キュービクル(高圧受電設備)の更新で使える補助金は、主に「高効率な変圧器への更新」が対象です。2026年度は、国(SII)の省エネ補助金「設備単位型」と、札幌市の製造業向け補助金が変圧器の更新を対象にしています。キュービクルの箱や遮断器などの更新費用まで丸ごと対象になる制度は限られます。
また、補助率が同じでも、どの費用に補助率を掛けるかは制度ごとに違います。国(SII)の設備単位型は変圧器本体の「設備費」だけが対象で、据付工事費は対象外です。「工事総額の1/3が補助される」わけではない点に注意が必要です。
この記事では、2026年10月27日時点の公募情報をもとに、キュービクル・変圧器の更新に使える国・北海道・札幌市の補助金と、対象経費・申請要件・補助額の計算例を整理します。
この記事でわかること
・キュービクル更新で補助金の対象になる部分と、対象外になりやすい部分
・国(SII)・北海道・札幌市の制度の比較(補助率・上限・対象経費・受付状況)
・SIIで対象になる変圧器の条件と、事業として満たすべき省エネ要件
・補助額の計算例(仮定の金額)
・交付決定前の発注や、PCBの確認漏れなど、よくある失敗
更新履歴
- 2026年10月27日:対象経費の比較、北海道の補助金の対象事業の条件、SIIの省エネ要件と変圧器の基準、補助額の計算例、PCBの確認手順を追記。参照資料をSII 4次公募用に更新
- 2026年10月27日:初版公開
1. キュービクルの更新に補助金は使える?対象になる部分
結論から言うと、補助金の対象になるのは、キュービクルの中の「変圧器」を高効率品に替える部分が中心です。変圧器は電気を使っていなくても損失(電気のロス)が出続けるため、高効率品に替えると省エネ量を計算しやすく、補助金の対象設備になっています。
| 補助金の対象になりやすいもの | 対象外になりやすいもの |
|---|---|
| ・高効率の変圧器本体(各制度の基準を満たすもの) ・変圧器の据付工事など(札幌市の制度は工事費も対象。国(SII)の設備単位型は対象外) |
・キュービクルの箱(外箱)だけの交換 ・遮断器・開閉器・ケーブルなど、省エネ効果のない機器の更新 ・既存設備の撤去・処分費、消費税 ・故障した機器の修理 ・交付決定前に発注・着工した工事(原則) |
表:キュービクル更新で補助金の対象になりやすいもの・なりにくいもの(具体的な範囲は各制度の公募要領で確認が必要です)
補助金の申請では、対象になる費用と対象外の費用を分けて示す必要があります。見積りの段階から、変圧器本体・変圧器の据付工事・撤去処分・その他の機器と工事を分けてもらうと、申請の準備と補助額の試算がスムーズです。
2. 2026年度にキュービクル・変圧器の更新で使える補助金一覧
2026年10月27日時点で、変圧器の更新に使える主な制度は次のとおりです。国(SII)の設備単位型は10月30日17時必着、札幌市の製造業向け補助金も10月30日まで(先着順)で、いずれも受付の終盤です。
| 制度 | 対象者・対象事業 | 補助率・上限 | 対象経費の基本 | 変圧器の扱い | 受付状況(2026年10月27日時点) |
|---|---|---|---|---|---|
| 国(SII)省エネ・非化石転換補助金 設備単位型 | 全国の事業者(中小企業・大企業) | 1/3以内・上限1億円・下限30万円(メーカー強化枠は上限3億円) | 設備費のみ(設計費・工事費・撤去費は対象外) | 指定設備として対象 | 4次公募:10月5日〜10月30日17時必着(審査あり。交付決定は12月下旬予定) |
| 札幌市 製造業省エネルギー設備導入補助金 | 札幌市内に本社と製造拠点がある中小製造業など | 3/4・上限500万円(共同受電設備は4/5・上限3,000万円) | 設備費・設計費・工事費(撤去・処分費、消費税は対象外) | 更新に限り対象(年間損失電力量10%以上低減) | 7月6日〜10月30日(先着順。予算に達し次第終了) |
| 北海道 省エネルギー設備導入支援事業費補助金 | 道内に事業所がある法人(個人事業主は対象外)。道内の複数の建物・街区・エリア等で面的に行う事業、またはサプライチェーンを構成する複数の事業者による事業 | 1/2以内・上限 単独500万円/コンソーシアム1,000万円 | 工事請負費・備品購入費など(既存施設の撤去費は対象外) | 高効率トランス(変圧器)が対象設備の例に挙げられている(年率20%以上の削減などの要件あり) | 令和8年度は4月22日〜6月12日で終了。例年春に公募 |
| 環境省 SHIFT事業(省CO2型システムへの改修支援事業) | 工場・事業場の民間事業者等 | 1/3・上限1億円または5億円 | 公募要領で確認 | 電化・燃料転換・熱回収などでCO2を工場・事業場単位で15%以上削減する計画が前提。変圧器の更新だけでは対象になりにくい(推測) | 令和8年度の3次公募は10月15日12時で締切済み |
表:キュービクル・変圧器の更新に使える主な補助金(各制度の公式情報・公募要領による。最新の受付状況は各事務局で確認してください)
北海道の省エネルギー設備導入支援事業費補助金は、道内の複数の建物・街区・エリア等を対象に面的に行う事業か、サプライチェーンを構成する複数の事業者による事業であることが条件です。上限額の「単独500万円」は、1つの法人で申請できるという意味で、1つの建物だけの更新でよいという意味ではありません。
札幌市の製造業省エネルギー設備導入補助金は、交付決定額の合計が予算(3億円)に達した時点で締め切られます。申請する設備について、国や自治体の他の補助金を受けていないことが要件のため、同じ変圧器で国(SII)の補助金と併用することはできません。また、交付決定日から令和9年(2027年)1月5日までに、発注・納品・支払いまで終える必要があります。
各制度の詳細は、「SII省エネ補助金の設備単位型と2026年度の公募」「札幌市製造業省エネ補助金」「北海道の省エネルギー設備導入支援事業費補助金」で解説しています。
3. 国(SII)設備単位型の変圧器の条件は?
SIIの設備単位型で変圧器の更新を申請するには、「導入する変圧器の条件」と「事業としての省エネ要件」の両方を満たす必要があります。
| 対象の電圧 | 定格一次電圧 600V超〜7,000V以下 |
| 対象の容量 | 単相 5kVA超〜500kVA以下、三相 10kVA超〜2,000kVA以下 |
| 効率の基準 | トップランナー基準(変圧器 目標年度2026年度以降)に対するエネルギー消費効率の達成率105%以上で、SIIが補助対象設備として公表した型番であること |
| 対象外の例 | 柱上変圧器、ガス絶縁・H種絶縁のもの、スコット結線・3巻線以上のもの、風冷式・水冷式のもの、二次電圧が100V未満または600V超のもの など |
| 事業の省エネ要件 | 次のいずれかを満たすこと:①省エネ率10%以上 ②省エネ量 原油換算で年1kl以上 ③経費当たり省エネ量 1kl/1,000万円以上 |
| 対象経費 | 変圧器本体の設備費のみ(設計費、据付・工事費、配線などの材料費、運搬費、撤去・廃棄費、消費税は対象外)。原則3者以上の価格競争などによる最低価格が上限 |
| 補助率・上限 | 従来枠 1/3以内・上限1億円・下限30万円。GX要件を満たすメーカーの指定設備を導入する場合は、メーカー強化枠(1/3以内・上限3億円)でも申請できます |
なお、補助率1/2の「トップ性能枠」は対象設備が空調・ボイラ・産業用モータなどに限られており、変圧器は含まれていません。
変圧器の省エネ量は「損失」で計算する
SIIの指定計算では、変圧器の省エネ量を、更新前後の電力損失量の差で求めます。稼働時間は24時間×365日(8,760時間)で固定です。
全損失 = 無負荷損 + 負荷損 ×(基準負荷率 ÷ 100)²
電力損失量(kWh/年)= 全損失(W)× 8,760時間 × 台数 ÷ 1,000
基準負荷率:500kVA以下は40%、500kVA超は50%
更新前の変圧器と、導入予定の変圧器で同じ計算を行い、その差を原油換算した値が省エネ量になります。導入の前後で容量や負荷率が大きく変わる場合は、指定計算が使えず、独自の計算と根拠資料が必要です。
冷房設備の導入や設備の増設で変圧器の容量が足りなくなり、更新と同時に容量を上げるケースがあります。容量が大きく変わると、指定計算ではなく独自計算が必要になり、準備の負担が増えます。容量の見直しは、電力の使い方(最大需要電力や負荷率)の確認とセットで検討してください。
4. 補助額はいくら?仮定の金額で計算例を確認
同じ見積りでも、制度によって補助額は大きく変わります。ここでは、説明のための仮定の金額で計算します(実際の工事価格の目安ではありません)。
| 見積りの内訳(仮定・税抜) | 金額 | 国(SII)設備単位型 | 札幌市 製造業向け |
|---|---|---|---|
| 高効率変圧器 本体 | 300万円 | 対象 | 対象 |
| 変圧器の据付・接続工事 | 100万円 | 対象外 | 対象 |
| 既存変圧器の撤去・処分 | 50万円 | 対象外 | 対象外 |
| 遮断器・外箱など、その他の機器と工事 | 150万円 | 対象外 | 対象外(省エネ効果を示せない場合) |
| 合計 | 600万円 | 補助対象 300万円 | 補助対象 400万円 |
| 補助額(最大) | - | 300万円×1/3=100万円 | 400万円×3/4=300万円 |
| 自己負担(税抜) | - | 500万円 | 300万円 |
表:補助額の計算例(金額はすべて仮定。補助対象経費の範囲は審査で決まり、SIIは採択審査、札幌市は先着順の審査があります)
この例では、国(SII)の補助額は工事総額の約17%にとどまります。札幌市の制度は工事費も対象になるため補助額が大きくなりますが、対象は札幌市内の中小製造業に限られ、国の補助金とは併用できません。どの制度が有利かは、対象経費の範囲と補助率の両方で比べる必要があります。
5. 補助金を使ったキュービクル更新の進め方
補助金を使う場合は、原則として交付決定の前に発注・着工しないことが前提です。停電を伴う工事になるため、工程の計画も早めに始めます。
変圧器の銘板(容量・製造年・メーカー)、点検報告書、直近12か月の電気料金明細を集めます。銘板の製造年や保守履歴から、PCB含有の可能性もこの段階で確認します。
変圧器だけの更新か、キュービクル一式の更新かを決め、使える補助金・対象経費・公募時期を確認します。
対象の変圧器と対象外の工事を分けた見積りをとり、更新前後の損失電力量を計算します。SIIでは原則3者以上の価格競争(相見積り)が必要です。
公募期間内に申請し、交付決定を待ちます。交付決定前の発注・契約・着工は原則として補助対象外です(北海道の制度には、指令前着手届により交付決定前の着手を認める手続きがあります)。
電力会社・電気保安法人と停電日を調整して工事を行い、写真や支払いの証憑をそろえて実績報告をします。
6. キュービクル補助金でよくある失敗5つ
失敗1:交付決定の前に発注してしまう
故障や老朽化で急いでいると、交付決定を待たずに発注してしまうことがあります。国(SII)や札幌市の制度では、交付決定前の発注・契約・着工は対象外です。北海道の制度のように事前の手続きで着手を認める例外もありますが、必ず事前に事務局へ相談してください。
失敗2:工事総額に補助率を掛けて試算してしまう
国(SII)の設備単位型は変圧器本体の設備費だけが対象で、据付工事・撤去・外箱や遮断器などは対象外です。補助額は、対象になる費用だけで計算してください。
失敗3:変圧器の納期を確認せずに申請する
変圧器やキュービクルは受注生産となる場合があり、納期に時間がかかることがあります。工事の期限が決まっている補助金では、申請前の納期確認が欠かせません。
失敗4:先着順の予算切れに間に合わない
札幌市の制度のように先着順のものは、公募期間内でも予算に達すると締め切られます。書類の準備は公募開始前から進めておきます。
失敗5:古い変圧器・コンデンサのPCBを確認していない
古い変圧器やコンデンサには、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている場合があります。低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年3月31日です。
確認は、まず銘板の製造年・メーカー情報と、絶縁油の保守履歴から始めます。環境省の資料では、コンデンサは1991年以降、変圧器は1994年以降に製造・出荷され、絶縁油の入れ替えなどの保守がされていないものは、PCB汚染のおそれはないとされています(ただし例外的な検出事例も報告されています)。それより前の機器や判断できない機器は、絶縁油を採取して分析します。なお、密閉型(封じ切り)のコンデンサは、使用中に穴を開けて採油すると使えなくなる点に注意が必要です。銘板の確認や採油は、電気保安の担当者と相談して行ってください。
7. 北海道の事業者がキュービクル更新で補助金を活用するポイント
■ 停電作業は雪の少ない時期に計画する
キュービクルの更新は停電を伴います。積雪期は搬入や作業の条件が厳しくなるため、補助金の公募時期と工事時期を合わせて、雪の少ない時期に工事できるよう逆算します。
■ 札幌市内の中小製造業は、国と市の制度を比べて選ぶ
札幌市の制度は補助率3/4で工事費も対象ですが、国の補助金とは併用できません。上限500万円・先着順という条件も踏まえ、計算例のように補助額を比べて選びます。
■ 複数拠点がある法人は、北海道の制度も検討する
北海道の補助金は、複数の建物やサプライチェーンの複数事業者で取り組む事業が対象です。道内に複数の拠点があり、まとめて省エネ設備を更新する計画であれば、例年春の公募に向けて準備する価値があります。
■ 来年度の公募に向けて今から準備する
銘板・点検記録・電気料金明細を今のうちにそろえておくと、次の公募に間に合わせやすくなります。
■ 容量と契約電力を一緒に見直す
更新を機に、力率・負荷率・契約電力を確認すると、変圧器の容量が過大か不足かがわかります。適正な容量にすると、損失の削減に加えて基本料金の見直しにもつながる場合があります。
更新時期の判断は「キュービクルの寿命と更新時期」、更新前に確認する数字は「キュービクル更新前に確認すべき3つの数字」、PCBの基礎は「PCBの全貌と処分の重要性」で解説しています。
8. よくある質問(FAQ)
A. キュービクルの中の変圧器を高効率品に更新する部分は、国(SII)の設備単位型や札幌市の製造業向け補助金の対象になります。国(SII)は変圧器本体の設備費のみが対象で、札幌市は工事費も対象です。外箱や遮断器などの更新費用は、対象外になることが多いです。
A. 国(SII)設備単位型の4次公募は2026年10月30日17時必着、札幌市の製造業省エネルギー設備導入補助金は10月30日まで(先着順)です。北海道の省エネルギー設備導入支援事業費補助金は、令和8年度の受付を6月12日で終了しています。
A. SIIの設備単位型では、定格一次電圧600V超〜7,000V以下で、トップランナー基準に対するエネルギー消費効率の達成率が105%以上の変圧器のうち、SIIが補助対象設備として公表した型番が対象です。あわせて、省エネ率10%以上などの省エネ要件を事業として満たす必要があります。
A. 札幌市の製造業省エネルギー設備導入補助金は、申請する設備について国や自治体の他の補助金を受けていないことが要件のため、同じ変圧器で国(SII)の補助金と併用することはできません。
A. 原則として、交付決定の前に発注・契約・着工した工事は補助対象外です。北海道の制度には事前の手続きで着手を認める例外がありますが、国(SII)や札幌市の制度では交付決定を待ってから発注してください。
A. 低濃度PCB廃棄物は2027年3月31日までに処分する必要があります。まず銘板の製造年・メーカー情報と保守履歴で確認し、判断できない場合は絶縁油を分析します。PCBが含まれていれば、保管の届出と期限内の処分が必要です。
9. まとめ
- キュービクル更新の補助金は、変圧器を高効率品に替える部分が中心です
- 補助率だけでなく、対象経費の範囲を確認します。国(SII)は変圧器本体の設備費のみ、札幌市は工事費も対象です
- 2026年度は、国(SII)設備単位型と札幌市の製造業向け補助金がいずれも10月30日まで受付中です
- 北海道の補助金は、複数の建物やサプライチェーンの複数事業者で取り組む事業が対象です
- 交付決定前の発注は原則対象外です。変圧器の納期と停電工事の時期を逆算して計画します
- 古い変圧器・コンデンサは、銘板と保守履歴でPCBの可能性を確認し、低濃度PCBの処分期限(2027年3月31日)に備えます
記事情報
公開日:2026年10月27日
最終更新日:2026年10月27日(対象経費・申請要件・計算例・PCBの確認手順を追記)
参照資料:
・SII「令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募」(SII)
・SII「公募要領<4次公募用>」(PDF)
・SII「省エネルギー量計算の手引き【指定計算(変圧器)】<4次公募>」(PDF)
・北海道「令和8年度 省エネルギー設備導入支援事業費補助金」(北海道)
・札幌市「製造業省エネルギー設備導入補助金」(札幌市)
・環境省 SHIFT事業「令和8年度 追加公募の予告」(PDF)
・環境省・経済産業省「PCB使用製品及びPCB廃棄物の期限内処理に向けて」(PDF)
・環境省「変圧器等からの低濃度PCB検出事例」(PDF)
・札幌市「PCB廃棄物の適正処理について」(札幌市)
※受付状況は2026年10月27日時点の情報です。補助額の計算例は仮定の金額です。最新の状況と要件は、各制度の公式サイト・公募要領でご確認ください。
