LEDのバイパス工事とは、蛍光灯器具の中にある「安定器」を外し(または回路から切り離し)、電源を直管LEDランプのソケットへ直接つなぐ配線工事です。「直結工事」「安定器バイパス工事」とも呼ばれます。器具はそのまま使い、中の配線だけを変えて、蛍光灯の代わりに直管LEDランプを使えるようにします。
この工事は器具の中の電線を切り、つなぎ直す作業を含みます。電気工事士法施行規則では「電線相互を接続する作業」は電気工事士でなければ従事できない作業とされており、照明メーカーも電気工事士による施工を求めています。資格を持たない人がDIYで行うことはできません。また、日本照明工業会(JLMA)は、ランプだけの交換や器具の改造よりも、LED照明器具への交換(器具ごと交換)を推奨しています。
この記事では、2026年10月27日時点の法令・業界団体・メーカーの公開資料をもとに、バイパス工事の中身、工事不要タイプのLEDランプとの違い、資格とDIYの可否、改造後の保証・PSEの扱い、蛍光灯の製造・輸出入禁止のスケジュールを、北海道の法人の施設担当者向けに整理します。
この記事でわかること
・LEDのバイパス工事(直結工事)の中身と、工事が必要になる理由
・「工事不要」タイプ・バイパス工事・器具ごと交換の3つの方法の違い
・バイパス工事に必要な資格と、DIYができない法的な理由
・改造した器具のメーカー保証・電気用品安全法(PSE)の扱いと、改造後の表示
・蛍光ランプの製造・輸出入禁止のスケジュールと、北海道の建物で確認したいこと
更新履歴
- 2026年10月27日:全面改訂。電気工事士法・施行令・施行規則にもとづく資格とDIYの可否、JLMAガイド301による改造時の表示、改造品の保証・電気用品安全法の扱い、環境省による蛍光ランプの製造・輸出入禁止日、PCB使用安定器の確認を追記。根拠を確認できない記述を削除
- 2026年2月5日:初版公開
1. LEDのバイパス工事(直結工事)とは
蛍光灯は、管の中で放電させて光る照明です。放電を安定させるために、器具の中に安定器という部品が入っています。一方、直管LEDランプには、ランプの中に電源回路を持ち、安定器を通さずに商用電源を直接ランプに入れる方式の製品があります(JLMAの資料でも、電源を内蔵し商用電源に直結する方式が整理されています)。
この方式のランプを既存の蛍光灯器具で使うために行うのが、バイパス工事です。シャープの直管LEDランプの施工説明では、次のような手順が示されています。
- 端子台と安定器の間、安定器とソケットの間の配線を切る
- 端子台とソケットの間を配線でつなぐ(配線同士は接続端子でつなぐ)
- 安定器は取り外すことを推奨
つまり、電気の通り道から安定器を外し、電源をソケットまで直接通すのがバイパス工事です。安定器を迂回(バイパス)して配線するイメージです。
工事後の器具は、蛍光灯器具ではなく「その直管LEDランプ専用の器具」になります。JLMAの資料では、LED化改造工事をした器具には従来の蛍光ランプは使用できなくなると明記されています。JLMAのガイド301は、誤って蛍光灯を付けないよう、改造後の器具に表示をすることが望ましいとしています(5章)。
なぜ安定器を外すのか
アイリスオーヤマは、安定器に対応していないLEDランプを使う場合は安定器を取り外すバイパス工事が必要とし、安定器を取り外さないと満足のいく省エネ性が得られないと説明しています。また、安定器には寿命があります。パナソニックとアイリスオーヤマは、JIS C 8108の解説で安定器の平均寿命は8〜10年とされていることを示しています。
JLMAのガイド301では、安定器を取り外す理由として、将来の保守のときに蛍光灯器具と誤認されるのを防ぐことを挙げています。
2. 蛍光灯をLEDにする3つの方法と、工事の要否
直管蛍光灯をLED化する方法は、大きく分けて次の3つです。どれを選ぶかで、工事の有無・安全性・保証の扱いが変わります。
| 方法 | 器具の扱い | 配線工事 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| A. 工事不要タイプのLEDランプに差し替え | 既存の器具・安定器をそのまま使う | 不要(器具の方式に合う製品に限る) | 安定器の劣化が残る。組み合わせを誤ると異常過熱などのおそれ。使える器具は限られる |
| B. バイパス工事(直結工事)+直管LEDランプ | 器具を改造して使う。安定器は取り外す | 必要(電気工事士) | 既設器具メーカーの保証は適用外。JLMAガイド301では改造後の表示が望ましいとされる。器具本体の耐用年限は延びない |
| C. LED照明器具に交換(器具ごと交換) | 器具を撤去し、新しいLED器具を取り付ける | 必要(電気工事士) | JLMA・メーカーが推奨する方法。器具の新品保証の範囲で使える |
表:直管蛍光灯をLED化する3つの方法(日本照明工業会「G13口金直管LED光源の採用をご検討中のお客様へのお願い」、パナソニック、アイリスオーヤマの公開情報をもとに作成)
JLMAは2021年9月15日付の文書で、G13口金の直管LED光源について、制御装置(電源回路)の故障などで光源内部が発煙・発火し、ランプが落下する事故が起きていることを示しました。そのうえで、ランプ交換ではなく、LED照明器具への交換を推奨しています。パナソニックも「早めのまるごと器具交換」を勧めています。
それでもランプ方式を選ぶ場合、JLMAは、JLMAの安全規格「JLMA 301」に適合したLED光源を選び、ガイド301に沿って改造工事をするよう求めています。
自社の器具が蛍光灯かLEDかの確認方法は「LEDと蛍光灯の見分け方」で解説しています。
3. 「工事不要」のLEDランプの注意点:安定器が残る
「工事不要」とうたう直管LEDランプは、既存の安定器や点灯方式に合わせて作られた製品です。JLMAの資料でも、既設の安定器に接続して使う方式の直管LEDランプが整理されています。工事がいらない分、手軽に見えますが、安定器はそのまま残る点に注意が必要です。
使える器具は限られる
アイリスオーヤマは、ランプ交換だけで使えるLEDランプについて、「20形までの小さなサイズかつグロースターター式器具のみ」としています。蛍光灯器具には、グロースタータ式(点灯管を使う方式)、ラピッドスタート式、インバータ式などの方式があります。器具の方式と合わない製品を付けると、正しく動作しません。同社は、組み合わせを誤ると異常過熱などが起きる場合があるとしています。
劣化した安定器が事故の原因になる
消防庁予防課は2024年6月10日の事務連絡で、JLMAの安全啓発リーフレットを周知しました。リーフレットでは、直管LEDランプと既存器具の組み合わせによって発煙・発火・落下が起きるおそれがあり、その原因の一つとして「継続使用した安定器の劣化」を挙げています。また、「ランプを交換すれば、照明器具はずっと使える」と考えるのは間違いだとしています。
器具本体の寿命は延びない
パナソニックは、LEDランプに交換しても照明器具の耐用年限は延びないと説明しています。JLMAのガイドA130(2025年版)では、照明器具の適正交換の目安を10年以上または累積点灯時間30,000時間以上、耐用の限度を15年または累積点灯時間40,000時間としています。使用期間が15年以上または40,000時間を超えた器具は、事故防止のため直ちに使用を中止し、新しい器具に取り替えるよう求めています。
工事不要タイプは劣化した安定器が残ります。バイパス工事は安定器を外せますが、ソケット・端子台・配線などの器具本体は古いままです。設置から10年を超える器具は、ランプ方式より器具ごと交換を優先して検討するのが、JLMAとメーカーの考え方です。
4. バイパス工事は資格が必要?DIYの可否と法令
結論から言うと、バイパス工事は電気工事士の資格を持つ人が行う作業です。資格のない人がDIYで行うことはできません。根拠は次のとおりです。
電気工事士法の「電気工事」と資格
電気工事士法第2条第3項では、「電気工事」を、一般用電気工作物等または自家用電気工作物を設置し、または変更する工事と定めています(政令で定める軽微な工事を除く)。そして第3条で、電気工事の作業は電気工事士等でなければ従事できないとしています。
電気工事士法施行規則第2条第1項では、電気工事士でなければ従事できない作業として、「電線相互を接続する作業」などが挙げられています。バイパス工事は、器具の中の配線を切り、端子台とソケットの間をつなぎ直す作業なので、この作業を含みます。
メーカーも資格を明記しています。シャープは直管LEDランプについて「このランプの施工には電気工事士の資格が必要です」とし、アイリスオーヤマも、照明器具の配線を直接接続する必要がある場合は電気工事士による配線工事が必要としています。
「軽微な工事」には当たらない
電気工事士法施行令第1条では、資格がいらない「軽微な工事」を定めています。たとえば、電圧600V以下の差込み接続器やソケットなどにコードを接続する工事、電圧600V以下の電気機器の端子に電線をねじ止めする工事、電力量計・ヒューズの取付け・取外しなどです。電線を切ってつなぎ直す配線の変更は、これらに含まれていません。
法人の建物では「どの資格か」も確認する
必要な資格は、建物の電気設備の区分で変わります。経済産業省の資料では、次のように整理されています。
| 建物の電気設備の区分 | 例 | 工事ができる資格 |
|---|---|---|
| 一般用電気工作物 | 住宅・小規模な店舗や事務所など | 第一種または第二種電気工事士 |
| 自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備) | 高圧で受電する中小ビル・工場など(概ね6,600Vで受電) | 第一種電気工事士。600V以下の部分の工事(簡易電気工事)は認定電気工事従事者も可 |
表:電気設備の区分と必要な資格(経済産業省「電気工事士法」資料、電気工事士法の逐条解説(令和6年7月版)をもとに作成)
最大電力500kW未満の高圧受電の建物(キュービクルのある中小ビル・工場など)の照明は、自家用電気工作物の一部です。この場合、第二種電気工事士の資格だけでは工事に従事できません。なお、最大電力500kW以上の需要設備は、電気工事士法の「自家用電気工作物」から除かれており(同法第2条第2項)、同法の資格規制の対象外です。この場合は、設置者の保安体制(電気主任技術者など)の下で工事が行われます。発注するときは、施工者の資格の種類まで確認してください。電気工事士法第3条に違反した場合の罰則は、同法第14条に定められています。
資格がなければ、自社の建物でも自宅でもバイパス工事はできません。資格を持つ社員が行う場合も、JLMAガイド301が示す部品の点検・交換と表示に沿って行うことが望ましいとされています。また、JLMAの資料では、改造に係る事故・不具合は改造実施者が対処するものとしています(5章)。
5. バイパス工事のやり方と、改造後の表示・保証・PSE
JLMAは、既設の蛍光灯器具をAC直結G13口金の直管LED光源用に改造する場合の注意を「ガイド301」(2021年4月21日制定、2024年11月15日改正)にまとめています。ガイド301は、部品の交換、安定器の取り外し、脱着防止、表示の4つを、改造工事を行う電気工事業者などが「遵守することが望ましい」注意事項としています。これに事前の確認を加えた作業の流れは次のとおりです(ステップ1はガイド301の項目ではなく、一般的な事前確認です。実際の手順は、使うLEDランプの施工説明書に従います)。
使う直管LEDランプがJLMA 301に適合しているか、その給電方式(片側給電など)、器具の設置年数と劣化の状態を確認します。
ソケット・端子台・配線などを、仕様や劣化の状態に応じて交換します。変色や亀裂など明らかな劣化があるものは交換しなければなりません。蛍光灯器具のソケットは、ピン間に商用電源電圧をかけるには絶縁距離が足りない仕様の場合があります。
安定器を外し、ランプの給電方式に合わせてソケットへ配線します。JLMA 301は、AC電源を片側の口金ピンに接続する方式(片側給電)に限定した規格です。製品によっては「片側給電専用。両側給電の器具には取り付けない」と注意書きがあります。
工具がないと交換できない構造などにより、使用者がLED光源を容易に脱着できないようにします。
ガイド301では、下の表の4項目を器具本体に表示するとしています。
| 適合するランプ | 適合するLED光源の形式(製造社名)と、蛍光ランプは取り付けできない旨 |
| ランプと工事の情報 | LED光源の定格電圧・定格消費電力、工事業者名、工事年月など |
| 銘板の無効 | 元の蛍光灯器具の銘板情報は無効である旨 |
| 給電側の識別 | 給電側ソケットの近くに、給電側であることを示す識別 |
表:改造後の器具に行う表示(日本照明工業会 ガイド301:2024による)
JLMAは、これらの注意事項を守れない場合は、改造工事ではなく新しいLED照明器具の採用を推奨するとしています。
改造した器具のメーカー保証
JLMAとパナソニックは、既設の蛍光灯器具にLED化改造工事をすると、既設照明器具メーカーの製品保証が適用外になると明記しています。パナソニックは、自社の蛍光灯器具に直管LEDランプを使った場合の品質・安全は保証できないとしています。
電気用品安全法(PSE)と事故の責任
JLMAの資料「直管LEDランプ専用器具の電気用品安全法の適合可否について(お知らせ)」では、既設の蛍光灯器具を直管LEDランプ用に改造する行為は電気用品安全法の対象外としつつ、注意が必要としています。同じ資料では、改造された製品について器具メーカーは製造者としての責任を負えず、改造に係る事故・不具合は改造実施者が対処すること、工事に起因する事項であれば改造工事を行った業者の責任であることが示されています。
つまり、改造後の器具は、元のPSEマークや銘板の情報を根拠に「安全が確認された製品」とは扱えません。ガイド301が、元の銘板情報は無効である旨の表示を注意事項に挙げているのも、このためと考えられます(推測)。一方、LEDランプそのものは製品として購入するものなので、JLMAはPSEマークの付いた製品を選ぶよう案内しています。
6. 蛍光ランプの製造・輸出入禁止のスケジュール
LED化を急ぐ理由の一つが、水銀に関する水俣条約による蛍光ランプの規制です。2023年10月30日〜11月3日に開かれた第5回締約国会議(COP5)で、一般照明用の蛍光ランプは2027年末までに製造・輸出入が禁止されることになりました。国内では2024年12月に水銀汚染防止法の施行令が改正され、環境省は次の日付を示しています。
| ランプの種類 | 製造・輸出入の禁止日 |
|---|---|
| 電球形蛍光ランプ | 2026年1月1日(30Wを超えるものは2027年1月1日) |
| コンパクト形蛍光ランプ | 2027年1月1日 |
| 直管形蛍光ランプ | 2028年1月1日(ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を用いたものは2027年1月1日) |
| 環形蛍光ランプ | 2028年1月1日(ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を用いたものは2027年1月1日) |
表:一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入の禁止日(環境省「一般照明用の蛍光ランプの規制について」による。2026年10月27日時点)
環境省は、蛍光ランプの使用・販売・購入は禁止されないとしています。経済産業省・環境省のチラシでも、すでに使っている製品の継続使用や、禁止日までに製造された在庫の売り買い・使用は禁止されないと説明されています。今ある蛍光灯をすぐ外す必要はありませんが、直管形でも一般型(ハロりん酸塩系)は2027年1月1日から製造・輸出入が禁止されます。交換用ランプを前提にした保守計画は、早めに見直す必要があります。
規制の背景は「蛍光灯の2027年問題とは?製造・輸出入禁止の時期と法人向けの対応」で解説しています。
7. バイパス工事と器具ごと交換、どちらを選ぶか
JLMAとメーカーの考え方に沿って整理すると、判断の軸は次の4つです。
| 器具の年数 | 適正交換の目安(10年以上・30,000時間以上)を超えている器具は、器具ごと交換を優先します。15年または40,000時間を超えた器具は、JLMAが直ちに使用中止・取替えを求めています |
| 部品の状態 | ソケット・端子台・配線に変色や亀裂があれば、改造時に交換が必要です。交換する部品が多い場合は、器具ごと交換の見積りとも比べます |
| 保証と責任 | 改造すると既設器具メーカーの保証は適用外になります。JLMAの資料では、工事に起因する事項は改造工事を行った業者の責任としています |
| 管理のしやすさ | ガイド301では改造器具に表示をすることが望ましいとされています。器具ごとに適合ランプが違うと、保守のときの取り違えを防ぐ管理が必要になります |
電気代の削減額は、どの方法でも「更新前後の消費電力の差」で計算できます。更新前の値は、ランプのワット数ではなく、安定器の分を含む器具の消費電力で比べるのがポイントです。
年間削減電力量(kWh)=(更新前の器具の消費電力W − 更新後の消費電力W)× 年間点灯時間(h)× 台数 ÷ 1,000
年間削減額(円)= 年間削減電力量 × 自社の電気料金単価(円/kWh)
単価は契約や燃料費調整額などで変わるため、自社の請求書の値を使います。
計算の詳しい手順は「蛍光灯をLEDに変えると電気代はいくら下がる?」、工事費の会計処理は「LED工事は修繕費?資産計上?」で解説しています。
8. 北海道の法人がバイパス工事の前に確認すること
バイパス工事でも器具ごと交換でも、外した安定器は廃棄物になります。札幌市は、昭和52年(1977年)3月までに建築・改修された建物で古い安定器が使われていないか、速やかに確認するよう求めています。製造から40年以上たつPCB使用安定器が劣化して破裂し、PCBが漏れる事故が起きているためです。
判別は、安定器の銘板にあるメーカー、型式・種別、性能(力率)、製造年月などで行い、詳細は各メーカーかJLMAのウェブサイトで確認します。札幌市は、一度調査した建物でも事故が起きていることから、サンプルではなく全数調査を求めています。なお、一般家庭用の蛍光灯などの安定器にはPCBを使ったものはないとされています。
札幌市の案内(2026年3月25日更新)では、高濃度PCB廃棄物のうち安定器・汚染物の処分期間は令和5年(2023年)3月31日で終了しています。中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)による高濃度PCB廃棄物処理の登録受付も、令和7年(2025年)10月15日で終了しました。このため、新たに見つかった高濃度PCB廃棄物は、新たな処理体制で適正に処理されるまで、適正に保管する必要があります。低濃度PCB廃棄物の処分期間は令和9年(2027年)3月31日までです。札幌市は、高濃度PCBを使った機器が見つかった場合は、早急に市(環境局環境事業部事業廃棄物課)へ連絡するよう案内しています。札幌市以外の地域では、所在地の自治体の案内を確認してください。
直管LEDランプには使用できる周囲温度の範囲があります。たとえばアイリスオーヤマの直管LEDランプ(40形)の仕様書では、動作環境温度を5℃〜35℃(200V以下の場合)としています。暖房しない倉庫・車庫・風除室など、冬に室温が下がる場所で使う場合は、ランプや器具の仕様書で使用温度範囲を確認します。JLMAのガイドA130も、周囲温度などの使用条件で照明器具の耐用年限が短くなることがあるとしています。
非常用照明器具は一般の器具と分けて扱う
非常用照明器具は、建築基準法にもとづく告示「非常用の照明装置の構造方法を定める件」で構造が定められている器具です。現行の告示(昭和45年建設省告示第1830号。最終改正は平成29年6月2日の国土交通省告示第600号)では、非常用照明器具に使えるLEDランプを、GX16t-5口金付直管LEDランプ(JIS C 8159-1)と、口金のないLEDモジュール(JIS C 8154)に限っています。G13口金の直管LEDランプはこれに含まれていません。このため、一般の蛍光灯器具と同じように、G13口金の直管LEDランプへの差し替えやバイパス工事の対象にするのは避けます。器具メーカーの情報を確認し、非常用照明器具として適合する製品への交換を検討してください。誘導灯については「誘導灯B級とC級の違い」で解説しています。
撤去品は産業廃棄物として処理する
取り外した安定器や蛍光ランプの処理の考え方は「LED交換工事で発生する産業廃棄物とは」で解説しています。
9. バイパス工事でよくある失敗と注意点
失敗1:「工事不要」と書かれたランプを、方式の違う器具に付ける
工事不要のランプは、使える器具の方式が決まっています。器具の方式を確認せずに付けると、点灯しない、異常過熱するなどのおそれがあります。ランプに「工事不要」と書かれているかどうかではなく、ランプの適合表と器具の方式で判断します。
失敗2:バイパス工事後の器具に表示をしない
表示がないと、数年後の保守で蛍光灯器具と取り違えられ、蛍光ランプや別の給電方式のランプが付けられるおそれがあります。JLMAのガイド301では、改造後の器具本体に4項目の表示を行うとしています。
失敗3:器具の中の劣化部品をそのまま使う
ソケットや配線は器具と同じ年数だけ使われています。変色・亀裂のある部品は交換が必要です。点検の結果、部品交換が多くなるなら、器具ごと交換と比べ直します。
失敗4:高圧受電の建物で、資格の種類を確認せずに発注する
最大電力500kW未満の高圧受電の建物(キュービクルのある中小ビル・工場など)の照明工事は、第一種電気工事士(600V以下の部分は認定電気工事従事者も可)の領域です。最大電力500kW以上の需要設備は電気工事士法の対象外で、設置者の保安体制の下で工事が行われます。施工者の資格に加えて、建物の電気保安の担当者(電気主任技術者など)と、停電を伴う作業の段取りも確認します。
10. よくある質問(FAQ)
A. 蛍光灯器具の中の安定器を外し(回路から切り離し)、電源を直管LEDランプのソケットへ直接つなぐ配線工事です。直結工事、安定器バイパス工事とも呼ばれます。工事後の器具は、その直管LEDランプ専用の器具になり、蛍光ランプは使えなくなります。
A. 資格がなければできません。バイパス工事は器具の中の電線をつなぎ直す作業を含み、電気工事士法施行規則で電気工事士でなければ従事できない「電線相互を接続する作業」に当たります。メーカーも電気工事士による施工を求めています。最大電力500kW未満の高圧受電の建物では、第一種電気工事士(600V以下の部分は認定電気工事従事者も可)が必要です。最大電力500kW以上の需要設備は電気工事士法の対象外です。
A. 器具の方式に合う製品なら使えますが、安定器はそのまま残ります。JLMAのリーフレットでは、継続使用した安定器の劣化を、発煙・発火・落下の原因の一つに挙げています。アイリスオーヤマは、ランプ交換だけで使える製品を「20形までの小さなサイズかつグロースターター式器具のみ」としています。
A. 既設照明器具メーカーの製品保証は適用外になります。JLMAは、既設器具を直管LEDランプ用に改造する行為は電気用品安全法の対象外としたうえで、改造に係る事故・不具合は改造実施者が対処するとしています。JLMAのガイド301では、改造後の器具本体に、元の銘板情報が無効である旨などの表示を行うとしています。
A. 環境省によると、蛍光ランプの使用・販売・購入は禁止されません。禁止されるのは製造と輸出入で、直管形は2028年1月1日から(ハロりん酸塩系は2027年1月1日から)です。ただし、照明器具自体にも耐用年限があり、JLMAは15年または40,000時間を超えた器具の使用中止・取替えを求めています。
A. JLMAとパナソニックは、器具ごと交換を推奨しています。器具が10年以上たっている、ソケットや配線に劣化がある、保証や事故時の責任をはっきりさせたい、という場合は器具ごと交換が向いています。バイパス工事を選ぶ場合は、JLMA 301適合のランプとガイド301に沿った施工・表示が前提です。
11. まとめ
- LEDのバイパス工事は、安定器を外して電源をソケットへ直接つなぐ配線工事で、工事後の器具に蛍光ランプは使えません
- 電線をつなぎ直す作業を含むため、電気工事士の資格が必要です。最大電力500kW未満の高圧受電の建物では第一種電気工事士(600V以下の部分は認定電気工事従事者も可)が対象です。500kW以上の需要設備は電気工事士法の対象外です
- 工事不要タイプは使える器具が限られ、劣化した安定器が残ります。器具本体の耐用年限も延びません
- 改造すると既設器具メーカーの保証は適用外です。JLMAの資料では、事故・不具合は改造実施者が対処するとしています。JLMAガイド301は、改造後の器具本体に4項目の表示を行うとしています
- 直管形蛍光ランプは2028年1月1日(ハロりん酸塩系は2027年1月1日)から製造・輸出入禁止です。使用・販売は禁止されません
- 昭和52年3月までに建築・改修された建物では、外す安定器のPCB含有を銘板で全数確認します。札幌市の案内では、低濃度PCB廃棄物の処分期間は2027年3月31日までです
記事情報
公開日:2026年2月5日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・e-Gov法令検索「電気工事士法」(e-Gov)
・経済産業省「電気工事士法」(経済産業省)
・経済産業省「電気工事士法の逐条解説(令和6年7月版)」(PDF)
・経済産業省「電気工事士法 第3条(電気工事士等の工事範囲)」(PDF)
・経済産業省「電気工事士等資格が不要な「軽微な工事」とは」(PDF)
・日本照明工業会「ガイド301:2024 既設の蛍光灯器具をAC直結G13口金直管LED光源用に改造工事する場合の注意」(PDF)
・日本照明工業会「G13口金直管LED光源の採用をご検討中のお客様へのお願い」(2021年9月15日)(PDF)
・日本照明工業会「直管LEDランプ専用器具の電気用品安全法の適合可否について(お知らせ)」(PDF)
・日本照明工業会「照明器具“安全チェックシート”及びその表示ガイド(ガイドA130:2025)」(PDF)
・消防庁予防課「蛍光ランプ交換に関する安全啓発リーフレットの送付について」(令和6年6月10日)(PDF)
・パナソニック「直管LEDランプは工事不要?いいえ!蛍光灯への取付には注意が必要です!」(パナソニック)
・アイリスオーヤマ「直管蛍光灯からLEDへの交換は工事不要?いいえ、工事が必要です!」(アイリスオーヤマ)
・アイリスオーヤマ「直管LEDランプ 40形 仕様書」(PDF)
・シャープ「直管LEDランプ(業務用・法人向けLED照明)」(シャープ)
・環境省「一般照明用の蛍光ランプの規制について」(環境省)
・経済産業省・環境省「蛍光ランプの製造・輸出入廃止に向けた周知について(依頼)」(令和6年2月)(PDF)
・経済産業省「「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」の結果について」(令和5年11月9日)(PDF)
・札幌市「PCB廃棄物」(札幌市)
・札幌市「PCB廃棄物の判別方法」(札幌市)
・国土交通省「非常用の照明装置の構造方法を定める件」(昭和45年建設省告示第1830号、最終改正 平成29年6月2日国土交通省告示第600号)(PDF)
※2026年10月27日時点の情報です。法令・規格・製品仕様は改正・変更されることがあります。施工の可否や手順は、使用する製品の施工説明書と最新の法令・規格で確認してください。
