の変圧器の仕様(種別、相数、周波数、定格容量、製造年)とキュービクル内の寸法を確認する
↓
2
見積書に「2026トップランナー変圧器」の適用が明記されているか、見積の有効期間がいつまでかを確認する
↓
3
新基準品の寸法・質量と、キュービクルへの収まり、搬入経路を、メーカーのカタログで確認する
↓
4
実際の負荷率で、損失(無負荷損と負荷損)を比べる。並列運転にする場合は、短絡インピーダンスなどを確認する

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 第三次判断基準の目標年度はいつですか?

A. 2026年度です(2026年4月1日〜2027年3月31日)。油入変圧器・モールド変圧器の両方が対象で、告示は2023年10月27日に公布され、10月31日に施行されています。

Q2. 使用中の変圧器を、交換しなければなりませんか?

A. 使用者に交換の義務はありません。JEMAのFAQは、稼働中の変圧器を使い続けることに直接の規制はないとしています。省エネやCO2削減のために、早めの更新が効果的とされています。

Q3. 新基準で、損失はどのくらい減りますか?

A. 経済産業省は、2019年度の実績値に対して約11.4%の向上を見込んでいます(出荷構成が変わらない前提)。算定式を比べると、三相・50Hzの標準仕様では、容量や種別によって約9〜15%の幅があります。

Q4. 2014年基準の変圧器(現行品)は、今も買えますか?

A. 現行品の製造事業者からの出荷は2026年3月までとされています。2026年3月までに製造事業者の管理を離れた現行品は、適用年度の後にキュービクルへ組み込んで出荷できる、とJEMAのFAQにあります。個別の在庫は、販売する事業者に確認してください。

Q5. 新基準の変圧器は、大きくなりますか?

A. JEMAの資料は、損失を一層小さくすると、寸法と質量が大きくなる傾向があると説明しています。機種によって差があるため、既設のキュービクルに収まるかどうかは、メーカーのカタログで確認する必要があります。

Q6. 柱上変圧器やガス絶縁変圧器も対象ですか?

A. 対象外です。ガス絶縁式、H種絶縁材料を使うもの、スコット結線、3以上の巻線を持つもの、柱上変圧器、風冷式・水冷式は、トップランナー基準の対象に含まれません。

10. まとめ

  • 変圧器の第三次判断基準の目標年度は2026年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)で、告示は2023年10月27日に公布された
  • 対象は、定格一次電圧が600V超7,000V以下の油入・モールド変圧器。ガス絶縁式や柱上変圧器などは対象外
  • 基準を守る義務は製造・輸入事業者にあり、使用中の変圧器を交換する義務は使用者にはない
  • 経済産業省は、2019年度の実績値に対して平均約11.4%の損失低減を見込む。北海道(50Hz)の三相標準仕様の算定式を比べると、約9〜15%の幅がある
  • 更新時は、見積書の適用記載、寸法・質量、並列運転の条件、実際の負荷率での損失を確認する

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記事情報
公開日:2025年9月26日
最終更新日:2026年10月31日(全面改訂)
参照資料:
・経済産業省「事業用変圧器の新たな省エネ基準を策定しました」2023年10月27日(経済産業省)、告示の新旧対照表(PDF)
・経済産業省「事業用変圧器の新たな省エネ基準に関する報告書をとりまとめました」2023年6月(資料PDF)
・資源エネルギー庁「変圧器の判断基準等(経済産業省告示第71号)」(PDF)、「変圧器|トップランナー」(資源エネルギー庁)
・資源エネルギー庁「変圧器の現状について」令和4年9月7日(PDF)
・総合資源エネルギー調査会 変圧器判断基準ワーキンググループ「民生用変圧器の取りまとめ(案)」(PDF)
・日本電機工業会「2026トップランナー変圧器 FAQ」(PDF)、セミナー資料 2025年5月22日(PDF)、JEMA「トップランナー変圧器2026」解説 2025年7月(PDF)
・北海道電力ネットワーク「託送供給等約款」令和6年4月1日実施(PDF)
※2026年10月31日時点の情報です。基準値の表は告示の算定式に容量を代入した計算値で、個別の製品の損失を示すものではありません。計算例の数字はすべて仮定です。製品の寸法・質量・価格・納期は、各メーカーの最新の資料でご確認ください。