【防災/分散型補助金】地域レジリエンス・脱炭素化補助金とは?令和7年度補正の要件・申請ポイントを完全網羅

災害大国・日本において、自治体や地域の防災拠点に求められる機能は年々高度化しています。

「停電しても明かりがつく避難所」「災害時でも空調や通信が使える防災拠点」――これらは今や必須の要件です。これらを整備しつつ、平時の脱炭素化(電気代削減・CO2削減)も同時に達成する。そんな理想的な設備導入を強力にバックアップする環境省の大型補助金が、「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業等」です。

本コラムでは、令和8年(2026年)1月に公募が開始された令和7年度補正予算事業に基づき、この補助金の仕組み、対象、計算方法、そして採択を勝ち取るためのポイントを、初心者の方にも分かりやすく、かつ実務レベルまで掘り下げて解説します。


第1章:この補助金の全体像をつかむ

まずは、この補助金が「何を目的として」「何をしてくれるのか」を整理しましょう。

1.1 事業の目的:なぜ「レジリエンス」と「脱炭素」なのか?

この事業のキーワードは「同時実現」です。以下の2つをセットで行うことが求められます。

  1. レジリエンス(強靭化)の向上
    • 災害時、商用電力がストップしても、自立的にエネルギーを供給できること。
    • 避難所や防災拠点の機能を維持し、住民の安全を守ること。
  2. 脱炭素化(省CO2)の推進
    • 平時において、再生可能エネルギーを自家消費し、温室効果ガスを削減すること。

つまり、「災害用のためだけに発電機を置く」のはNG。「普段はエコな電気として使い、いざという時は非常用電源になる」設備でなければなりません。

1.2 予算規模と緊急性

  • 予算額:40億円(一般分20億円、特別会計分20億円)
  • 実施期間:令和7年度補正予算事業(実質、令和8年1月〜3月の手続き)
  • 事業完了期限:原則として令和8年(2026年)3月16日までに検収・支払いを完了する必要があります(ただし、二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金については、2か年事業も可能)。

1.3 誰が申請できるのか?(補助対象者)

基本的には地方公共団体(都道府県、市町村等)が所有する施設が対象ですが、申請スキームには柔軟性があります。

  • 単独申請:地方公共団体が単独で申請。
  • 共同申請:地方公共団体と民間事業者(PPA事業者、リース会社、エネルギーサービス事業者など)が共同で申請。
    • ポイント:初期投資を抑えるPPAモデルやリース活用の場合、民間企業が代表申請者になることも可能ですが、必ず自治体との共同申請が必要です。

第2章:補助対象となる施設・設備

「どこの施設でも良い」わけではありません。また、「どんな設備でも良い」わけでもありません。ここが最初のハードルです。

2.1 対象となる「施設」の条件

以下の3つの条件をクリアする必要があります。

  1. 公共施設であること
    • 民間所有のビルなどは原則対象外です(自治体が所有する施設)。
  2. 防災上の位置づけがあること(以下のいずれか)
    • 指定避難所:学校(体育館)、公民館、市民会館など。
    • 防災拠点:庁舎、消防署、警察署、災害対策本部となる施設。
    • 業務継続計画(BCP)上の重要施設:災害発生から概ね3日以内に業務継続が必要な施設(給食センター、上水道施設、公立病院、清掃工場など)。
  3. 耐震性を有すること
    • 昭和56年6月以降の新耐震基準で建てられたもの、または耐震診断で安全が確認されたもの。事業完了までに耐震改修を終える場合もOKです。

【注意点】ハザードマップの確認

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)などの危険区域にある施設は、原則対象外です。ただし、浸水想定区域などの場合、設備を屋上や高所に設置するなどの「浸水対策」を講じれば対象となる場合があります。

2.2 対象となる「設備」のラインナップ

補助対象は、大きく「必須設備」と「任意設備」に分かれます。

【必須設備】(いずれかの導入が絶対条件)

これらの設備は、「平時は自家消費」「災害時は自立運転」ができることが条件です。売電(FIT/FIP)は認められません。

  1. 再生可能エネルギー発電設備
    • 太陽光発電:最も一般的。パネル出力合計10kW以上が必要。
    • バイオマス発電・熱利用:薪ボイラー、チップボイラーなど。
    • 地中熱利用小水力風力など。
  2. コージェネレーションシステム(CGS)
    • ガスなどで発電し、廃熱を給湯や空調に使うシステム。都市ガスやLPガス仕様のもの。

【任意設備】(必須設備とセットでのみ導入可能)

再エネ設備の効果を最大化するための設備です。単体での申請はできません。

  1. 蓄電池
    • 太陽光発電などの「自然変動型電源」を導入する場合は、原則として必須です。
    • 車載型蓄電池(EV/PHV):外部給電機能を持つ電気自動車も、充放電設備とセットなら補助対象になります(計算式あり)。
  2. 自営線
    • 建物間で電気を送るための配線設備。
  3. 省CO2設備(高効率機器)
    • 高効率空調高効率照明(LED)高機能換気設備など。
    • 重要条件:導入した再エネ設備からエネルギー供給を受けるエリア(避難所となる体育館の照明や空調など)に限られます。
  4. 断熱改修
    • 再エネ供給エリアの二重窓、断熱材など。

第3章:補助率と補助金額の考え方

お金の話は非常に重要です。自治体の財政負担を減らすためのルールを熟知しましょう。

3.1 補助率の決まり方

申請者と設備の種類によって補助率が変わります。

申請者(設置場所)設備の種類補助率
市区町村・離島太陽光発電 以外の再エネ(地中熱・バイオマス等)2/3
市区町村・離島太陽光発電、CGS1/2
都道府県・指定都市全て1/3
  • ポイント:地方の市町村が「地中熱」や「バイオマス熱」をやる場合は2/3という高い補助率が適用されます。太陽光は普及が進んでいるため1/2です。

3.2 補助対象経費の上限(費用対効果の壁)

ここが最大の落とし穴です。

「いくらでも高い設備を入れていい」わけではありません。「1トンのCO2を削減するために、いくら補助金を出すか」というキャップ(上限)が設定されています。

  • 太陽光発電の場合9万円 / t-CO2(一般枠)
    • ※ただし、省エネ設備(LEDや空調)を同時導入する場合は 25万円 / t-CO2 まで緩和されます。
  • その他の設備(蓄電池単体など除く)25万円 / t-CO2

【計算の仕組み】

(補助対象経費)÷(法定耐用年数 × 年間CO2削減量)= 費用対効果

この計算結果が上記の上限を超えた場合、超えた部分は補助対象外(自腹)になります。つまり、無駄に高スペックな設備や、発電量が少ない(日当たりが悪い)場所に設置しようとすると、補助金が満額出ない可能性があります。

「省エネ設備とのセット導入」が推奨される理由は、この上限枠を緩和(9万→25万)させるテクニックでもあるのです。


第4章:申請に必要な書類と作成のポイント

申請書類は膨大ですが、核となるのは「実施計画書」と「導入量算出表」の2つです。これらを制するものが申請を制します。

4.1 実施計画書(様式第1の別紙1)

事業のストーリーを描く書類です。以下の項目を具体的に記述します。

  • 事業の目的:なぜこの施設に、この設備が必要なのか?(例:避難所だが空調がなく、夏場の避難に課題があった等)
  • 平時の役割:普段どうやってCO2を減らすか。環境教育への活用など。
  • 災害時の役割:どのエリアに、何を供給するか(例:体育館の照明とコンセント、トイレのポンプ)。
  • 導入スケジュール:令和8年3月までに完了する具体的な工程表。

4.2 導入量算出表(別添1) ※最重要

ここで「災害時に本当に電力が足りるのか?」を数字で証明します。

  1. 特定負荷の洗い出し
    • 災害時に動かしたい機器(照明、スマホ充電器、井戸ポンプ、Wi-Fiルーターなど)をリストアップします。
    • それぞれの「消費電力(W)」×「使用時間(h)」=「必要電力量(kWh)」を算出します。
  2. 発電・蓄電能力との照合
    • 導入する太陽光パネルの発電量シミュレーション。
    • 蓄電池の容量。
    • これらが、上記1の必要量を上回っていることをExcelシート上で整合させる必要があります。
    • 注意:蓄電池容量が大きすぎても「過剰スペック」とみなされます。「必要量」に対して「合理的」なサイズである必要があります。

4.3 CO2削減効果計算表(別添2)

  • 環境省指定の計算シートを使います。
  • 現状の電力使用量と、導入後の削減見込みを入力します。
  • この結果が、前述の「費用対効果(25万円/t-CO2)」の判定に使われます。

第5章:採択されるための「加点ポイント」

公募要領には「評価項目」が記載されています。単に要件を満たすだけでなく、以下のポイントを押さえることで採択率が上がります。

  1. 災害時のレジリエンス性(必須級)
    • 災害時の運用マニュアルが整備されているか?
    • 住民へのスマホ充電など、具体的な便益が明確か?
  2. 費用対効果(重要)
    • 1円あたりのCO2削減量が大きいほど評価が高い。
  3. 各種計画との整合性
    • 国土強靱化地域計画に位置づけられているか(※必須要件に近い)。
    • 地方公共団体実行計画(事務事業編・区域施策編)を策定しているか。
    • 「デコ活」宣言をしているか。
  4. 先進的な取り組み
    • クーリングシェルター(指定暑熱避難所)への導入。
    • 脱炭素先行地域としての取り組み。

第6章:申請手続きのスケジュールと流れ(緊急対応版)

令和7年度補正予算(令和8年1月公募)のスケジュールは極めてタイトです。

6.1 公募期間

  • 開始:2026年1月22日(木)
  • 締切:2026年1月30日(金)12時必着

※現在(1月27日)時点で見ると、残り数日しかありません。今回の公募に間に合わない場合でも、この事業は国の「地球温暖化対策計画」や「国土強靱化計画」に基づく基幹事業であるため、次年度以降も類似の公募が出る可能性が高いです。今回の準備内容は必ず次につながります。

6.2 提出方法

  • 紙媒体:1部郵送または持参。
  • 電子媒体:CD-RまたはDVD-Rにデータを保存して同封(メール提出不可)。
  • 提出先:一般財団法人 環境イノベーション情報機構(EIC)。

6.3 完了後の手続き

事業は「採択→交付決定→工事→支払い」で終わりではありません。

  • 実績報告書:工事完了後30日以内に提出。
  • 年次報告:導入後3年間は、毎年CO2削減実績や稼働状況を報告する義務があります。
  • J-クレジットの禁止:本補助金で得られたCO2削減効果を、J-クレジットとして売却することは法定耐用年数期間中はできません(二重取り禁止)。

第7章:よくある質問と失敗事例(FAQ)

申請者が陥りやすいミスをまとめました。

Q1. 避難所の「トイレ」も補助対象になりますか?

A. トイレの便器そのものは対象外ですが、断水・停電時にトイレを流すための「井戸ポンプ」や「浄化槽ブロワー」を動かすための蓄電池や再エネ設備は対象です。また、省エネ型浄化槽自体が対象になる場合もあります。

Q2. 既存の古い太陽光パネルを撤去して、新品にする費用は出ますか?

A. 原則として「既存設備の撤去費・廃棄費」は補助対象外です。また、「単なる更新(機能回復)」も対象外となることが多いですが、CO2削減効果が向上し、かつレジリエンス機能(自立運転・蓄電池)が新たに追加されるような「アップグレード」であれば認められる可能性があります。ただし、撤去費は自己負担です。

Q3. 補助対象外経費には何がありますか?

A. 以下の経費は補助金が出ません。見積書から除外して計算する必要があります。

  • 土地の造成費、整地費、フェンス設置費。
  • 非常用発電機(化石燃料のみで動くもの)。
  • 予備品、消耗品。
  • 官公庁への申請手数料。
  • 造園工事、植栽。
  • パソコンやモニター(単なる啓発用)。

Q4. 民間企業の利益排除とは?

A. 自治体と共同申請する民間企業(PPA事業者など)が、自社製品(自社の太陽光パネルなど)を導入する場合、その製品価格に「利益」を乗せてはいけません。「製造原価」で計上する必要があります。これを証明する書類が求められます。


第8章:シミュレーション~申請書作成の実践~

ここでは、架空の「A市市民体育館」を例に、申請書(導入量算出表)の数値をどう組み立てるかシミュレーションします。

モデルケース:A市市民体育館(指定避難所)

  • 課題:災害時、停電すると真っ暗になり、夏は蒸し風呂状態になる。
  • 導入計画:屋根に太陽光パネル、蓄電池、そして特定エリアに高効率空調とLEDを導入。

ステップ1:災害時の「特定負荷」を決める

避難所運営に必要な最低限の機器をリストアップします。

  • LED照明(アリーナ):500W × 10時間 = 5,000Wh
  • スマホ充電(100人分):1,000W × 5時間 = 5,000Wh
  • 通信機器(Wi-Fi等):100W × 24時間 = 2,400Wh
  • 業務用扇風機・スポットクーラー:2,000W × 8時間 = 16,000Wh
  • 合計必要電力量(1日あたり):28,400Wh(28.4kWh)

ステップ2:太陽光パネルの選定

上記の28.4kWhを賄うため、パネルを選定します。

  • 実発電量を考慮し、余裕を見て10kW〜15kW程度のパネルを設置すれば、晴天時であれば昼間の電力+蓄電分を賄えそうです。今回は15kWとします。

ステップ3:蓄電池の選定

  • 夜間に使う電力(照明の一部、通信機器など)や、雨天時のバックアップを考えます。
  • 計算上の必要量(28.4kWh)をカバーできる、あるいは重要負荷(通信・照明で約7.4kWh)だけでも数日間持たせる容量。
  • ここでは15kWh〜20kWh程度の蓄電池を選定します。

ステップ4:整合性チェック

  • 導入量算出表(Excel)に入力し、
    • 「太陽光発電量 > 平時の自家消費量」
    • 「災害時の必要量 ≦ 蓄電池容量 + 発電量」
    • になっているか確認します。
  • 同時に、導入する高効率空調が、このシステムで動かせる範囲(特定負荷)に入っていることを図面で示します。

このロジックが破綻している(例:エアコンを全開にするのに蓄電池が小さすぎる)と、審査で落とされます。「我慢して使う範囲」と「設備能力」のバランスが重要です。


第9章:まとめと今後の展望

成功の鍵は「準備」と「ストーリー」

この補助金は、単に設備を買うためのものではありません。「地域の防災力を高め、脱炭素社会へ移行する」という自治体の意思表示を支援するものです。

申請書には、設備のスペックだけでなく、「災害時にどう運用するか」「平時にどう活用するか」という具体的なストーリー(運用計画)が不可欠です。

今回間に合わなくても諦めない

令和7年度補正予算の公募期間は非常に短いですが、脱炭素とレジリエンス強化は国策のど真ん中です。

  • 今回(1/30締切)に申請する方:書類の不備、特に「CO2削減効果計算」と「経費内訳の除外項目」を最終確認してください。EICへの郵送は必着です。
  • 次回以降を検討する方:今のうちに「対象施設の選定」「耐震性の確認」「特定負荷の洗い出し」を進めておきましょう。これさえあれば、次の公募開始と同時にスムーズに申請に入れます。

最後に

この補助金事業は、複雑な計算や多くの書類を必要としますが、その分、採択された際のメリット(財政的支援+地域の安全性向上)は計り知れません。

本コラムが、皆様の地域の「安心」と「未来」をつくる一助となれば幸いです。


【免責事項】

本コラムは、令和8年1月公開の公募要領および応募様式等の資料に基づき作成しています。実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領(一般財団法人 環境イノベーション情報機構のウェブサイト等)をご確認の上、ご自身の責任において行ってください。要件や運用は変更される場合があります。