LPガスの三部料金制とは、請求のときに料金を「基本料金」「従量料金」「設備料金」の3つに分けて示し、算定の根拠を通知する決まりです。液化石油ガス法(液石法)施行規則の第16条第15号の7に定められ、2025年4月2日に施行されました。新規の契約だけでなく、2025年4月2日時点で結ばれていた既存の契約にも適用されます。
同じ省令改正で、LPガスの消費と関係のない設備(電気エアコン、インターホン、Wi-Fi機器など)の費用を、設備料金として請求することも禁止されました。ただし、この禁止が及ぶのは新規契約のみです。2025年4月2日時点で結ばれていた契約は禁止の対象外で、事業者には新しい制度に沿った契約への早期の移行が努力義務として求められています。
この記事は、省令改正の中身と施行日、新規契約と既存契約の違い、対象になる契約の範囲、規定が守られていないときの行政の対応を、官公庁と法令の原文で確認できた範囲で整理したものです。自社所有の建物で料金を見直す手順は「北海道のプロパンガス料金を見直す手順|法人の三部料金・見積・切替の確認点」、テナントの場合は「【なぜ?】テナントのプロパンガスが切り替えられない理由と料金削減の交渉術|北海道の飲食店様へ」で扱っています。情報は2026年10月30日時点のものです。
この記事でわかること
・省令改正の公布日と、2段階の施行日(2024年7月2日・2025年4月2日)
・三部料金制の3区分と、請求書の表示ルール
・設備費用の計上禁止の範囲(何が禁止され、何が認められるか)
・新規契約と既存契約で、適用される規定がどう違うか
・法人の契約も対象になるか、規定が守られていないときの行政の対応
更新履歴
- 2026年10月30日:全面改訂。施行日を省令の附則と経済産業省の資料で確認し直し、新規契約と既存契約の違い、対象契約の範囲、行政の対応を追加。誤りだった「既存契約の移行期限」と罰金額の記述を修正し、根拠を確認できなかった事例と数値は削除
- 2025年4月18日:初版公開
1. 省令改正のあらまし:公布日と2段階の施行日
改正されたのは、液石法の施行規則(昭和42年通商産業省令第14号)です。2024年4月2日に公布され(令和6年経済産業省令第32号)、施行は2段階に分かれました。附則は、原則を「公布の日から起算して三月を経過した日」、第16条第15号の7から第15号の9までの改正規定を「公布の日から起算して一年を経過した日」としています。経済産業省の資料では、それぞれ2024年7月2日と2025年4月2日です。
| 日付 | できごと | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2024年4月2日 | 改正省令の公布 | 液石法施行規則の一部改正(令和6年経済産業省令第32号) |
| 2024年7月2日 | 施行(公布から3か月後) | 過大な営業行為の制限(正常な商慣習を超えた利益供与の禁止、販売事業者の変更を制限する条件付き契約の禁止)と、LPガス料金等の情報提供(入居希望者への料金の事前提示の努力義務など) |
| 2025年4月2日 | 施行(公布から1年後) | 三部料金制の徹底:設備費用の外出し表示(第15号の7)と、設備費用の計上禁止(第15号の8・第15号の9) |
表:液石法施行規則の改正の公布日と施行日(令和6年経済産業省令第32号の附則、経済産業省「液化石油ガス法『改正省令』の概要」、北海道・神奈川県の制度改正の案内ページをもとに作成)
2024年7月2日に施行された規定の多くは、契約者(LPガスを使う人)と、設備が置かれた建物の所有者が異なる場合を想定しています。たとえば、賃貸の入居希望者に入居前に料金を示すよう努めること、建物のオーナーへの過大な利益供与の禁止などです。北海道の案内ページも、この規定を賃貸集合住宅の入居希望者向けのものとして紹介しています。この記事は、そのうち料金の表示と設備費用の扱いを決めた2025年4月2日施行の部分を中心に扱います。
2. 三部料金制とは:3つの区分と請求書の表示ルール
施行規則第16条第15号の7は、一般消費者等にLPガスの料金その他の負担となる費用を請求するとき、その費用を次の3つに整理し、算定の根拠を通知することを求めています。
| 区分 | 省令の定義 | 内訳の例(神奈川県の案内ページ) |
|---|---|---|
| 基本料金 | LPガスの消費量にかかわらず生ずる費用 | 容器やメーターの設備費、保安・検針の費用など、使用量に関係なく発生する固定的な費用 |
| 従量料金 | 消費量に応じて生ずる費用 | ガスの原料費や配送費など、使用量に応じて発生する費用 |
| 設備料金 | 消費設備の貸与等に係る費用 | 配管や給湯器の費用、ガス漏れ警報器の利用料など、設備の保守・維持管理にかかる費用 |
表:三部料金制の3区分(施行規則第16条第15号の7、神奈川県「LPガスの料金内容の透明化に向けた制度改正について」)
表の右列は、神奈川県が案内ページで示している例です。実際にどの費用がどの区分に入るかは、契約書面の「算定の基礎となる項目」の説明で確認します。
請求書の表示ルール
資源エネルギー庁が2025年3月25日に策定した「三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)に関するQ&A」と、経済産業省の新ルールの概要資料は、請求書の表示を次のように整理しています(Q&A、概要資料)。
- 請求書で、基本料金・従量料金・設備料金を並べて内訳として示す
- 該当する料金がない区分も、「0円」または「該当なし」と明記する。従量料金だけの契約でも同じ
- 設備料金を備考欄に書くこと、「設備料金なし」のはんこを押すことは、表示の規律を満たさない
- 検針票への記載は必須ではないが、請求書と記載内容をそろえることが望ましい
三部料金制は、料金の高さを直接決めるものではありません。省令が定めているのは、費用を3区分に整理して算定根拠を通知することと、設備料金に計上できる費用の範囲です。条文に、料金の水準を定めた規定はありません。
3. 設備費用の計上禁止:何が禁止され、何が認められるか
はじめに、用語を確認します。液石法第2条は、「供給設備」を、LPガス販売事業の用に供するLPガスの供給のための設備のうち経済産業省令で定めるもの、「消費設備」を、登録を受けた販売事業者が一般消費者等に販売するLPガスの消費のための設備(供給設備に該当するものを除く)と定めています(e-Gov法令検索)。設備料金の対象になるのは、このうち消費設備の貸与等に係る費用です。
施行規則第16条第15号の8は、一般消費者等に対し、消費設備に係る配管及びLPガス器具等の設置等に係る費用以外の費用を、消費設備の貸与等に係る費用として請求しないことを求めています。LPガスの消費に直接関係する配管やガス器具の費用は設備料金に計上でき、それ以外は計上できません。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 設備料金に計上できる費用 | 消費設備に係る配管、LPガス器具等の設置等に係る費用 |
| 計上が禁止される費用 | LPガスの消費と関係のない設備の費用。経済産業省の資料は、電気エアコン、インターホン、Wi-Fi機器などを例に挙げている |
表:設備料金に計上できる費用の範囲(施行規則第16条第15号の8、経済産業省・資源エネルギー庁の資料をもとに作成)
第15号の9は、契約者と建物の所有者が異なる場合について、建物の所有者が本来負担すべき消費設備の貸与等の費用を、LPガスの契約者に請求しないことを定めています。販売事業者と契約者の間で費用の負担方法について合意がある場合は、例外とされています。賃貸物件のテナントが関わる論点は「【なぜ?】テナントのプロパンガスが切り替えられない理由と料金削減の交渉術|北海道の飲食店様へ」にまとめています。
設備料金の計上方法は事業者が判断しますが、消費者に説明できるようにしておく必要があるとされています。資源エネルギー庁のQ&Aは、賃貸住宅のオーナーなどに設備を無償で貸与している場合などについて、その費用を消費者から回収しているものとみなす前提で説明を求める方針を示し、「自助努力で回収していない」と述べるだけでは足りず、固定資産台帳などの経理書類で確認する想定を示しています。
4. 新規契約と既存契約で、適用される規定が違う
2025年4月2日の施行で最も誤解されやすいのが、既存契約の扱いです。省令の附則と経済産業省の資料は、次のように整理しています。
| 規定 | 新規契約 | 2025年4月2日時点で締結済みの既存契約 |
|---|---|---|
| 3区分での表示・算定根拠の通知(第15号の7) | 適用 | 適用 |
| LPガスの消費と関係のない設備費用の計上禁止(第15号の8) | 適用 | 適用されない(附則第2条)。早期の移行が努力義務(附則第3条) |
| 建物所有者が負担すべき費用を契約者に請求することの禁止(第15号の9) | 適用 | 適用されない(附則第2条)。早期の移行が努力義務(附則第3条) |
表:新規契約と既存契約の違い(令和6年経済産業省令第32号の附則、経済産業省「LPガス料金の表示・計上方法に関する新しいルールの概要」令和7年4月)
- 既存契約も、請求書の3区分表示は必要:設備費用そのものの計上は禁止されませんが、設備費用を外出しして表示することは求められます。
- 既存契約の移行は努力義務:附則第3条は、販売事業者が「必要な液化石油ガス販売契約の更新を速やかに行うよう努めるものとする」と定めています。
- 施行前に交付された契約書面(14条書面):資源エネルギー庁のQ&Aは、料金の算定の基礎となる項目に変更がなければ再交付までは求めないとしつつ、項目や説明を適切に修正することが望ましいとしています。
今回確認した経済産業省の資料(2024年4月の「改正省令の概要」と2025年4月の「新しいルールの概要」)には、既存契約の移行について期限の日付は示されていません。「いつまでに外出しへ移行すればよい」という日付が示されているわけではなく、附則が求めているのは「速やかに」の努力です。
5. 対象になる契約の範囲:法人・業務用も含まれるか
三部料金制などの規定は、液石法の「一般消費者等」との契約に適用されます。法第2条第2項は、一般消費者等を「LPガスを燃料として生活の用に供する一般消費者」と「消費の態様がこれに類似している者で政令で定めるもの」としています(e-Gov法令検索)。
政令で定める者は、施行令第2条にあります。LPガスを暖房・冷房または飲食物の調理の燃料として業務に使う者と、蒸気の発生または水温の上昇の燃料としてサービス業に使う者です(高圧ガス保安法の特定高圧ガス消費者を除く)(e-Gov法令検索)。経済産業省の概要資料は、三部料金制の対象は消費者向けに限らず、飲食店などの業務用を含め、液石法上の「一般消費者等」との契約全般だと説明しています。
つまり、法人名義の契約であることだけで対象外になるわけではありません。一方で、工場の生産工程など、上の用途に当てはまらない使い方の契約が対象になるかは、条文からは判断できません。自社の契約が対象かは、契約している販売事業者か、後述の窓口に確認してください。自社所有の建物での確認手順は「北海道のプロパンガス料金を見直す手順|法人の三部料金・見積・切替の確認点」で扱っています。
6. 規定が守られていないとき:行政の権限と窓口
三部料金制や設備費用の計上禁止は、施行規則第16条に定められた「販売の方法の基準」の一部です。液石法第16条第2項は、販売事業者にこの基準に従った販売を求めています。基準に合っていないと認められる場合に、国や自治体が取れる措置は、法の条文で次のように定められています(e-Gov法令検索)。
| 措置 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 立入検査 | 法第83条 | 事務所や営業所に立ち入り、帳簿・書類を検査し、関係者に質問できる。登録を受けた販売事業者については、都道府県知事または指定都市の長にも権限がある(第3項) |
| 是正の命令 | 法第16条第3項 | 基準に適合していないと認めるとき、基準に従って販売をすべきことを命ずることができる |
| 登録の取消し・事業停止 | 法第26条第4号 | 第16条第3項の命令に違反したとき、登録の取消し、または期間を定めた事業の全部・一部の停止を命ずることができる |
| 罰金 | 法第100条第2号、第103条 | 第16条第2項の規定に違反したときは、30万円以下の罰金。従業者が業務に関して違反した場合は、法人にも同じ罰金刑を科すとされている |
| 勧告 | 法第17条 | 事業の運営が適正を欠き、一般消費者等の利便の確保に支障を生じるおそれなどがあるとき、必要な措置をとるべきことを勧告できる。従わなければ、その旨を公表できる |
表:液石法に定められた行政の措置(液石法の条文をもとに作成。実際の適用は個別の事情で判断される)
経済産業省の「改正省令の概要」は、実効性を確保する取組として、国による取締りの強化、匿名でも受け付ける通報フォームの開設(2023年12月1日)、フォローアップ調査や立入検査での実施状況の確認を挙げています(経済産業省)。
北海道経済部資源エネルギー局資源エネルギー課は、「LPガスの商慣行是正に向けた制度改正について」のページで、制度改正の内容と施行日(2024年7月2日、2025年4月2日)、問い合わせ先を案内しています(北海道、ページの記載日は2026年3月27日)。相談窓口の使い分けは「北海道のプロパンガス料金を見直す手順|法人の三部料金・見積・切替の確認点」にまとめています。道のLPガス利用者向けの値引き支援は「北海道LPガス利用者緊急支援事業とは|第6次までの内容と最新状況」で解説しています。
7. 法人が最初に確認する4点
制度の中身を踏まえて、手元の請求書と契約書面で最初に確認する点を整理します。詳しい確認項目と見積の取り方は「北海道のプロパンガス料金を見直す手順|法人の三部料金・見積・切替の確認点」をご覧ください。
- 請求書に3区分があるか:基本料金・従量料金・設備料金が並び、該当しない区分は「0円」「該当なし」になっているか
- 契約を結んだ時期:2025年4月2日より前か後か。前なら既存契約、後なら新規契約として扱われ、設備費用の計上禁止の適用が変わる
- 設備料金の中身:配管やガス器具以外の費用(エアコン、Wi-Fi機器など)が含まれていないか。0円でも、基本料金や従量料金にどんな費用が含まれるかを契約書面で確認する
- 契約書面(14条書面)の記載:算定の基礎となる項目が、現在の3区分に合っているか
8. よくある質問(FAQ)
A. 2025年4月2日に施行されました。省令の公布は2024年4月2日で、公布から1年後の施行です。なお、過大な営業行為の制限などは、公布から3か月後の2024年7月2日に先に施行されています。
A. 設備費用の計上そのものは、2025年4月2日時点で締結済みの契約には禁止されていません(附則第2条)。ただし、設備費用を3区分のうちの設備料金として外出しして表示することは、既存契約にも求められます。販売事業者には、新しい制度に沿った契約へ速やかに更新するよう努めることが求められています(附則第3条)。
A. 必要です。経済産業省と資源エネルギー庁の資料は、従量料金だけの契約でも、該当しない基本料金と設備料金を「0円」または「該当なし」と明記するよう求めています。
A. 対象になる可能性があります。経済産業省の概要資料は、飲食店などの業務用を含め、液石法上の「一般消費者等」との契約全般が対象としています。一般消費者等には、暖房・冷房・調理の燃料として業務に使う者などが含まれます(施行令第2条)。使い方が当てはまるかは、販売事業者または窓口に確認してください。
A. 液石法は、立入検査、基準に従った販売を求める命令、命令に違反した場合の登録の取消しや事業停止、基準違反に対する30万円以下の罰金などを定めています。ただし、個別のケースで措置が取られるかどうかは、事情によって判断されます。気になる点は、資源エネルギー庁の通報フォームや、北海道の窓口に確認してください。
A. 三部料金制は、料金を3区分で示す決まりと、設備料金に計上できる費用の範囲を定めたもので、料金の水準を直接決める規定ではありません。料金の水準の比べ方は「北海道のプロパンガス料金を見直す手順|法人の三部料金・見積・切替の確認点」で扱っています。
9. まとめ
- 三部料金制は、料金を基本料金・従量料金・設備料金に分けて請求し、算定根拠を通知する決まり(施行規則第16条第15号の7)。2025年4月2日に施行
- 設備費用の計上禁止(エアコン、インターホン、Wi-Fi機器など、LPガスの消費と関係のない設備)は、新規契約のみ。2025年4月2日時点の既存契約は対象外で、速やかな移行が努力義務
- 3区分での表示は、新規契約にも既存契約にも適用される。従量料金だけの契約でも「0円」「該当なし」の明記が必要
- 対象は液石法の「一般消費者等」との契約。飲食店などの業務用を含む。自社の契約が当てはまるかは、販売事業者か窓口に確認する
- 規定が守られていない場合は、立入検査、命令、登録の取消し、30万円以下の罰金などの措置が法に定められている
記事情報
公開日:2025年4月18日
最終更新日:2026年10月30日(全面改訂)
参照資料:
・経済産業省「液化石油ガス法『改正省令』の概要」2024年4月(PDF)
・経済産業省「LPガス料金の表示・計上方法に関する新しいルールの概要 三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)」令和7年4月(PDF)
・資源エネルギー庁「三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)に関するQ&A」令和7年3月25日策定(PDF)
・e-Gov法令検索「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」(e-Gov)、同法(e-Gov)、同法施行令(e-Gov)
・北海道「LPガスの商慣行是正に向けた制度改正について」(北海道)
・神奈川県「LPガスの料金内容の透明化に向けた制度改正について」(神奈川県)
※2026年10月30日時点の情報です。法令や運用は改正されることがあります。契約や料金の個別の判断は、契約書面の確認とあわせて、所管の窓口や弁護士などの専門家にご確認ください。
