海道の企業の皆様、日々の事業活動において電力は生命線であり、その安定供給は経営の最重要課題の一つに位置付けられていることと存じます。特に、2018年の北海道胆振東部地震による大規模停電、いわゆるブラックアウトの経験は、多くの企業や住民に甚大な影響をもたらし、電力供給の安定性に対する意識を一層高めるものとなりました。こうした経験から、「電力会社を新電力に切り替えたら、停電のリスクが高まるのではないか?」「災害時の復旧対応が遅れるのではないか?」といった不安を抱えている企業担当者の方も少なくないかもしれません。
しかし、結論から申し上げれば、新電力に切り替えたからといって停電しやすくなることはなく、また災害時の復旧対応が不利になることもありません。電力供給の仕組みは法制度によって厳格に定められており、新電力会社であっても大手電力会社と同様に、停電に強く、高い供給安定性が確保されています。
本コラムでは、電力供給の仕組みを詳細に解説し、新電力が安定した電力供給を維持できる理由と、北海道の企業が安心して新電力を選択できる根拠を明確にしていきます。
基礎知識:新電力と電力供給の基本
新電力とは?電力自由化の背景と概要
「新電力」とは、2016年4月に実施された電力小売全面自由化に伴い、電力の小売市場に新規参入した小売電気事業者(電力会社)を指します。この自由化以前は、地域ごとに大手電力会社が電力の小売市場を独占していました。しかし、電力自由化によってこの独占状態が解消され、現在は通信会社、ガス会社、商社など、多岐にわたる業種の企業が電力小売市場に参入しています。
電力自由化が実現した大きな背景には、災害時におけるリスク分散と、電力市場における競争促進の必要性がありました。東日本大震災のような大規模災害時においても、複数の経路から電気が供給できるような強靭な電力システムを構築するため、電力の自由化が推進されたのです。
現在、新電力会社は、電気料金が安いプランや、既存サービスとのセット割、ポイント還元など、多様なサービスを提供しており、消費者や企業は自身の事業ニーズに合った電力プランを自由に選択できるようになりました。
電力供給の仕組み:発電・送配電・小売の三部門
電気が発電所から私たちの元へ届くまでのプロセスは、大きく三つの段階を経て行われます。
- 発電部門: 火力、水力、太陽光など様々な発電施設で電気を生成する役割を担います。
- 送配電部門: 発電された電気を、送電線や配電線といった電力ネットワークを通じて、安全かつ安定的に消費者へ届けます。電力供給のインフラそのものであり、停電時の復旧作業もこの部門が担います。
- 小売部門: 供給された電気を最終的な消費者に販売する部門です。料金プランの設定や顧客との契約、料金請求などを行います。
電力自由化により、発電部門と小売部門には新たな企業が自由に参入できるようになりました。一方で、送配電部門は、電力の安定供給という公共性が極めて高いため、引き続き政府から許可を受けた「一般送配電事業者」(北海道であれば北海道電力ネットワーク株式会社)が地域ごとに独占的に管理・運営を行っています。この「送配電部門」が、新電力に切り替えても電力の安定性が保たれる重要な鍵となります。

「新電力は停電に弱い」という懸念は誤解
「新電力に切り替えると停電が起こりやすくなるのでは?」という懸念は、電力供給の実際の仕組みへの理解不足から生じる誤解です。
新電力に切り替えても停電が増えることはありません。停電が発生する主な原因は以下の二つです。
- 電気の需要と供給のバランスの崩れ: 猛暑日などで電力需要が急増した際に、供給が追いつかなくなることで計画停電が実施されるケース。
- 自然災害の発生: 地震や台風、落雷などで電柱が倒れたり電線が切断されたりすることで発生する停電。
これらの停電の原因は、どの小売電気事業者(電力会社)と契約しているかとは一切関係がありません。新電力会社と旧電力会社は、どちらも各地域の一般送配電事業者が管理・運営する共通の送電網を利用しています。そのため、新電力に切り替えたからといって、停電が増えたり、電気が不安定になったりすることはありませんので、ご安心ください。
応用・具体策:北海道企業が新電力を活用するメリットと安心できる理由
停電時の復旧作業は地域一括対応、契約会社に関わらず平等
新電力に切り替えた場合でも、停電からの復旧にかかる時間は従来と変わりません。その理由は、停電の復旧作業を担当するのが、小売電気事業者ではなく、地域の送配電網を管理する一般送配電部門であるためです。
例えば、北海道で停電が発生した場合、その復旧作業は北海道電力ネットワーク株式会社が一括して行います。これは、お客様がどの小売電気事業者と契約しているかに一切左右されません。
電気事業法などの法的な枠組みによって、一般送配電部門が停電対応において新電力の利用者を差別することは明確に禁止されています。すべての電力利用者が、契約先に関わらず、公平かつ迅速な復旧サービスを受けられることが保証されています。
災害時も安心:他エリアからの電力融通と最終保障供給
大規模な自然災害が発生した場合でも、日本全体の電力系統は地域間で相互に接続されており、他地域から電力を融通することが可能です。この「電力融通」の仕組みは、新電力の利用者にも等しく適用されます。
さらに、「契約している新電力会社が倒産したらどうなるのか?」という懸念についても心配は不要です。日本には「最終保障約款」というセーフティネットが存在します。万が一契約している新電力会社が事業継続困難や倒産に至った場合でも、地域の一般送配電事業者が一時的に電力供給を継続することが義務付けられており、電気が突然止まることはありません。この期間中に、新しい電力会社を落ち着いて選定する時間的余裕が与えられます。
北海道企業が新電力に切り替える具体的なメリット
新電力への切り替えは、停電に関する不安がないだけでなく、北海道の企業にとって多岐にわたる実務的なメリットをもたらします。
- 電気代が安くなる可能性: 多くの新電力会社が、大手電力会社よりも割安な料金プランを提供しています。特に電力使用量が多い工場やオフィスでは、電気代の大幅な削減が期待できます。
- セット割によるさらなるコスト削減: ガス会社や通信会社などが提供する新電力では、既存サービスと電気契約を組み合わせることで、「セット割」を受けられる場合があります。
- ポイント還元や特典プログラム: 毎月の電気料金の支払いに応じてポイントが還元されるサービスもあり、実質的なコスト削減に繋がります。
- 環境問題への貢献と企業イメージ向上: 太陽光や風力など、再生可能エネルギーを積極的に利用する新電力と契約することで、CO2排出量の抑制に貢献し、企業の社会的責任(CSR)を果たすことができます。
ケーススタディ:北海道の電力供給体制と企業事例の視点
平成30年北海道胆振東部地震と電力供給の教訓
2018年の北海道胆振東部地震によるブラックアウトの際、新電力を契約していた企業も、従来の電力会社と契約していた企業も、停電からの復旧対応は北海道電力ネットワーク株式会社が一元的に行いました。
この大規模停電の事例は、電力会社を新電力に切り替えても、災害時の停電復旧対応において不利な扱いは一切ないことを、北海道という実地で明確に示しています。この歴史的な教訓は、新電力を検討する北海道の企業が、停電に関する不安を払拭し、合理的な判断を下すための重要な根拠となります。
北海道企業が安定供給を享受するための視点
北海道の企業が新電力を導入する際には、電力の安定供給の基盤が変わらないという事実を理解した上で、自社の事業に最適なプランを選ぶことが重要です。
- 契約している電力会社に関わらない安定供給: どの小売電気事業者と契約しても、電気が供給される物理的な経路は全く同じであり、停電に関するリスクも同一水準で管理されています。
- 自社の電力消費パターンに合わせた最適化: 北海道の各企業の独自の電力消費パターン(冬季の暖房需要、特定の生産ラインでの集中使用など)に合わせた、きめ細やかな料金プランを新電力は提供しています。
- 総合的なエネルギーコスト最適化への視点: 電気だけでなく、ガスや燃料費、省エネ設備の導入、補助金の活用など、総合的な視点からエネルギーコストの最適化を考えることが、企業の持続的な成長に繋がります。
FAQ(Q&A):新電力と停電に関するよくある質問
Q1: 新電力にすると停電が増えるって本当ですか?
A1: いいえ、そのようなことはありません。停電の原因は契約している電力会社とは無関係であり、新電力も旧来の電力会社も同じ送電網を使用しているため、供給の安定性は全く同じです。
Q2: 停電したとき、新電力だと復旧が遅れることはありますか?
A2: いいえ、復旧が遅れることはありません。復旧作業は地域の送配電事業者(北海道の場合は北海道電力ネットワーク株式会社)が一括して行い、契約会社による差別は法律で禁じられています。
Q3: 契約している新電力会社が倒産した場合、すぐに電気が止まりますか?
A3: いいえ、すぐに電気が止まることはありません。「最終保障約款」という制度により、地域の送配電事業者が一時的に電力供給を継続し、新しい電力会社を探す猶予期間が与えられます。
Q4: 北海道で停電が起きた場合、どこに問い合わせればいいですか?
A4: 地域の送配電網を管理している「北海道電力ネットワーク株式会社」に直接問い合わせるのが最も適切です。ウェブサイトでリアルタイムの停電情報が提供されています。
Q5: 新電力に切り替えることで、北海道の企業にとってどのようなメリットがありますか?
A5: 電気代の削減可能性が最も大きなメリットです。その他、セット割、ポイント還元、再生可能エネルギーの選択による企業イメージ向上など、複数のメリットがあります。
Q6: 新電力契約で注意すべき点はありますか?
A6: 契約期間や違約金の有無、集合住宅の場合は高圧一括受電契約でないかの確認が必要です。また、複数の新電力を比較検討し、自社に最適なプランを選ぶことが大切です。
まとめ:北海道企業のエネルギーコスト最適化はtotokaへ
本コラムでは、「新電力は停電に弱い」という誤解を解き明かし、新電力が安定した電力供給を維持できる理由と、災害時においても差別がないことを解説しました。電力供給の信頼性は契約会社に関わらず同じ水準であり、北海道の企業も安心して新電力に切り替えることができます。
新電力への切り替えは、単なる電気代削減に留まらず、多角的なメリットを貴社にもたらします。特に、過去に大規模停電を経験した北海道の企業にとっては、電力供給の安定性を確保しつつ、事業の持続可能性と企業価値を高める重要な一歩です。
エネルギーコストの最適化は、企業の競争力向上と持続可能な成長に直結する経営課題です。株式会社totokaは、エネルギーコスト最適化の専門家として、貴社の電力使用状況を徹底的に分析し、最適な新電力プランのご提案から導入後の継続的なコスト管理まで、一貫して支援いたします。
貴社のエネルギーコスト削減でお悩みの際は、ぜひ株式会社totokaまでお気軽にご相談ください。 私たちは、北海道の企業の皆様が安心して事業を継続し、さらなる発展を遂げるための、信頼できるパートナーとなることをお約束いたします。