「毎月届く電気料金の明細を見て、なぜ北海道は電気代が高いのだろう?」と感じたことはないでしょうか。その答えのカギを握るのが「電源構成」です。電源構成とは、電気を作るために使われるエネルギー源(石炭・LNG・原子力・再エネなど)の割合のことで、電力会社ごとに大きく異なります。
北海道で事業を営む企業にとって、電力コストは経営に直結する重要な課題です。本コラムでは、旧一般電気事業者(旧一電)10社の電源構成を比較しながら、北海道電力の電源構成の特徴や課題をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
✅ 電源構成とは何か、なぜ企業経営に重要なのか
✅ 旧一電10社の電源構成の違いと特徴
✅ 北海道電力の電源構成が持つ強みと課題
✅ 北海道エリアの再エネポテンシャルと今後の展望
1. 電源構成(エネルギーミックス)とは?
電源構成とは、発電に使われるエネルギー源の割合を示すものです。「エネルギーミックス」とも呼ばれます。日本の電気は、さまざまな発電方法を組み合わせてつくられており、それぞれにメリットとデメリットがあります。
① 主な電源の種類
| 電源の種類 | 主な燃料 | 特徴 |
|---|---|---|
| 火力 | 石炭・LNG・石油 | 出力調整しやすいが、CO2排出量が多い |
| 原子力 | ウラン | 発電時のCO2はほぼゼロ。安全性が課題 |
| 水力 | 水の位置エネルギー | 安定供給が可能。大規模開発の余地は少ない |
| 太陽光 | 太陽光 | 近年急拡大。天候・夜間は発電不可 |
| 風力 | 風力 | 北海道・東北で有望。風に左右される |
| 地熱 | 地下の熱エネルギー | 安定供給が可能だが、開発に時間がかかる |
| バイオマス | 木質チップ・廃棄物等 | 地産地消に向く。燃料調達がポイント |
② なぜ企業にとって電源構成が重要なのか
電源構成は、単なるエネルギーの話だけではありません。企業経営にも大きく影響します。火力発電の比率が高いと、燃料価格の変動によって電気料金が上下しやすくなります。2022年のロシア・ウクライナ情勢を受けたLNG・石炭価格の高騰は、その典型例でしょう。
また、2050年カーボンニュートラルに向けて、取引先や金融機関が企業のCO2排出量を重視する傾向が強まっています。電力由来のCO2排出量は、契約する電力会社の電源構成に左右されるため、どの電力会社・どの電力メニューを選ぶかが、脱炭素経営の第一歩になります。
北海道は寒冷地ゆえに冬場の暖房・給湯で電力消費が大きく、全国でも電力単価が高いエリアです。電源構成を理解することは、電力調達戦略の見直しやコスト削減の判断材料として不可欠といえるでしょう。
2. 日本全体の電源構成はどうなっている?
まず、日本全体の電源構成を確認しましょう。環境エネルギー政策研究所(ISEP)のデータによると、2024年度の日本の電源構成は以下のとおりです。
化石燃料(LNG・石炭・石油等)の合計は約64.6%と、日本の電力の約3分の2を占めています。再生可能エネルギー(水力含む)は約26.6%まで上昇し、原子力は8.8%となっています。
再エネの割合は2013年度の10.9%から2024年度には約26.6%に成長しました。特に太陽光発電は約11%と、2013年度の1.2%から大幅に拡大しています。政府は2030年度に再エネ比率36〜38%を目標に掲げています。
3. 旧一電10社の電源構成を比較してみよう
旧一般電気事業者(旧一電)とは、電力自由化以前から各地域で電力供給を担ってきた大手電力10社のことです。北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力の10社を指します。
各社の電源構成は、地域の地理的特性や保有する発電設備によって大きく異なります。以下の表で主な特徴を比較してみましょう。
① 各社の電源構成の特徴
| 電力会社 | 火力依存度 | 原子力 | 再エネの強み | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道電力 | 高い(約80%) | 停止中 | 風力が有望 | 泊原発停止で火力依存が顕著 |
| 東北電力 | やや高い | 女川再稼働 | 風力・地熱 | バランス型。再エネ割合も高い |
| 東京電力EP | 高い | 停止中 | 太陽光 | LNG比率が高い(JERA経由) |
| 中部電力MP | 高い | 停止中 | 太陽光 | 浜岡停止でLNG依存(JERA経由) |
| 北陸電力 | やや高い | 停止中 | 水力(25%) | 水力比率が旧一電トップ |
| 関西電力 | やや低い | 積極稼働 | 水力 | 原子力再稼働で火力依存を低減 |
| 中国電力 | 高い | 一部稼働 | 太陽光 | 石炭比率が高め |
| 四国電力 | 中程度 | 伊方稼働 | 太陽光 | 原子力再稼働で構成改善 |
| 九州電力 | やや低い | 積極稼働 | 太陽光 | 原子力+太陽光でCO2排出低い |
| 沖縄電力 | ほぼ100% | なし | ー | 本土と非連系。石炭・LNG中心 |
② 棒グラフで見る各社のバランス
関西電力・九州電力のように原子力発電所が複数稼働している会社は、火力依存度が低く、CO2排出係数も小さくなります。一方、泊原発が停止中の北海道電力は火力への依存度が高く、排出係数も高い傾向にあります。
4. 北海道電力の電源構成を深掘りする
ここからは、北海道で事業を営む企業に最も身近な北海道電力の電源構成について、さらに詳しく見ていきましょう。
① 北海道電力の2024年度実績
北海道電力が公表している2024年度の電源構成実績と、CO2排出係数は以下のとおりです。
| CO2排出係数(基礎・調整後) | 0.518 kg-CO2/kWh(2024年度確報値) |
| 原子力発電の状況 | 泊発電所1〜3号機すべて停止中(新規制基準の審査中) |
| 火力発電の主力燃料 | 石炭・LNG(苫東厚真・知内・石狩湾新港等) |
| 再エネの取り組み | 風力発電の拡大、太陽光発電の増加 |
| 非化石電源比率の目標 | 2030年度までに44%以上(エネルギー供給構造高度化法) |
② なぜ北海道電力は火力依存度が高いのか
北海道電力の火力依存度が高い最大の理由は、泊原発が東日本大震災以降すべて停止していることです。震災前は電力の約40%を原子力で賄っていましたが、現在はその分を火力発電で補っている状態が続いています。
関西電力や九州電力が原子力発電所の再稼働を進め、火力依存度やCO2排出係数を改善しているのに対し、北海道電力は泊原発の再稼働の見通しが立っておらず、構造的に化石燃料への依存が解消されにくい状況にあります。
北海道電力の調整後CO2排出係数0.518 kg-CO2/kWhは、原子力を活用している関西電力や九州電力と比べて高い水準です。SBT(科学的根拠に基づく目標)やRE100に取り組む企業にとっては、電源の選択がCO2削減目標の達成を左右する重要な要素になります。
③ CO2排出係数の比較
旧一電各社のCO2排出係数を比較すると、電源構成の違いがCO2排出量に直結していることがわかります。
| 電力会社 | 調整後CO2排出係数 (参考値) | 主な要因 |
|---|---|---|
| 九州電力 | 低い | 原子力4基稼働+太陽光の拡大 |
| 関西電力 | 低い | 原子力を積極的に再稼働 |
| 四国電力 | 中程度 | 伊方3号機の稼働 |
| 東北電力 | 中程度 | 女川2号機の再稼働 |
| 北陸電力 | やや高い | 水力は強いが志賀原発は停止中 |
| 北海道電力 | 0.518 | 泊原発停止で火力依存 |
| 中国電力 | 高い | 石炭比率が高い |
| 沖縄電力 | 最も高い | ほぼ全量が火力 |
※各社の公表値に基づく参考比較。年度・メニューにより変動します。
5. 北海道エリアの再エネポテンシャルは全国トップクラス
「火力依存が高い」という課題がある一方で、北海道エリアには全国でもトップクラスの再エネポテンシャルがあります。ISEPの2024年データによると、北海道エリアの電力需要に占める自然エネルギーの割合は全国2位の高さです。
注目すべきは風力発電の割合が9.7%と全国トップであることです。広大な平野と安定した偏西風を持つ北海道は、陸上風力・洋上風力ともに適地が豊富にあります。また、太陽光と風力を合わせたVRE(変動性再エネ)の割合も20.3%と全国1位になっています。
北海道エリアの再エネ割合40.1%は、北海道電力(小売)の電源構成とは区別される数字です。FIT制度を通じた太陽光・風力の導入が急拡大しており、エリア全体としては再エネが着実に増加しています。今後、北海道本州間連系線の増強(30万kW増設計画)が実現すれば、北海道でつくった再エネ電力を本州に送電できるようになり、北海道の経済的価値はさらに高まるでしょう。
① 北海道の風力発電が伸びている理由
北海道は年間を通じて風速が安定しており、稼働率の高い風力発電に適しています。2024年9月末時点の風力設備容量は136万kWに達し、今後もさらなる拡大が見込まれます。
北海道電力自身も、2030年までに30万kW以上の再エネ増設を目標に掲げています。陸上風力に加え、洋上風力の検討も進んでおり、檜山郡上ノ国町での計画など、具体的なプロジェクトが動き出しています。
② 課題:送電インフラの強化
再エネのポテンシャルが高い一方で、課題もあります。北海道と本州をつなぐ北本連系線(北海道本州間連系設備)の容量が限られているため、北海道で発電した電力を十分に本州に送れない場面が生じています。
再エネ発電が需要を上回る時間帯には、出力制御(発電の抑制)が行われることもあります。この課題を解消するため、連系線の30万kW増強が計画されており、インフラの整備が北海道の再エネ拡大のカギを握っています。
6. 北海道企業が電源構成を経営に活かすには?
電源構成の知識は、次のような場面で企業経営に役立ちます。
電力会社やプランによって電源構成は異なります。再エネ比率の高いメニューや、CO2排出係数の低いメニューを選ぶことで、環境負荷とコストのバランスを最適化できます。
温対法やSBTに基づくCO2排出量の算定では、電力会社のCO2排出係数が直接使われます。排出係数の低い電力を調達することが、Scope2削減の効果的な手段です。
北海道電力をはじめ多くの電力会社が、非化石証書を活用した「実質再エネ100%」のメニューを提供しています。追加コストはかかりますが、RE100や環境経営を推進する企業には有効な選択肢です。
電力会社に頼るだけでなく、自社で太陽光パネルを設置したり、PPA(電力購入契約)を活用して再エネ電力を直接調達する方法もあります。北海道の広い敷地を活かした太陽光や、風力PPAの事例も増えつつあります。
電力自由化以降、企業は電力会社や電力メニューを自由に選択できます。旧一電だけでなく新電力も含め、電源構成・CO2排出係数・料金を比較検討することが、賢い電力調達の第一歩です。
7. まとめ:北海道の電源構成を理解し、経営に活かそう
旧一電10社の電源構成を比較すると、各社の地域特性や保有する発電設備によって、その中身が大きく異なることがわかります。特に原子力発電の稼働状況が火力依存度やCO2排出係数を大きく左右する要因です。
北海道電力は泊原発の長期停止により火力依存度が高い状態が続いています。しかし、北海道エリア全体で見れば、風力発電が全国トップの9.7%を記録し、再エネ割合は40.1%と全国2位の水準です。北海道は「火力依存の課題」と「再エネのポテンシャル」を同時に抱えるエリアといえるでしょう。
まずは自社が契約している電力会社の電源構成とCO2排出係数を確認してみましょう。各社のWebサイトで公表されています。そのうえで、再エネ比率の高い電力メニューへの切り替え、非化石証書の活用、自家発電設備の検討など、自社の状況に合った脱炭素の一手を考えることが大切です。電力のエネルギー源を「知る」ことが、コスト削減と環境経営の両立への第一歩になります。
記事情報
公開日:2026年3月27日
参照資料:環境エネルギー政策研究所(ISEP)「2024年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)」「国内の2024年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」、北海道電力「電源構成・CO2排出係数」ページ、資源エネルギー庁「電力調査統計」「エネルギー白書2025」
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報は各電力会社の公式サイトおよび資源エネルギー庁をご確認ください。

