北海道で太陽光パネルを真南に向けて設置する場合、年間の日射量がいちばん多くなる傾斜角(最適傾斜角)は、NEDOの日射量データベース(MONSOLA-11)で約27〜43度です。札幌は34.8度、旭川は33.6度、帯広は42.9度、釧路は42.7度と、地点によって10度以上の差があります。「北海道は一律40〜45度」という言い方は、データとは合いません。
一方で、最適傾斜角から多少ずれても日射量の差は小さく、札幌では30度と40度のどちらでも、10度刻みの値のうち最大になります。積雪地では、日射量だけで角度を決めず、パネルに積もった雪で発電が止まる時間、積雪荷重、雪が滑り落ちた先の安全、パネル下端(軒先)が雪に埋まらない高さまで含めて、角度と高さをセットで決めることが大切です。
この記事では、法人の自家消費型太陽光(地上・屋根・駐車場)を想定し、NEDOのデータベース、NEDOの設計ガイドライン、経済産業省の技術基準の解釈、建築基準法施行令、北海道の垂直積雪量、産総研・道総研・北海道企業局の資料をもとに、角度と雪の影響を整理します。根拠を確認できない発電量の数値は載せていません。
この記事でわかること
・北海道16地点の最適傾斜角と、傾けたときの日射量の増え方(NEDOのデータ)
・札幌で角度を10度ずつ変えたときの、年間と冬の日射量の違い
・パネルに雪が積もると発電がどうなるか(産総研の北海道での観測など)
・積雪荷重の考え方(JIS C 8955、垂直積雪量、勾配による低減の条件)と札幌の計算例
・落雪の安全対策と、垂直設置・両面受光パネルの位置づけ
更新履歴
- 2026年10月27日:全面改訂。最適傾斜角をNEDOの日射量データベースの値に差し替え、積雪荷重の算定方法、北海道の垂直積雪量(北海道庁の公表値)、落雪対策、垂直設置・両面受光の公的な実証例を追加。根拠を確認できない記述(平均積雪量の一覧、事例、除雪装置など)を削除
- 2024年8月23日:初版公開
1. 北海道の太陽光パネルの最適角度は「地点によって約27〜43度」
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、太陽光発電の設計に使う日射量のデータベースを公開しています。2026年10月27日時点でNEDOのページからダウンロードできる「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」は、全国837地点・1981〜2009年(29年間)の平均値を収録しています。
このデータベースの「最適傾斜角」は、パネルを真南に向けたとき、斜面で受ける日射量が最大になる角度です。NEDOの解説書によると、0.1度ごとに斜面日射量を計算し、最大になる角度を求めています。北海道の主な地点の値は次のとおりです。
| 地点 | 年間の最適傾斜角 | 水平面の日射量(年平均) | 年間最適傾斜角に固定した日射量(年平均) | 水平面に対する比 | 冬(12〜2月)の最適傾斜角 |
|---|---|---|---|---|---|
| 稚内 | 32.1度 | 3.08 | 3.41 | 1.11倍 | 64.0度 |
| 名寄 | 33.0度 | 3.15 | 3.50 | 1.11倍 | 67.6度 |
| 旭川 | 33.6度 | 3.30 | 3.69 | 1.12倍 | 67.3度 |
| 留萌 | 29.6度 | 3.23 | 3.52 | 1.09倍 | 62.5度 |
| 札幌 | 34.8度 | 3.37 | 3.82 | 1.13倍 | 67.4度 |
| 岩見沢 | 34.4度 | 3.32 | 3.74 | 1.13倍 | 67.5度 |
| 倶知安 | 29.9度 | 3.14 | 3.41 | 1.09倍 | 62.7度 |
| 網走 | 38.7度 | 3.50 | 4.11 | 1.17倍 | 69.3度 |
| 北見 | 38.8度 | 3.35 | 3.93 | 1.17倍 | 69.6度 |
| 根室 | 40.6度 | 3.50 | 4.20 | 1.20倍 | 66.4度 |
| 釧路 | 42.7度 | 3.40 | 4.19 | 1.23倍 | 67.4度 |
| 帯広 | 42.9度 | 3.49 | 4.29 | 1.23倍 | 69.8度 |
| 苫小牧 | 38.8度 | 3.23 | 3.81 | 1.18倍 | 65.0度 |
| 室蘭 | 34.3度 | 3.37 | 3.83 | 1.14倍 | 60.6度 |
| 函館 | 35.0度 | 3.32 | 3.78 | 1.14倍 | 64.4度 |
| 江差 | 27.3度 | 3.12 | 3.36 | 1.08倍 | 51.5度 |
表:北海道の主な地点の最適傾斜角と日射量(真南向き。日射量の単位はkWh/m²・日。月平均日積算日射量を年で平均した値。「水平面に対する比」は年平均値どうしを当社で割り算したもの。NEDOデータファイル内の「比率(B/C)」の年欄は月別の比の平均で、計算方法が異なるため値も一致しない)(出典:NEDO「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」データファイル)
表のとおり、北海道でも最適傾斜角は地点によって大きく違います。日本海側の江差・留萌・倶知安は30度前後、十勝・釧路・根室は40度を超えます。冬の日射量が多い地点ほど、最適傾斜角が大きくなる傾向が、NEDOのデータから読み取れます。たとえば冬(12〜2月)の水平面日射量は、帯広が2.37、札幌が1.81、留萌が1.34(kWh/m²・日)です。
北海道「北海道は40〜45度」ではなく、まず地点の値を確認
札幌・旭川・函館は35度前後、帯広・釧路は43度前後と、同じ北海道でも最適傾斜角に約10度の差があります。設置場所の最寄りの地点の値を、NEDOのデータベースで確認するのが出発点です。
なお、NEDOは2021年4月の解説書で、統計期間を2010〜2018年に更新した「MONSOLA-20」(全国約1kmメッシュ)も説明しています。この解説書では、大半の地点で近年(2009〜2018年)の日射量が1981〜2009年の平均より多い傾向が示されています。この記事の数値はMONSOLA-11のものなので、最新版の値とは少し違う可能性があります。
2. 角度を10度変えると日射量はどれくらい変わる?(札幌の例)
最適傾斜角は「ちょうどその角度でなければならない」というものではありません。札幌のデータで、真南向きのまま傾斜角を変えたときの日射量を見てみます。
| 傾斜角 | 年平均の日射量 | 最大値に対する比率 | 冬(12〜2月)の日射量 | 6月の日射量 |
|---|---|---|---|---|
| 0度(水平) | 3.37 | 88.5% | 1.81 | 5.19 |
| 10度 | 3.58 | 94.0% | 2.11 | 5.21 |
| 20度 | 3.73 | 97.9% | 2.37 | 5.13 |
| 30度 | 3.81 | 100.0% | 2.60 | 4.96 |
| 40度 | 3.81 | 100.0% | 2.78 | 4.68 |
| 50度 | 3.73 | 97.9% | 2.91 | 4.33 |
| 60度 | 3.58 | 94.0% | 2.99 | 3.90 |
| 70度 | 3.36 | 88.2% | 3.00 | 3.41 |
| 80度 | 3.08 | 80.8% | 2.96 | 2.88 |
| 90度(垂直) | 2.75 | 72.2% | 2.85 | 2.33 |
表:札幌・真南向きの傾斜角別の日射量(kWh/m²・日。「最大値に対する比率」は10度刻みの年平均値の最大3.81を100%として当社で計算)(出典:NEDO「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」データファイル)
この表から、次のことがわかります。
- 20〜50度の範囲なら、年間の日射量は最大値の97.9%以上で、差は約2%です。角度は、雪や風の条件に合わせて調整する余地があります。
- 冬の日射量は、70度前後までは角度を立てるほど増えます。札幌の冬(12〜2月)の最適傾斜角は67.4度で、30度のときより60度のときのほうが日射量は多くなります。10度刻みでは70度の3.00が最大で、80度は2.96、90度は2.85と少し下がります。
- 月ごとの最適傾斜角は、6月が6.6度、12月が68.7度、1月が70.6度と、季節で大きく動きます。
- 向きの影響もあります。札幌で傾斜30度の場合、年平均の日射量は真南向き3.81に対し、南東・南西向き(方位角45度)が3.64、真東・真西向き(方位角90度)が3.19です。
注意日射量は「発電量」ではありません
表の値は、斜面に届く日射量の平均です。実際の発電量は、パネルへの積雪、周囲の建物や木の影、パネルの温度、パワーコンディショナなどの損失で変わります。NEDOのデータベースに月平均気温が収録されているのも、太陽電池の発電効率が気温に影響されるためです。発電量の見込みは、設置場所の条件を入れた設計の段階で確認する必要があります。
3. 雪が積もると発電はほぼ止まる:北海道での観測と冬の特徴
パネルの上に雪が積もると、晴れていても光がパネルに届きにくくなります。産業技術総合研究所(産総研)などが北海道で行った観測の資料では、先行研究として次の内容が紹介されています。
- 雪が2cm程度でも日射の透過に大きく影響し、透過率は(波長にもよるが)10〜20%程度まで下がる
- 10cm程度になると、日射の条件によらず、ほとんど出力しない(透過率は10%未満)
- パネル上の積雪による発電電力量の損失は、海外の研究で年間の1〜12%と報告されている
この資料は、北海道池田町の「ワインの里池田ソーラー発電所」(出力1,500kW、ほくでんエコエナジー運営)での観測結果も報告しています。2022年2月20日、最大18cmの積雪があった日は、10時ごろにパネル下部から雪が落ち始め、10時30分ごろには上部の雪が全層雪崩のように滑り落ちました。発電が始まるとパネル裏面の温度が上がり、雪の下側が融けて落雪を促す可能性が示されています。
北海道では、雪が積もっている期間そのものが長いことも押さえておく必要があります。NEDOのデータベースには、地上の積雪深が10cm以上だった日の割合(積雪指数)が月別に収録されています。
| 地点 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
|---|---|---|---|---|
| 稚内 | 64% | 95% | 97% | 84% |
| 旭川 | 85% | 97% | 97% | 92% |
| 札幌 | 63% | 96% | 97% | 86% |
| 倶知安 | 88% | 98% | 100% | 100% |
| 網走 | 47% | 91% | 94% | 79% |
| 帯広 | 47% | 85% | 89% | 56% |
| 函館 | 28% | 70% | 79% | 33% |
| 釧路 | 11% | 47% | 59% | 27% |
| 苫小牧 | 12% | 39% | 50% | 15% |
| 室蘭 | 5% | 30% | 48% | 17% |
表:地上の積雪深が10cm以上だった日の割合(月の日数に対する割合。1981〜2009年の平均。積雪深を観測していない地点は周辺の観測値などから推定)(出典:NEDO「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」データファイル、NEDO「NEDO標準気象データベースの解説書」)
この値は地上の積雪の割合で、パネルの上に雪が残っている割合ではありません。それでも、札幌や旭川では1〜2月のほぼ毎日、地上に10cm以上の雪がある一方、釧路・苫小牧・室蘭は半分以下です。同じ北海道でも、冬の雪の影響は地域で大きく違うことがわかります。
北海道冬は「発電が減る時期」と「電気を多く使う時期」が重なる
道総研(北海道立総合研究機構)建築研究本部の研究資料は、積雪寒冷の北海道では、発電量が下がる冬期間や夜間に電気の使用量が増えるため、発電と使用のピークがずれ、エネルギーの自給率が他地域より小さくなることを課題として挙げています。自家消費型太陽光を検討するときは、年間の発電量だけでなく、冬の発電の少なさを前提に、月ごとの電気の使い方と重ねて見ることが大切です。
4. 積雪荷重の基本:JIS C 8955と「垂直積雪量」
積雪地では、パネルと架台が雪の重さに耐えられることが前提です。経済産業省の「発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈」(2025年10月1日施行の改正版で確認)第3条は、支持物の設計荷重として、JIS C 8955(2017)「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」に規定する荷重などを挙げています。
NEDOの「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン 2019年版」は、JIS C 8955:2017に沿って、積雪荷重を次の式で求める考え方を示しています。
積雪荷重 Sp(N) = 勾配係数 Cs × 雪の平均単位荷重 P × 地上垂直積雪量 Zs(m) × 積雪面積 As(m²) × 100
As はアレイ面の水平投影面積。最後の「100」は、Zs の単位をmからcmに直すための数値(NEDO 設計ガイドライン 2019年版 式(8))
雪の平均単位荷重 P
積雪1cmごと・1m²あたり、一般の地方で20N以上、多雪区域で30N以上とします。ガイドラインは、建築基準法施行令第86条第2項では多雪区域の単位荷重を特定行政庁が定めるとしているのに対し、JIS C 8955:2017では30N以上として与えていると説明しています。多雪区域とは、垂直積雪量が1m以上の区域、または積雪の初終間日数の平均値が30日以上の区域です(平成12年建設省告示第1455号に基づく)。
地上垂直積雪量 Zs
垂直積雪量は、設計者が自由に決める数値ではありません。建築基準法施行令第86条第3項により、特定行政庁が規則で定める数値です。ガイドラインも、特定行政庁が定める値がある場合はその値を用いるとしています。北海道庁は、道内市町村の垂直積雪量を公表しています。
| 市町村 | 垂直積雪量 | 市町村 | 垂直積雪量 |
|---|---|---|---|
| 札幌市 | 140cm(南区の一部は190cm) | 函館市 | 70cm |
| 旭川市 | 130cm(江丹別(春日・嵐山を除く)は230cm) | 室蘭市 | 70cm |
| 小樽市 | 150cm | 苫小牧市 | 70cm |
| 江別市 | 140cm | 釧路市 | 70cm(旧音別町90cm、旧阿寒町100cm) |
| 岩見沢市 | 160cm(旧栗沢町は130cm) | 帯広市 | 130cm |
| 倶知安町 | 230cm | 北見市 | 100cm |
| 千歳市 | 80cm | 網走市 | 100cm |
| 稚内市 | 130cm | 根室市 | 70cm |
表:北海道の主な市町村の垂直積雪量(建築基準法施行令第86条第3項に基づく値。詳細な区域は各市町村に確認が必要)(出典:北海道 建設部住宅局建築指導課「垂直積雪量」)
この値は「毎年の平均的な積雪深」ではなく、設計に使う積雪量です。
勾配係数 Cs:傾けても「原則は1.0」
建築基準法施行令第86条第4項は、建物の屋根について、雪止めがない場合に限り、勾配60度以下なら屋根形状係数 μb=√cos(1.5β) を掛けて積雪荷重を減らせること、60度を超える場合はゼロにできることを定めています。
NEDOの設計ガイドラインでは、太陽電池アレイの勾配係数 Cs は1.0が原則です。アレイ面の雪が確実に滑り落ちることを保証できる場合に限り、Cs=√cos(1.5θ)(θはアレイ面の傾斜角で60度以下)、60度を超える場合は Cs=0 とすることができます。ガイドラインは、雪止めがある場合や、アレイ面の高さが低く雪の滑落が期待できない場合は、勾配係数による低減を認めていません。
計算例(仮定):札幌市(垂直積雪量140cm・多雪区域)、雪の平均単位荷重30N/m²/cm
Cs=1.0 の場合:30 × 140 = 4,200N/m²(水平投影面積1m²あたり。約430kgの重さに相当)
滑落を保証でき、傾斜30度で低減する場合:Cs=√cos45° ≒ 0.84 → 約3,530N/m²
同じく傾斜40度の場合:Cs=√cos60° ≒ 0.71 → 約2,970N/m²
傾斜60度を超え、滑落を保証できる場合:Cs=0
計算例は式の使い方を示すための仮定の数字です。実際の設計では、局所的な地形、軒先の荷重、積雪後の降雨による割増しなども含めて、設計者が確認します。
また、アレイ面の上端から下端までの水平投影長さが10m以上で、傾斜角が15度以下の場合は、積雪後の降雨による割増荷重(平成19年国土交通省告示第594号)を考慮する必要があると、ガイドラインは示しています。
5. 角度と「高さ」はセットで決める:軒先の埋没と落雪
積雪地の地上設置では、パネルから滑り落ちた雪が、パネル下端(軒先)の前にたまります。この雪だまりが高くなって軒先が埋まると、パネル上の雪が滑り落ちなくなり、軒先に大きな力がかかります。
NEDOの設計ガイドライン(2019年版)の技術資料Bは、2016・2017年度に札幌市で行った、傾斜10度・20度・30度の試験体による屋外測定を紹介しています。試験体は冬の早い段階で軒先が埋まる仕様でした。実測した勾配係数は、傾斜10度・20度では√cos(1.5θ)の式を下回りましたが、30度では地上積雪深が小さいケースで式を上回りました。そのため、軒先が雪に埋まる場合は Cs=1.0 を原則とし、さらに軒先にかかる荷重を考えることとしています。勾配による低減が使えるのは、軒先が埋まらない十分な軒高を確保した場合です。
産総研・北海道科学大学などの研究でも、札幌・青森・新庄に傾斜10・20・30度のアレイ型の測定装置を置き(札幌の軒高は0.7m)、積雪の荷重を測っています。この研究は、軒側に大きな荷重がかかることを実測し、JIS C 8955 に設計指針はあるものの、これまでにも事故が起きていると指摘しています。
NEDOの技術資料Bには軒高の検討例もあり、アレイ面の長さ4.0m、地上垂直積雪量1.0mの場合、軒高を2.0m程度にする必要があるとしています(一定の雪の密度を仮定したモデルによる計算)。
| 項目 | 技術基準の解釈 第9条の「多雪仕様」の条件 |
|---|---|
| 対象 | 地上に設置する支持物で、条件をすべて満たす標準仕様(満たせば第3条〜第8条によらないことができる) |
| 垂直積雪量 | 180cm以下(多雪区域) |
| 雪の平均単位重量 | 30N/m²/cm |
| アレイ面の傾斜角 | 30度 |
| アレイ面の最低高さ | GL+1,900mm |
| 設計用基準風速 | 30m/s以下 |
| モジュール | 2,000mm×1,000mm、28kg/枚以下、4段2列(計8枚) |
表:地上設置の標準仕様のうち多雪仕様の主な条件(一般仕様は傾斜20度・最低高さGL+1,100mm・垂直積雪量50cm以下)(出典:経済産業省「発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈」第9条)
標準仕様の多雪仕様でも、パネルの最低高さは地面から1.9mです。積雪地では、角度だけでなく、パネル下端を雪より高く上げる設計が前提になっていることがわかります。
NEDOの設計ガイドラインは、角度と高さのトレードオフも示しています。
- 多積雪地域では、傾斜角を大きくすると積雪荷重を軽くできるが、アレイ前部の落雪対策として架台の脚を高くする検討が必要になり、架台の費用に影響する
- 傾斜角を大きくするとアレイが高くなり、前後のアレイの間隔(離隔距離)を広くとる必要がある
- 風圧荷重が大きい地区では、20度以下の傾斜角を採用する例が多い(その場合も年間発電量への影響を確認する)
- 積雪地域では融雪剤の塩分も、架台の腐食の要因(飛来塩分)として扱っている
第1章・第2章のとおり、20〜50度の範囲なら年間の日射量の差は小さく、冬の日射量は70度前後までは角度を立てるほど増えます。雪が滑り落ちやすい角度と、滑り落ちた雪で軒先が埋まらない高さ、風圧荷重、敷地の広さを、設計の段階で一緒に比べることが現実的です。
6. 落雪の安全対策:人・車・隣地を守る
パネルの表面はガラスで、雪が滑りやすくなっています。太陽光発電協会(JPEA)は2015年12月22日の注意喚起で、次の点を挙げています。
- 建物の周りや隣家との間に十分なスペースがない都市部の住宅などでは、落ちた雪が周りの物や人に当たるおそれがあり、積雪地では落雪事故を防ぐ処置が必要
- 雪止め工事などの対策をしていても、その日の気象条件によっては雪が滑り落ちてくる可能性がある
- 一度滑り始めると、想像以上に遠くまで大量に飛んでくる可能性がある
- 大雪や雪が融け始めたときは、屋根の下に車を止めたり、軒下に立ち入ったりしない
- パネルの上での雪下ろしは、足元が滑りやすく、パネルを破損するおそれがあるため行わない
また旭川市は、屋根からの落雪事故の防止を呼びかける資料(2025年12月)で、気温がマイナス3℃からプラス3℃のときは落雪に注意すること、雪止めの損傷を確認すること、除雪作業は2人以上で行うこと、危険な場所はロープなどで立ち入りを防ぐことなどを挙げています。
法人の敷地では、次のような場所の上や前にパネルの「雪の落ち先」が来ないかを、配置の段階で確認します。
- 出入口、通路、避難経路
- 駐車場、荷さばき場
- 隣地や道路
- キュービクル・室外機など、雪がたまると困る設備
既存の建物の屋根に載せる場合は、パネルと架台の重さに加えて、パネルの上と周りにたまる雪の重さを建物が支えられるかを、建物側でも確認する必要があります。雪止めを付けるかどうかで、雪が落ちる危険と屋根にかかる荷重の両方が変わる点にも注意が必要です。
7. 垂直設置・両面受光パネルという選択肢
積雪地で雪の影響を減らす方法として、パネルを垂直に立てる設置や、表と裏の両面で発電する両面受光パネルも使われ始めています。公的な実証の例を紹介します。
北海道企業局の垂直型(両面発電)の実証
北海道企業局は、2025年2月に自家消費型の垂直型太陽光発電設備を夕張川発電管理事務所に実証導入しました(最大出力は6枚合計2.76kW)。両面で発電できる製品を、東西から朝日と夕日を取り入れる角度で設置しています。企業局は、利点と課題を次のように説明しています。
- 利点:一般的な傾斜型に比べてパネルが雪に覆われにくく、積雪地域でも安定した発電が可能。設置スペースが少ない場所でも設置できる
- 課題:強風の影響を受けやすいため、強風に耐える構造が必要で、導入コストが割高
道総研の壁面設置の実測
道総研 建築研究本部の研究(令和5〜7年度)は、南幌町の住宅の壁面太陽光(2.44kW)と、旭川市の壁面太陽光(1.29kW)・蓄電池(7.04kWh)を実測し、壁面に取り付けたパネルは積雪期でも安定的な発電が確認できたとしています。住宅での実測ですが、雪が積もりにくい垂直の面を使う考え方は、事業所の壁面にも参考になります。
データで見る垂直設置の特徴
第2章の札幌のデータでは、真南向きの垂直面の日射量は、年平均で最大値の72.2%ですが、冬(12〜2月)は2.85kWh/m²・日で、傾斜30度の2.60を上回ります。ただし、このデータは片面に届く日射量で、両面受光パネルの裏面の発電は含まれていません。
産総研の資料は、海外の屋外観測(Hayibo ほか、2022年)として、積雪による損失が片面パネルで冬期平均33%・年間16%、両面パネルで冬期平均16%・年間2%だったという報告を紹介しています。気候や設置条件が違うため、北海道の事業所でそのまま同じ結果になるとは限りません。
駐車場の上にパネルを設置するソーラーカーポートの補助金については、ソーラーカーポート補助金 令和8年度公募|北海道企業の導入ガイドで整理しています。法人向けの自家消費型太陽光の工事の流れは、北海道の法人向け太陽光発電工事のページにまとめています。
8. よくある失敗・注意点
失敗例積雪地で起こりやすい判断ミス
・「北海道は40〜45度」と一律に決める:最適傾斜角は地点で約27〜43度と違います。設置場所に近い地点のデータを確認します。
・角度を立てれば雪は必ず落ちると考える:軒先が雪に埋まると、雪は滑り落ちなくなります。NEDOのガイドラインでも、軒先が埋まる場合の勾配係数は1.0が原則です。
・パネル下端の高さが足りない:技術基準の解釈の多雪仕様でも、最低高さはGL+1,900mmです。滑り落ちた雪のたまり方まで考えて高さを決めます。
・垂直積雪量を「平均の積雪深」で代用する:設計に使うのは、特定行政庁が定めた垂直積雪量です。
・雪の落ち先を考えずに配置する:出入口・通路・駐車場・隣地の上に雪が落ちる配置は避けます。
・パネルの上に乗って雪下ろしをする:JPEAは、滑りやすくパネルを破損するおそれがあるため、行わないよう呼びかけています。
9. よくある質問(FAQ)
A. NEDOの日射量データベース(MONSOLA-11)では、真南向きで年間の日射量が最大になる角度は、札幌34.8度、旭川33.6度、函館35.0度、帯広42.9度、釧路42.7度など、地点によって約27〜43度です。札幌では20〜50度の範囲なら年間の日射量の差は約2%のため、積雪荷重・落雪・風圧・敷地の広さとあわせて決めます。
A. 産総研の資料が紹介する先行研究では、雪が2cm程度でも光の透過率は10〜20%程度まで下がり、10cm程度になるとほとんど出力しないとされています。北海道池田町のメガソーラーでの観測では、積雪後の午前10時ごろにパネル下部から、10時30分ごろに上部から雪が滑り落ちる様子が記録されています。発電によってパネル裏面の温度が上がり、落雪を促す可能性も示されています(裏面温度は、観測した発電所とは別の場所で計測したデータです)。
A. NEDOの設計ガイドラインでは、勾配係数は1.0が原則で、雪の滑落を確実に保証できる場合に限って、傾斜角に応じた低減(60度以下は√cos(1.5θ)、60度超は0)ができます。雪止めがある場合や、パネルの高さが低く軒先が雪に埋まる場合は、低減できません。
A. 北海道庁が公表している値では、札幌市は140cm(南区の一部は190cm)です。旭川市は130cm(江丹別(春日・嵐山を除く)は230cm)、帯広市は130cm、函館市・苫小牧市・釧路市は70cmなどです。詳しい区域は各市町村に確認が必要です。
A. 太陽光発電協会(JPEA)は、パネルの上での雪下ろしは足元が滑りやすく、パネルを破損するおそれがあるため行わないよう呼びかけています。雪が滑り落ちる先に人や車が入らないようにすることが先決です。
A. 北海道企業局は、垂直型はパネルが雪に覆われにくく積雪地域でも安定した発電が可能な一方、強風に耐える構造が必要で導入コストが割高になると説明しています。冬の雪の多さ、風の強さ、設置スペースによって向き不向きが分かれます。
10. まとめ
- 北海道の最適傾斜角(真南向き・年間)は、NEDOのデータで約27〜43度。札幌34.8度、帯広42.9度など地点で違う
- 札幌では20〜50度なら年間の日射量の差は約2%。冬の日射量は70度前後までは角度を立てるほど増える
- 雪が10cm程度積もるとほとんど発電しない。札幌・旭川では1〜2月のほぼ毎日、地上に10cm以上の雪がある
- 積雪荷重は JIS C 8955 の考え方で、特定行政庁が定めた垂直積雪量を使う。勾配による低減は雪の滑落を保証できる場合に限られる
- 積雪地では、角度とあわせて、軒先が雪に埋まらない高さと、雪の落ち先の安全を設計の段階で確認する
- 垂直設置・両面受光は雪に強い一方、風への対策とコストが課題になる
記事情報
公開日:2024年8月23日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・NEDO「日射に関するデータベース」(NEDO)※MONSOLA-11データファイルを当社で集計
・NEDO「NEDO標準気象データベースの解説書」(NEDO)
・NEDO「NEDO日射量データベースの解説書 WEB版 Ver3.0」2021年4月(NEDO)
・NEDO「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン 2019年版」2019年4月26日(NEDO)
・NEDO「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン 2019年版 技術資料」(NEDO)
・経済産業省「発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈」(経済産業省)
・建築基準法施行令 第86条(e-Gov法令検索)
・北海道 建設部住宅局建築指導課「垂直積雪量」(北海道)
・産業技術総合研究所「北海道における太陽光発電システム上の積雪モニタリング」AIST太陽光発電研究成果報告2022(産総研)
・産業技術総合研究所ほか「太陽光発電の積雪荷重設計に関する研究」(産総研)
・道総研 建築研究本部「北海道における太陽光発電による住宅のエネルギー自給率向上に関する研究」(道総研)
・北海道企業局「垂直型太陽光発電設備の導入について」(北海道)
・太陽光発電協会「太陽電池パネルからの落雪事故防止について」2015年12月22日(十日町市掲載)
・旭川市 建築指導課「屋根からの落雪事故防止にご協力を!」(旭川市)
※2026年10月27日時点の情報です。日射量はMONSOLA-11(1981〜2009年の平均値)によるもので、発電量を示すものではありません。積雪荷重・架台の設計は、設置場所の条件にもとづき設計者が確認してください。
