「今年もまた上がるのか」——。2026年3月19日、経済産業省が発表した再エネ賦課金の新単価は1kWhあたり4.18円。ついに4円台に突入し、2年連続で過去最高を更新しました。
北海道で事業を営む企業にとって、冬場の暖房需要が大きいぶん電力使用量も多く、賦課金の上昇は経営コストにダイレクトに響きます。「毎月の電気代の明細に書いてある再エネ賦課金って、結局なんなの?」「なぜ毎年上がり続けるの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、2026年度の再エネ賦課金の最新情報と、値上がりの構造的な理由、そして北海道の企業が取るべき対策について詳しく解説します。
この記事でわかること
✅ 2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWh(前年比+0.20円、4円台に突入)
✅ なぜ再エネ賦課金は毎年上がり続けるのか? 算定の仕組みと構造的な要因
✅ 北海道の企業経営への影響と、今からできる具体的な電気代対策
1. 【速報】2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWh ― 初の4円台突入
経済産業省は2026年3月19日、2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の単価を1kWhあたり4.18円に設定すると発表しました。2025年度の3.98円から0.20円の増加で、制度開始以来初めて4円の大台を突破しています。
| 2026年度の賦課金単価 | 4.18円/kWh(税込) |
| 前年度(2025年度) | 3.98円/kWh |
| 前年度比 | +0.20円(約+5.0%) |
| 適用期間 | 2026年5月検針分 ~ 2027年4月検針分 |
| 一般家庭の月額負担目安 (400kWh/月の場合) | 月額 1,672円 / 年額 20,064円 |
新しい単価4.18円/kWhが電気料金に反映されるのは、2026年5月の検針分からです。電気料金の明細書で確認できるのは6月の請求分以降となります。現在の3.98円が適用されるのは2026年4月検針分までです。
2. そもそも再エネ賦課金とは? 仕組みをわかりやすく解説
① 再エネ賦課金の基本的な考え方
再エネ賦課金の正式名称は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」です。太陽光・風力・バイオマスなど再生可能エネルギーの普及を目的に、電気を使うすべての人が電力使用量に応じて負担する料金になります。
この制度は「固定価格買取制度(FIT)」と密接に結びついています。FIT制度のもとでは、再エネで発電された電気を電力会社が一定の価格で買い取ることが義務付けられています。その買い取りにかかる費用を、電気利用者全体で広く薄く分担するのが再エネ賦課金の仕組みです。
② 賦課金単価はどうやって決まるのか
毎年3月下旬に経済産業大臣が翌年度の単価を決定します。計算式は以下のとおりです。
賦課金単価 =(①買取費用 − ②回避可能費用 + 事務費)÷ ③販売電力量
① 買取費用:電力会社が再エネ発電事業者から電気を買い取るのにかかる総額
② 回避可能費用:再エネ電気がなかった場合に、火力発電等で発電するはずだったコスト
③ 販売電力量:日本全体で販売される電力量の見込み
つまり「再エネの買取コスト」から「もともとかかるはずだった火力発電コスト」を差し引いた「純粋な追加負担分」を、国内の電力消費量で割って1kWhあたりの単価を算出しています。
③ FIT制度が始まった背景
FIT制度は2012年7月にスタートしました。東日本大震災で原子力発電所が相次いで停止し、日本のエネルギー供給体制の見直しが急務となったことがきっかけです。再エネの導入を加速させるため、発電事業者に対して長期間の買取価格を保証する仕組みが導入されました。
特に初期は太陽光発電への投資が爆発的に増え、それに伴って買取費用も急増しました。現在も当時の高い買取単価で契約された設備が20年間にわたって費用を発生させ続けており、これが賦課金上昇の大きな要因のひとつです。
北海道は太陽光発電の未利用地や陸上風力発電の適地が全国でも特に多い地域です。再エネ導入が進むほど全国の買取費用は増加しますが、一方で将来的には北海道エリアの卸電力市場価格の低下につながる可能性も指摘されています。短期的なコスト増と長期的なメリットの両面を理解しておくことが大切です。
3. 再エネ賦課金の推移 ― 2012年から2026年度までの全記録
制度開始以来の賦課金単価の推移を一覧にまとめました。2023年度の一時的な下落を除き、長期的には上昇トレンドが続いています。
| 年度 | 賦課金単価 (円/kWh) | 前年度比 | 400kWh/月の場合 月額負担(目安) |
|---|---|---|---|
| 2012 | 0.22 | — | 88円 |
| 2013 | 0.35 | +59.1% | 140円 |
| 2014 | 0.75 | +114.3% | 300円 |
| 2015 | 1.58 | +110.7% | 632円 |
| 2016 | 2.25 | +42.4% | 900円 |
| 2017 | 2.64 | +17.3% | 1,056円 |
| 2018 | 2.90 | +9.8% | 1,160円 |
| 2019 | 2.95 | +1.7% | 1,180円 |
| 2020 | 2.98 | +1.0% | 1,192円 |
| 2021 | 3.36 | +12.8% | 1,344円 |
| 2022 | 3.45 | +2.7% | 1,380円 |
| 2023 | 1.40 | −59.4% | 560円 |
| 2024 | 3.49 | +149.3% | 1,396円 |
| 2025 | 3.98 | +14.0% | 1,592円 |
| 2026 | 4.18 | +5.0% | 1,672円 |
2023年度に賦課金が1.40円/kWhまで急落したのは、ウクライナ情勢等の影響で卸電力市場価格(=回避可能費用)が高騰したためです。算定式の中で差し引かれる「回避可能費用」が大きくなった結果、賦課金が圧縮されました。ただし、これは電気料金全体が安くなったことを意味しません。その分「燃料費調整額」が大幅に上がっていたため、電気代の総額はむしろ上昇していました。
4. なぜ2026年度も過去最高を更新したのか? ― 3つの要因を分析
2026年度の賦課金単価を押し上げた要因を、経済産業省の算定根拠に基づいて整理します。
① 回避可能費用の減少(最大の要因)
2026年度の算定で最も大きな変動があったのが「回避可能費用」です。
| 項目 | 2025年度の想定 | 2026年度の想定 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 買取費用等 | 4兆8,540億円 | 4兆8,507億円 | ▲33億円 |
| 回避可能費用等 | 1兆7,906億円 | 1兆6,495億円 | ▲1,411億円 |
| 販売電力量 | 7,708億kWh | 7,665億kWh | ▲43億kWh |
回避可能費用とは「再エネがなければ火力発電等で発電するはずだったコスト」のことです。卸電力市場価格が下がると、この回避可能費用も減ります。その結果、算定式の分子(買取費用 − 回避可能費用)が大きくなり、賦課金が上がるという構造になっています。
つまり、電力市場価格が落ち着くと、逆に再エネ賦課金は上がりやすくなるという、一般の感覚とは逆の動きになるのが特徴です。
② 買取費用は横ばいだが高止まり
買取費用は前年度比でほぼ横ばい(▲33億円)ですが、約4兆8,500億円と高い水準で推移しています。新たに運転を開始する再エネ発電設備が増え続けていること、また再エネの出力予測誤差に対応するための調整力確保費用も含まれています。
FIT制度初期の高い買取単価(太陽光で40円/kWh台など)で認定された設備は、20年間の買取義務が続きます。これらが買取費用を高止まりさせている構造的な要因です。
③ 販売電力量の微減
賦課金の分母となる販売電力量は7,665億kWhと、前年度の7,708億kWhからわずかに減少しました。人口減少や省エネルギーの進展による需要減が影響しています。分母が小さくなると1kWhあたりの単価が上がるため、こちらも賦課金上昇の一因です。
5. 北海道の企業経営への影響 ― 電力使用量が多いほど負担は大きい
① 電力使用量別の年間負担額シミュレーション
再エネ賦課金は電力使用量に比例するため、使用量が多い事業者ほど負担額が大きくなります。北海道の法人が多く該当するケースで試算しました。
| 月間電力使用量 | 想定される業態 | 2025年度 (3.98円) | 2026年度 (4.18円) | 年間増加額 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000 kWh | 小規模事務所 | 47,760円/年 | 50,160円/年 | +2,400円 |
| 3,000 kWh | 飲食店・小売店舗 | 143,280円/年 | 150,480円/年 | +7,200円 |
| 10,000 kWh | 中規模オフィス・施設 | 477,600円/年 | 501,600円/年 | +24,000円 |
| 30,000 kWh | 工場・大型商業施設 | 1,432,800円/年 | 1,504,800円/年 | +72,000円 |
| 100,000 kWh | 大規模工場 | 4,776,000円/年 | 5,016,000円/年 | +240,000円 |
月10,000kWhの使用量で年間約50万円、月100,000kWhの大規模事業所では年間500万円以上が再エネ賦課金として電気代に上乗せされます。しかもこの負担は、電力会社を切り替えても変わりません。全国一律で課される制度だからです。
北海道は冬場の暖房需要が大きく、年間を通じた電力使用量が全国平均より多い傾向があります。特にオール電化の事業所やヒートポンプ暖房を導入している施設では、冬季の使用量が夏季の2〜3倍に達するケースも珍しくありません。電力使用量に比例する再エネ賦課金の負担は、北海道の企業にとって他の地域以上に重い課題です。
② 再エネ賦課金だけでは終わらない ― 電気料金を取り巻く複合的なコスト増
再エネ賦課金の上昇だけでなく、電気料金を構成する他の要素にも注意が必要です。燃料費調整額は原油・LNG・石炭といった化石燃料の国際価格や為替レートに連動して変動します。中東情勢の緊迫化や円安の進行など、複数の要因が重なればさらなる電気代上昇の可能性があります。
再エネ賦課金は「構造的に上がりやすい固定コスト」、燃料費調整額は「市況によって変動するコスト」と、性質の異なる2つのコスト増に同時に備える必要がある点を認識しておきましょう。
6. 今後の見通し ― 再エネ賦課金はいつまで上がり続けるのか
① 当面は高止まり、さらなる上昇の可能性
政府は第7次エネルギー基本計画で、電源構成に占める再エネの割合を約4割まで引き上げる目標を掲げています。再エネ導入が拡大する以上、買取費用の総額はすぐには減りにくい状況です。一方で卸電力市場価格が低下傾向にあると、回避可能費用が減少して賦課金がさらに上がる構造は当面変わりません。
② FIT契約の満了が転機に
FIT制度初期(2012〜2015年頃)に高い買取価格で契約された太陽光発電設備は、20年間の買取期間を満了すると、順次FIT制度から離脱します。2030年代以降、この「卒FIT」が進むことで、買取費用が減少に転じる可能性が指摘されています。
ただし、それまでにはまだ数年以上かかります。少なくとも2020年代後半は、賦課金が高止まりするか微増を続ける見通しが有力です。
③ FIP制度への移行
2022年4月からは、FIT制度に加えて「FIP制度(フィードインプレミアム制度)」が導入されています。FIPでは市場価格に連動したプレミアムを上乗せする仕組みのため、再エネ事業者にも市場との連動意識が求められます。この移行が進むことで、中長期的には賦課金の上昇ペースが緩やかになることが期待されています。
7. 北海道の企業が今からできる電気代対策
再エネ賦課金そのものは全国一律で決まるため、企業が単価を変えることはできません。しかし、電力使用量を減らすこと、そして電気料金全体の構成を見直すことで、負担を抑える手段はいくつもあります。
① 省エネ対策で電力使用量を減らす
電力使用量が減れば、通常の電力量料金だけでなく、再エネ賦課金の負担額も同時に下がります。北海道の企業で効果が大きい代表的な対策を挙げます。
蛍光灯からLEDへの切り替えで、照明の消費電力を50〜70%程度削減できるケースがあります。2027年には蛍光灯の製造が終了するため、早めの対応が合理的です。
老朽化したエアコンやボイラーを高効率機器に入れ替えることで、暖房・冷房にかかる電気代を大きく抑えられます。北海道では冬場の暖房コストが経営に大きく影響するため、空調更新の効果は特に大きいでしょう。
高圧契約の場合、最大需要電力(デマンド)を下げることで基本料金の引き下げにつながります。電力使用のピークを平準化する運用改善は、追加投資なしでも取り組めるものがあります。
② 電力調達(電力会社・料金プラン)の見直し
再エネ賦課金は電力会社を変えても金額は変わりません。しかし、基本料金や電力量料金、燃料費調整額の計算方法は電力会社やプランによって異なります。特に北海道エリアでは新電力の選択肢が増えており、現在の契約と比較することで年間数十万円単位のコスト削減が実現できるケースもあります。
比較の際は、見かけの単価だけでなく、燃料費調整額の算定方法や損失率の取り扱いなど、料金全体の構造を確認することが重要です。
③ 補助金・助成制度の活用
省エネ設備の導入には、国や自治体の補助金制度が利用できる場合があります。LED照明や高効率空調への切り替えは代表的な補助対象です。補助金には申請期間や予算枠があるため、「検討しているうちに締め切っていた」とならないよう、早めの情報収集をお勧めします。
電力を大量に消費する事業者(電気使用量÷売上高の原単位が一定基準を超える場合)は、経済産業大臣の認定を受けることで、賦課金の2〜8割の減免を受けられる制度があります。製造業で電力使用量が極めて多い事業所は、この減免措置の対象になる可能性がありますので確認してみてください。
8. まとめ
2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWhとなり、制度開始以来初めて4円台に突入しました。適用は2026年5月検針分からです。
一般家庭(400kWh/月)で年間約20,064円、電力使用量の多い法人ではさらに大きな負担となります。値上がりの主因は回避可能費用の減少であり、電力市場価格が落ち着くと賦課金が上がるという構造的な特徴があります。
再エネ賦課金は電力会社を変えても下がらない「固定コスト」ですが、電力使用量を減らすことで負担額を圧縮することは可能です。LED照明や高効率空調への更新、デマンド管理の見直し、電力調達先の比較検討、補助金の活用など、できる対策は複数あります。
電気料金が構造的に上がりやすい時代だからこそ、「何もしないコスト」は年々大きくなっていきます。まずは自社の電気代の内訳を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
記事情報
公開日:2025年3月21日
最終更新日:2026年3月20日(2026年度の賦課金単価決定に伴い全面更新)
参照資料:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」(2026年3月19日発表)
https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260319004/20260319004.html
※本記事は上記資料に基づいて作成しています。最新情報は資源エネルギー庁の公式ページをご確認ください。

