出力制御とは、電気が余りそうなときに、送配電会社(一般送配電事業者)が太陽光や風力などの発電を一時的に抑えてもらう措置です。電気は、使う量(需要)と作る量(供給)を一致させ続ける必要があり、バランスが崩れると系統につながる発電所の運転が不安定になって、広域停電のおそれがあります。北海道では、需要の少ない春や秋の日中に実施されています。
北海道エリアで出力制御を実施した日数は、2022年度が5日、2023年度と2024年度が各2日、2025年度が18日と増え、2026年度は10月24日時点で52日になりました(電力広域的運営推進機関と北海道電力ネットワークの公表値。日数の数え方は第3章に記載)。収入への影響は、発電所に適用される「旧ルール」「新ルール」「無制限無補償ルール」と、「オンライン制御」「オフライン制御」の別で変わります。
この記事では、優先給電ルールにもとづく仕組み、北海道の実績、3つのルールとオンライン/オフラインの違い、法人の自家消費設備やFIT・FIP発電所が取れる対策、国の出力制御対策パッケージを、資源エネルギー庁、北海道電力ネットワーク、電力広域的運営推進機関(OCCTO)の資料で整理します。
この記事でわかること
・出力制御の意味と、需給バランス制約・送電容量制約の違い
・優先給電ルールの順番と、北海道で出力制御が起きる理由
・北海道の出力制御の実績(2022年度から2026年度の途中まで)
・旧ルール・新ルール・無制限無補償ルールと、オンライン・オフライン制御の違い
・法人の自家消費・蓄電池・FIP・上げDRの考え方と、国の出力制御対策パッケージ
更新履歴
- 2026年10月28日:全面改訂。題名から年号表現を外し、北海道の実績を2025年度・2026年度の途中まで更新。優先給電ルール、3つのルールの違い、オンライン/オフライン制御、法人が取れる対策、国の出力制御対策パッケージを追加。出典を確認できなかった見通しと、旧ルールの説明の誤りを削除
- 2024年9月30日:初版公開
1. 出力制御とは?需給バランス制約と送電容量制約
出力制御は、発電所が出せる電気の量(出力)を、送配電会社の指示で下げる措置です。資源エネルギー庁の「なるほど!グリッド」は、出力制御を原因によって2種類に分けています。
| 種類 | 起きる場面 | 北海道での状況 |
|---|---|---|
| 需給バランス制約 | 電気が需要を上回って余るとき | 2022年5月に開始。2026年度は10月24日時点で52日実施 |
| 送電容量制約 | 送電線や変圧器の容量の上限を超えるおそれがあるとき | 2023年度・2024年度は実績なし。2025年10月20日に、11月分としてローカル系統(66kV岩松線)の混雑を解消する出力制御を行うと発表した(北海道エリアで初) |
表:出力制御の2種類(資源エネルギー庁「なるほど!グリッド」、北海道電力ネットワークの公表資料より)
この記事は、北海道で件数の多い需給バランス制約を中心に扱います。なお、「出力制御」と「出力抑制」は同じ措置を指す言葉で、北海道電力ネットワークは「出力制御」、OCCTOは「出力抑制」と表記しています。
2. 出力制御はなぜ起きる?優先給電ルールの順番
北海道電力ネットワークは、需給バランスが崩れると系統に連系する発電所の運転が不安定になり、広域停電のおそれがあると説明しています。工場が止まって需要が下がるゴールデンウィークなどに、晴天で太陽光の発電が増えると、供給が需要を上回って出力制御が必要になることがあります。
ただし、いきなり太陽光や風力を止めるわけではありません。OCCTOの「送配電等業務指針」(経済産業大臣が認可)が、下げ調整力(出力を下げる余地)が足りないときの対応順序を定めています。これが優先給電ルールです。
図:優先給電ルールにもとづく対応順序(OCCTO「送配電等業務指針」第173条・第174条の整理と、資源エネルギー庁「なるほど!グリッド」をもとに作成。途中にOCCTOの指示にもとづく措置もある)
OCCTOは、北海道で出力抑制が行われるたびに、前日の指令時点で抑制が不可避だったかを検証して公表しています。2026年4月分(11日間)と5月分(18日間)は、どちらも指令が「妥当」と評価されました。
北海道電力ネットワークの資料によると、2026年3月末の太陽光・風力の接続量は380万kW(太陽光243万kW、風力137万kW)です。一方、2026年4月から5月6日までの休日(ゴールデンウィークを含む)で、需要に占める変動再エネの割合が最大となった日時の需要は276万kWでした。接続量は設備の容量で、実際の出力は日射や風で変わりますが、接続量が軽負荷期の需要を上回る状況です。
余った電気は北海道本州間連系設備で他エリアへ送りますが、送れる量には運用容量という上限があります。同社は2026年度の見通しで、連系線の活用率を「運用容量からマージンを引いた容量の55%」と置いています。当初は65%でしたが、4〜7月の実績を受けて見直しました。
北海道の再エネ比率は「北海道の再生可能エネルギー割合が初の40%超え」、需給の余裕の見方は「電気の予備率とは」で解説しています。
3. 北海道エリアの出力制御の実績
需給バランス制約による出力制御の実績を、年度ごとに整理します。
| 年度 | 実施日数(エリア全体) | 出力制御率 | 制御電力量 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 5日 | 0.04% | 191万kWh |
| 2023年度 | 2日 | 0.01% | 81万kWh |
| 2024年度 | 2日 | 0.04% | 269万kWh |
| 2025年度 | 18日 | 0.32%(年度見通し) | 約2,120万kWh(年度見通し) |
| 2026年度(途中) | 52日(10月24日時点) | 1.44%(年度見通し) | 約9,470万kWh(年度見通し) |
表:北海道エリアの需給バランス制約による出力制御の実績(日数は北海道本土エリア全体で、北海道電力ネットワークの指示内容の表で実績(速報)に太陽光・風力の出力制御量が記載された日の数。2022〜2024年度はOCCTOの公平性検証の抑制実績日数とも一致。率と電力量は資源エネルギー庁の系統WG資料と北海道電力ネットワークの見通し資料より。2025年度の率と電力量は2025年12月24日時点の年度見通しで、4〜7月が実績、8〜3月が見通し。2026年度は4〜7月が実績で8月以降が見通し。2025年度の確定値は、北海道電力ネットワークの公表資料で確認してください)
2022年度から2024年度は日数が少なく、出力制御率も0.01〜0.04%でした。2025年度は18日に増えています。北海道電力ネットワークの指示内容の表で、実績(速報)に太陽光・風力の出力制御量が記載された日を月別に数えると、3月が7日、4月が2日、5月が5日、6月が2日、9月が2日です。連休のある5月前後だけでなく、3月や9月にも出力制御が行われているのが、近年の北海道の特徴です。
ここでの「日数」は、発電所ごとの制御回数ではなく、エリア全体で太陽光・風力に実際の出力制御量が出た日の数です。前日に指示が出ても、実績で制御量が出なかった日は数えません。2026年度の52日は、2026年10月24日現在の指示内容にもとづく日数で、同日夕方に前日指示が出た10月25日分(実績は未掲載)は含みません。発電所ごとの累計制御指示回数は、第4章の別の表で公表されています。
2026年度はさらに増えています。OCCTOの検証結果では、4月が11日間、5月が18日間で、5月30日には計画時点の最大抑制量が126.1万kWになりました(計画時点の最大抑制量は、オフライン制御で確保する制御量とオンライン制御で当日対応する制御量の合計)。北海道電力ネットワークの2026年10月6日の資料では、年度の出力制御率の見通しが1.44%(4〜7月は実績2.79%)で、当初想定の1.23%より増える見込みです。理由として、4〜7月の実績で連系線の活用率が当初想定の65%から55%程度に下がったことを挙げています。
出力制御率は、発電所ごとの制御の多さではなく、エリア全体の発電量に対する割合です。資源エネルギー庁の資料は「変動再エネ出力制御量÷(出力制御量+変動再エネ発電量)」と定義し、北海道電力ネットワークの見通し資料は「出力制御対象外設備を含む総発電量に対する割合」と注記しています。年度や他エリアと比べるときは、資料ごとの注記を確認してください。
4. 旧ルール・新ルール・無制限無補償ルールの違い
出力制御で収入がどう変わるかは、契約申込の受付日で決まる「ルール」によって違います。北海道電力ネットワークは、FIT制度の太陽光・風力を次のように区分しています。
| 太陽光(FIT) | 契約申込の受付日 | 無補償での出力制御の上限 | 制御方法 |
|---|---|---|---|
| 旧ルール | 2015年1月25日まで | 年間30日(10kW以上。接続可能量を超える案件は無制限) | 現地操作または自動制御 |
| 無制限無補償ルール(北海道電力ネットワークの表記は「指定ルール」) | 2015年1月26日から | 無制限 | 自動制御(オンライン) |
表:太陽光(FIT)のルール区分(北海道電力ネットワーク「出力制御【需給バランスの制約】の対象となる発電事業者さま」より。旧ルールの10kW未満は当面対象外。旧ルールの10kW以上500kW未満は2022年4月1日から出力制御の対象に拡大)
| 風力(FIT) | 契約申込の受付日 | 無補償での出力制御の上限(500kW以上) |
|---|---|---|
| 旧ルール | 2015年1月25日まで | 年間30日(エリア一括の年間720時間方式での実施に向けて調整中) |
| 新ルール | 2015年1月26日〜2015年12月15日 | 年間720時間 |
| 無制限無補償ルール(指定ルール) | 2015年12月16日から | 無制限 |
表:風力(FIT)のルール区分(同上。500kW未満の風力は当面の間、出力制御の対象外)
名称について補足します。2021年4月1日に指定電気事業者制度は廃止されましたが、同日以降の申込みも従前の指定ルールと同様にオンライン制御の対象になるため、北海道電力ネットワークは便宜上「指定ルール」と表記しています。この記事では、国の資料の呼び方にそろえて「無制限無補償ルール」と書きます。北海道では、新ルールは風力だけです。
FIT制度の対象外の設備も出力制御の対象です。太陽光は出力10kW以上、風力はすべての設備が対象で、2020年4月1日以降の契約申込分は一律オンライン制御(自動制御)です。FIP電源は、資源エネルギー庁の指針で、無制限・無補償ルールの中でFIT分とFIP分に分けて実施するとされています。
「無補償」とは、上限の範囲内の出力制御では、売れなかった電気の補償を求めないという意味です。資源エネルギー庁の2015年1月の説明資料では、上限を超える出力制御は補償を求めることができる場合があり、補償額の限度は「抑制しなかった場合に供給できたはずの電気量×調達価格」とされています。無制限無補償ルールには、この上限がありません。
ルール別の2026年度の見通し
北海道電力ネットワークは、ルール別の出力制御率も見通しとして公表しています。
| 区分 | 出力制御率(制御電力量) | 太陽光 | 風力 |
|---|---|---|---|
| 旧ルール・オフライン | 4.91%(55.4百万kWh) | 7.17% | 1.52% |
| 旧ルール・オンライン | 1.66%(11.2百万kWh) | 1.66% | - |
| 新ルール(風力のみ) | 0.40%(1.6百万kWh) | - | 0.40% |
| 無制限無補償ルール | 0.69%(26.4百万kWh) | 1.21% | 0.35% |
| 制御対象設備計 | 1.57%(94.7百万kWh) | 2.72% | 0.52% |
| 全設備(対象外を含む) | 1.44%(94.7百万kWh) | 2.27% | 0.52% |
表:2026年度の出力制御見通し(北海道電力ネットワーク「2026年度出力制御見通しについて」2026年10月6日、4〜7月は実績を反映。オフラインの値はオンライン代理制御分をオフライン相当の8時間停止に換算して含む)
旧ルールのオフライン設備の太陽光(7.17%)は、無制限無補償ルールの太陽光(1.21%)より高く見込まれています。「無制限だから多く止められる」とは限りません。オフラインは前日に指示した時間帯に止める方式で、オンラインは必要な時間だけ止める方式であることが背景と考えられます(推測)。
北海道電力ネットワークが公表する2026年度の制御回数の表(9月25日分まで掲載)では、旧ルール(オフライン)の太陽光は、1発電所あたりの累計制御指示回数が17〜20回です(オンライン代理制御を含む)。上限は年間30日です。ご自身の発電所に適用されるルールと上限は、契約申込の受付日で確認してください。
5. オンライン制御とオフライン制御の違い
制御の方法は、出力制御用の機器を取り付けているかどうかで分かれます。資源エネルギー庁の指針は、オフライン制御は発電事業者自らが行い、オンライン制御は一般送配電事業者が行うと整理しています。
| 項目 | オフライン制御 | オンライン制御 |
|---|---|---|
| 制御する人 | 発電事業者(現地操作または自動制御) | 一般送配電事業者 |
| 出力制御用機器 | 取り付けていない設備 | 取り付けた設備 |
| 指示の流れ | 前日17時頃に電話とメールで指示。当日の需給の見直しで、当日朝に不要と連絡する場合もある | 前日にホームページで出力制御の可能性を公表。当日の需給に応じて、実需給の30分前〜1時間前までに制御値を送信する |
| 止める時間 | 前日に指示した時間帯(2026年度見通しでは、オフライン相当の「8時間停止」に換算) | 必要な時間・量 |
| 事前の準備 | 運用申合せ書の締結。電話番号(1件)とメールアドレス(最大2件)の登録 | 出力制御用機器の設置 |
表:オフライン制御とオンライン制御の違い(資源エネルギー庁「出力制御の公平性の確保に係る指針」「なるほど!グリッド」、北海道電力ネットワーク「オフライン制御について」「運用の基本的考え方」(2020年12月11日)、2026年度出力制御見通しより)
オンライン代理制御
オンライン代理制御は、オンライン事業者が、オフライン事業者の代わりに出力制御を行う仕組みです。北海道では2022年度から導入され、旧ルールの10kW以上500kW未満のオフライン太陽光が代理制御の対象です。この規模の設備には、実際の制御指示は出ません。代理で制御したオンライン事業者は、制御した時間の「みなし発電量」に調達価格を掛けた対価を受け取ります(資源エネルギー庁)。
オンライン化の状況と制御量の差
北海道電力ネットワークの資料では、2026年3月末のオンライン化率は、太陽光が79.3%(旧ルール事業者のオンライン切替率は70.7%)、風力が88.7%です。同社は旧ルールの事業者にダイレクトメールを送り、制御量の低減や人件費の削減などのメリットを伝えて、オンライン制御への切替を促しています。
2026年度の見通しでは、旧ルールの出力制御率がオフライン4.91%、オンライン1.66%と見込まれています。さらに、エリア全体がオンライン化した場合の試算では、全設備の出力制御率が1.25%(78.7百万kWh)で、現状の見通し1.44%(94.7百万kWh)より小さくなります(北海道電力ネットワークの試算)。国の資料(2024年9月)は、オフライン事業者は設備更新時にオンライン化が必須となる見込みで、早期のオンライン化が推奨されているとしています。
北海道電力ネットワークは、2026年度の制御回数の表の注記で、出力制御に協力していただけなかった事業者について、公平性の観点などを考慮しつつ契約解除を視野に個別対応を実施中としています。オフライン制御の事業者には、電話に出られなくてもメールの内容に従って制御し、連絡先を変えるときは変更日の5営業日前までに申し出るよう求めています。
6. 法人・発電所オーナーが取れる対策
対策は、立場によって変わります。自家消費型の設備を持つ(検討する)法人、FIT・FIPの発電所を持つ事業者、電気を使う側として協力できる需要家の3つに分けて整理します。
| 対策 | 主な狙い | 主に関係する立場 | 先に確認すること |
|---|---|---|---|
| 自家消費を増やす | 敷地内で使う電気を増やし、系統への送電に頼る度合いを下げる | 法人の自家消費設備 | 逆潮流の有無、連系契約の内容 |
| 蓄電池 | 昼間の余剰を貯めて、別の時間に使う・供給する | 自家消費設備、FIT・FIP発電所 | 併設の条件、補助金の要件、FIP移行時の基準価格 |
| FIPへの移行 | 市場価格に連動する収入に変え、制御の時間帯を避けて供給する動機をつくる | FIT発電所 | 移行できる条件、プレミアムが出ない時間帯、制御の順番 |
| 上げDR | 余剰が出る時間帯に電気を使う側へ寄せる | 需要家(法人) | 設備の運用を昼間へ寄せられるか、契約メニュー |
| オンライン化 | 必要な時間・量だけの制御にする | 旧ルールのオフライン発電所 | 機器の設置、切替の手続き |
表:法人・発電所オーナーが検討できる対策の整理(資源エネルギー庁、北海道電力ネットワークの資料をもとに作成)
(1) 自家消費を増やす
出力制御は、系統につながる発電所に対して送配電会社が指示する措置です。発電した電気を敷地内で使う割合が高いほど、売電に頼る度合いが小さくなり、出力制御の影響を受けにくくなると考えられます(推測)。
ただし、FIT制度の対象外でも、太陽光は10kW以上が出力制御の対象で、2020年4月1日以降の契約申込分は一律オンライン制御です。逆潮流のない自家消費設備が制御の対象になるかどうかは、今回確認した資料には明記が見つかりませんでした。連系契約の内容を、一般送配電事業者に確認してください。
(2) 蓄電池
昼間の余った電気を蓄電池に貯め、夕方以降に使う方法です。国も、需要面の対策として、系統用蓄電池、再エネ併設蓄電池、事業者用蓄電池の導入支援を位置づけています(2023年12月の出力制御対策パッケージ)。優先給電ルールでも、需給バランス改善用の蓄電設備の充電は、太陽光・風力の出力制御より前の措置です。系統側の蓄電池は「系統用蓄電池の完全ガイド」、事業者向けの補助金は「令和7年度補正「業務産業用蓄電池」補助金」で扱っています。
FIT認定からFIP認定へ移行して蓄電池を設置した場合は、基準価格が変更されると、資源エネルギー庁のFIT・FIP制度ガイドブックにあります。移行と併設を同時に考えるときは、先に条件を確認してください。蓄電池の効果は設備の規模と運用で決まるため、この記事では削減額の目安を示しません。
(3) FIPへの移行
FIPは、基準価格から参照価格(市場価格に連動)を引いたプレミアムを、供給量に応じて受け取る制度です。出力制御が行われる時間帯の供給には、プレミアムは交付されません。このため、出力制御が起きやすい時間帯を避けて、蓄電池などで供給をずらす動機づけが働く制度と、資源エネルギー庁は説明しています。
優先給電ルールの中では、FIT電源を先に、その後にFIP電源を制御する順番に見直す方針です。システム改修が終わったエリアから順次で、2025年12月24日時点の資料では、北海道は2027年度末に運用を開始する見込みです。FIT認定を受けた事業でも、一定規模以上は希望すればFIPへ移行できます。地上設置の太陽光(10kW以上)は、2026年度以前に認定を受けた案件の移行が認められているとされています。収入の仕組みが変わるため、条件は制度資料で確認してください。
(4) 上げDR
DR(ディマンド・リスポンス)は、電気の使い方を調整して、電力需要のパターンを変えることです。需要を減らすのが「下げDR」、需要を増やす(創出する)のが「上げDR」で、余剰の再エネ電気が出ている時間帯に需要を寄せる取組です。エネルギー白書2025は、出力制御が行われる時間帯は非化石電源の比率が8割以上になる場合もあり、その時間帯に需要をシフトすれば、余剰再エネの有効活用につながるとしています。
法人では、蓄電池の充電を昼間に行う、昼間に動かせる設備の稼働を昼に寄せる、といった形が考えられます(例)。資源エネルギー庁の2024年9月の資料は、他エリアで昼間の料金を安くするメニューやポイント付与などが始まっているとしています。北海道の法人向けの料金メニューは今回確認できていないため、契約先の小売電気事業者に確認してください。パッケージは、改正省エネ法にもとづく大規模需要家のDR実績の定期報告も、需要面の対策に挙げています。
(5) オンライン化と連絡体制
旧ルールのオフライン設備は、オンライン化すると、前日に指示した時間帯の停止から、必要な時間だけの制御に変わります。2026年度の見通しでは、旧ルールの出力制御率がオフライン4.91%、オンライン1.66%です。機器の設置費は設備ごとに違うため、金額は示しません。オフラインのまま運用する場合は、電話・メールの連絡先を常に最新にしておくことが前提です。
出力制御で売れなくなる電力量の見方
出力制御で売れなくなる電力量(kWh)= 制御がなかった場合の年間発電量(kWh)× 出力制御率
仮定の数字:制御がなかった場合の年間発電量100万kWh、出力制御率1.5%(仮定)
100万kWh × 0.015 = 1.5万kWh
金額にするときは、この電力量に調達価格または市場価格を掛けます。
出力制御率は、前の章の表のとおり、ルールとオンライン・オフラインの別で大きく違います。自分の発電所に適用される率で試算することが大切です。1.5%は計算の説明のための仮定で、実際の率ではありません。
7. 国の出力制御対策パッケージと今後の動き
国は、出力制御が増えすぎないようにするため、「出力制御対策パッケージ」を取りまとめています。2021年末のパッケージを深め、資源エネルギー庁が2023年12月19日に、新たな「再エネ出力制御対策パッケージ」としてまとめました。資料は、出力制御の抑制そのものが目的ではなく、社会的コスト全体を抑えながら再エネを最大限導入するために必要な措置という位置づけです。需要面、供給面、系統面で切れ目なく対策を講じ、中長期的には需要面の対策に重点を置くとしています。
| 柱 | 主な内容(2023年12月) |
|---|---|
| 需要面 | 家庭用蓄電池・高効率給湯器の導入支援。系統用蓄電池や再エネ併設蓄電池への支援。機器のDR Ready化、大規模需要家のDR実績の定期報告など |
| 供給面 | 再エネ発電設備のオンライン化の推進。新設火力の最低出力を50%から30%へ引き下げ(バイオマスは当面50%)。他エリアの非調整電源の出力引下げ。火力の運用高度化、揚水発電。FIP制度の活用促進 |
| 系統面 | 連系線事故時に即時停止できる設備(電制)の対象拡大。地域間連系線の増強(2023年12月時点で、北海道〜東北〜東京の東地域の系統整備を広域機関が計画策定中) |
表:出力制御対策パッケージの柱(資源エネルギー庁「出力制御対策パッケージについて」2023年12月19日より)
その後の動きとして、2025年12月24日の系統WG資料には、出力制御の順番をFIT電源からFIP電源の順に変える運用の開始見込み(北海道と東京は2027年度末)が示されています。資源エネルギー庁の「出力制御の公平性の確保に係る指針」も、2026年4月に改定されています。
国の長期見通し(試算)
資源エネルギー庁の2025年6月27日の資料は、北海道の無制限無補償ルールの設備について、2022〜2024年度の実績の3か年平均をもとに長期見通しを試算しています。2025年度供給計画の2034年度の導入見込みを基準に、再エネの導入量が1.0倍程度になった場合と1.3倍程度になった場合を置くと、太陽光は34%と38%、風力は24%と27%です。ただし、一般送配電事業者の試算値で、上限として保証するものではないと注意されています。旧ルール・新ルールの設備の数字ではありません。
8. よくある質問(FAQ)
A. 同じ措置を指しています。北海道電力ネットワークは「出力制御」、OCCTOは「出力抑制」と表記しています。
A. 需要が下がり、日射が強い時期です。北海道電力ネットワークは、ゴールデンウィークなどを例に挙げています。実績では、2025年度は3月・4月・5月・6月・9月に実施され、2026年度は4月が11日間、5月が18日間でした。2026年5月は、6時30分から17時30分の間に実施されています。
A. 適用されるルールで変わります。旧ルールは年間30日(風力の新ルールは720時間)までは無補償で、上限を超える分は補償を求められる場合があります。無制限無補償ルールには上限がありません。FIPは、出力制御の時間帯にプレミアムが交付されません。なお、補償を求められるかどうかは条件があるため、自分の設備に当てはまる扱いを制度資料や一般送配電事業者の資料で確認してください。
A. FIT制度の対象外でも、太陽光は10kW以上が対象とされています。逆潮流のない自家消費設備の扱いは、今回確認した資料に明記が見つかりませんでした。連系契約の内容を一般送配電事業者に確認してください。
A. FIT制度の対象外で2020年4月1日以降に契約申込をした設備は、一律オンライン制御です。FIT制度でも、2021年4月1日以降の申込分は、従前の指定ルールと同様にオンライン制御の対象です。旧ルールのオフライン設備については、北海道電力ネットワークが切替を促しており、国の資料(2024年9月)では、設備更新時にオンライン化が必須となる見込みとされています。
A. 北海道電力ネットワークの「再生可能エネルギー出力制御見通し」のページで、需給バランス制約と送電容量制約の見通しと、年度別の指示内容が公表されています。月ごとの検証結果は、OCCTOのホームページで公表されています。
9. まとめ
- 出力制御は、電気が余りそうなときに太陽光・風力の発電を抑える措置。優先給電ルールでは、火力などの抑制や連系線での域外送電のあとに行われる
- 北海道の実施日数は、2022年度5日、2023年度・2024年度各2日、2025年度18日、2026年度は10月24日時点で52日と増えている
- 収入への影響は、旧ルール(年間30日)、新ルール(風力は年間720時間)、無制限無補償ルール(上限なし)の別で変わる。契約申込の受付日で決まる
- オンライン化すると、必要な時間・量だけの制御になる。2026年度の見通しでは、旧ルールの率がオフライン4.91%、オンライン1.66%
- 法人の対策は、自家消費、蓄電池、FIP、上げDR、オンライン化。自分の設備に当てはまるルールと率で考える
- 国は2023年12月に出力制御対策パッケージをまとめ、出力制御の順番をFITからFIPの順に変える運用は、北海道では2027年度末の開始見込み
記事情報
公開日:2024年9月30日
最終更新日:2026年10月28日(全面改訂)
参照資料:
・北海道電力ネットワーク「再生可能エネルギーの出力制御【需給バランスの制約】」(北海道電力ネットワーク)、「出力制御【需給バランスの制約】の対象となる発電事業者さま」(北海道電力ネットワーク)
・北海道電力ネットワーク「2026年度出力制御見通しについて」2026年10月6日(PDF)
・北海道電力ネットワーク「再生可能エネルギー出力制御見通し」(北海道電力ネットワーク)、「過去の出力制御実績【需給バランスの制約】」(Excel)、「2026年度指示内容【需給バランスの制約】」(PDF)、「出力制御等の考え方及び制御回数実績について」(PDF)
・北海道電力ネットワーク「再エネ発電設備(太陽光・風力)におけるオフライン制御について」(PDF)、「再生可能エネルギーの出力制御に係る運用の基本的考え方について」2020年12月11日(PDF)、「経済的出力制御(オンライン代理制御)の運用について」2021年12月15日(PDF)
・北海道電力ネットワーク「ローカル系統におけるノンファーム型接続を対象とした出力制御の実施について」2025年10月20日(北海道電力ネットワーク)
・電力広域的運営推進機関(OCCTO)「北海道エリアにおける需給バランス制約による再生可能エネルギー発電設備(自然変動電源)の出力抑制の検証結果」2026年4月抑制分(PDF)・5月抑制分(PDF)
・OCCTO「出力抑制の検証における基本的な考え方 ~北海道電力ネットワーク編~」2025年6月25日(PDF)
・OCCTO「北海道エリアの需給バランス制約による再生可能エネルギー発電設備の出力抑制における公平性の検証結果」2022年度実施分(PDF)・2023年度実施分(PDF)・2024年度実施分(PDF)
・資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ「再生可能エネルギー出力制御の短期見通し等について」2025年12月24日(PDF)、北海道電力ネットワーク「2026年度出力制御見通しについて」2025年12月24日(PDF)
・資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ「再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について」2025年6月27日(PDF)
・資源エネルギー庁 系統ワーキンググループ「再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について」2024年9月18日(PDF)
・資源エネルギー庁「出力制御対策パッケージについて」2023年12月19日(PDF)
・資源エネルギー庁「なるほど!グリッド 出力制御について」(資源エネルギー庁)
・資源エネルギー庁「出力制御の公平性の確保に係る指針」(PDF)
・資源エネルギー庁「再生可能エネルギー特別措置法施行規則の一部を改正する省令と関連告示を公布しました」2015年1月22日(PDF)
・資源エネルギー庁「FIT・FIP制度ガイドブック(2026年度版)」(PDF)
・資源エネルギー庁「ディマンド・リスポンス(DR)について」(資源エネルギー庁)、「エネルギー白書2025 第2部第2章第3節 需要家側のエネルギーリソースの有効活用」(資源エネルギー庁)
※2026年10月28日時点の情報です。2025年度の出力制御率は年度途中の見通しで、確定値は確認できていません。2026年度の数値は、10月24日時点の指示内容と10月6日の見通しにもとづきます。ルールの適用や補償は個別の契約内容で決まるため、実際の扱いは一般送配電事業者の資料で確認してください。計算例の数字はすべて仮定です。
