電気の予備率とは?計算式・目安と北海道の2026年度冬季の需給見通し

電気供給のイメージ

電気の予備率とは、電力の需要に対して、供給力がどれだけ余っているかを割合で表した数字です。計算式は「(供給力 − 需要)÷ 需要」で、電力広域的運営推進機関(広域機関)は、予備率を「予備力(供給力 − 最大3日平均電力)を最大3日平均電力で除したもの」と定義しています。数字が大きいほど余裕があり、小さいほど余裕がありません。

北海道の最新の見通しは、広域機関が2026年10月28日に公表した「電力需給検証報告書(2026年10月)」で確認できます。2026年度冬季(2026年12月〜2027年3月)の北海道は、最大需要時の予備率が最も低い1月後半でも6.1%で、需給検証が最低限必要とする3%を上回る見通しです。ただし、これは「厳気象(過去10年で最も厳しい年度並みの気象)」を想定した見通しで、実際の運用では発電所の計画外停止などで変わる可能性があります。

この記事では、予備率の定義と計算式、「3%」「8%」などの数字の意味、予備率の種類(供給計画・需給検証・広域予備率)、北海道の2026年度冬季の見通し、予備率だけでは分からないこと、最新値の調べ方を、広域機関の公表資料にもとづいて整理します。

この記事でわかること
・電気の予備率の定義と計算式(仮定の数字での計算例つき)
・予備率3%・5%・8%が、制度の上でそれぞれ何を意味するか
・供給計画・需給検証・広域予備率の違い(どの予備率の話かを見分ける方法)
・北海道の2026年度冬季(12月〜3月)の予備率見通しと、北海道の事情
・予備率の最新値の調べ方と、法人が押さえておきたい点

更新履歴

  • 2026年10月30日:全面改訂。広域機関の定義にもとづく計算式、予備率の数字の意味、2026年度冬季の北海道の需給見通し(2026年10月28日公表)、最新値の調べ方を追加。出典を確認できなかった記述(他地域との比較など)を削除
  • 2024年7月7日:初版公開

1. 電気の予備率とは?定義と計算式

電気は、使う量(需要)と作る量(供給)を常に同じにしないと、周波数が乱れて安定して届けられません。そのため発電所は、需要のピークより多く供給できるように備えています。この「備え」の大きさを表すのが予備率です。

予備率(%)=(供給力 − 需要)÷ 需要 × 100

供給力 − 需要 = 予備力(余っている供給力)。広域機関は、予備率を「予備力を最大3日平均電力で除したもの」と定義している

供給力は、電力需要が大きくなる時間帯に安定的に見込める発電能力のことです(広域機関の供給計画の取りまとめでの定義)。発電所の設備容量をそのまま足し上げた数字ではありません。

計算例(仮定の数字)

次の数字はすべて仮定で、実際のエリアの数値ではありません。

項目 仮定の数字
需要(最大需要) 500万kW
供給力 530万kW
予備力(供給力 − 需要) 30万kW
予備率(予備力 ÷ 需要) 30 ÷ 500 = 6.0%

表:予備率の計算例(仮定の数字。計算式は広域機関の定義による)

予備率が見ているのは、ある時刻にどれだけの電力(kW)を出せるかです。燃料の在庫が尽きて電力量(kWh)が足りなくなる場合は、予備率には表れません。広域機関はこの点を踏まえ、需給が厳しくなる時期にはkW(供給力)とkWh(燃料)の両面で需給を監視しています。

2. 予備率は何%あれば足りる?3%・5%・8%の意味

「予備率は何%あれば安心か」には、ひとつの答えはありません。制度の上では、次のように複数の数字がそれぞれ別の場面で使われています。

数字 制度の上での意味 出典
3% 需給検証で、厳気象H1需要に対して最低限確保できているかを確認する予備率 電力需給検証報告書(2026年10月)
8% 広域予備率が8%を下回った場合に、広域機関が「広域予備率低下に伴う供給力提供通知」等を実施する 電力需給検証報告書(2026年10月)
5%未満(前々日) 前々日時点で広域予備率が5%を下回る見通しとなった場合に、電力需給ひっ迫準備情報が発信される 広域機関の説明資料(2022年11月)
3%以上5%未満(前日) 前日時点で電力需給ひっ迫注意報が発令される 同上
3%未満(前日) 前日時点で電力需給ひっ迫警報が発令される 同上

表:予備率の数字と制度上の意味(広域機関「電力需給検証報告書(2026年10月)」、広域機関「需給ひっ迫への対応」2022年11月)

重要3%は「停電しない保証」ではない

3%は「最低限、これだけは確保できているかを確認する」ための基準です。発電所1機が突然止まる、送電線に事故が起きるといった場面は、平常時の予備率の数字だけでは表せません。そのため需給検証では、供給力が減るリスク(稀頻度リスク)が起きた場合の需給バランスも追加で評価しています。北海道では、この追加評価に特別な前提を置いています(4章)。なお、ひっ迫準備情報・注意報・警報の運用は2022年11月の広域機関資料にもとづくもので、最新の運用は広域機関・資源エネルギー庁の発表で確認してください。

3. 予備率の種類|どの予備率の話かを見分ける

ニュースや資料で「予備率」と書かれていても、需要の前提や公表のタイミングによって数字が大きく変わります。数字を見るときは、次の3種類のどれかを確かめます。

種類 需要の前提 いつ・どこで公表されるか
供給計画の予備率 各月の最大3日平均電力(H3需要)。平年並みの気象 毎年3月末までに広域機関が国へ送付。2026年度分は2026年3月30日公表
需給検証の予備率 厳気象H1需要(過去10年で最も厳気象であった年度並みの気象での最大需要) 夏・冬の高需要期の約3か月前を目安に、広域機関が報告書を公表(今冬分は2026年10月28日)
広域予備率 週間・前日・当日の需要想定 広域予備率Web公表システムで週間(毎週木曜夕方)・前日・当日(30分ごと)に公表

表:予備率の3種類(広域機関「供給計画の取りまとめ」「電力需給検証報告書(2026年10月)」「需給ひっ迫への対応」をもとに作成)

同じ月でも、供給計画の予備率(平年並みの需要)より、需給検証の予備率(厳気象の需要)のほうが低くなります。4章の表で、北海道の1月後半を比べています。

「連系線を使った均平化」とは

供給計画や需給検証の予備率は、地域間連系線を使って、予備率が高いエリアから低いエリアへ供給力を振り替えたあとの値で評価されます。広域予備率も同じ考え方で、広域機関の説明資料は「電気が不足するエリアへ流れ、同じ予備率になるまで空きが埋まっていく想定で計算」と説明しています。連系線の空き容量に限りがあるため、すべてのエリアが同じ予備率になるとは限りません。

「最大需要時」と「最小予備率時」

需給検証では、需要が最大になる時間帯(最大需要時)に加えて、太陽光の出力が減る夕方から夜間の「最小予備率時」も評価します。最小予備率時の評価は、2024年度夏季の需給見通しから行われています。

4. 北海道の電力需給|2026年度冬季の見通し

広域機関が2026年10月28日に公表した電力需給検証報告書(2026年10月)から、北海道エリアの2026年度冬季(2026年12月前半〜2027年3月後半)の見通しを抜き出します。需要は厳気象H1を想定したもので、供給力は計画外停止率2.6%を差し引き、発動指令電源を含めた値です。

時期 最大需要時の需要(万kW) 供給力(万kW) 予備率(最大需要時) 予備率(最小予備率時) (参考)供給計画の予備率
12月前半 488 577 18.2% 12.3% 25.7%
12月後半 488 592 21.2% 17.3% 25.1%
1月前半 521 586 12.5% 12.5% 18.6%
1月後半 570 604 6.1% 6.6% 19.4%
2月前半 573 615 7.3% 6.9% 19.2%
2月後半 500 594 18.7% 19.7% 27.0%
3月前半 500 586 17.2% 23.8% 26.3%
3月後半 454 567 24.8% 23.7% 30.6%

表:北海道エリアの2026年度冬季の需給見通し(送電端、連系線活用後。電力広域的運営推進機関「電力需給検証報告書(2026年10月)」、参考列は同「2026年度供給計画の取りまとめ」(2026年3月30日公表)の北海道エリアの予備率)

表から読み取れる点は次のとおりです。

  • 全期間で3%を上回る見通しです。報告書も、厳気象H1需要に対して全エリアで最低限必要な予備率3%を確保できる見通しとしています。
  • 最も低いのは1月後半(最大需要時6.1%、最小予備率時6.6%)と2月前半(7.3%、6.9%)です。1月後半は、需要が570万kWと冬季で最も大きくなる想定です。
  • 同じ1月後半でも、供給計画(平年並みの需要)では19.4%です。厳気象の需要に置き換えると予備率は大きく下がるため、どの前提の数字かを確認する必要があります。
  • 1月後半の北海道は、東北・東京と同じ6.1%です(連系線を活用して予備率をそろえたあとの値)。一方、1月前半は北海道12.5%に対して東北・東京は4.5%で、そろっていません。報告書の注記は、連系線の活用を「空容量の範囲内」としているため、空き容量の制約で月によってはそろいきらないと読めます(推測)。

稀頻度リスクの評価(北海道)

報告書は、北海道の稀頻度リスク(N-2以上の事象)について、厳寒H1需要が想定される1月後半に129万kWの大規模電源脱落が発生した場合でも、5.6%の予備率を確保できる見通しとしています。北本連系設備を通じた他エリアからの受電(北本受電)や、通告調整契約の発動などの需給対策を含めた評価です。

北海道に特別な前提を置く理由として、報告書は次の3点を挙げています。

  1. 厳寒であり、電力需給のひっ迫が国民の生命・安全に及ぼす影響が甚大であること
  2. 他エリアからの電力融通に制約があること
  3. 発電所1機の計画外停止が予備率に与える影響が大きいこと

また、今冬の北本連系設備は、新北本第2極の増設に伴う作業停止により、運用容量が90万kWから60万kWに下がります。報告書は、国・一般送配電事業者・広域機関が連携して、電力の安定供給に努めるとしています。

北海道 過去の実績|冬は余裕が小さく、夏は大きい

2025年度冬季の北海道の最大需要は、2026年1月26日の507万kWで、そのときの予備率は7.9%でした(厳気象H1の想定は571万kW、予備率5.2%)。夏季は、2026年8月7日に最大需要447万kWを記録し、予備率は21.9%でした。いずれも広域機関の需給検証報告書にある実績値で、北海道は夏より冬のほうが余裕が小さいことが分かります。

5. 北海道の事情と過去の大規模停電

北海道の予備率を見るときは、数字そのものに加えて、次の3つの事情に注意します。

冬季に需給が厳しくなりやすい

広域機関の供給計画の取りまとめは、「エリア特性(北海道の冬季等)や厳気象等を考慮すると、各月の供給力が偏らないようにすることも重要」として、短期の2年度分については各エリア・各月の予備率を補完的に確認しています。4章の表のとおり、北海道の予備率が低くなるのは1〜2月です。

他エリアからの融通に限りがある

北海道は、北本連系設備で本州と結ばれています。4章のとおり、今冬はこの設備の運用容量が60万kWに下がります。融通指示の実績を見ると、広域機関が一般送配電事業者に電力融通を指示した回数は、2026年度夏季が累計100回のうち北海道エリア向けが63回、2025年度冬季が累計13回のうち北海道エリア向けが6回でした。融通指示は、電力需給の状況が悪化している区域に電気を融通するよう、広域機関が一般送配電事業者に出す指示です。エリア予備率が3%未満のときの補正融通のように、広域予備率の上では需給ひっ迫に至らない状況でも実施されることがあり、停電や需給ひっ迫警報の回数ではありません。

2018年の大規模停電(ブラックアウト)

2018年9月6日の北海道胆振東部地震では、北海道全域で大規模停電が発生しました。広域機関の検証委員会の最終報告(2018年12月19日)は、苫東厚真発電所1・2・4号機の停止と、地震による送電線事故での水力発電の停止が重なって起きたとしています。北本連系設備の緊急融通で周波数を回復させたものの最大受電量に達し、苫東厚真1号機がトリップした時点で周波数調整機能が発揮できず、ブラックアウトに至りました。

このように、大規模な電源の脱落は、平常時の予備率の数字だけでは表せません。2章と4章で見た稀頻度リスクの評価は、こうした事態にも備えるためのものです。

6. 予備率が下がったときの流れと、法人が確認しておきたいこと

広域機関は、広域予備率が低下しそうなときは、国や一般送配電事業者と連携して対策を行います。2026年10月の報告書は、広域予備率が8%を下回った場合の「供給力提供通知」などを、週間計画や翌々日の段階から実施するとしています。それでも足りない場合の最終手段として、広域機関は計画停電を実施することがあるとしています(計画停電の考え方)。

法人として押さえておきたい点は、次のとおりです。

最新の予備率の調べ方

知りたいこと 見る場所
直近の広域予備率(週間・前日・当日) 広域予備率Web公表システム(広域機関)
翌週の想定予備率(追加起動できる電源の余力を加味) 広域機関「追加起動可能な電源等の余力を考慮した想定予備率の公表」(毎週金曜日を目途)
夏・冬の需給見通し(厳気象の想定) 広域機関「電力需給検証報告書」
年度ごとの需給見通し(平年並みの想定) 広域機関「供給計画の取りまとめ」
需給状況の悪化時の対応と実績 広域機関「需給状況悪化時の対応」

表:予備率の最新情報の入手先(広域機関の公表ページ)

電源構成など、北海道の電力の供給側の事情は「北海道電力を含めた旧一般電気事業者の電源構成について解説」にまとめています。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 予備率は何%あれば安全ですか?

A. 「この数字なら安全」という基準はありません。広域機関の需給検証は、厳気象の需要に対して予備率3%以上を最低限の基準としています。ただし3%は停電しない保証ではなく、発電所の突然の停止などに備えた稀頻度リスクの評価も別に行われています。また、広域予備率が8%を下回る見通しになると、供給力提供通知などの対策が始まります。

Q2. 予備率が高いと電気料金は安くなりますか?

A. 予備率は供給力の余裕を表す指標で、電気料金を決める数字ではありません。この記事で使った広域機関の資料にも、予備率と料金の関係を示す記載はありません。市場連動型の料金メニューを検討する場合は、メニューごとの単価の決まり方を確認してください。

Q3. 北海道の予備率は他の地域より低いのですか?

A. 一概には言えません。2026年度冬季の見通しでは、北海道は全期間で3%を上回り、1月前半は北海道12.5%に対して東北・東京は4.5%です。一方、1月後半は北海道・東北・東京がそろって6.1%です。北海道の特徴は、冬に需要が大きくなることと、他エリアからの融通に限りがあることです。

Q4. 予備率とH1・H3は何が違うのですか?

A. H3は各月の最大3日平均電力(平年並みの気象)、H1は過去10年で最も厳気象だった年度並みの気象での最大需要です。予備率を計算するときの「需要」の前提が違います。H1のほうが需要が大きいため、同じ供給力でも予備率は低くなります。

Q5. 予備率が十分でも、停電は起きますか?

A. 起きる可能性はあります。2018年の北海道の大規模停電は、大きな発電所の停止と送電線事故が重なって起きたと、広域機関の検証委員会が報告しています。予備率は平常時の余裕を表す数字で、大きな電源の脱落や燃料不足(kWh)といったリスクは別に評価されます。

8. まとめ

  • 予備率は「(供給力 − 需要)÷ 需要」で、需要に対する供給力の余裕を表す。広域機関は予備力を最大3日平均電力で除したものと定義している
  • 需給検証の基準は3%、広域予備率が8%を下回ると供給力提供通知、ひっ迫の注意報は3〜5%、警報は3%未満が目安。ただし3%は停電しない保証ではない
  • 供給計画(平年並みの需要)、需給検証(厳気象の需要)、広域予備率(週間・前日・当日)では前提が違うため、どの予備率かを確認する
  • 北海道の2026年度冬季は、全期間で3%を上回る見通し。最も低いのは1月後半の6.1%(最大需要時)で、今冬は北本連系設備の運用容量が60万kWに下がる
  • 最新の数字は、広域予備率Web公表システムと広域機関の公表ページで確認できる

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記事情報
公開日:2024年7月7日
最終更新日:2026年10月30日(全面改訂)
参照資料:
・電力広域的運営推進機関「電力需給検証報告書(2026年10月)」2026年10月28日公表(広域機関、PDF)
・電力広域的運営推進機関「電力需給検証報告書(2026年5月)」(広域機関)
・電力広域的運営推進機関「2026年度供給計画の取りまとめ」2026年3月30日公表(広域機関、PDF)
・電力広域的運営推進機関「需給ひっ迫への対応~需給関連情報の概要及び発信について~」2022年11月(PDF)
・電力広域的運営推進機関「需給状況悪化時の対応」(広域機関)、「2026年度夏季における広域機関の需給対応」(広域機関)、「2025年度冬季における広域機関の需給対応」(広域機関)、「追加起動可能な電源等の余力を考慮した想定予備率の公表」(広域機関)、「2026年度 中東情勢を踏まえた臨時の電力需給モニタリング」(広域機関)
・電力広域的運営推進機関「計画停電の考え方」(広域機関)
・電力広域的運営推進機関「広域予備率Web公表システム」(広域機関)
・電力広域的運営推進機関 平成30年北海道胆振東部地震に伴う大規模停電に関する検証委員会「最終報告(概要)」2018年12月19日(広域機関、PDF)
※2026年10月30日時点の情報です。2026年度冬季の数値は、2026年10月28日公表の見通しで、実際の需給は気象や発電所の状況で変わります。電力需給ひっ迫準備情報・注意報・警報の基準は2022年11月の広域機関資料によるもので、最新の運用は広域機関・資源エネルギー庁の発表をご確認ください。計算例の数字はすべて仮定です。