レドックスフロー電池とは?仕組みとリチウムイオン電池との違い、北海道の実例

レドックスフロー電池は、電気を「電極」ではなく「電解液」にためる蓄電池です。バナジウムなどを溶かした液をタンクに入れ、ポンプで電池の本体(セルスタック)に流しながら充電・放電します。名前の「レドックス」は酸化(Oxidation)と還元(Reduction)、「フロー」は液が流れることを表しています。

リチウムイオン電池との一番の違いは、出力(kW)と容量(kWh)を別々に決められることです。出力はセルスタックの台数、容量は電解液の量で決まります。電解液は燃えにくく、充放電を繰り返しても劣化しにくいとメーカーは説明しています。その代わり、同じ容量なら設備が大きくなり、主な用途は電力系統や工場向けの大型・長時間の蓄電です。

北海道は、この電池の大型設備が実際に動いている地域です。安平町の南早来(みなみはやきた)変電所では、2015年から実証設備が、2022年から北海道電力ネットワークの系統側蓄電池が稼働しています。この記事では、仕組み、リチウムイオン電池との違い、北海道の実例、法人が導入を検討するときの位置づけを、メーカー・電力会社・国の資料をもとに整理します。

この記事でわかること
・レドックスフロー電池の仕組み(電解液・セルスタック・タンク・ポンプの役割)
・リチウムイオン電池との違いと、デメリット(設置面積・重量・費用)
・北海道の実例:南早来変電所の3つの設備と、苫前町での風力発電の実証
・法人が検討するときの位置づけ(系統用と産業用の違い、規模感、確認すること)
・「レッドクスフロー電池」など表記ゆれと、フロー電池の種類

更新履歴

  • 2026年10月27日:全面改訂。タイトルの表記を「レドックスフロー電池」に修正。仕組み・リチウムイオン電池との比較表・北海道の実例(南早来変電所の3件目の採用を含む)・法人の検討ポイントを、メーカー・電力会社・国の資料で確認して書き直し
  • 2025年1月16日:初版公開

1. レドックスフロー電池とは?ひとことで言うと「液にためる蓄電池」

レドックスフロー電池(Redox Flow Battery。RF電池、RFBとも書きます)は、イオンの酸化還元反応を利用して充電・放電する二次電池(くり返し使える電池)です。住友電気工業(住友電工)は、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応で充放電を行う蓄電池と説明しています。

ふつうの電池は、電極の材料そのものに電気をためます。レドックスフロー電池は、電気をためる物質(活物質)が液に溶けていて、その液をタンクに保管します。電池の本体は、液が流れてきたときに反応させる「反応の場」です。このように液を流して使う方式を「フロー型」と呼びます。

歴史:1970年代に原理が提案され、日本で実用化

科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センターの報告書によると、レドックスフロー電池の原理は1974年に米国NASAの研究者が提唱し、国内でも同じ時期に研究が始まりました。初期は鉄とクロムを使う方式が中心で、1985年ごろに正極・負極ともバナジウムを使う方式が発明されて性能が大きく向上しました。2000年ごろに住友電工がバナジウム系を実用化しています。

表記ゆれについて

検索では「レッドクスフロー電池」「レッドフロー電池」「レドクスフロー電池」と書かれることもありますが、正しくはレドックスフロー電池です。「レドックス(redox)」は還元(reduction)と酸化(oxidation)を合わせた言葉です。

2. 仕組み:電解液・セルスタック・タンク・ポンプの役割

レドックスフロー電池は、大きく分けて次の4つでできています。

構成 役割
電解液(正極用・負極用) 電気をためる液。住友電工の製品は硫酸バナジウムを使います。正極用と負極用の2種類があります
タンク 電解液をためておく容器。液の量が、ためられる電気の量(容量・kWh)を決めます
セルスタック 電極と隔膜(膜)を重ねた電池の本体。ここで液が反応して電気が出入りします。台数が出力(kW)を決めます
ポンプ・配管・制御装置 タンクとセルスタックの間で液を循環させ、充電・放電を制御します。系統につなぐにはPCS(直流と交流を変換する装置)も必要です

表:レドックスフロー電池の主な構成(住友電工「レドックスフロー電池の特長」、SEIテクニカルレビュー第182号をもとに作成)

充電と放電で何が起きているか

住友電工の技術論文(SEIテクニカルレビュー第182号、2013年1月)によると、バナジウム系では次の反応が起きます。

1
充電:外から電気を送ると、正極側の液ではバナジウムイオンが4価から5価に、負極側の液では3価から2価に変わります。液そのものが「電気をためた状態」になります。
▼
2
保管:充電された液はタンクに戻ってためられます。
▼
3
放電:液を再びセルスタックに流すと逆向きの反応が起き、電気を取り出せます。正極と負極の間は、水素イオンが膜を通って移動します。

図:バナジウム系レドックスフロー電池の充放電の流れ(SEIテクニカルレビュー第182号をもとに作成)

1つのセルの電圧は約1.4Vと低いため、セルを直列に重ねたセルスタックにして実用的な電圧を得ます。

出力(kW)= セルスタックの台数で決まる / 容量(kWh)= 電解液の量で決まる

出力を上げたいときはセルスタックを増やし、長い時間放電したいときはタンク(電解液)を増やします。

仕組みから生まれる特長

  • 充電の残量を正確に把握しやすい:すべてのセルスタックに同じタンクから液を送るため、充電状態がそろいます。住友電工は、モニター用のセルで電圧を測って充電状態をリアルタイムに求められるとしています。
  • 応答が速い:同社の論文では、指令に対して出力の63%に達するまで57ミリ秒、90%に達するまで170ミリ秒という測定例が示されています。
  • 劣化しにくい:反応に固体の変化を伴わないため、深い放電や不規則な充放電でも寿命が損なわれにくいと説明されています。

3. リチウムイオン電池との違い(メリット・デメリット)

リチウムイオン電池とレドックスフロー電池は、どちらも定置用(建物や変電所に置く用途)の蓄電池として使われています。ただし、得意な場面が違います。

比べる点 レドックスフロー電池 リチウムイオン電池
電気をためる場所 タンクの電解液 電池(セル)の中の電極
電解液 常温で動く水溶液系。住友電工の製品は不燃性 可燃性の有機溶媒を使うため、安全対策が必要
エネルギー密度(大きさあたりにためられる量) 低い。同じ容量なら設備が大きくなる 高い
寿命の考え方 充放電サイクル数は無制限、電解液は劣化しないとメーカーが説明。設計寿命20年(新型V40シリーズは最長30年の運用を想定) 毎日の充放電でも10年以上の寿命が得られているとされる。蓄電用途では15〜20年の寿命が求められている
出力と容量 別々に設計できる(kW=セルスタック、kWh=電解液) 電池モジュールの組み合わせで構成する
得意な使い方 長時間の充放電。メーカーは長時間(6時間以上)の仕様に強みがあるとしている 蓄電池の市場の大部分を占める(メーカーの寄稿記事による)
北海道の大型の例 南早来変電所(安平町):1.7万kW×3時間 ほか 北豊富変電所(豊富町):24万kW・72万kWh

表:レドックスフロー電池とリチウムイオン電池の比較(JST研究開発戦略センター「研究開発の俯瞰報告書 環境・エネルギー分野(2021年)」、住友電工の公式サイト・寄稿記事、SEIテクニカルレビュー第182号、GSユアサ発表資料をもとに作成)

メリット

  • 燃えにくい:住友電工は、電解液が不燃性で、正極と負極の液が混ざっても発火せず、ほかの部材も難燃材料を使っているとしています。同社は、消防法上の危険物に当たらず、危険物設置許可や危険物取扱者の常駐は不要と説明しています。
  • 長く使える:充放電回数による劣化がなく、途中で電池を交換する必要がないとしています。
  • 長時間化しやすい:電解液を増やせば放電時間を延ばせます。メーカーは、長時間の容量ほどコスト面の利点が大きいとしています。
  • 再利用しやすい:劣化しない電解液はリユース・リサイクルが可能で、機器材料も適切に分別すれば約99%をリサイクルできるとしています。

デメリット

  • 大きくて重い:エネルギー密度が低いため、同じ容量のリチウムイオン電池より設置面積が大きくなります。住友電工の現行製品(V40シリーズ)は、モジュール1台の概算質量が140〜210トンです。
  • 小さな規模には向きにくい:現行の製品ラインナップは2MW(2,000kW)と1MWのシステムで、家庭や小さな店舗に置くような製品ではありません。
  • 費用:公式サイトでは標準的な価格は公表されていません。2019年に始まった北海道電力の系統側蓄電池の入札を振り返り、住友電工の北海道支店長は同社の広報誌で「一番の問題は、レドックスフロー電池のコスト」と述べています。
  • バナジウムの供給先が偏っている:米国地質調査所(USGS)の推計では、2025年の世界のバナジウム鉱山生産量 約11万トンのうち、中国が約8.2万トン、ロシアが約2.1万トンを占めます。
  • 補機の電力が必要:液を循環させるポンプなどの補機を動かす電力が必要です。住友電工の論文(SEIテクニカルレビュー第182号)でも、苫前町の実証設備で稼働させる電池のまとまり(バンク)の数を変え、補機の動力損失を減らす設計が紹介されています。具体的な効率は機種・運転条件で異なるため、メーカーの仕様で確認が必要です。

4. 北海道の実例:南早来変電所と苫前町

北海道には、発表時点で世界最大級とされたレドックスフロー電池の設備があります。場所は、勇払郡安平町にある北海道電力ネットワークの南早来変電所です。

設備 出力×時間 容量 稼働 目的
① 大型蓄電システムの実証(経済産業省「平成24年度大型蓄電システム緊急実証事業」) 1.5万kW×4時間 6万kWh 2015年12月〜(実証は2018年度まで。実証後も稼働) 風力・太陽光の出力変動を調整する性能の実証と制御技術の開発
② 系統側蓄電池(風力発電募集プロセスⅠ期) 1.7万kW×3時間 5.1万kWh 2022年4月1日〜 風力発電を系統につなぐための系統側蓄電池(風力の出力変動の抑制など)
③ 系統側蓄電池(Ⅰ期の残容量の募集分) 1.1万kW×3時間 3.3万kWh 2029年5月末 竣工予定 風力発電9.7万kW(2件)の連系に対応

表:南早来変電所のレドックスフロー電池(住友電工プレスリリース 2015年12月25日・2022年4月1日・2026年4月21日、北海道電力ネットワーク公表資料をもとに作成)

① 2015年:北海道電力と住友電工の実証

北海道電力と住友電工は、経済産業省の「平成24年度大型蓄電システム緊急実証事業」に採択され、2015年12月に南早来変電所で定格出力1.5万kW・容量6万kWhの設備を稼働させました。発表時点で、レドックスフロー電池として世界最大級の蓄電容量とされています。実証では、蓄電池を周波数調整用の電源とみなした制御、再エネが増えたときの余剰電力(下げ代)対策の運転、電池の性能評価に取り組みました。

② 2022年:系統側蓄電池として本格運用

北海道電力ネットワークは、系統側蓄電池を自社で設置し、その費用を風力発電事業者と共同で負担することを前提に風力発電を募集しました(2017年3月28日に募集プロセス開始)。Ⅰ期は募集容量60万kWに対して最終的に15件・16.2万kWの連系が決まり、この風力のための蓄電池として、1.7万kW×3時間(5.1万kWh)のレドックスフロー電池が2022年4月1日に運転を始めました。住友電工は、一般送配電事業者が系統側の運用を目的にレドックスフロー電池を設置するのは国内初としています。

③ 2026年:3件目の採用

Ⅰ期の残りの容量で2021年7月に再募集が行われ、2023年10月に2件・9.7万kWの風力の連系が決まりました。これに対応する蓄電池として、2026年4月に住友電工のレドックスフロー電池(1.1万kW×3時間、3.3万kWh)の採用が発表されています。2029年5月末の竣工を目指し、竣工後20年間(2049年まで)の保守・運用・撤去を含む契約とされています。なお、北海道電力ネットワークは、国の審議会での議論を踏まえてⅡ期の募集を中止しています。

3件の公表値を単純に合計すると、出力4.3万kW・容量14.4万kWhです。ただし、これは①の実証設備が③の竣工(2029年5月末予定)後も稼働を続けている場合の値です(推測。①の2029年以降の運用は公表されていません)。

北海道 なぜ北海道で大型蓄電池が必要なのか

北海道電力ネットワークの資料(2024年1月)によると、北海道の電力需要は平均で約340万kW(2022年度実績)と、東日本・西日本の系統より規模が小さく、本州とは直流の連系設備(合計90万kW)でつながっています。風力・太陽光が増えると、出力の変動を吸収する「調整力」が多く必要になります。同社は、蓄電池が充放電によって周波数のバランスを保つ調整力になるとしています。

南早来変電所の建設(2020年7月着工、2022年3月31日竣工)では、冬季の気温がマイナス25℃になり、観測史上最大の積雪や暴風雨にも見舞われたと、住友電工の広報誌で紹介されています。

さらに前:苫前町の風力発電所での実証

北海道での取り組みは南早来より前からあります。NEDOの「風力発電電力系統安定化等技術開発」事業として、電源開発の苫前ウィンビラ発電所(苫前町、風車19基・出力30,600kW)に6,000kWhのレドックスフロー電池を併設し、2005年1月から2008年2月まで風力の出力を平らにする実証が行われました。

リチウムイオン電池の大型設備もある

道内では、リチウムイオン電池の大型設備も動いています。GSユアサは、北海道北部風力送電の北豊富変電所(豊富町)に出力24万kW・容量72万kWhの産業用リチウムイオン電池を納入し、2023年3月に稼働しました。風力の出力変動を抑える目的は同じで、方式の選び方は事業ごとに異なります。

5. 系統用と産業用:法人にとっての位置づけ

法人がレドックスフロー電池を検討する場面は、大きく「系統用」と「産業用」に分かれます。

区分 系統用蓄電池(蓄電所) 産業用(需要家の敷地内)
つなぐ先 送配電網に直接つなぐ 自社の受電設備の内側につなぐ
主な目的 電力市場などで充放電して収益を得る事業。再エネの変動吸収に役立つ 太陽光の余剰をためて夜や需要の多い時間に使う、ピークカット、停電時の電源
国内のレドックスフロー電池の例 経済産業省の令和7年度系統用蓄電池の補助事業で3件(2MW・3〜6時間)が採択 日本ピーエス(福井県敦賀市):250kW×3時間(750kWh)、太陽光と連動、2023年1月稼働
制度面 1万kW以上の系統用蓄電池からの放電事業は電気事業法の「発電事業」(2022年改正、2023年4月1日施行) 自社設備として保安・受電設備の扱いを電気主任技術者と確認

表:系統用と産業用の違い(資源エネルギー庁 審議会資料 2024年5月、住友電工プレスリリース 2022年10月4日・2026年2月10日、住友電工「導入事例」、衆議院「法律案等概要」(第208回国会閣法第43号)をもとに作成)

系統用:国の支援と市場の制度がある

資源エネルギー庁の資料(2024年5月)によると、2022年の電気事業法の改正で、1万kW以上の系統用蓄電池からの放電事業は「発電事業」と位置づけられました。この改正を含む法律は、一部の規定を除き2023年4月1日に施行されています(衆議院の法律案等概要による)。国は2021年度から系統用蓄電池の導入を補助しており、2023年度に始まった長期脱炭素電源オークションでも系統用蓄電池が支援の対象です。

住友電工は2026年2月、経済産業省・資源エネルギー庁の「令和7年度 再生可能エネルギー導入拡大・系統蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金(系統用蓄電池・水電解装置導入支援事業)」で、同社のレドックスフロー電池を使う3件(福島県浪江町・兵庫県太子町・鳥取県倉吉市、いずれも2MW)が採択されたと発表しています。

道内では、関西電力などが札幌市北区新琴似町で合計100MW(10万kW)・351MWhの蓄電所を開発し、2028年4月の商業運転開始を予定しています。ただし、発表資料に電池の種類は書かれていません。

産業用:工場で太陽光と組み合わせた例

日本ピーエスの例では、新工場に導入を検討していた太陽光発電と連動させ、余剰時に充電して需要の多い時間帯に放電します。敷地内の再エネ比率を50%に引き上げる見込みで、ピークカットによる電気代の削減や、停電時に重要設備へ給電する自立電源としての活用も目的とされています。この設備は、環境省の令和3年度の補助事業(ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業)に採択されました。

また、住友電工は自社の横浜製作所で、太陽光発電と1MW×5時間のレドックスフロー電池を組み合わせた実証を2012年7月から行い、夏の昼間の需要ピーク時にコージェネと組み合わせて受電電力を40%削減したと報告しています。

規模感の目安

現行の製品は2MW×4時間(8,000kWh)・6時間(12,000kWh)・8時間(16,000kWh)などの構成で、放電時間は10時間以上にも拡張できるとされています。電解液タンクのコンテナを下に、電池盤のコンテナを上に二段で積むこともできる構成です。高圧で受電する事業所でも、契約電力が数百kW以下のところでは、MW級の設備は自社の需要に対して大きすぎる場合があります(推測)。過去には250kWの納入例もあるため、規模はメーカーに確認してください。

6. 導入を検討するときの進め方と注意点

レドックスフロー電池に限らず、蓄電池は「何のために、何kWを、何時間」使うかで選ぶ方式が変わります。検討は次の順で進めると整理しやすくなります。

1
目的を決める:太陽光の自家消費を増やす、ピークカット、停電時の電源、蓄電所事業のどれか(複数可)。
▼
2
必要なkWと時間を出す:電力会社などから30分ごとの使用量データを取り寄せ、ためたい時間帯と量を確認します。放電時間が長いほどレドックスフロー電池の特長が生きます。
▼
3
置き場所を確認する:面積、重量(地盤・基礎)、搬入経路、積雪への対応。
▼
4
電気のつなぎ方と手続きを確認する:産業用なら受電設備との接続や逆潮流の扱い、系統用なら北海道電力ネットワークへの接続検討。
▼
5
方式を比べて見積もりを取る:リチウムイオン電池など他の方式と、初期費用・寿命・保守費・設置面積を同じ条件で比べます。補助金の対象かどうかも公募要領で確認します。
注意 よくある誤解

「タンクを足せば簡単に容量が増える」:原理上はそうですが、電解液は重く、置き場所と基礎が必要です。出力(kW)を上げたい場合はセルスタックの追加が必要です。

「危険物に当たらないから手続きは不要」:住友電工は消防法上の危険物に当たらないと説明していますが、電気設備としての保安や、系統につなぐ手続きは別に必要です。所轄の消防や電気主任技術者にも確認してください。

「長寿命だから費用も安い」:寿命が長いことと初期費用は別の話です。標準価格は公表されていないため、使う年数と保守費を含めた見積もりで比べる必要があります。

系統用蓄電池の全体像は「系統用蓄電池の完全ガイド」、事業所向けの蓄電池の補助金は「業務産業用蓄電池の補助金」、再エネの出力制御は「出力制御とは」で解説しています。

7. 研究開発の動き:バナジウム以外の電池

電解液に使う物質は、バナジウムだけではありません。JST研究開発戦略センターの報告書では、チタンと鉄、チタンとマンガンなど安価な金属イオンを使う方式や、有機化合物(アントラキノン類など)を使う方式の研究が進んでいると紹介されています。経済性の面から、高性能化と低コスト化が求められているとされています。

レドックスフロー電池は、2020年に国際標準が策定されています。製品としても、住友電工は2025年9月に新型の国産「V40シリーズ」を発表し、2026年1月から受注を始める予定としました。2026年3月の発表では、すでに受注を開始しており、電池の出力を従来比で約30%高め、電解液の使用量を減らしたと説明しています。最長30年の運用を想定しています。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. レドックスフロー電池とは、簡単に言うと何ですか?

A. 電気を電極ではなく電解液にためる蓄電池です。バナジウムなどを溶かした液をタンクにため、ポンプで電池の本体に流して充電・放電します。出力はセルスタックの台数、容量は電解液の量で決まり、それぞれ別々に設計できます。

Q2. 「レッドクスフロー電池」「レッドフロー電池」とは違うものですか?

A. 検索や文章ではこうした表記も見かけますが、正しい表記は「レドックスフロー電池」です。レドックスは還元(reduction)と酸化(oxidation)を合わせた言葉です。RF電池、RFBと略されることもあります。

Q3. フロー電池とは何ですか?レドックスフロー電池との関係は?

A. 電気をためる物質を溶かした電解液をタンクに保管し、流しながら充放電する方式の電池です。レドックスフロー電池はその代表的な方式で、バナジウム系のほか、鉄とクロム、チタン系、有機化合物を使う方式などが研究されています。

Q4. レドックスフロー電池のデメリットは何ですか?

A. エネルギー密度が低いため、同じ容量のリチウムイオン電池より設備が大きく重くなります。現行の製品はMW級で、小さな事業所には向きにくい規模です。標準価格は公表されておらず、住友電工の北海道支店長も、南早来の系統側蓄電池の入札を振り返ってコストが一番の問題だったと同社の広報誌で述べています。バナジウムの生産が中国などに偏っている点も指摘されます。

Q5. 北海道ではどこで使われていますか?

A. 安平町の南早来変電所で、2015年稼働の実証設備(1.5万kW・6万kWh)と、2022年4月稼働の北海道電力ネットワークの系統側蓄電池(1.7万kW×3時間)が動いています。さらに1.1万kW×3時間の設備が2029年5月末の竣工予定です。過去には苫前町の風力発電所でも実証が行われました。

Q6. 自社の工場に導入できますか?費用はいくらですか?

A. 工場の敷地内に置いて太陽光と組み合わせた例(福井県の日本ピーエス、250kW×3時間)はあります。ただし現行製品はMW級で、重量・面積も大きいため、需要の規模と置き場所の確認が先です。費用の公表値はないため、リチウムイオン電池など他の方式と同じ条件で見積もりを取って比べてください。

9. まとめ

  • レドックスフロー電池は、電解液に電気をためる蓄電池で、出力(セルスタック)と容量(電解液の量)を別々に決められます。
  • メーカーは、不燃性の電解液、充放電回数による劣化がないこと、長時間の放電に強いことを特長に挙げています。
  • デメリットは、エネルギー密度が低く大きく重いこと、価格が公表されていないこと、バナジウムの生産地が偏っていることです。
  • 北海道では、南早来変電所(安平町)で2015年から実証設備、2022年から系統側蓄電池が稼働し、3件目が2029年5月末の竣工予定です。
  • 法人にとっては、系統用蓄電池(蓄電所事業)か、太陽光と組み合わせる産業用かで位置づけが変わります。必要なkWと時間、置き場所を確かめたうえで、他の方式と比べて検討するのが基本です。

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記事情報
公開日:2025年1月16日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・住友電気工業「レドックスフロー電池」(住友電工)
・住友電気工業「レドックスフロー電池の特長」(住友電工)
・住友電気工業「製品ラインナップ」(住友電工)
・住友電気工業「導入事例」(住友電工)
・北海道電力・住友電気工業 プレスリリース(2015年12月25日)(住友電工)
・住友電気工業 プレスリリース(2022年4月1日)(住友電工)
・住友電気工業 プレスリリース(2022年10月4日)(住友電工)
・住友電気工業 プレスリリース(2025年9月11日)(住友電工)
・住友電気工業 プレスリリース(2026年2月10日)(住友電工)
・住友電気工業 プレスリリース(2026年3月16日)(住友電工)
・住友電気工業 プレスリリース(2026年4月21日)(住友電工)
・住友電気工業 広報誌「id」Vol.19「電力安定供給のための系統側蓄電池」(住友電工)
・住友電気工業「再生可能エネルギー安定化用レドックスフロー電池」SEIテクニカルレビュー第182号(2013年1月)(PDF)
・住友電気工業 寄稿記事(2025年5月号)(PDF)
・北海道電力ネットワーク「『系統側蓄電池による風力発電募集プロセス(Ⅰ期)』における系統側蓄電池の運転開始について」(北海道電力ネットワーク)
・北海道電力ネットワーク「系統側蓄電池の活用による風力発電の連系拡大」(北海道電力ネットワーク)
・北海道電力ネットワーク「系統用蓄電池導入拡大について」(2024年1月)(PDF)
・資源エネルギー庁 審議会資料「資料5」(2024年5月29日)(PDF)
・衆議院「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)概要」(衆議院)
・科学技術振興機構 研究開発戦略センター「研究開発の俯瞰報告書 環境・エネルギー分野(2021年)」(2021年3月)2.1.9 電気エネルギー利用(電力貯蔵)(JST)
・GSユアサ「GSユアサが納入した世界最大規模の蓄電池設備が稼働開始」(2023年6月15日)(GSユアサ)
・関西電力 プレスリリース(2025年3月25日)(PDF)
・環境省「新苫前ウィンビラ発電所(仮称)に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について」(環境省)
・U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2026: Vanadium」(PDF)
※2026年10月27日時点の情報です。設備の仕様・稼働予定は各社の発表時点のものです。費用は公表値がないため記載していません。導入の可否や条件はメーカー・電力会社・各補助事業の公募要領でご確認ください。