石油の国家備蓄とは|放出の仕組みと北海道の灯油・電気料金への影響

国家備蓄放出の仕組みを解説_アイキャッチ

石油の国家備蓄とは、国が「石油備蓄法」にもとづいて保有している石油(主に原油)のことです。海外からの輸入が大きく減るなど、石油の供給が不足する事態やそのおそれがあるときに、経済産業大臣の決定で石油会社に譲り渡され(放出)、製油所でガソリン・灯油・軽油・重油などに精製されて国内に届けられます。

日本の石油備蓄は「国家備蓄」「民間備蓄」「産油国共同備蓄」の3つで構成されています。2026年は、原油タンカーがホルムズ海峡を事実上通れなくなったことを受けて、3月に民間備蓄の義務量が70日分から55日分に引き下げられ、3月26日から国家備蓄原油の放出が始まりました。資源エネルギー庁の速報では、2026年10月24日時点の備蓄は国家備蓄101日分、合計200日分です(2026年1月末は国家備蓄146日分、合計248日分)。

ただし、備蓄の放出は「必要な量の石油を確保する」ための仕組みで、灯油や電気料金の価格を直接下げる仕組みではありません。この記事では、備蓄の3つの区分と量、石油備蓄法による放出の手続き、国家石油備蓄基地の場所(北海道の苫小牧東部基地を含む)、IEAの協調放出、2026年の放出の経緯を整理し、北海道の灯油価格・電気料金との関係を考え方として説明します。

この記事でわかること
・国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄の違いと、それぞれの備蓄日数(最新の公表値)
・石油備蓄法にもとづく放出の決定から、製油所・市場に届くまでの流れ
・国家石油備蓄基地の所在地と、北海道の苫小牧東部国家石油備蓄基地の概要
・IEA(国際エネルギー機関)の協調放出と、2026年の放出の経緯(経済産業省の発表)
・備蓄放出と北海道の灯油価格・電気料金(燃料費調整)の関係の考え方

更新履歴

  • 2026年10月27日:時事ニュースの記事から、石油備蓄の仕組みの解説記事に全面改訂。備蓄日数を最新の公表値(2026年8月末の確報、10月24日時点の速報)に更新し、2026年の放出の経緯を経済産業省・資源エネルギー庁の発表にもとづいて整理。一次情報で確認できない数値・記述を削除
  • 2026年3月12日:初版公開

1. 石油の国家備蓄とは?3つの備蓄の違い

石油備蓄法では、「国家備蓄石油」を、国が所有する石油であって、日本への石油の供給が不足する事態や、災害で国内の特定の地域への供給が不足する事態に備えて備蓄するもの、と定めています。日本の石油備蓄は、この国家備蓄に、民間の石油会社が義務として持つ「民間備蓄」と、産油国の国営石油会社が日本国内のタンクに持つ「産油国共同備蓄」を加えた3つで構成されています。

区分 誰が持っているか 決まり・目標 備蓄日数(2026年8月末) 主な保管場所
国家備蓄 国(基地と原油の管理はJOGMECが担当) 産油国共同備蓄の2分の1とあわせて、輸入量の90日分程度(IEA基準)に相当する量を下回らない 103日分
(IEA基準 89日分)
国家石油備蓄基地10か所と、民間タンクの借り上げ10か所
民間備蓄 石油精製業者・特定石油販売業者・石油輸入業者 石油備蓄法で義務づけ。義務量は1993年度以降、消費量の70日分(2026年3月16日から55日分に引き下げ中) 96日分
(IEA基準 82日分)
各社の製油所・油槽所などのタンク
産油国共同備蓄 サウジアラビア(アラムコ)、UAE(ADNOC)、クウェート(KPC)の国営石油会社 平時は各社のアジア向け供給・備蓄拠点として使い、緊急時は日本の石油会社が優先的に購入できる 4日分
(IEA基準 4日分)
沖縄石油基地、ENEOS喜入基地
合計 - - 204日分
(IEA基準 175日分)
-

表:日本の石油備蓄の3つの区分(資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」令和8年10月公表〈2026年8月末現在〉、JOGMEC「産油国共同備蓄」〈2025年11月時点〉をもとに作成)

量で見ると、2026年8月末の国家備蓄は製品換算で2,888万キロリットル、民間備蓄は2,686万キロリットル、産油国共同備蓄は123万キロリットルで、合計は5,697万キロリットル(約3.6億バレル)です。

ポイント:「備蓄日数」には2つの基準がある

資源エネルギー庁が公表する【備蓄日数】は、石油備蓄法にもとづき国内の石油消費量をもとに計算したものです。あわせて、IEA基準で試算した日数(石油ガスを含む)も示されています。IEAは加盟国に純輸入量の90日分以上の備蓄を求めており、日本は国内の目標として、このIEA基準の90日分を国家備蓄で持つ考え方をとっています。同じ時点でも、基準によって日数が違う点に注意してください。

民間備蓄の「70日分」の意味

民間備蓄の義務日数は、1993年以来70日分です。資源エネルギー庁の資料では、これは第2次石油危機のときに民間企業が取り崩した備蓄量(最大25日分)に、企業活動を続けるのに最低限必要な在庫(ランニング・ストック)約45日分を加えた水準と説明されています。つまり民間備蓄は、緊急時の「初動」に機動的に使う役割を期待されている備蓄です。

2. 備蓄の量はどれくらい?2026年の推移

2026年は備蓄が実際に使われたため、日数が大きく動きました。資源エネルギー庁の公表値を並べると次のとおりです。

時点 国家備蓄 民間備蓄 産油国共同備蓄 合計
2026年1月末 146日分 96日分 6日分 248日分
2026年3月末 146日分 81日分 6日分 233日分
2026年4月末 126日分 84日分 1日分 210日分
2026年5月末 109日分 92日分 3日分 204日分
2026年8月末 103日分 96日分 4日分 204日分
2026年10月24日時点(速報) 101日分 94日分 5日分 200日分

表:石油備蓄日数の推移(備蓄法基準。月末値は資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」、10月24日時点は「石油備蓄の状況(推計値の速報)」。国家備蓄・産油国共同備蓄は、石油精製業者の受け入れが確認された日に日数へ反映)

3月末の時点では、国家備蓄の日数はまだ減っていません。資源エネルギー庁の資料によると、国家備蓄原油が放出されて製油所に届くまでの間は、機動的に使える民間備蓄が活用され、民間備蓄は10〜15日分程度減りました。国家備蓄・産油国共同備蓄の原油が全国の製油所に届き始めた4月中旬以降は、主にそちらが使われ、民間備蓄の水準は回復に向かっています。

一方、国家備蓄は放出によって大きく減りました。資源エネルギー庁は、国家備蓄原油が2026年2月末の約2.6億バレルから、放出完了後には約1.7億バレルになるとし、IEA基準の90日分の水準を確保するためにも、国家備蓄原油量の回復が必要と整理しています(2026年7月の資料)。

3. 石油備蓄法による放出のしくみ|決定から供給まで

石油備蓄の根拠となる法律は「石油の備蓄の確保等に関する法律」(昭和50年法律第96号、通称:石油備蓄法)です。1975年に制定され、1978年度から国家備蓄が始まりました。この法律の目的は、石油の供給が不足する事態に石油の安定的な供給を確保することにあります(第1条)。放出の手段は、大きく次の2つです。

民間備蓄の取り崩し 経済産業大臣は、石油の供給が不足する事態やそのおそれがある場合に、期間を定めて、石油会社が常に持っていなければならない「石油基準備蓄量」を減らすことができます(第7条第3項)。減らしたときは告示します(同条第4項)。義務量が下がった分の在庫を、各社が供給に回せるようになります
国家備蓄の放出 経済産業大臣は、同じく供給が不足する事態やそのおそれがある場合で、特に必要があると認めるときは、国家備蓄石油を譲り渡し、または貸し付けることができます(第31条)
基地と原油の管理 国家備蓄石油(原油)と国家備蓄施設の管理は、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)に委託できると定められています(第29条)
石油会社への勧告・情報提供 民間の義務量を減らす場合や国家備蓄を放出する場合、経済産業大臣は石油会社に生産・販売の予定量などを報告させ、増産などの措置を勧告できます。また、生産・輸入・流通・在庫の状況について、国民に必要な情報を提供するものとされています(第32条)

2026年の実際の流れを、経済産業省・JOGMEC・資源エネルギー庁の発表にもとづいて並べると次のようになります。

1
経済産業大臣の決定(2026年3月16日)
石油備蓄法第7条第3項にもとづき民間備蓄の義務量を70日分から55日分に引き下げ、第31条にもとづき当面1か月分の国家備蓄石油の放出を決定しました。
▼
2
放出の内容の決定(3月24日)
放出予定総量 約850万キロリットル、放出する基地(11か所)、放出先(ENEOS、出光興産、コスモ石油、太陽石油の4社)が公表されました。
▼
3
JOGMECによる払い出し(3月26日以降、順次)
JOGMECは3月16日に緊急放出対策本部を設置し、苫小牧東部・菊間・白島・上五島・志布志の各国家石油備蓄基地から原油を放出しました。
▼
4
製油所で精製し、燃料油として供給(4月中旬以降に本格化)
放出された原油は国内の製油所で精製され、ガソリン・灯油・軽油・重油などとして供給されます。資源エネルギー庁の資料では、国家備蓄の原油が全国の製油所に届き始めたのは4月中旬以降です。

このように、国家備蓄は多くが原油の状態で保管されているため、決定から製油所での精製まで一定の時間がかかります。2026年も、まず民間備蓄が使われ、その後に国家備蓄が使われる順番になりました。

LPガス(石油ガス)の備蓄

石油備蓄法の「石油」には、原油・石油製品のほかに石油ガス(LPガス)も含まれます。LPガスにも民間の備蓄義務があり、JOGMECの資料では、義務量は直前12か月の輸入量の40日分です。国家石油ガス備蓄基地は、神栖・七尾・倉敷・波方・福島の5か所にあり、北海道にはありません。

4. 国家石油備蓄基地はどこにある?北海道の苫小牧東部基地

石油の国家石油備蓄基地は、地上・地中・地下・洋上にある10か所です。JOGMECが統合管理しており、各基地に事務所が置かれています。このほか、民間企業の製油所や油槽所のタンクの一部を借り上げて国家備蓄を置いている場所が10か所あります。

国家石油備蓄基地(10か所)
苫小牧東部(北海道)、むつ小川原、久慈、秋田、福井、菊間、白島、上五島、串木野、志布志

表:国家石油備蓄基地(JOGMEC「石油備蓄基地事務所」の一覧による)

北海道 苫小牧東部国家石油備蓄基地と2026年の放出

北海道には苫小牧東部国家石油備蓄基地があります。JOGMECによると、所在地は北海道苫小牧市と厚真町(面積 約274ヘクタール)、地上タンク方式で、備蓄施設の容量は約640万キロリットルです。1984年8月末に一部が完成して同年9月に原油の受け入れを始め、1990年11月末に全面完成しました。原油タンカーの係留には、北海道石油共同備蓄株式会社の設備を共用しています。

2026年の放出では、第1弾(3月26日以降)・第2弾(5月1日以降)のどちらでも、苫小牧東部国家石油備蓄基地と、借り上げタンクの北海道石油共同備蓄株式会社 北海道事業所が放出基地に含まれました(経済産業省の発表)。

5. IEA(国際エネルギー機関)の協調放出とは

IEAは、1973年の石油危機をきっかけに1974年に設立された国際機関です。加盟国には純輸入量の90日分以上の石油在庫を持つことが求められ、大きな供給途絶が起きたときには、加盟国が協調して備蓄を放出する「協調行動(コレクティブ・アクション)」の仕組みがあります。

IEAによると、協調行動はこれまで6回行われています。1991年(湾岸戦争の前)、2005年(ハリケーン・カトリーナとリタ)、2011年(リビア内戦)、2022年の2回(ロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー危機)、そして2026年3月11日に発表された中東情勢への対応で、2026年の協調行動は過去最大とされています。

日本で国家備蓄原油が初めて放出されたのは2022年度で、ロシアのウクライナ侵略によるエネルギー危機の中、IEAの協調行動として行われました。2026年の放出は、制度が始まって以来2回目です。資源エネルギー庁は、2026年の放出について、日本がG7各国やIEAと連携しながら率先して決め、その後IEAが協調放出を決定したと説明しています。経済産業省の発表では、IEAでは総量4.12億バレルの協調放出が合意され、日本の民間備蓄の義務量の引き下げもIEAの協調放出の一環として行われています。

6. 2026年の石油備蓄放出の経緯(経済産業省の発表から)

2026年の放出に関する主な出来事を、経済産業省・資源エネルギー庁の発表と資料で確認できた範囲で整理します。

日付(2026年) 出来事
2月28日〜 米国・イスラエルによるイラン攻撃。その後、原油タンカーがホルムズ海峡を事実上通れない状況に
3月11日 総理が石油備蓄放出の方針を表明(民間備蓄義務量の15日分の引き下げ、国家備蓄原油約1か月分の放出)。IEAも協調放出の方針を発表
3月16日 民間備蓄義務量を70日分から55日分に引き下げ(当面1か月間)。当面1か月分の国家備蓄石油の放出を決定
3月19日 燃料油価格の「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」を開始
3月24日 第1弾の放出内容を公表(約850万キロリットル、11か所から、元売4社へ)
3月26日 国家備蓄原油の放出を開始。あわせて約6日分の産油国共同備蓄の放出も開始
4月15日 第2弾として約20日分の国家備蓄石油の放出を決定。民間備蓄義務量の引き下げを維持
4月24日 第2弾の放出内容を公表(約580万キロリットル、10か所から、5月1日以降順次)
5月15日 代替調達の進展を踏まえ、第3弾の国家備蓄放出は決定せず。民間備蓄義務量の引き下げを6月15日まで維持
6月15日 7月は前年平月比で約10割の原油調達に目途が立ったとして、第3弾は今月も決定せず。引き下げを7月15日まで維持
7月15日 民間備蓄義務量の引き下げを、IEA理事会で協調放出の今後の方針が決まるまで「当分の間」維持すると決定
7月24日 「石油等の供給構造の強靱化ワーキング・グループ」の第1回を開催。備蓄の対象・目標の見直しや原油の調達先の多角化が論点に
10月13日 原油等の調達先・輸送経路の多角化などを目的とする「資源確保関連3法案」を閣議決定

表:2026年の石油備蓄放出に関する主な経緯(経済産業省ニュースリリース、資源エネルギー庁「石油等の供給構造の強靱化に向けて」〈2026年7月〉、資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」をもとに作成)

資源エネルギー庁の2026年7月の資料では、今回の対応を「約50日分の国家備蓄放出の決定、民間備蓄水準の15日分の引き下げ、約6日分の産油国共同備蓄の放出」とまとめています。原油の輸入量は4月に前年同月比63.7%減、5月に57.2%減と大きく落ち込み、民間事業者の原油の調達率は4月に前年平月比で約25%まで下がりました。備蓄で量を確保しながら代替調達を進めた結果、7月の調達率は約10割まで回復する見込みとされ、燃料油の国内向け販売量は3〜5月とも前年同月とほぼ同じ水準が維持されました。

資源エネルギー庁が10月に公表した「石油備蓄の現況」では、8月末時点でも民間備蓄の義務量は55日分に引き下げたままです。最新の状況は、資源エネルギー庁の発表で確認してください。

重要 ナフサは石油備蓄の対象外。関連する資材に影響が出た

石油化学用のナフサは、石油備蓄の基準備蓄量や目標の計算から除かれています。資源エネルギー庁の資料では、2026年はナフサの供給不安から、シンナー・塗料、接着剤、テープ、包装フィルム・ビニール類、ボトル等の容器といったナフサ関連製品で、供給の偏りや流通の目詰まりが起きたと報告されています。燃料だけでなく、工事・包装・製造で使う資材の調達にも影響が出る可能性がある点は、知っておきたいポイントです。

7. 備蓄放出で灯油価格・電気料金は下がる?北海道への影響の考え方

結論から言うと、備蓄の放出は「量」を確保するための措置で、価格を直接下げる仕組みではありません。石油備蓄法の目的も、経済産業省の発表の趣旨も、石油製品の供給に支障が出ないようにすることです。2026年3月16日の経済産業省の発表は、あわせて、IEAの協調行動として国際エネルギー市場の安定化に取り組むものとも説明しています。価格については、別の措置として燃料油の補助(激変緩和措置)が行われています。

灯油価格:放出が始まっても2月の水準には戻らなかった

資源エネルギー庁の石油製品価格調査(北海道経済産業局の集計)で、北海道の灯油価格(1リットルあたり・税込)を見ると、2月から3月に大きく上がり、3月26日に放出が始まった後も2月の水準には戻らず、高い水準が続いています。

時点 北海道・店頭 北海道・配達(18Lポリタンク) (参考)全国・店頭
2026年2月 124.4円 127.2円 122.2円
2026年3月 146.0円 148.4円 140.8円
2026年9月 145.6円 148.2円 141.0円

表:北海道の灯油価格(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」。北海道経済産業局「北海道の石油製品の価格・月末在庫量」2026年8月版の月次表から。各月の最終調査時点の価格)

同じ調査の週次データ(北海道・店頭。18リットルあたりの価格を1リットルあたりに換算)で見ると、値上がりは放出が始まる前の3月中旬に起きています。3月9日調査の127.1円から、3月16日調査では152.7円に上がりました。放出が始まった3月26日の前後は、3月23日調査147.2円、3月30日調査146.0円、4月6日調査145.4円と少し下がり、その後は9月まで145〜146円台でほぼ横ばいでした。10月に入って再び上がっています(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」週次データ、2026年10月21日公表分)。

2026年度の地域別の週次調査では、10月21日公表分の全道域の灯油価格は、店頭155.7円、配達158.8円(1リットルあたり・税込)でした。

価格が上がった背景として、資源エネルギー庁の資料は、原油の輸入単価が4月に前年同月比37.9%、5月に67.1%上がったこと、そして「国際原油価格指標の上昇を上回る調達価格の高騰は避けられなかった」ことを挙げています。備蓄の放出がなかった場合に価格がどうなっていたかは公表資料では示されていませんが、供給の不足や混乱が大きくなり、価格への影響もより大きかった可能性はあります(推測)。

灯油の価格支援は、2026年3月19日から「緊急的激変緩和措置」として行われています。ガソリンの全国平均小売価格が170円を超える見込みとなった場合に超過分を補助し、灯油・軽油・重油にはガソリンと同額の補助が行われる仕組みです。北海道の灯油価格の詳しい動きと値上がりの理由は「北海道の灯油価格はなぜ高騰?2026年の値上げ理由と企業の対策」で解説しています。

北海道 道内の灯油在庫は前年より少ない水準で推移

経済産業省の統計(北海道経済産業局の集計)では、北海道の灯油の月末在庫量は、2026年3月末が24.36万キロリットルで、前年同月(56.00万キロリットル)の半分以下でした。8月末は69.93万キロリットルで、前年同月(84.65万キロリットル)を下回っています。灯油は冬に向けて在庫を積み上げる燃料です。需要期の調達については、供給会社と早めに数量や納入の条件を確認しておくと安心です。

電気料金:燃料費調整で数か月遅れて反映される

電気料金への影響は、主に「燃料費調整」を通じて現れます。資源エネルギー庁によると、燃料費調整制度は、原油・LNG・石炭の輸入価格(貿易統計価格)の変動を毎月の電気料金に自動で反映する仕組みです。各月の3〜5か月前の3か月平均の燃料価格を使うため、燃料価格の変化は2か月以上遅れて料金に反映されます(例:12〜翌2月の燃料価格は5月の料金に反映)。各燃料の重みは、電力会社ごとの火力発電の燃料構成で決まります。

燃料価格の変化 → 3〜5か月前の3か月平均 → 燃料費調整単価 → 電気料金

平均燃料価格(円/kl)= 原油価格 × α + LNG価格 × β + 石炭価格 × γ
α・β・γ:各社の火力発電の燃料構成(熱量)にもとづく換算係数

原油価格は、LNGを通じても電気料金に関わります。エネルギー白書2022では、伝統的なLNG契約は原油価格に連動する価格決定方式が通常だったと説明されています。そのため原油の値上がりは、数か月遅れて電気料金に及ぶことがあります。ただし、その大きさは電力会社の燃料構成や契約内容で変わり、備蓄放出との因果関係を数字で示すことはできません。

2026年夏の請求額を見るときは、国の電気・ガス料金支援にも注意が必要です。資源エネルギー庁によると、電気料金は2026年7月・9月使用分で低圧3.5円/kWh・高圧1.8円/kWh、8月使用分で低圧4.5円/kWh・高圧2.3円/kWhが支援されています。前後の月と比べるときは、この支援分を除いて比べる必要があります。

なお、燃料価格の上昇分を反映できる上限(基準燃料価格の1.5倍)は、大手電力の規制料金の仕組みです。高圧など自由料金のメニューでは、燃料費調整の方式や上限の有無は契約ごとに確認が必要です。中東情勢と北海道の電気料金、市場連動プランと固定プランの考え方は「中東情勢で北海道の電気料金は上がるのか?」、燃料費調整額のしくみは「「電源調達調整費」と「燃料費調整額」の違い」で解説しています。

8. よくある誤解と、北海道の企業が確認しておきたいこと

よくある誤解 実際
備蓄を放出すれば、灯油やガソリンの価格は下がる 放出の目的は供給の確保です。2026年は放出が始まった後も、北海道の灯油価格は2月の水準に戻らず、高い水準が続きました。価格の抑制は、補助(激変緩和措置)など別の措置で行われています
「200日分」の備蓄は、200日たつと石油がなくなるという意味 備蓄日数は、備蓄量を国内の消費量で割った指標です。実際には輸入も続いており、2026年は備蓄で量を確保しながら代替調達が進められ、7月には前年平月比で約10割の調達が見込まれました
放出が決まれば、すぐに店頭に届く 国家備蓄の多くは原油で、精製が必要です。2026年は製油所に届き始めたのが4月中旬以降で、その間は民間備蓄が使われました

表:石油備蓄についてのよくある誤解(資源エネルギー庁の資料・公表値をもとに作成)

北海道の企業として、平時から確認しておきたいのは次の点です。

  • 灯油・重油・軽油の月々の使用量、タンクの容量と残量、発注から納入までの日数
  • 電気料金の契約の種類(燃料費調整の方式、市場連動かどうか)
  • 燃料・資材の供給が細ったときの代わりの調達先と、優先して守る設備や業務

病院・介護施設などで非常用の燃料を備える場合は、「自衛的燃料備蓄補助金とは|北海道の医療・福祉施設向け解説」もあわせて確認してください。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 日本の石油の国家備蓄は何日分ありますか?

A. 資源エネルギー庁の速報(推計値)では、2026年10月24日時点で国家備蓄101日分、民間備蓄94日分、産油国共同備蓄5日分、合計200日分です。確報の最新値(2026年8月末)は国家備蓄103日分、合計204日分(IEA基準では合計175日分)です。

Q2. 国家備蓄の放出は誰がどのように決めるのですか?

A. 経済産業大臣が、石油備蓄法第31条にもとづいて、石油の供給が不足する事態やそのおそれがあり、特に必要と認めるときに、国家備蓄石油の譲渡し・貸付けを決めます。民間備蓄は、第7条第3項にもとづいて義務量を期間を定めて減らし、告示する方法で取り崩されます。国家備蓄の払い出しはJOGMECが行います。

Q3. 北海道に国家石油備蓄基地はありますか?

A. あります。苫小牧市と厚真町にまたがる苫小牧東部国家石油備蓄基地で、地上タンク方式、備蓄施設の容量は約640万キロリットルです。2026年の第1弾・第2弾の放出では、苫小牧東部基地と、借り上げタンクの北海道石油共同備蓄 北海道事業所が放出基地に含まれました。

Q4. 備蓄を放出すると灯油は安くなりますか?

A. 放出は供給量を確保するための措置で、価格を直接下げる仕組みではありません。2026年の北海道の灯油の店頭価格(1リットルあたり・税込、資源エネルギー庁調査)は、放出が始まる前の3月中旬に急に上がり(3月9日調査127.1円→3月16日調査152.7円)、3月26日に放出が始まった後も、2月の水準(124円台)には戻らず、9月まで145〜146円台で推移しました。価格の抑制は、3月19日に始まった燃料油の激変緩和措置で行われています。

Q5. IEAの協調放出とは何ですか?

A. IEA加盟国が、大きな供給途絶のときに協調して備蓄を放出する仕組みです。加盟国には純輸入量の90日分以上の在庫が求められています。協調行動はこれまで6回で、2026年3月11日に発表された中東情勢への対応が過去最大です。日本の2026年の放出も、IEAの協調行動として位置づけられています。

Q6. 放出した国家備蓄は元に戻すのですか?

A. 資源エネルギー庁は2026年7月の資料で、国家備蓄原油が放出前の約2.6億バレルから約1.7億バレルに減るとし、IEA基準90日分の水準を確保するためにも国家備蓄原油量の回復が必要と整理しています。備蓄の対象や目標の見直しも、審議会のワーキング・グループで議論されています。

10. まとめ

  • 石油の国家備蓄は、国が石油備蓄法にもとづいて保有する石油で、供給が不足する事態に経済産業大臣の決定で放出されます
  • 備蓄は国家・民間・産油国共同の3つ。2026年10月24日時点の速報で国家備蓄101日分、合計200日分です
  • 放出の手段は、民間備蓄の義務量の引き下げ(第7条第3項)と国家備蓄の譲渡し・貸付け(第31条)。国家備蓄は精製が必要なため、製油所に届くまで時間がかかります
  • 北海道には苫小牧東部国家石油備蓄基地があり、2026年の放出でも放出基地になりました
  • 2026年は約50日分の国家備蓄放出が決定され、IEAの過去最大の協調行動の一環として行われました
  • 放出は量の確保策で、灯油価格を直接下げるものではありません。原油など燃料価格の変動は、燃料費調整を通じて数か月遅れで電気料金に反映されますが、備蓄放出との因果関係を数字で示すことはできません

この記事に関係するtotokaのサービス

法人の業務用灯油を、複数の供給会社の見積を同じ条件で比べて見直しています。

灯油料金の見直し →

記事情報
公開日:2026年3月12日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・経済産業省「民間備蓄義務量の引き下げ及び国家備蓄石油の放出を行います」2026年3月16日(経済産業省)
・経済産業省「国家備蓄原油の放出を行います」2026年3月24日(経済産業省)
・経済産業省「第2弾の国家備蓄石油の放出を行います」2026年4月15日(経済産業省)
・経済産業省「第2弾の国家備蓄原油の放出を行います」2026年4月24日(経済産業省)
・経済産業省「民間備蓄義務量の引き下げの維持を継続します」2026年5月15日(経済産業省)、2026年6月15日(経済産業省)
・経済産業省「民間備蓄義務量の引き下げを維持します」2026年7月15日(経済産業省)
・経済産業省「『原油等の安定的な輸送の確保のための指定水路の利用の合理化に関する法律案』、『特定貨物保険契約及び特定船舶保険契約の履行の確保に関する特別措置法案』及び『独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構法の一部を改正する法律案』が閣議決定されました」2026年10月13日(経済産業省)
・資源エネルギー庁「石油等の供給構造の強靱化に向けて」2026年7月(PDF)
・資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」(資源エネルギー庁)令和8年10月公表分(PDF)、令和8年3月公表分(PDF)
・資源エネルギー庁「石油備蓄の状況(推計値の速報)」(PDF)
・資源エネルギー庁 エネこれ「今こそ知りたい、日本の『石油備蓄』のしくみとは?」2026年4月13日(資源エネルギー庁)
・e-Gov法令検索「石油の備蓄の確保等に関する法律」(e-Gov)
・JOGMEC「国家備蓄原油の放出について」(JOGMEC)
・JOGMEC「苫小牧東部国家石油備蓄基地」(JOGMEC)
・JOGMEC「国際関係(産油国共同備蓄)」(JOGMEC)
・JOGMEC「民間石油・石油ガス備蓄支援」(JOGMEC)
・IEA “Oil security and emergency response”(IEA)
・北海道経済産業局「北海道における石油製品情報(価格・需給)」(北海道経済産業局)
・資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(資源エネルギー庁)、都道府県別の週次データ 2026年10月21日公表分(Excel)
・資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」(資源エネルギー庁)
・資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」(資源エネルギー庁)
・資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」第3部第1章第2節(資源エネルギー庁)
※2026年10月27日時点の情報です。備蓄日数は毎月(速報は毎日)更新され、民間備蓄の義務量の扱いや価格支援の内容も変わる可能性があります。最新の状況は、経済産業省・資源エネルギー庁の発表でご確認ください。