【速報】北海道の冬を乗り切るチャンス!令和7年度補正予算「省エネ支援パッケージ」が閣議決定されました

2025年11月28日、政府は「令和7年度補正予算案」を閣議決定しました。

私たち北海道の企業や家庭にとって、冬のエネルギーコストは経営と生活を直撃する最大の課題です。今回発表された「省エネ支援パッケージ」は、従来の枠組みを大きく超える予算規模と、新たな支援区分(GX予算)が盛り込まれた、まさに「北海道のためにある」と言っても過言ではない内容です。

本コラムでは、totokaが独自に解析した補正予算の詳細を、北海道の事業環境に合わせて余すところなく解説します。経営者様、設備担当者様は、来年度の投資計画の基礎資料としてご活用ください。


第1章:全体像と予算規模 ~過去最大級の支援へ~

今回の補正予算における省エネ支援は、経済産業省、環境省、国土交通省の3省が連携し、家庭から産業までを網羅する巨大なプロジェクトです。

1. 予算の全体像

今回の補正予算案では、省エネ・非化石転換設備の更新に対して、国庫債務負担行為を含め総額2,450億円規模(令和7年度補正予算単体で675億円)が計上されました 。

これは、昨今の燃料価格高騰への対策と、2050年カーボンニュートラルに向けた投資を同時に加速させるための「緊急かつ大規模」な措置です。

2. 北海道にとっての重要性

北海道は、暖房需要や融雪設備など熱需要が極めて高く、エネルギー単価の上昇が利益を圧迫しやすい地域です。今回のパッケージでは、「高効率給湯器」「断熱窓」「工場の熱源設備更新」など、寒冷地でこそ効果を発揮する項目が重点的に強化されています。


第2章:【事業者向け】省エネ・非化石転換設備導入支援の全貌

北海道内の工場、倉庫、商業施設をお持ちの事業者様にとって、本予算のメインディッシュとなるのがこの補助金です。

今回は従来の「エネルギー対策特別会計(エネ特)」に加え、新たに「GX(グリーントランスフォーメーション)予算」が投入され、支援内容が劇的に進化しています。

1. 4つの類型と補助率・上限額

支援は大きく以下の4つの類型(Ⅰ~Ⅳ)に分かれています。自社の設備投資がどれに当てはまるかご確認ください。

(Ⅰ) 工場・事業場型(大規模更新向け)

工場全体や製造ライン全体で大幅な省エネを図る取り組みが対象です。

  • 対象設備例:塩製造における「平釜」から、排熱を再利用できる連結型の「立釜」への更新など、設計レベルでの見直しを伴うもの。
  • 補助率
    • 中小企業:1/2
    • 大企業:1/3
  • 補助上限額15億円(複数年度事業の場合は最大30億円、連携事業の場合は最大30億円等の枠あり)。
  • 北海道での活用イメージ:食品加工工場のライン全体の刷新、大規模ボイラーシステムの排熱回収システム導入など。

(Ⅱ) 電化・脱炭素燃転型(燃料転換向け)

化石燃料を使用する設備から、電気や低炭素燃料を使用する設備への更新・改造を支援します。

  • 対象設備例
    • コークスを使用する「キュポラ式」炉から、電気を使用する「誘導加熱式」炉への更新。
    • 【重要】水素対応設備:今回より、水素対応設備への改造(バーナー交換等)や、水素対応設備の新設、更新時の既存設備との併用も対象となりました。
  • 補助率
    • 中小企業:1/2(更新・改造)、1/5(新設)
    • 大企業:1/3(更新・改造)。
  • 補助上限額3億円(電化を伴う場合は5億円)。
  • 北海道での活用イメージ:重油ボイラーからヒートポンプチラーへの更新、将来的な水素供給を見据えた石狩・室蘭エリア等でのバーナー改造など。

(Ⅲ) 設備単位型(最も使いやすい定番枠)

あらかじめリスト登録された「高効率機器」への更新を補助する、最も申請件数が多い類型です。今回はここに革命的な変更があります。

★新設された「GXⅢ類型」に注目!

従来の「Ⅲ類型」に加え、より高性能な設備を対象とした「GXⅢ類型」が創設されました。

区分GXⅢ類型:トップ性能枠GXⅢ類型:メーカー強化枠現行Ⅲ型(従来型)
対象省エネ性能が極めて高く、普及初期段階の設備GXリーグ参画等、成長にコミットするメーカーの設備省エネ効果の高い特定の設備
対象行為新設・更新(※新設がついに対象に!)更新更新
中小企業補助率新設 1/3
更新 1/2
1/31/3
大企業補助率新設 1/5
更新 1/3
1/31/3
補助上限額3億円3億円1億円
対象経費設備費設備費(インバータ含む)設備費
  • トップ性能枠の凄さ:これまでは「古くなった機械の入れ替え(更新)」しか補助が出ませんでしたが、「トップ性能枠」に限り、工場の新設や増設に伴う「新規導入(新設)」も補助対象になります。北海道で新工場を建てる、ラインを増やす計画がある企業にとっては、またとないチャンスです。
  • 対象設備の選定:第三者委員会によって「高い省エネ性能」かつ「普及率が低い」設備が選定されます。

(Ⅳ) EMS型(エネルギーマネジメントシステム)

エネルギー使用量を「見える化」し、最適制御するシステムの導入です。

  • 対象:見える化システムによるロス検出、AIによる省エネ最適運転など。
  • 補助率:中小企業 1/2、大企業 1/3
  • 補助上限額1億円

第3章:【新制度】サプライチェーン連携と水素対応の強化

今回の補正予算では、単独企業の取り組みだけでなく、つながりを重視した支援が強化されています。

1. サプライチェーン(SC)連携枠の創設

親会社とサプライヤー(下請け企業など)がチームを組んで省エネに取り組む場合、優遇措置が受けられます。

  • 仕組み
    1. 意識醸成・チームアップ:サミット開催や勉強会で脱炭素の意識を共有 15
    2. 計画作成:グループ全体で省エネ計画を作成。
    3. 設備更新:計画に基づき設備を導入。
  • 要件:SC上の4者以上で申請すること。
  • メリット
    • 通常は対象外となる大企業でも補助率などの支援が受けやすくなる可能性があります(詳細は公募要領で確認)。
    • 中小企業の補助率が、一般枠より有利になるケースが想定されます。
    • 補助上限:連携事業全体で30億円

2. 水素対応設備の要件緩和

  • 新設・併用の解禁:これまでは完全な転換が求められがちでしたが、将来の水素社会を見据え、「水素Ready設備(部品交換で水素対応できる都市ガス設備)」や、既存設備を残しながら水素設備を追加する「併用」も支援対象になりました。
  • 実稼働要件:水素対応設備については、10%以上の混焼率で実稼働させることが求められます。

第4章:【中小企業支援】省エネ診断から実装までワンストップへ

「何から手をつけていいか分からない」という道内中小企業の皆様、まずはここから始めてください。

省エネ診断の進化(予算33億円)

専門家が工場やビルを訪問し、エネルギーの無駄を見つける「省エネ診断」がさらに使いやすくなります。

  1. 診断の種類
    • ウォークスルー診断:専門家が現場を見て回り、運用改善を即日提案。後日詳細レポート提出。
    • IT診断:計測機器を設置し、詳細なデータを取得・分析して提案。
  2. 【新設】マッチングプラットフォーム:診断結果をもとに、具体的な解決策(ソリューション)を持っている企業(メーカー、施工会社、リース会社、金融機関など)とマッチングできるWebプラットフォームが創設されます。
    • ユーザー企業は匿名で診断結果を登録可能。
    • 支援企業から「うちのこの設備ならこれだけ削減できます」「リースの提案ができます」といったオファーが届きます。
  3. 伴走支援:診断を受けたものの実施に至っていない企業に対し、補助金申請サポートや計画作成のフォローアップが行われます。

第5章:【住宅・建築】北海道の冬を変える「3省連携」超大型補助金

建設業、リフォーム業、不動産業、そして住宅オーナーの皆様。今年度話題となった「窓リノベ」「給湯省エネ」が、令和7年度補正予算でも継続・強化されます。

国交省・経産省・環境省が連携し、面倒な申請をワンストップで行える仕組みは健在です。

1. 【窓】先進的窓リノベ2026事業(環境省:1,125億円)

北海道の住宅で最も熱が逃げる「窓」の断熱改修に対する支援です。

  • 対象工事:内窓設置、外窓交換、ガラス交換。
  • 補助額:工事内容に応じて定額補助。
    • 目安として、最大100万円/戸(※過去実績では最大200万円のケースもありましたが、今回の資料の表では「最大100万円」の区分に記載あり。詳細な単価は後日公表の要領を要確認ですが、非常に高い補助率であることは変わりません)。
    • 要件:熱貫流率(Uw値)1.9以下など、高い断熱性能を持つ窓(トップランナー制度2030年目標水準超)。北海道の厳しい冬には必須のスペックです。

2. 【給湯】給湯省エネ2026事業(経産省:570億円)

電気代・ガス代削減の切り札、高効率給湯器への更新支援です。今回は「機能」によって補助額が細分化されました。

対象機器と補助額(案)

より高性能な機種、災害に強い機種へのシフトを促す設定になっています 。

機種基礎要件A要件B要件A+B要件C要件
エコキュート6万円10万円12万円13万円
ハイブリッド給湯機8万円13万円13万円15万円
エネファーム16万円20万円
  • A要件:インターネット接続可&昼間の余剰再エネ電気を活用できる(おひさまエコキュート等)。
  • B要件:CO2排出量が標準より5%以上少ない、超高効率機種。
  • C要件(エネファームのみ):停電時でも発電・給湯が継続できるレジリエンス機能。

★北海道民必見!撤去加算

北海道の古いオール電化住宅に多い「電気蓄熱暖房機(蓄暖)」や「電気温水器」。これらを撤去して高効率給湯器を入れる場合、補助額が加算されます。

  • 電気蓄熱暖房機の撤去+4万円/台(※エコキュート導入時)。
  • 電気温水器の撤去:+2万円/台(※エコキュート導入時)。これを機に、電気代の高い蓄暖からの卒業を検討すべきです。

3. 【賃貸】賃貸集合給湯省エネ2026事業(経産省:35億円)

これまで「置き場所がない」「オーナーにメリットが薄い」と進まなかった賃貸マンション等の給湯器更新に特化した支援です。

  • 対象:既存賃貸集合住宅において、小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ、エコフィール等)へ更新する場合。
  • 補助額
    • 追い焚き機能なし5万円/台
    • 追い焚き機能あり7万円/台
    • 工事内容により追加補助あり(+3万円など) 39
  • ポイント:エコキュートが置けない狭いパイプスペースでも設置可能な「潜熱回収型ガス給湯器」が対象であることが最大の特徴です。

4. 【新築・改修】みらいエコ住宅2026事業(国交省・環境省:2,050億円他)

新築住宅や、断熱改修を含むリフォーム全般への支援です。

  • 新築(子育て世帯・若者夫婦世帯)
    • ZEH水準住宅:35万円/戸(一定の条件で40万円)。
    • 長期優良住宅:75万円/戸(一定の条件で80万円)。
  • リフォーム
    • 断熱改修、エコ住宅設備(高断熱浴槽、節湯水栓など)の設置に対して、工事内容ごとに補助。
    • 子育て対応改修バリアフリー改修も併せて行うと対象になります。

5. 【新築上位】脱炭素志向型住宅(GX志向型住宅)支援(環境省:750億円)

ZEHを大きく上回る性能を持つトップレベルの住宅への支援です。

  • 対象:断熱等級6以上かつ一次エネ削減率100%以上などの超高性能住宅。
  • 補助額定額110万円/戸(地域区分1~4の北海道などは125万円/戸と優遇されています!)。

第6章:北海道の皆様への提言 ~今、何をすべきか~

今回の補正予算「省エネ支援パッケージ」は、設備投資を考えている企業、リフォームを検討している家庭にとって、過去数年で最も有利な条件が揃っていると言えます。

1. スケジュール感

  • 補正予算案の閣議決定:令和7年11月28日。
  • 今後の流れ:国会での予算成立後、事務局が設置され、公募要領が発表されます。
  • 注意点:新築住宅支援(みらいエコ、GX志向型)など一部の事業では、「令和7年11月28日以降に工事着手(基礎工事等)したもの」が対象となる特例措置が発表されています。これから契約・着工する方は、日付の管理を徹底してください。

2. totokaからのアドバイス

  • 設備メーカーとの連携:「GXⅢ類型(トップ性能枠)」や「給湯省エネ事業」の対象機器は、メーカー型番単位で指定されます。導入予定の設備が対象リストに載るかどうか、早めにメーカーや施工店に確認を依頼してください。
  • 蓄暖撤去のチャンス:北海道民の悩みの種である「使っていないのに場所を取る蓄熱暖房機」。今回の撤去加算金を使って、スッキリ片付ける絶好の機会です。
  • 新設工場の計画:これまで「新設は補助金が出ない」と諦めていた企業様、GXⅢ類型トップ性能枠で最大3億円・補助率1/3(中小企業)の可能性があります。設計段階から省エネ仕様を盛り込むことで、イニシャルコストを大幅に下げられます。

totokaでは、北海道の厳しい気候条件とエネルギー事情を熟知したスタッフが、皆様の省エネ活動をサポートいたします。

「うちの改修工事は対象になる?」「申請の手続きは?」など、疑問がございましたらお気軽にご相談ください。

この冬、賢く補助金を活用して、コスト削減と快適な環境を手に入れましょう。