北海道で事業を営む企業にとって、設備の老朽化やエネルギーコストの上昇は経営に大きく影響します。「空調を入れ替えたいけど費用が…」「工場全体の省エネを進めたいが、何から手をつければ…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そんな北海道の事業者の皆さまに活用していただきたいのが、「省エネ・非化石転換補助金」です。令和7年度補正予算で措置されたこの制度は、省エネ性能の高い設備への更新費用の一部を国が補助してくれるものです。この補助金には大きく「工場・事業場型」と「設備単位型」の2つの申請方法があり、事業の規模や目的に応じて最適な方を選べます。
2026年度はGX設備単位型やサプライチェーン連携枠が新設されるなど、これまで以上に手厚い支援を受けられるようになりました。1次公募は2026年3月30日(月)に受付開始、締切は4月27日(月)17:00必着です。
この記事でわかること
✅ 省エネ・非化石転換補助金の全体像(4つの事業区分)
✅ 「工場・事業場型」4つの申請枠の違いと補助率・上限額
✅ 「設備単位型」の従来枠・GX設備単位型(メーカー強化枠・トップ性能枠)の比較
✅ 北海道の中小企業に適した申請枠の選び方と手続きの流れ
北海道は寒冷地のため、暖房や給湯にかかるエネルギーコストが全国平均より高い傾向にあります。老朽化したボイラーや空調設備を高効率なものに更新することで、大幅なランニングコスト削減が期待できるでしょう。この補助金を活用すれば、設備費の最大2/3を国が負担してくれるケースもあり、投資回収期間を大幅に短縮できます。
1. 省エネ・非化石転換補助金の全体像
省エネ・非化石転換補助金は、経済産業省 資源エネルギー庁が所管する補助金制度です。国内で事業を営む法人および個人事業主を対象に、省エネ性能の高い設備への更新や脱炭素化のための燃料転換を支援します。執行団体は一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)です。
この補助金は大きく4つの事業区分に分かれています。まずは全体像を理解しましょう。
図:省エネ・非化石転換補助金の全体構成
工場・事業場型は、事業場全体の省エネ計画を立案して大規模な改修を行う場合に適しています。補助対象に設計費・工事費も含まれ、補助上限額も大きいのが特徴です。一方、設備単位型は、SIIに登録済みの指定設備を選んで個別に更新する方式で、申請の手間が少ないため中小企業が取り組みやすいでしょう。
2. 工場・事業場型(Ⅰ型)― 大規模な省エネ改修を目指す企業向け
工場・事業場型は、工場や事業場全体のエネルギー利用を抜本的に見直し、大幅な省エネ化を実現する取り組みを支援する制度です。個々の設備の入れ替えにとどまらず、エネルギー使用状況を包括的に把握したうえでの設備導入やシステム改修が求められます。
補助対象経費には設計費・設備費・工事費が含まれるため、大がかりなリニューアル工事にも活用できます。2026年度は4つの申請枠が用意されています。
① 工場・事業場型の4つの申請枠
| 申請枠 | 概要 | 補助率 | 単年度上限 |
|---|---|---|---|
| 先進枠 | 技術評価委員会で採択された先進設備・システムへの更新 | 中小 2/3以内 大企業 1/2以内 | 15億円 |
| 一般枠 | オーダーメイド型設備または指定設備への更新 | 中小 1/2以内 大企業 1/3以内 | 15億円 |
| 中小企業投資促進枠 | 一般枠と同じ設備が対象。中小企業のみ申請可。省エネ要件が緩和 | 中小 1/2以内 | 15億円 |
| サプライチェーン連携枠 新設 | サプライチェーン上の4者以上が共同で立案した設備更新計画 | 中小 1/2以内 大企業 1/3以内 | 15億円 |
※複数年度事業の場合、上限額は20〜30億円/事業全体に引き上げられます。非化石転換(化石燃料から電気・水素等への切替え)を含む場合はさらに増額されます。
② 先進枠と一般枠の違い
先進枠は、SIIが設置する外部審査委員会で採択された「先進設備・システム」のみが対象です。高い省エネ効果が見込める最先端の技術を活用するため、補助率が最大2/3と最も高く設定されています。ただし、求められる省エネ水準も高いため、ハードルは上がります。
一般枠では、「オーダーメイド型設備」(事業者の用途に合わせて設計・製造する特注設備)と「指定設備」(SIIに登録された汎用的な省エネ設備)のどちらも申請できます。先進枠ほどの省エネ基準は求められませんが、事業場全体での省エネ計画が必要です。
③ 2026年度の注目:サプライチェーン連携枠の新設
2026年度から新たに設けられたサプライチェーン連携枠は、取引関係にある4者以上の企業が共同で省エネ計画を立案して申請する枠です。大企業が持つ知見やノウハウを中小企業と共有し、サプライチェーン全体での脱炭素を推進する狙いがあります。
個社申請と比べて省エネ要件が緩和されており、1者あたりの省エネ率+非化石割合増加率は5%以上が目安となっています。取引先の大企業から声がかかった場合は、積極的に検討する価値があるでしょう。
図:サプライチェーン連携枠の申請イメージ
④ 工場・事業場型に向いている企業
工場・事業場型は、以下のような企業に適しています。
・工場や事業場全体の省エネを一括で進めたい
・設備費だけでなく設計費や工事費も補助してほしい
・先進的な設備やオーダーメイド設備の導入を検討している
・複数年度にわたる大規模な更新計画がある
・取引先と連携して脱炭素に取り組む予定がある
3. 設備単位型(Ⅲ型)― 手軽に申請できる中小企業の味方
設備単位型は、あらかじめSIIに登録された「指定設備」から選んで申請する方式です。工場・事業場型のような全体計画の策定は不要なため、申請のハードルが低く、中小企業にとって最も取り組みやすい枠といえます。LED照明や空調、ボイラーなど身近な設備の更新にも使えるのが魅力です。
① 設備単位型の各申請枠と補助率
| 申請枠 | 概要 | 補助率 | 上限額 | 下限額 |
|---|---|---|---|---|
| 従来枠 | 省エネ効果が高い指定設備への更新 | 1/3以内 | 1億円 | 30万円 |
| メーカー強化枠 (GX設備単位型)新設 | GX要件を満たすメーカーの指定設備への更新 | 1/3以内 | 3億円 | 30万円 |
| トップ性能枠(更新) (GX設備単位型)新設 | トップ性能基準を満たす設備への更新 | 1/2以内 | 3億円 | 30万円 |
| トップ性能枠(新設) (GX設備単位型)新設 | トップ性能基準を満たす設備の新設 | 1/5以内 | 3億円 | 30万円 |
設備単位型の補助対象経費は「設備費」のみです。工事費や設計費は含まれません。ただし、メーカー強化枠・トップ性能枠では補助上限額が従来枠の1億円から3億円に引き上げられているため、大規模な設備更新にも対応できます。
図:設備単位型(Ⅲ)各申請枠の補助率比較
② GX設備単位型とは?(2026年度の新設枠)
2026年度の大きな変更点は、「GX設備単位型」が新たに創設されたことです。GX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みを表明しているメーカーの製品に対し、より手厚い補助を行います。
メーカー強化枠は、従来枠と同じ補助率(1/3)ですが、補助上限額が3億円に増額されています。トップ性能枠は、その中でも特に省エネ性能が優れた設備が対象で、更新事業の補助率が1/2と手厚くなっています。さらに、設備の新設も補助対象になった点が画期的です。
従来の設備単位型は「既存設備の更新」のみが対象でした。2026年度から一部の枠で新設も対象になったことで、新規出店や工場新設を計画している事業者も補助金を活用できます。
4. 電化・脱炭素燃転型(Ⅱ型)とエネルギー需要最適化型(Ⅳ型)
省エネ・非化石転換補助金には、上記の2つに加えて重要な事業区分があります。
① 電化・脱炭素燃転型(Ⅱ型)
化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換を伴う設備の更新・新設・改造を支援する枠です。2026年度からは水素対応設備への改造等も新たに補助対象に加わりました。
| 補助対象経費 | 設備費・工事費(工事費は中小企業のみ。水素対応の改造に限り大企業も可) |
| 補助率 | 更新・改造:1/2以内 / 新設:1/5以内 |
| 補助上限額 | 3億円(電化の場合は5億円) |
| 補助下限額 | 30万円 |
② エネルギー需要最適化型(Ⅳ型)
EMS(エネルギーマネジメントシステム)機器の導入を支援する枠です。エネマネ事業者と共同で省エネ計画を作成し、EMSによるエネルギー管理を通じて省エネ率2%改善を目指します。
工場・事業場型(Ⅰ型)や設備単位型(Ⅲ型)と組み合わせて申請できるのが大きな特徴です。例えば、空調の更新と合わせてEMS機器を導入するといった計画も立てられます。
| 補助対象経費 | 設計費・設備費・工事費 |
| 補助率 | 中小企業 1/2以内 / 大企業 1/3以内 |
| 補助上限額 | 1億円 |
| 補助下限額 | 30万円 |
5. 北海道の中小企業はどの枠を選ぶべき?
選択肢が多くて迷ってしまいますが、北海道の中小企業が最初に検討すべきなのは、やはり「設備単位型(Ⅲ型)」です。その理由を整理してみましょう。
① タイプ別おすすめフローチャート
図:北海道の中小企業向け 申請枠選択フローチャート
② 北海道の事業者に特にメリットが大きい設備
| 設備カテゴリ | 具体例 | 北海道での活用シーン |
|---|---|---|
| 高効率空調 | 業務用エアコン、パッケージエアコン | オフィス・店舗の冷暖房効率向上 |
| 産業用ボイラー | 高効率ボイラー | 工場の蒸気供給、給湯設備の省エネ化 |
| LED照明 | 高効率LED器具 | 倉庫・工場・店舗の照明更新 |
| 変圧器 | 高効率トップランナー変圧器 | 受電設備の電力損失低減 |
| 冷凍冷蔵設備 | 高効率冷凍機・冷蔵庫 | 食品工場・スーパーの冷設更新 |
| 工業炉 | 高効率加熱炉 | 製造業の熱処理工程の省エネ化 |
全額自己負担
設備費1,000万円の場合
自己負担:1,000万円
最大500万円補助
設備費1,000万円の場合
自己負担:500万円
図:設備費1,000万円の場合の自己負担比較(トップ性能枠・更新 補助率1/2適用時の試算例)
6. 申請の流れとスケジュール
設備単位型・工場・事業場型ともに、基本的な申請の流れは共通しています。特に「発注や契約は交付決定後に行う」というルールは必ず守ってください。
図:補助金申請から事業完了までの流れ
更新したい設備を選定し、SIIの補助対象設備一覧から該当する指定設備を確認します。見積は公募開始日(2026年3月30日)以降に取得する必要があります。工場・事業場型の場合は、事業場全体の省エネ計画も策定しましょう。
公募要領に沿って申請書類を作成し、郵送で提出します。配送状況が確認できる手段(書留等)で送付してください。直接の持参は不可です。
外部審査委員会による評価を経て、上位者から予算の範囲内で採択されます。1次公募の交付決定は2026年6月中旬を予定しています。
交付決定後に設備の発注・契約を行い、工事を実施します。事業完了期限(該当年度の1月31日)までにすべての工事を完了させてください。
事業完了後に実績報告書を提出し、審査を経て補助金が支払われます。補助金関係の書類は5年間の保管義務があります。
交付決定を受ける前に設備の発注や契約を行った場合、その費用は補助対象外になります。「先に工事を始めてしまった」というケースが毎年見られますので、必ず交付決定を待ってから発注・契約を行ってください。また、法定耐用年数の間は許可なく設備を処分(売却・廃棄・転用・譲渡など)することも禁止されています。
① 2026年度の公募スケジュール
| 1次公募 | 2026年3月30日(月)~ 4月27日(月)17:00必着 |
| 1次公募 交付決定 | 2026年6月中旬(予定) |
| 2次公募 | 2026年6月上旬 ~ 7月上旬(予定) |
| 2次公募 交付決定 | 2026年9月上旬(予定) |
| 3次公募 | 未定 |
| 事業完了期限 | 該当年度の1月31日 |
7. 申請時に押さえておきたいポイント
① 対象者の要件
申請できるのは、国内で事業活動を営んでいる法人および個人事業主です。ただし、大企業が設備単位型に申請する場合は、省エネ法のクラス分け評価で一定の要件を満たす必要があります。中小企業にはそのような制約がないため、申請しやすいといえるでしょう。
② 工場・事業場型の省エネ要件
工場・事業場型では、省エネ効果に関する要件があります。一般枠では「省エネ率+非化石割合増加率10%以上」などの基準をクリアする必要がありますが、中小企業投資促進枠やサプライチェーン連携枠ではこの要件が緩和されています。
| 申請枠 | 省エネ要件(いずれかを満たすこと) |
|---|---|
| 先進枠・一般枠 | 省エネ率+非化石割合増加率 10%以上 省エネ量+非化石使用量 700kl以上 エネルギー消費原単位改善率 7%以上 |
| 中小企業投資促進枠 | 省エネ率+非化石割合増加率 7%以上 省エネ量+非化石使用量 500kl以上 |
| サプライチェーン連携枠 | 1者あたり省エネ率+非化石割合増加率 5%以上 |
③ 補助対象経費の違いに注意
工場・事業場型(Ⅰ型)は設計費・設備費・工事費のすべてが対象です。大規模改修に向いています。
電化・脱炭素燃転型(Ⅱ型)は設備費に加え、中小企業に限り工事費も対象になります。
設備単位型(Ⅲ型)は設備費のみが対象です。シンプルですが、工事費は自己負担となる点にご注意ください。
エネルギー需要最適化型(Ⅳ型)は設計費・設備費・工事費すべてが対象で、他の型と組み合わせて申請可能です。
8. まとめ ― 北海道の事業者が今すべきこと
2026年度の省エネ・非化石転換補助金は、GX設備単位型やサプライチェーン連携枠の新設により、これまで以上に活用の幅が広がりました。工場や事業場の全体改修から、LED照明1本の交換まで、さまざまな規模のプロジェクトに対応できる制度です。
1次公募の締切は2026年4月27日(月)17:00必着。公募期間は約1か月と短いため、早めの準備が欠かせません。
① 申請枠を決める:設備1台の更新なら「設備単位型」、工場全体の改修なら「工場・事業場型」が基本です。取引先から声がかかった場合は「サプライチェーン連携枠」も検討しましょう。
② 対象設備を確認:SIIのホームページで、更新を検討している設備が指定設備に含まれているか確認してください。
③ 見積の準備:公募開始日以降に見積を取得する必要があります。信頼できる業者への相談を早めに始めておくことをおすすめします。
④ 公募要領を確認:公募要領をダウンロードし、必要書類を事前に把握しておきましょう。中小企業は省エネ法の定期報告書が不要なケースも多いため、必要書類の範囲を確認するとスムーズです。
1次公募の申請期間は2026年3月30日~4月27日です。郵送での提出が必要なため、書類の準備には十分な時間を確保してください。2次公募(6月上旬~7月上旬予定)も予定されていますが、予算の範囲内での採択となるため、1次公募での申請が有利になる可能性があります。

