介護施設・寮の電気再点を不要に|施設契約×基本料金0円の2方式

北海道で電気の使用を開始する際のルールが、2026年5月から大きく変わりました。遠隔操作が可能なスマートメーター設置物件では、電気契約の廃止時に通電しない状態へ設定されるようになり、再び使うにはほくでんネットワーク(北海道電力ネットワーク)による通電作業(遠隔操作)=再点が必要です。

この変更で実務負担が増えるのは、介護施設・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・社宅・寮など、居室ごとに入退去が発生する施設です。居室単位で電力契約をしていると、入退去のたびに廃止と再点の手続きが発生します。

本記事では、制度変更の内容に加え、施設運営者向けの解決策として「施設側で契約を維持して再点手続きをなくす」2つの方式と、入居者へ料金請求する際の法的な整理・確認事項を解説します。

この記事でわかること
✅ 2026年5月から電気の使用開始ルールがどう変わったか(通電遮断・再点)
✅ 介護施設・サ高住・寮など多居室施設で増える実務負担
✅ 再点を不要にする2つの方式(名義集約方式/一括受電×子メーター方式)
✅ 施設が契約して入居者に料金請求する場合の法的な整理と確認事項
✅ 基本料金0円プランの適用範囲と総額比較の考え方

1. 通電作業(遠隔操作)とは?2026年5月からの変更点

① 一言でいうと「契約がないと電気が来ない」仕組みです

通電作業(遠隔操作)とは、ほくでんネットワークがスマートメーターを遠隔操作し、電気を通電させる作業のことです。2026年5月以降、遠隔操作が可能なスマートメーター設置物件では、電気契約の廃止時にメーターが「通電しない」状態に設定されるようになりました(通電遮断処置)。

そのため、電気の使用を開始するには、電力会社(小売電気事業者)への申込みを経て、ほくでんネットワークが遠隔で通電する作業(再点)が必要です。ブレーカーを上げるだけでは電気は使えません。申込み先はほくでんネットワークではなく、契約したい電力会社(小売電気事業者)です(島しょ地域のみ、ほくでんネットワークが受付します)。

制度の名称電気ご使用開始時の通電作業(遠隔操作)
開始時期2026年5月〜
実施主体北海道電力ネットワーク株式会社(ほくでんネットワーク)
対象遠隔操作が可能なスマートメーター設置物件(契約廃止時に通電遮断)
変更の目的電気設備保安および契約の適正管理
公式ページほくでんネットワーク公式サイト

② これまでとの違い

❌ 2026年4月まで

ブレーカー操作で
すぐ使用可能

契約廃止後の居室でも
ブレーカーを上げれば
電気が使えるケースがあった

✅ 2026年5月から

事前申込み+
遠隔通電(再点)が必要

契約廃止時にメーターが通電遮断
電力会社への申込みを経て
ほくでんNWが遠隔で通電

図:電気の使用開始ルールの変更(Before/After・遠隔操作可能物件の場合)

重要 申込みがないと電気は使えません

託送契約の申込みが確認できない場合、ほくでんネットワークは通電作業を実施しません。また、建物内見・リフォーム・清掃等の一時的な使用や、冬期間の凍結防止器・セキュリティ装置等での使用の場合も、電力会社への使用開始の申込みが必要です。

2. 多居室施設で増える実務負担|介護施設・サ高住・寮は要注意

介護施設・サ高住・社宅・寮・賃貸物件などで、居室ごとに入居者や施設が電力会社と個別契約している場合、退去時に契約を廃止すると、その居室は通電遮断されます。次の入居時には、電力会社への申込みと再点(通電作業)が毎回必要です。

入退去が年間を通じて発生する施設では、この手続きが積み重なります。申込み漏れがあれば入居初日に居室の電気がつかず、退去後の原状回復工事やクリーニングでも電気が使えないという事態になりかねません。

北海道 冬の空室は「凍結防止器の電源」が生命線です

北海道では、冬期間に水道凍結防止器(凍結防止帯)の電源が切れると、給水管・給湯管の凍結や破裂につながります。空室の契約を廃止したままにすると、凍結防止器も動きません。凍結による配管破裂は、修繕費用に加えて入居再開の遅れという二重の損失を招きます。

3. 解決策:施設側で契約を維持して「再点ゼロ運用」にする2方式

① 考え方:契約を廃止しなければ、再点は発生しません

結論から言うと、施設側(運営法人・オーナー)が電気契約を維持し続ければ、入退去に伴う通電遮断・再点は発生しません(料金未払い等による供給停止は別です)。入退去のたびの廃止・申込み手続きが不要になり、空室の凍結防止器も常時稼働できます。

空室期間中の基本料金負担が気になる場合は、一部の新電力が低圧電灯向けに提供する「基本料金0円プラン」を組み合わせる選択肢があります。実現方法は、建物の受電形態に応じて次の2方式です。

② 方式1:各居室の低圧契約を施設名義に集約する

各居室に付いている電力会社のメーターと引込設備を活かしたまま、契約者を入居者個別から施設に切り替える方式です。既存設備を利用できる場合が多く、大規模な受電設備工事は通常必要ありません。

ただし、「名義変更」「スイッチング(契約切替)」「廃止・再点」は別の手続きとして扱われており、どの手続きになるかは契約する電力会社によって異なります。切替やスイッチングの際に、メーター交換や一時的な停電が必要になる場合もあります。切替手順と空白期間の有無は、事前に電力会社へ確認してください。

この方式では、入居者への請求根拠を電力会社の取引用メーターの検針値にできるため、私設の子メーターの検定管理(後述)は不要になります。

③ 方式2:建物一括受電+子メーターで配分する

建物全体を1つの需要場所として受電し、各居室の使用量を子メーター(証明用電気計器)で計量して入居者に配分請求する方式です。すでにこの構成になっている建物では、居室ごとの電力契約自体が存在しないため、入退去による廃止・再点という概念がありません。親メーターが低圧受電であれば、基本料金0円プラン等への切替も検討できます(高圧受電の場合、低圧向けプランは利用できません)。

ただし、低圧受電は原則として契約電力50kW未満が上限です。居室数の多い施設で個別契約を物理的に1本へ統合しようとすると、同時最大需要や設備構成によっては高圧受電設備(キュービクル等)が必要になり、引込・幹線の工事も伴います。既存施設で新たに一括化するハードルは高く、多くの場合は方式1(名義集約)が現実的な選択肢になります。

項目方式1:名義集約方式2:一括受電×子メーター
受電形態低圧のまま(各居室に取引用メーター)親メーター1本+居室に子メーター
工事大規模工事は通常不要
※手続方法は電力会社により異なり、
メーター交換・一時停電の場合あり
新規構築は引込・幹線工事が必要
(規模により高圧受電設備が必要)
入退去時の手続き不要不要
請求の根拠電力会社の取引用メーターの検針値子メーター(検定付き計器が必須)
向いている施設既存の個別契約型の施設全般すでに親子メーター構成の建物

表:再点ゼロ運用を実現する2方式の比較

従来:入居者ごとの個別契約 居室101 居室102 居室103… 入居者がそれぞれ電力会社と契約 退去のたびに廃止 → 通電遮断 入居のたびに申込み → 再点 方式1:施設名義に集約 全居室を施設名義で契約維持 空室中の負担はプラン設計で最小化 検針値をもとに入居者へ料金請求 入退去の手続き・再点が不要 空室中も常時通電 凍結防止器・防犯機器も稼働可能

図:個別契約と名義集約方式の違い(方式1のイメージ)

4. 施設契約+入居者への料金請求はどう整理される?法的な確認事項

① 方式2(一括受電型)は一定の条件下で規制対象外と整理されています

建物を1つの需要場所として受電し、建物内で各戸へ電気を配分する形態(方式2)は、貸ビル・アパート・社宅・寮などで広く行われています。経済産業省「電力の小売営業に関する指針」では、一の需要場所内であること、配分する者がその需要場所で受電実態を持つこと、最終使用者への説明・書面交付など需要家保護を行うことといった要素のもとで、電気事業法の規制対象外となる整理が示されています。

② 方式1(名義集約型)は個別の確認が必要です

一方、方式1は各居室が別々の供給地点のまま、契約者だけが施設になる形です。上記の「一の需要場所内の配分」とは前提が異なるため、方式2と同じ理由で当然に規制対象外と断定することはできません。施設・入居者・小売電気事業者の契約関係(誰が需要家か、費用をどう精算するか)によって電気事業法上の評価が異なる可能性があります。導入前に、契約予定の小売電気事業者および経済産業局へ確認してください。

③ 入居者への料金請求を行う際の主な確認事項

いずれの方式でも、入居者との関係で押さえておきたい確認事項は次の3点です。

💡 施設契約×入居者請求の3つの確認事項

1. 計量法を満たす計器で計量する
子メーターの計量値をもとに料金を請求する場合、検定証印等があり有効期間内の計器(証明用電気計器)を使用します。期限切れの計器を料金配分に使うことはできません。

2. 料金の算定方法を明示する
電気料金・管理料金・手数料をどう算定するかを明確にし、契約内容と実際の請求を一致させます。算定根拠が不透明な請求は入居者とのトラブルの典型例です。

3. 入居契約等で事前に説明する
電力会社を入居者が選べないこと、料金の算定方法、支払方法、解約・停電時の取扱いを、入居契約や重要事項説明で説明し、理解を得たうえで運用します。

⚠ 本格導入前には専門確認を

電気事業法上の整理は契約関係の組み方によって変わり得ます。特に方式1を多数の施設で展開する場合は、契約予定の小売電気事業者、経済産業局、必要に応じて弁護士等の専門家に事前確認することを強くおすすめします。

5. 導入前に確認すべきこと|よくある失敗と回避策

① 基本料金0円プランの適用範囲と総額を確認しないまま切り替える

北海道エリアでも、低圧電灯向けに基本料金0円の商品は存在します。ただし、動力契約には基本料金が設定される場合があり、市場価格連動分・サービス料金・制度対応費・再エネ賦課金等を含めた総額で比較する必要があります。空室が多い施設では有利に働きやすい一方、満室で使用量の多い居室が中心だと、基本料金ありのプランより総額が高くなる場合があります。導入判断は、施設の入退去頻度・空室率・居室ごとの使用量の実データで試算してから行いましょう。

② 契約切替の手続きを確認せず、空白期間や想定外の停電を招く

個別契約から施設名義への切替は、電力会社によって「名義変更」「スイッチング」「廃止・再点」のどの手続きになるかが異なります。いったん廃止扱いになると通電遮断され、再点の申込みが必要です。また、切替時にメーター交換や一時停電が必要になる場合もあります。切替手順・空白期間の有無・停電の要否を、事前に電力会社へ確認することが失敗回避の要点です。

③ 既設の子メーターの検定期限を確認しないまま請求に使う

方式2の建物で既設の子メーターを使う場合、検定の有無と有効期限の棚卸しが最初の仕事です。期限切れの計器を料金配分に使うことはできないため、必要に応じて検定済み計器への交換を計画します。

④ 従来の感覚のまま「ブレーカーを上げればつく」と思い込む

個別契約のままの施設では、入居日・工事初日に電気がつかないトラブルが起こり得ます。日程が決まった時点で早めに電力会社へ申し込むことが基本です。退去時のブレーカーOFFも、これまでどおり必要です。

6. 北海道の施設運営者にとってのポイント

この制度変更は、札幌・旭川・函館・帯広など道内全域の、居室・区画を持つあらゆる施設に関係します。運営者の立場別にポイントを整理します。

北海道 活用のポイント

■ 介護施設・サ高住:入退去業務から「電気の手続き」を切り離す
入退去が頻繁な施設ほど、居室ごとの廃止・再点の事務負担が積み上がります。施設側で契約を維持する方式に切り替えれば、入退去業務は鍵と設備の確認に集中でき、電気の申込み漏れというリスク自体がなくなります。

■ 社宅・寮を持つ企業:空室コストはプラン設計で最小化する
転勤・異動で空室期間が読みにくい社宅・寮は、契約を維持したまま空室の負担を抑えられるプラン(低圧電灯向けの基本料金0円プラン等)との相性が良い運用形態です。総額比較のうえで選定しましょう。

■ 賃貸オーナー・管理会社:冬期の空室管理と一体で考える
寒冷地の空室は凍結防止器の電源確保が必須です。契約維持による常時通電は、再点手続きの削減と凍結事故の予防を同時に実現します。凍結事故の修繕費用と比べれば、空室中の電気代は安い保険といえます。

■ 全施設共通:導入判断は「実データの試算」と「事前確認」から
最適な方式とプランは、受電形態・居室数・空室率・使用量によって施設ごとに異なります。直近1年分の使用量データでの総額試算と、電力会社への切替手続きの確認をセットで行ってから判断しましょう。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 入居時から電気を使用するにはどうしたらよいですか?

A. 入居日が決まったら、事前に電力会社(小売電気事業者)へ使用開始の申込みをしてください。申込みを受けた電力会社からほくでんネットワークへ託送契約が申し込まれ、使用開始日までに遠隔で通電作業が実施されます。

Q2. 介護施設や寮で、入退去のたびに再点手続きをしない方法はありますか?

A. あります。施設側が電気契約を維持すれば、入退去に伴う通電遮断は発生せず、再点手続きは不要になります。各居室の契約を施設名義に集約する方式と、建物一括受電+子メーターで配分する方式があります。

Q3. 施設が契約して入居者に電気代を請求することはできますか?

A. 建物を1つの需要場所として受電し各戸へ配分する形態は、需要家保護等の一定の条件下で電気事業法の規制対象外と整理されています。各居室の契約を施設名義に集約する形態は契約関係によって評価が異なる可能性があるため、小売電気事業者や経済産業局への事前確認をおすすめします。いずれも、計量法を満たす計器の使用、料金算定方法の明示、入居契約での事前説明が重要です。

Q4. 低圧受電の建物でもこのスキームは使えますか?

A. 使えます。基本料金0円プランは低圧電灯向けの商品のため、低圧の建物こそ検討対象です。各居室の低圧契約を施設名義に切り替える方式なら、大規模な受電設備工事は通常不要です。なお低圧は原則として契約電力50kW未満が上限のため、多数の居室を物理的に1契約へ統合する場合は高圧受電の検討が必要になります。

Q5. 基本料金0円プランにすれば必ず安くなりますか?

A. 必ず安くなるとは限りません。基本料金0円プランは市場価格連動分・サービス料金・制度対応費等が加わる設計が多く、動力契約には基本料金が設定される場合もあります。満室で使用量の多い施設では割高になる可能性があるため、空室率と使用量の実データをもとに総額で比較してください。

8. まとめ

2026年5月から始まった通電作業(遠隔操作)と、施設運営者の対応ポイントを整理します。

  • 遠隔操作が可能なスマートメーター設置物件では、契約廃止時に通電遮断され、使用再開には電力会社への申込みと再点(通電作業)が必要になりました
  • 居室ごとの個別契約では、入退去のたびに廃止・再点の手続きが発生します
  • 施設側で契約を維持すれば再点は不要になります。名義集約方式(大規模工事は通常不要)と一括受電×子メーター方式の2つがあります
  • 一括受電型は一定の条件下で規制対象外と整理されていますが、名義集約型は契約関係により評価が異なる可能性があるため事前確認が必要です
  • 入居者への請求では、検定付き計器の使用・算定方法の明示・入居契約での事前説明の3点を押さえましょう
  • 基本料金0円プランは低圧電灯向けです。市場連動分やサービス料金等を含めた総額試算をしてから導入判断をしてください

記事情報
公開日:2026年8月24日
参照資料:ほくでんネットワーク「電気ご使用開始時の通電作業(遠隔操作)のご案内」、経済産業省「電力の小売営業に関する指針」、経済産業省・資源エネルギー庁「子メーター(証明用電気計器)の取扱い」
※通電作業(遠隔操作)の制度内容は上記資料に基づいています。契約方式・電力プランに関する記述は、電力会社のプラン内容・手続方法や施設の設備構成、契約関係により条件・評価が異なります。法令の適用については個別の状況により判断が異なるため、導入の際は小売電気事業者・経済産業局・専門家にご確認ください。最新情報はほくでんネットワーク公式サイトおよび各電力会社の公式情報をご確認ください。