新電力は本当にやばい?倒産・撤退の実態と法人が契約前に確認すべき5つの点

「新電力はやばい」と言われる主な理由は、2021年1月と2022年に卸電力市場の価格が高騰し、新電力の撤退・倒産・新規受付停止が相次いだことです。帝国データバンクの調査では、2021年4月時点で登録のあった新電力706社のうち、2024年3月までに119社が撤退・倒産・廃業しています。

ただし、新電力がすべて危ないわけではありません。電力・ガス取引監視等委員会の公表では、2026年7月分の新電力のシェアは販売電力量で24.0%です。法人にとって本当に問題になるのは、契約先が撤退したときに次の契約先が見つからず、割高な「最終保障供給」に移ることと、料金の変動の仕組みや解約条件を理解しないまま契約することです。どちらも、契約前の確認と、通知を受けたあとの手順で備えられます。

この記事では、2026年10月27日時点の公的資料をもとに、撤退・倒産が起きた背景、撤退・倒産の件数と最終保障供給の推移、契約先が撤退したときの通知のルールと切り替えの手順、北海道電力ネットワークの最終保障供給の料金、契約前に確認すべき点を整理します。個別の事業者の評価は扱いません。

この記事でわかること
・新電力の撤退・倒産が相次いだ背景(2021年1月・2022年の市場価格高騰)
・撤退・倒産の件数と、最終保障供給の契約件数の推移(全国・北海道)
・契約先が撤退・倒産したときの通知期間と、法人がとるべき手順
・北海道電力ネットワークの最終保障供給の料金(2026年11月1日実施)と条件
・契約前に確認すべき5つの点(登録・料金の変動・解約条件・電源構成・説明と書面)

更新履歴

  • 2026年10月27日:全面改訂。撤退・倒産の件数を帝国データバンクの公表資料で、最終保障供給の契約件数を電力・ガス取引監視等委員会の公表資料(2026年10月1日時点)で確認して掲載。撤退時の通知期間、北海道電力ネットワークの最終保障供給の料金(2026年11月1日実施)、切り替えの手順、契約前の確認点を追加。根拠を確認できない事例・数値を削除
  • 2025年9月16日:初版公開

1. 「新電力はやばい」と言われる理由と、この記事の結論

「新電力」とは、みなし小売電気事業者(旧一般電気事業者。北海道では北海道電力)以外の小売電気事業者のことです。電気の小売は、2016年4月1日から全面的に自由化されました(特別高圧は2000年3月、高圧は2004年4月・2005年4月に段階的に自由化)。小売電気事業を営むには、電気事業法にもとづく経済産業大臣の登録が必要です。資源エネルギー庁の一覧では、2026年9月30日現在の登録小売電気事業者は823事業者(北海道電力などのみなし小売電気事業者を含む)です。

電力・ガス取引監視等委員会の「電力取引の状況(令和8年7月分)」では、全国の新電力シェアは販売電力量ベースで24.0%、契約口数ベースで25.2%です。同じ資料の北海道エリアの数値から計算すると、北海道の新電力シェアは販売電力量で約23%、高圧で約22%です。

「やばい」と言われる中身は、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

「やばい」の中身 実際に起きたこと・起こり得ること 備え方
事業者が撤退・倒産する 契約が終了し、期限までに次の契約先が見つからないと最終保障供給などに移る 通知の内容を確認し、早めに切り替え先を探す(4章・6章)
料金が大きく変動する 市場連動型や燃料費調整の上限がない料金では、市場や燃料の価格が上がると請求額も上がる 変動の仕組みと上限の有無を契約前に確認する(7章)
契約条件を理解しないまま契約する 違約金、自動更新、事業者側からの解除・料金改定の条件を後から知る 書面で契約期間と解約条件を確認する(7章)

表:「新電力はやばい」と言われる内容の整理(筆者作成)

ポイント:「新電力か大手か」ではなく「契約条件とリスクの持ち方」で判断する

同じ新電力でも、料金の決め方、契約期間、解約条件は事業者やプランごとに違います。「新電力だから危ない」「大手だから安心」と一括りにせず、どの条件で、どのリスクを自社が負う契約なのかを確認することが重要です。

2. 撤退・倒産が相次いだ背景:2021年1月と2022年の市場価格高騰

新電力の撤退・倒産が増えたきっかけは、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格の高騰です。大きな高騰は2回ありました。

2021年1月:寒波とLNG不足で、市場価格が一時251円/kWhに

資源エネルギー庁の審議会資料(2021年6月の中間取りまとめ)によると、2021年1月上旬、断続的な寒波で電力需要が大きく増えました。同時に、LNG(液化天然ガス)の在庫が減ってLNG火力の稼働が抑えられ、市場への売り入札が減りました。その結果、1月13日にはシステムプライスの1日平均が154.6円/kWh、1月15日には30分ごとのコマで最高251.0円/kWhを記録しました。国はインバランス料金の上限を200円/kWhとする措置などを講じ、価格は1月25日の週におおむね落ち着きました。

2022年:燃料価格の高騰で、高い市場価格が長く続いた

2022年は、2021年1月のような短期間の急騰ではなく、高い価格が何か月も続いた点が特徴です。資源エネルギー庁の資料(2023年5月26日)では、2021年秋ごろからの欧州でのガス需要の増加に加え、2022年2月以降にロシアから欧州へのパイプラインによるガス供給が減ったことなどで、国際的なガス・LNG価格が高騰したと説明されています。

月 月平均(円/kWh) 月内の最高(円/kWh)
2022年4月 17.8 45.0
2022年6月 21.3 100.0
2022年7月 24.8 100.0
2022年8月 25.5 80.0
2022年12月 25.0 47.4
2023年1月 19.6 44.4
2023年3月 9.8 17.8

表:JEPXスポット市場価格(システムプライスの日平均)の月平均と月内の最高値(一部の月を抜粋。資源エネルギー庁「市場価格の動向とリスクヘッジ等について」2023年5月26日)

同じ資料では、2023年3月以降は10円/kWh以下の水準になったとされています。後で見るように、最終保障供給の契約件数はその後減少しました。資料には減少の原因は書かれていませんが、市場価格の下落に加えて、2022年秋に最終保障供給料金へ市場価格調整(後述)が導入されたことなど、複数の要因が重なったと考えられます(推測)。

なぜ新電力が影響を受けやすかったのか

帝国データバンクは、2020年末からのエネルギー価格高騰で電力の調達コストが膨らみ、新電力が「逆ザヤ」(調達コストが販売価格を上回る状態)に悩まされてきたと分析しています。また、2022年4月の調査では、安値を強みに顧客を獲得してきたため、値上げによる価格転嫁が十分にできない可能性を指摘していました。

仕組みとしては、電気を卸電力市場などから仕入れる割合が大きく、お客さまには固定に近い単価で売っている場合、市場価格が上がると仕入れ値だけが上がります。売れば売るほど赤字になる状態が続くと、新規の受付停止、事業の撤退、倒産につながります。逆に言えば、調達の方法と料金の決め方が、事業者の耐久力を左右するということです。

3. 数字で見る:撤退・倒産と最終保障供給の推移

撤退・倒産の件数は、帝国データバンクが資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者一覧」をもとに調べています。2024年3月の調査では、2021年4月7日時点で登録のあった新電力706社を定点として追跡しています。

時点 内容 件数 出典
2021年度 新電力の倒産件数 14件(2022年4月の公表時点で過去最多) 帝国データバンク(2022年4月公表)
2022年3月 撤退・倒産・廃業した新電力(累計) 17社 帝国データバンク(2024年3月公表)
2023年3月 契約停止・撤退・倒産した新電力 195社(登録事業者の27.6%) 帝国データバンク(2023年3月公表)
2024年3月 撤退・倒産・廃業した新電力(累計) 119社(706社の16.9%) 帝国データバンク(2024年3月公表)
2024年3月 新規契約を停止している新電力(累計) 69社(同9.8%) 同上
2024年3月 サービスを再開した新電力(一部再開を含む) 47社(同6.7%) 同上

表:新電力の撤退・倒産などの件数(帝国データバンクの各調査。調査ごとに集計の区分が異なるため、数字を単純に比べることはできません)

契約先がなくなった法人がどれだけ「最終保障供給」に移ったかは、電力・ガス取引監視等委員会が2022年3月から一般送配電事業者に聞き取り、定期的に公表しています。

時点 全国(件) 北海道(件)
2022年3月31日 5,478 456
2022年10月3日 45,866 1,562
2022年11月1日 43,585 1,726
2025年4月1日 2,562 11
2026年7月1日 1,629 20
2026年10月1日 1,546 16

表:最終保障供給の契約件数(電力・ガス取引監視等委員会 2022年11月15日公表・2026年10月15日公表の資料から抜粋。各時点の公表値で、のちの公表で修正されることがあります)

全国の件数は、2022年10月に4万5千件を超えたあと、市場価格の下落とともに減り、2026年10月1日時点では1,546件です。「一斉に撤退が起きる状況」は落ち着いていますが、ゼロにはなっていません。燃料価格や需給の状況によっては市場価格が再び上がる可能性があることは、資源エネルギー庁の資料でも指摘されています。

4. 契約先の新電力が撤退・倒産したら、法人はどうなる?

契約先が撤退・倒産しても、その日に突然電気が止まるわけではありません。電気事業法と、国の「電力の小売営業に関する指針」(2026年6月8日改正)で、需要家(電気を使うお客さま)への事前の通知が決められています。

ケース 需要家への通知・周知の時期 根拠
小売電気事業を休止・廃止する 休廃止日の60日前まで(契約電力50kW以上の契約がある事業者や、供給の相手が1万件以上の事業者は90日前まで) 電気事業法第2条の8第3項、同法施行規則第3条の11(指針で説明)
需要家に落ち度がないのに、事業者から契約を解除する 解除を希望する日までに、低圧60日・高圧90日・特別高圧90日の期間を確保 電力の小売営業に関する指針
小売電気事業者の倒産などで契約を解除する 解除の15日程度前までに、解除日と理由を示して予告 同上
無契約を理由に、一般送配電事業者が供給を止める 供給停止の5日程度前までに予告 同上
小売電気事業者の託送料金の未払いなどで、一般送配電事業者が託送供給契約を解除する 供給停止の1か月程度前と5日程度前の2回、予告 同上

表:撤退・倒産時の需要家への通知のルール(電気事業法、同法施行規則、経済産業省「電力の小売営業に関する指針」2026年6月8日最終改定)

指針では、通知に「供給停止の年月日」「理由」「問い合わせ先」「無契約になると電気が止まること、最終保障供給(低圧は経過措置期間中の特定小売供給)を申し込む方法があること」を含めるよう求めています。通知を受け取ったら、まず停止日と問い合わせ先を確認し、社内で共有してください。

資源エネルギー庁のよくある質問では、通知された期日までに新しい小売電気事業者と契約すれば、そのまま電気の供給を受けられると説明されています。期日に間に合わなくてもすぐに止まるわけではありませんが、無契約の状態が長く続くと供給が止まる可能性があるため、早めに切り替え先を探す必要があります。

重要 高圧と低圧で「受け皿」が違う

高圧・特別高圧のお客さまの受け皿は、一般送配電事業者(北海道では北海道電力ネットワーク)の最終保障供給です。低圧(小規模な店舗・事務所など)のお客さまは、経過措置期間中は、みなし小売電気事業者(北海道では北海道電力)の特定小売供給(規制料金)を申し込む方法があります。

また指針では、無契約のまま電気を使っていた期間は、新しい契約の効力をさかのぼらせるか、最終保障供給(低圧は特定小売供給)を受けたことにするか、どちらかを選ぶ必要があると説明されています。

5. 最終保障供給とは:北海道電力ネットワークの料金と条件

最終保障供給は、電気事業法で一般送配電事業者に義務づけられた、どの小売電気事業者とも契約できないお客さまへの「セーフティネット」としての電気の供給です。一般送配電事業者は正当な理由がなければ最終保障供給を拒めず(第17条第3項)、料金などの条件を約款に定めて経済産業大臣に届け出ます(第20条)。

対象 北海道内(離島等供給約款の対象地域を除く)で、高圧または特別高圧で電気の供給を受け、いずれの小売電気事業者とも契約が成立しないお客さま
契約種別 最終保障電力A(電灯・小型機器を使う需要、または電灯・小型機器と動力をあわせて使う需要。事務所、病院、旅館、飲食店、商店、倉庫など)、最終保障電力B(動力〈付帯電灯を含む〉を使う需要)、最終保障予備電力。A・Bは原則として契約電力50kW以上
契約期間 契約使用期間は1年を超えないものとする
料金の調整 燃料費等調整に加えて「市場価格調整」がある(下記)
申込み先 北海道電力ネットワーク(所定の申込書。契約電力、使用期間、供給地点特定番号などを記入)

表:北海道電力ネットワークの最終保障供給の主な条件(同社「電気最終保障供給約款」2026年11月1日実施)

料金単価(2026年11月1日実施)

北海道電力ネットワークは2026年10月14日、最終保障供給の料金を2026年11月1日から見直すと公表しました。同社は、最終保障供給の料金は小売電気事業者の標準的な料金を踏まえて設定する必要があるため、北海道電力の料金などを参照したと説明しています。

契約種別(6kV) 区分 2025年10月1日実施 2026年11月1日実施
最終保障電力A 基本料金(1kW) 3,231.84円 3,564.12円
最終保障電力A 電力量料金(1kWh) 25.66円 25.73円
最終保障電力B 基本料金(1kW) 3,456.24円 3,788.52円
最終保障電力B 電力量料金(1kWh) 23.51円 23.58円

表:最終保障供給の料金単価(6kV受電の場合。消費税等相当額を含み、燃料費等調整単価・市場価格調整単価・再エネ賦課金は含まない。北海道電力ネットワーク「料金単価表(電気最終保障供給約款)」2026年10月14日)

参考に、北海道電力の6kV受電の「業務用電力(一般料金)」は、2026年11月1日実施で基本料金2,970円10銭/kW、電力量料金23円47銭/kWhです。基本料金で比べると、最終保障電力Aは業務用電力の約1.2倍になります(両社の単価表から計算)。なお、国の審議会資料(2022年7月の中間とりまとめ案)では、最終保障供給料金は標準的な料金メニューの約2割増しの水準で設定されていると説明されています。

市場価格調整単価 = 卸電力取引市場価格 + 託送供給等約款の電力量料金単価 - 最終保障供給約款の電力量料金単価(燃料費調整単価を含む)

卸電力取引市場価格は、JEPXスポット市場の北海道エリアプライスの平均(消費税等相当額を加え、損失率で補正)。前々月21日〜前月20日の実績で算定。北海道エリアプライスの平均が4.57円/kWhを下回る場合はマイナス調整となる(北海道電力の標準メニューの電力量料金単価が下限)

市場価格調整は、2022年に国の審議会で「燃料価格の高騰で、自由料金より最終保障供給料金のほうが割安になる逆転が起きている」と問題になったことを受けて設けられた仕組みです。市場価格が上がると最終保障供給の電力量料金にプラスの調整が加わります。つまり、市場価格が高騰している時期ほど、最終保障供給も高くなる仕組みです。なお、2026年10月分は、市場価格(損失率補正後)に託送の電力量料金単価を加えても、最終保障供給の電力量料金単価(燃料費調整を含む)を下回ったため、市場価格調整単価は0円でした。

計算例(仮定の数字):最終保障供給に移ると、毎月いくら変わるか

前提:6kV受電、契約電力200kW、月の使用量50,000kWh。力率による割引・割増、燃料費等調整、市場価格調整、再エネ賦課金、国の料金支援は除いた単純計算です。

・最終保障電力A:基本料金 3,564.12円×200kW=712,824円、電力量料金 25.73円×50,000kWh=1,286,500円、合計1,999,324円
・北海道電力 業務用電力(一般料金):基本料金 2,970.10円×200kW=594,020円、電力量料金 23.47円×50,000kWh=1,173,500円、合計1,767,520円
・差額:月231,804円(この前提では約13%高い)

実際の差額は、契約先の新電力の料金、燃料費等調整、市場価格調整によって変わります。最終保障供給は、あくまで次の契約先が決まるまでのつなぎと考えてください。

北海道 北海道の最終保障供給の状況

北海道の最終保障供給の契約件数は、2022年3月31日の456件から、2022年11月1日には1,726件まで増えました。2026年10月1日時点では16件です(電力・ガス取引監視等委員会)。

北海道の最終保障供給の市場価格調整は、全国の平均価格(システムプライス)ではなく、北海道エリアプライスをもとに計算されます。北海道エリアの市場価格が上がる局面では、最終保障供給の料金も上がる点に注意が必要です。

また、北海道では2026年11月1日に、北海道電力の料金と、北海道電力ネットワークの最終保障供給の料金がそろって改定されます。改定の内容は「北海道電力の託送料金・電気料金 値上げまとめ」で解説しています。

6. 撤退の通知を受けたときの切り替え手順

撤退・契約解除の通知を受けたら、次の順で進めます。高圧の場合は、比較・社内決裁に時間がかかるため、通知を受けた週のうちに動き始めるのが安全です。

1
通知の内容を確認する
供給停止日、理由、問い合わせ先、最終保障供給(低圧は特定小売供給)の案内が書かれているかを確認します。停止日から逆算して、社内の決裁日程を決めます。
▼
2
見積りに必要な情報をそろえる
検針票や請求書で「お客さま番号」と「供給地点特定番号」を確認し、直近12か月の使用量と契約電力の資料を用意します。供給地点特定番号の調べ方は「供給地点特定番号とは」で解説しています。
▼
3
複数の小売電気事業者に見積りを依頼する
登録小売電気事業者かどうかを資源エネルギー庁の一覧で確認し、料金の変動の仕組み、契約期間、解約条件をそろえて比べます(7章の確認点)。
▼
4
新しい事業者に申し込む
申込み先は切り替え先の事業者です。資源エネルギー庁の案内では、旧契約の解約は、利用者の同意があれば切り替え先の事業者が代行できます。申込みを受けた事業者は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)の「スイッチング支援システム」(2016年3月1日運用開始)に申込み内容を入力し、切り替えの手続きを進めます。このシステムを使うのは低圧と契約電力500kW未満の高圧です。東京電力パワーグリッドの案内では、500kW以上の高圧と特別高圧は別の申込みシステムで手続きするとされています。
▼
5
期日に間に合わない場合は、受け皿を申し込む
高圧・特別高圧は北海道電力ネットワークの最終保障供給、低圧は北海道電力の特定小売供給を申し込みます。最終保障供給の契約使用期間は1年以内のため、その間に改めて小売電気事業者と契約します。

なお、資源エネルギー庁は、電気の品質や停電の可能性はどの会社から電気を買っても同じだと説明しています(詳しくは「新電力に切り替えても停電しやすくならない理由|送配電・最終保障供給【北海道】」)。

7. 契約前に確認すべき5つの点

撤退・倒産のリスクをゼロにすることはできませんが、契約前に次の5点を確認しておけば、料金が想定外に上がる事態や、撤退時の混乱を避けやすくなります。

確認する点 具体的に見ること 根拠・確認先
1. 登録小売電気事業者か 契約の相手が登録事業者か。一覧の「休止予定期間」欄も確認する 資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」
2. 料金がどう変動するか 固定単価か、燃料費調整か、市場連動か。変動の計算方法と上限の有無 電気事業法施行規則第3条の12第1項第8号(説明義務)
3. 契約期間と解約条件 契約期間、自動更新、中途解約の違約金。事業者側から解除・料金改定できる条件 契約書・約款、電力の小売営業に関する指針
4. 電気の調達と電源構成 電源構成を開示しているか。開示している場合はどの期間の実績か 電力の小売営業に関する指針(開示は「望ましい行為」)
5. 説明・書面・窓口 供給条件の説明と書面の交付があるか。代理店・取次の場合は契約の相手と問い合わせ先 電気事業法第2条の13

表:新電力と契約する前に確認すべき5つの点(電気事業法、電気事業法施行規則、経済産業省「電力の小売営業に関する指針」をもとに作成)

1. 登録小売電気事業者か

資源エネルギー庁の一覧には、登録番号、名称、法人番号、本社住所、登録年月日、休止予定期間が載っています。提案書の社名と、契約書の契約相手の社名が同じかも確かめてください。

2. 料金がどう変動するか

燃料や電力の取引価格で料金が変わるプランでは、事業者や代理店は「その旨」「変動額の計算方法」「上限の有無」を説明しなければなりません。指針では、メリット(安くなること)だけを伝えてデメリット(高くなる可能性)を伝えないことは、説明義務に違反するとしています。市場連動型では、過去に市場価格が大きく変動した例を使い、グラフで変動額を示すなど分かりやすく説明することが望ましいとされています。調整項目の違いは「電源調達調整費と燃料費調整額の違い」、市場連動プランの比べ方は「高圧電力の市場連動プランの比較」で解説しています。

3. 契約期間と解約条件

確認したいのは、こちらから解約する場合の条件だけではありません。事業者側がどんな場合に契約を解除・変更できるかも重要です。指針では、切り替え先の事業者は、旧契約の解除が必要なことや、違約金などが発生する可能性を説明することが望ましいとされています。複数年契約の場合は、途中で料金の算定方法が変わる条件があるかも確認します。

4. 電気の調達と電源構成

電源構成の開示は法律上の義務ではなく、指針で「望ましい行為」とされています。開示する場合は、どの期間の実績または計画かを明示する必要があります。開示の有無や内容は、事業者の電気の調達を知る手がかりの一つです。北海道電力など旧一般電気事業者の電源構成は「旧一般電気事業者の電源構成」で整理しています。

5. 説明・書面・窓口

供給条件の説明と書面の交付の義務は、小売電気事業者だけでなく、契約の媒介・取次ぎ・代理を行う事業者にもかかります(電気事業法第2条の13)。代理店や取次店から提案を受けた場合は、契約の相手がどの会社か、撤退や料金の問い合わせはどこにするかを書面で確認してください。契約方式の違いは「媒介・取次・代理の違い」で解説しています。

8. よくある失敗と注意点

注意 基本料金・電力量料金の単価だけで比べる

新電力の料金は、燃料費調整や電源調達調整費、市場価格に連動する項目など、単価以外の調整で大きく変わることがあります。比較は、同じ使用量の前提で、調整項目を含めた年間の総額で行ってください。

注意 「上限あり」の条件が変わる可能性を見落とす

指針では、上限のある市場連動型メニューで上限を撤廃する場合にも、料金メニューの変更として説明が必要とされています。契約時に上限があっても、変更の条件と手続きが契約書でどう決まっているかを確認しておく必要があります。

注意 撤退の通知を後回しにする

通知から停止日まで、高圧でも90日程度、倒産などの場合は15日程度しかないことがあります。撤退が相次ぐ時期は、切り替え先の候補が新規受付を止めていることもあります(帝国データバンクの調査では、2024年3月時点でも69社の新電力が新規契約を停止していました)。通知を受けたら、すぐに見積りを始めてください。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 新電力は「やばい会社」が多いのですか?「やめとけ」と言われるのはなぜですか?

A. 2021年1月と2022年の市場価格高騰で、撤退・倒産・新規受付停止が相次いだためです(2024年3月までに119社が撤退・倒産・廃業。帝国データバンク調べ)。一方で、新電力のシェアは販売電力量で24.0%(2026年7月分)あり、新電力全体が危ないとは言えません。登録の有無、料金の変動の仕組み、解約条件を確認して選ぶことが大切です。

Q2. 契約している新電力が倒産・撤退したら、すぐに電気が止まりますか?

A. すぐには止まりません。事業の休廃止は60日前(契約電力50kW以上の契約がある事業者などは90日前)までに周知することが義務づけられ、倒産などで契約を解除する場合も15日程度前までの予告が求められています。期日までに新しい小売電気事業者と契約すれば供給は続きます。間に合わない場合は、高圧・特別高圧は最終保障供給、低圧は特定小売供給を申し込めます。

Q3. 最終保障供給の料金は高いのですか?

A. 北海道電力ネットワークの最終保障電力A(6kV)は、2026年11月1日実施で基本料金3,564.12円/kW、電力量料金25.73円/kWhです。北海道電力の業務用電力(6kV・一般料金)と基本料金で比べると約1.2倍です。さらに、市場価格が上がると電力量料金にプラスの調整が加わります。

Q4. 新電力はなぜ安いのですか?安い会社は危ないのですか?

A. 料金の水準は、電気の調達方法、経費、料金の決め方によって事業者ごとに違い、安い理由は一律には言えません。注意したいのは、市場価格が上がったときに誰がその負担を負う契約かという点です。帝国データバンクは2022年4月の調査で、安値を強みに顧客を獲得してきた新電力は十分な価格転嫁ができない可能性があると指摘していました。安さだけでなく、料金の変動の仕組みと契約条件をあわせて確認してください。

Q5. 市場連動型のプランは避けたほうがよいですか?

A. 一律に避けるべきとは言えませんが、市場価格が上がると請求額も上がることを理解して選ぶ必要があります。2022年6月〜12月は、スポット市場の月平均価格が20円/kWh台で推移しました。契約前に、変動額の計算方法と上限の有無を説明してもらい、過去の高騰時にいくらになったかを試算で確認してください。

Q6. 新電力に切り替えると停電しやすくなりませんか?

A. なりません。どの小売電気事業者と契約しても、電気は同じ送配電網を通って届きます。資源エネルギー庁も、電気の品質や停電の可能性はどの会社から買っても同じだと説明しています。

10. まとめ

  • 「新電力はやばい」と言われる主な理由は、2021年1月と2022年の市場価格高騰で撤退・倒産・新規受付停止が相次いだこと。2024年3月までに119社が撤退・倒産・廃業(帝国データバンク)
  • 最終保障供給の契約件数は2022年10月に全国4万5千件超まで増えたが、2026年10月1日時点では1,546件(北海道16件)まで減っている
  • 撤退・倒産時には事前の通知が義務づけられており、すぐに電気が止まるわけではない。通知を受けたら、すぐに見積りと切り替えに動く
  • 北海道の最終保障供給(6kV・A)は2026年11月1日実施で基本料金3,564.12円/kW。市場価格が上がると料金も上がるため、つなぎとして使う
  • 契約前に「登録の有無」「料金の変動の仕組みと上限」「契約期間と解約条件」「電源構成の開示」「説明と書面・窓口」の5点を確認する

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記事情報
公開日:2025年9月16日
最終更新日:2026年10月27日(全面改訂)
参照資料:
・帝国データバンク「『新電力会社』事業撤退動向調査(2024年3月)」(帝国データバンク)
・帝国データバンク「『新電力会社』事業撤退動向調査(2023年3月)」(帝国データバンク)
・帝国データバンク「『新電力会社』倒産動向調査」(2022年4月)(帝国データバンク)
・電力・ガス取引監視等委員会「令和4年11月1日時点における最終保障供給契約件数を公表いたしました」(PDF)
・電力・ガス取引監視等委員会「令和8年10月1日時点における最終保障供給契約件数について」(電力・ガス取引監視等委員会)
・電力・ガス取引監視等委員会「電力取引の状況(令和8年7月分)」(PDF)
・経済産業省「電力の小売営業に関する指針」(令和8年6月8日最終改定)(PDF)
・資源エネルギー庁「2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る検証 中間取りまとめ」(2021年6月)(PDF)
・資源エネルギー庁「市場価格の動向とリスクヘッジ等について」(2023年5月26日)(PDF)
・資源エネルギー庁「今後の小売政策の在り方について 中間とりまとめ(案)」(2022年7月)(PDF)
・資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」(資源エネルギー庁)
・資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化とは?」(資源エネルギー庁)、「電力会社の切り替え方法」(資源エネルギー庁)、「よくある質問」(資源エネルギー庁)
・電気事業法 第2条、第2条の2、第2条の8、第2条の13、第17条、第20条(e-Gov法令検索)
・電気事業法施行規則 第3条の11、第3条の12(e-Gov法令検索)
・電力広域的運営推進機関「スイッチング支援システムの利用状況について」(2024年4月9日)(PDF)
・東京電力パワーグリッド「高圧・特別高圧供給 スイッチング(供給者変更)に関するお申込みの流れ」(東京電力パワーグリッド)
・北海道電力ネットワーク「最終保障供給のご案内」(北海道電力ネットワーク)、「電気最終保障供給約款(令和8年11月1日実施)」(PDF)
・北海道電力ネットワーク「離島供給および最終保障供給の電気料金の見直しについて」(2026年10月14日)(北海道電力ネットワーク)、「料金単価表(電気最終保障供給約款)」(PDF)
・北海道電力ネットワーク「最終保障供給料金の市場価格調整」(北海道電力ネットワーク)、「市場価格調整の概要」(PDF)、「2026年10月分 市場価格調整単価」(PDF)
・北海道電力「標準電圧6,000Vで受電されるお客さま向け料金単価表」(北海道電力)、「各種約款・要綱」(北海道電力)
※2026年10月27日時点の情報です。撤退・倒産の件数は帝国データバンクの各調査時点、最終保障供給の契約件数は電力・ガス取引監視等委員会の各公表時点の数値です。料金の計算例は仮定の数字です。最新の料金・条件は各社の公式資料でご確認ください。