ロードヒーティングの費用は、初期費用(設備と工事)・運転費用(電気や灯油・ガス)・維持費用(点検・修理・更新)の3つに分けて考えます。毎年かかる運転費用は、路面に与える熱量 ÷ 方式の効率 × エネルギー単価で計算できます。電気式の場合は、ここに基本料金(契約電力)が加わります。
初期費用は、面積、熱源、既存舗装の撤去、仕上げ、電気容量などで大きく変わります。公的な資料で確認できる金額は自治体の公共施設の実績や試算が中心で、民間の駐車場や敷地とは条件が違います。そのため、この記事では初期費用の相場は示しません。代わりに、見積りを項目ごとに比べる見方を整理します。
この記事では、方式の違い、費用の構成、必要熱量の考え方、ランニングコストの計算方法、北海道電力の料金メニュー(エネとくスノープランなど)、運転制御によるコスト差、デマンドへの影響、点検・故障の注意点を、寒地土木研究所、環境省、札幌市、小樽市、北海道電力などの資料をもとに説明します。計算例の数字はすべて仮定です。2026年11月1日実施の北海道電力の料金は、2026年10月28日時点では実施前の予定です。
この記事でわかること
・電気式・温水式(灯油・ガス)・ヒートポンプ式の仕組みと特徴
・初期費用・運転費用・維持費用の分け方と、見積りで確認する項目
・必要熱量の考え方と、ランニングコストの計算方法(仮定の数字)
・北海道電力のエネとくスノープランなどの料金メニューと、終了した割引
・運転制御(センサー・タイマー)、デマンド、点検・故障の注意点
更新履歴
- 2026年10月28日:全面改訂。方式の違い、必要熱量の考え方、ランニングコストの計算(仮定の数字)、北海道電力の料金メニュー、運転制御によるコスト差、デマンド、点検・故障を追加。根拠を確認できなかった工事費・ランニングコストの数値と除雪費用の例を削除
- 2025年2月2日:初版公開
1. ロードヒーティングの方式と仕組み(電気式・温水式・ヒートポンプ式)
ロードヒーティングは、舗装の下に埋設した電熱線や、温水(不凍液)を循環させる配管で路面を加熱し、雪を融かし、凍結を防ぐ設備です。土木研究所 寒地土木研究所の資料は、道内に導入されているものを電気式と温水式に大別し、そのほとんどが電気式だと整理しています。
電気式
路面下の電熱線などに通電して発熱させる方式です。小樽市の資料では、電気方式を発熱線式・ヒートパイプ式・発熱体式の3種類に分けています。
温水式(灯油・ガス)
ボイラーで温めた不凍液を、路面下の配管に循環させる方式です。熱源は灯油、都市ガス、重油、プロパンなどです。
ヒートポンプ式
温水式の熱源をヒートポンプにしたものです。三菱電機の「MELSNOW」の説明では、戻りで約10℃前後の温水が時間をかけて雪を融かす仕組みで、燃焼系のボイラーに比べて、融かす速さより省エネ性を優先した製品とされています。既設の温水式の熱源機だけを置き換える場合には、配管の条件(13Aの架橋ポリエチレン管、1回路あたり融雪面積10㎡以下など)があります。同社のこのページは、融雪面積30㎡程度の住宅・小型店舗向け(2007年発売時の記載)として紹介しているため、大きな面積では機種の適合を確認する必要があります。
| 項目 | 電気式 | 温水式(灯油・ガスなど) |
|---|---|---|
| ヒーティング部 | 電熱線など | 不凍液を循環させるパイプなど |
| 設置の自由度 | 規模の大小に関わらず設置可能。平面形状に対応しやすい | 平面形状にやや制限がある |
| エネルギー効率 | 熱エネルギー効率が低い | エネルギー効率が高い |
| 費用の傾向 | 初期費用は低く、運転費用は高い | 初期費用は高く、運転費用は低い |
| その他 | 路面状況に対応した制御が難しい | 融雪の均一性に欠ける場合がある。地熱水など他の資源との併用が可能 |
表:電気式と温水式の特徴(国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所「融雪施設の維持管理のためのガイドライン(案)」2016年3月 表1-1より。費用は金額ではなく傾向の記述)
寒地土木研究所の資料によると、道内では昭和63年頃以降、スタッドレスタイヤ化に伴う冬の路面対策としてロードヒーティングの導入が進み、全道で数万箇所、札幌市内にも数百箇所以上あります。小樽市が管理する設備の稼働面積は、令和2年3月時点で電気方式が約4.9万㎡、ガス方式が約5,700㎡、灯油方式が約1,500㎡で、全体の約9割が電気方式です。
2. 費用の構成|初期費用・運転費用・維持費用を分けて見る
費用は、初期費用(熱源機・電熱線・配管、制御装置、舗装工事、電気工事)、運転費用(電気代、灯油・ガス代、ポンプ等の電気代)、維持費用(点検、センサーや制御盤の修理、更新)に分けると比べやすくなります。
寒地土木研究所の資料は、熱源ごとの経済性を比べるとき、初期費用を概算し、耐用年数から減価償却費を出し、電気料金などの運転費用と足して年間コストにしています。初期費用だけ、あるいは運転費用だけで比べると、判断を誤りやすいためです。
年間コスト = 減価償却費(初期費用 ÷ 耐用年数)+ 運転費用 + 維持費用
初期費用の金額は、見積書で確認する
見積りで項目ごとに確認すること
同じ面積でも、何が含まれるかで見積額は変わります。複数の見積りを比べるときは、次の項目が同じ条件で入っているかを確認します。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 舗装 | 既存舗装の撤去・処分、路盤、仕上げ舗装が含まれるか。通行する車両(大型車の有無)を設計条件として伝えたか |
| 熱源・発熱体 | 電気式は電熱線の容量(kW)、温水式はボイラーまたはヒートポンプの出力と台数 |
| 配管・不凍液 | 温水式の回路数・配管の長さ、不凍液(ブライン)の種類。メーカーによっては純正品の使用を求める |
| 制御 | 降雪センサー・路面センサー・タイマーの構成と、センサーを置く位置 |
| 電気容量 | 電気式は容量(kW)が契約電力やキュービクルの容量に影響する(第7章) |
| 維持 | 年間の点検の内容、故障時の対応範囲と費用 |
表:見積りで確認する項目(項目の整理は当記事。不凍液の純正品の指定は三菱電機の製品ページの記載による)
札幌市には、宅地内に固定式の融雪槽(機)またはロードヒーティングを設置する場合に、融資限度額300万円・無利子で融資するあっせん制度があります。金融機関からの融資で、無担保のため保証料がかかります。熱源(ガス・灯油・電気・地下水など)は問わず、既存施設の入替工事(熱源変更を含む)も対象で、修理は対象外です。申込書に添える誓約書には、個人用と法人用の様式が用意されています。
令和8年度は融資枠(25件程度)に達し、2026年6月30日に受付を終了しました。来年度分は4月下旬に受付開始の予定です(札幌市のページ、2026年6月30日更新)。
機械除雪や凍結防止剤との関係
寒地土木研究所の資料は、積雪寒冷地の冬の交通安全の確保では、経済性と機動性から機械除雪が主体としています。札幌市は、一部で除排雪と凍結防止剤の散布による管理に切り替え、ロードヒーティングを停止してきました。敷地でも、常に融かす範囲をどこまでにするかで、設備容量と運転費用が変わります。
3. 必要熱量の考え方|どれだけの熱で雪を融かすのか
ランニングコストを計算するには、まず路面に与える熱量を決めます。寒地土木研究所の資料によると、設計では「降雪を融かすための熱量」と「凍結を防ぐための熱量」をそれぞれ計算し、高いほうを採用します。
融雪の熱量 = 雪を温める熱(qs)+ 雪を融かす熱(qm)
qm = 雪密度 × 融解潜熱 × 降雪強度 (資料の式は、これを効率を表す係数ηで割って設備の出力を決める)
仮定の数字で、雪を融かす熱だけを計算してみます。雪密度100kg/㎥、氷の融解潜熱334kJ/kg、降雪強度1cm/hとします(雪密度と融解潜熱は、日本雪氷学会誌の論文が計算に使っている値)。1㎡に1時間で積もる雪は0.01㎥×100kg/㎥=1kgで、融かす熱は334kJです。1kWh=3,600kJなので、約93W/㎡(334÷3.6)になります。実際には、雪を0℃まで温める熱と、路面から空気に逃げる熱が加わるため、これより大きくなります。
実際の推計値の例が、寒地土木研究所の資料にあります。札幌市南区の電気式(川沿ロードヒーティング)で、2014年1月22日、外気温−10.4℃、風速1.9m/s、降雪強度1.0cm/hのとき、必要熱量は232W/㎡と推計されています。同じ場所で降雪強度8.0cm/h(外気温−5.3℃、風速2.0m/s)のときは547W/㎡で、供給熱量の228W/㎡を大きく上回り、積雪・凍結の状態でした。
設計発熱量と、年間に必要な熱量
公共の道路では、設備の設計発熱量が地域ごとに決められています。次の表は、北海道開発局の道路設計要領の値です。
| 該当する地域 | 歩車道(W/㎡) | 歩道橋(W/㎡) |
|---|---|---|
| 関東以南の地方 | 170 | 200 |
| 東北・北陸・道南地方 | 200 | 250 |
| 東北山間部、道央地方 | 250 | 300 |
| 道東・道北地方 | 300 | 350 |
表:設計発熱量(寒地土木研究所ガイドライン(案)表1-2。出典は北海道開発局道路設計要領 第4章。公共の道路の設計値で、民間の敷地の設計値を直接定めたものではない)
同じ資料は、札幌市のアメダスデータから12月〜2月の必要熱量を推計しています。4年間の平均で、全時間の積算が206kWh/㎡、降雪後48時間以内の積算が176kWh/㎡、降雪後24時間以内の積算が138kWh/㎡でした(2011〜2014年度)。気温が低く降雪が多かった2012年度と、比較的温暖だった2014年度では1.8倍ほどの差が出ています。必要熱量は70W/㎡と140W/㎡付近が多く、ほとんどの時間は250W/㎡以下ですが、250W/㎡以上も一定の時間発生するため、同資料は設計熱量250W/㎡を適切としています。
電気式2か所(川沿・厚別東)の調査では、実際の供給熱量が必要熱量を上回る時間が多く、削減可能率(推計)は年度と場所で8〜45%、平均25%でした。設計熱量いっぱいの出力が、それほど必要でない時間にも出ていたためです。これは札幌市内の公共の2か所の推計で、他の敷地に同じ率を当てはめられるわけではありません。
4. ランニングコストの計算方法(仮定の数字)
運転費用は、次の式で計算できます。
年間のエネルギー費 = 路面に与える年間の熱量 ÷ 効率(またはCOP) × エネルギー単価
電気式は電気がほぼ熱になる前提で効率1.0、ヒートポンプはCOP、ボイラーはボイラー効率を使う
熱量の単位をそろえるため、環境省の資料が使う換算値を示します。
| エネルギー | 単位あたりの熱量 |
|---|---|
| 電気 | 3.6MJ/kWh(3.60GJ/千kWh) |
| 灯油 | 36.5MJ/L(36.5GJ/kL) |
| 都市ガス(13A) | 45.0MJ/Nm³(45.0GJ/千Nm³) |
表:エネルギー種別の単位発熱量(環境省 温室効果ガス排出削減等指針 参考資料「導入効果の試算方法・条件」の単位発熱量。同資料は低位発熱量も別に示しているため、効率はどちらの基準かをそろえる)
以下は説明のための仮定の数字です。融雪面積100㎡、路面に与える年間の熱量を200kWh/㎡(仮定。前章の札幌市の推計値138〜206kWh/㎡を参考にした値)とすると、年間の熱量は20,000kWh(72,000MJ)です。
| 方式 | 仮定する効率 | 年間の使用量 | 仮定の単価 | 年間のエネルギー費 |
|---|---|---|---|---|
| 電気式(電熱線) | 1.0 | 20,000kWh | 25円/kWh | 500,000円 |
| ヒートポンプ式 | COP 2.0 | 10,000kWh | 25円/kWh | 250,000円 |
| 灯油の温水式 | ボイラー効率 0.8 | 約2,466L | 120円/L | 約296,000円 |
| 都市ガスの温水式 | ボイラー効率 0.8 | 2,000Nm³ | 130円/Nm³ | 260,000円 |
表:方式別の年間エネルギー費の計算例(すべて仮定。灯油は72,000MJ÷0.8÷36.5MJ/L、都市ガスは72,000MJ÷0.8÷45.0MJ/Nm³。電気式の基本料金、温水式のポンプ等の電気代、不凍液や点検の費用は含まない)
効率と単価の組み合わせで順位は変わります。COPは機種、外気温、温水の温度で大きく変わり、単価は契約や時期で違うため、実際の計算では請求書の単価とメーカーが示す条件別の効率に置き換えてください。燃料の単価の動きは「灯油・重油・LPG・電気の熱量単価比較」と「北海道の灯油価格はなぜ高騰?」で整理しています。
公共施設の実績の例(小樽市)
小樽市のロードヒーティング長寿命化計画(令和3年10月)には、市が管理する設備の運転経費が熱源別に載っています。令和元年度は、電気方式の電気代が約2.5億円(251.4百万円)、ガス方式の計が約1,470万円、灯油方式の計が約600万円です。面積あたりの使用料金(グラフからの読み取り)は、電気方式が1㎡あたり約5千円、ガス方式と灯油方式が約3千円で、電気方式は平成22年度の約1.6倍になっています。公共の道路の設備の実績で、面積、設置年、制御が設備ごとに違う点に注意が必要です。
5. 電気の料金メニュー|北海道電力のエネとくスノープランなど
ロードヒーティングの電気代が、どの契約で請求されるかを最初に確認します。北海道電力のエネとくスノープランは、同一の需要場所に他の契約が併存しない場合に限るとされています。建物と同じ需要場所にある場合は、この条件に当てはまらず、建物の契約(業務用電力や高圧電力など)の中で請求されると考えられます(推測。需要場所の扱いは北海道電力に確認してください)。
エネとくスノープラン(高圧)
北海道電力は、料金メニューのページで、公道などの融雪のために電気式ロードヒーティングを使用するお客さま向けにエネとくスノープランを案内しています。高圧のオプション契約約款では、対象を高圧で受電し、融雪のために小型機器または動力を使用する需要で、契約電力が原則50kW以上2,000kW未満、北海道電力との協議が整ったお客さまとしています。
| 項目 | 2025年10月1日実施 | 2026年11月1日実施(予定) |
|---|---|---|
| 基本料金 降雪期間(1kW・1か月) | 2,055円20銭 | 2,332円10銭 |
| 基本料金 その他期間(1kW・1か月) | 1,890円20銭 | 2,167円10銭 |
| 電力量料金 降雪期間(1kWh) | 22円10銭 | 22円17銭 |
| 電力量料金 その他期間(1kWh) | 27円93銭 | 28円00銭 |
表:エネとくスノープラン(高圧)の単価(北海道電力「電気料金単価表(高圧受電のお客さま)」。消費税等相当額を含み、燃料費等調整単価と再生可能エネルギー発電促進賦課金単価を含まない。2026年11月1日実施分は2026年10月28日時点で実施前)
約款で確認できる主な条件は次のとおりです。
- 降雪期間:毎年11月1日から翌年2月28日(閏年は29日)まで。それ以外の期間が「その他期間」
- 契約電力:500kW未満は、その月の最大需要電力と前11か月の最大需要電力のうち大きい値。500kW以上は協議
- 基本料金:まったく電気を使用しない月は半額。力率85%を基準に、上回る1%ごとに割引、下回る1%ごとに割増し
低圧のエネとくスノープランは、北海道電力のページで「公道などの融雪のために電気式ロードヒーティングをご使用される自治体などのお客さま」を対象としています。2026年11月1日に単価の見直しが予定されています。
仮定の数字で試算する(エネとくスノープラン・高圧)
融雪面積400㎡、設計発熱量250W/㎡(全面を同時に運転)で設備容量100kW、契約電力も100kWとします。年間の使用電力量は200kWh/㎡×400㎡=80,000kWhで、全量が降雪期間(11〜2月)に使われ、それ以外の8か月はまったく使わないと仮定します(実際は3月・4月に運転する場合もあります)。力率割引は考えません。
| 項目 | 計算 | 2025年10月1日の単価 | 2026年11月1日の単価(予定) |
|---|---|---|---|
| 基本料金 降雪期間 | 100kW × 単価 × 4か月 | 822,080円 | 932,840円 |
| 基本料金 その他期間 | 100kW × 単価 × 1/2 × 8か月 | 756,080円 | 866,840円 |
| 電力量料金 | 80,000kWh × 単価 | 1,768,000円 | 1,773,600円 |
| 合計 | (燃料費等調整額・再エネ賦課金を除く) | 3,346,160円 | 3,573,280円 |
表:エネとくスノープラン(高圧)の年間電気代の計算例(すべて仮定。単価は上の表による)
この仮定では、予定の単価で基本料金が合計の約半分(1,799,680円÷3,573,280円)を占めます。電力量が同じでも、2026年11月1日の見直しで年間約22.7万円(約6.8%)増える計算です。運転時間を短くしても、基本料金は契約電力(kW)で決まるため、減らせるのは電力量料金の部分だけです。
建物の契約のまま使う場合の割引(ホットeプラス)
北海道電力の高圧向け料金メニューのページには、電気式の暖房・融雪機器を使う場合の割引として「ホットeプラス」があります。オプション契約約款(2024年4月1日実施)では、割引対象機器に、定格電圧200ボルト以上の融雪用の電気機器が含まれ、専用の回路で施設することが原則です。割引額は割引対象契約容量1kWあたり月額で、融雪用の電気式ヒートポンプ以外の機器は112円04銭、電気式ヒートポンプ機器は218円98銭です(2026年11月1日の見直し後も同額)。たとえば割引対象契約容量が25kW(仮定)なら、112円04銭×25kW=2,801円が1か月の割引です。適用は北海道電力との協議になります。北海道電力の約款一覧(2026年10月28日確認)には掲載があり、受付の終了や停止の案内は見当たりませんでしたが、新規の受付状況は北海道電力に確認してください。
終了したメニューと割引
古い資料や過去の見積書には、終わった割引が前提になっていることがあります。北海道電力の公表で確認できた範囲は次のとおりです。
| メニュー・割引 | 状況 |
|---|---|
| 融雪用電力A〜D(ホットタイム19・22・19エコ・22エコ) | 2017年10月31日で新規加入の受付を終了 |
| 融雪用電力L(ホットタイム22ロング) | 2017年3月31日で新規加入の受付を終了(低圧向けのページの記載) |
| 検知制御装置付融雪用機器割引(センサー割引) | 降雪センサーなどを備えた通電制御可能な融雪用機器が対象だった割引。最終の適用は、低圧が2026年4月分料金まで、高圧・特別高圧が2026年3月分料金まで。2025年10月1日実施の高圧の料金表では、融雪用電力A〜Dの割引率は10% |
表:終了した融雪関連のメニュー・割引(北海道電力「新規加入の受付を終了したメニュー」「融雪用電力」「電気料金メニューの割引終了について」「電気料金単価表(高圧受電のお客さま)」より)
北海道電力は、割引が終わっても、ご契約中の料金メニュー自体は引き続き利用できるとしています。センサー割引を受けていたお客さまは、割引が終わった分だけ請求額が上がります。請求書の内訳と、契約している料金メニューの名称を確認してください。
北海道電力は、センサー割引の終了に際し、使用量を減らす方法として、降雪・気温・路面水分・路面温度のセンサーの設定と位置を確認し、必要以上に乾燥した路面ではなく、湿潤した路面を維持する設定に変えることが効果的だとしています。これまでの融雪の状況を踏まえて、路面ごとに適した設定にするよう案内しています。
2026年11月1日の料金見直し全体は「北海道電力の託送料金・電気料金 値上げまとめ」で解説しています。
6. 運転制御(降雪センサー・路面センサー・タイマー)でのコスト差の考え方
同じ設備でも、いつ運転を始め、いつ止めるかで年間の電力量が変わります。長岡技術科学大学の論文(日本雪氷学会誌「雪氷」81巻6号、2019年)は、制御方式を次のように整理しています。
| 制御 | 動作 | コスト面の特徴 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 降雪検知 | 降雪を光線の反射などで検知して運転。雪が止んだ後も、10〜15分程度のタイマーで続ける場合が多い | コストが安く、制御の主流 | 降り始めや路面温度が高いときなど、積雪がなくても作動して無駄な運転が出る。路面を融かし切れず残雪が出る場合がある |
| 積雪(路面)検知 | 路面の積雪の有無を検知して運転。雪が残る限り続ける | 無駄な運転を抑えられる | 積雪を感知するまで始まらず、降雪の初期に残雪が出る。降雪検知よりイニシャルコストが高く、普及が進んでいない |
表:稼働制御の方式と特徴(上村靖司・善哉広大「路面融雪装置の設計熱負荷 第3報」より)
この論文は、札幌・青森・秋田・新潟・長岡・富山の6地点の気象データでシミュレーションを行い、降雪検知制御から積雪検知制御に変えるだけで、消費熱が半分以下になるとしています。基準条件(長岡市、設計降雪時間3時間、熱出力175W/㎡)では、一冬の総降雪の融解熱に対する消費熱の比が、降雪検知制御で約2.5、積雪検知制御で約1でした。ただし、これはシミュレーションで、残雪の出方も制御で変わります。
断続運転とセンサーの位置
寒地土木研究所の資料には、電気式の川沿ロードヒーティングでの断続運転のシミュレーションがあります。必要熱量が供給熱量を下回る時間帯に、運転率を0.5・0.6・0.8として止める場合、供給熱量の削減率はそれぞれ20%・19%・13%で、日射を考慮すると運転率0.5で25%でした(日陰の影響には注意が必要としている)。電気式は出力が入と切の2通りなので、断続運転が出力を下げる手段になります。
同資料は、センサーの設置位置の問題も指摘しています。薄層舗装で路面より低くなり溜まり水を検知する例、路面より高く除雪機械で壊れるおそれがある例、除雪した雪が積もる路肩の近くに置かれた例があり、誤動作やセンサー故障の原因になります。センサーが正しい値を拾えなければ、制御が高機能でも無駄な運転や融け残りにつながります。
コスト差の見積り方
制御の違いは、主に電力量(kWh)に効きます。現在の年間の電力量に、制御変更で見込む削減率を掛けて見積もります。上の研究の削減率は条件が違うため、そのまま使わず、仮に20%とした例(仮定)を示します。
年間の削減額 = 現在の年間電力量 × 削減率 × 電力量単価
仮定:20,000kWh × 20% × 25円/kWh = 100,000円/年
この削減額を、センサーや制御盤の追加費用と比べて判断します。基本料金は契約電力で決まるため、次章のデマンドの見方も必要です。
7. デマンド(契約電力)への影響
電気式のロードヒーティングは、運転すると大きな電力が一度に必要になります。契約電力は30分ごとの需要電力の最大値(最大需要電力)で決まるため、冬のピークに重なると基本料金に影響します。北海道電力の電力契約標準約款(高圧)では、契約電力が500kW未満の場合、その月の最大需要電力と前11か月の最大需要電力のうち大きい値が契約電力になります。一度出たピークが、12か月間は契約電力に残ります。
設備容量は、概算で融雪面積 × 設計発熱量です。たとえば100㎡×250W/㎡=25kW(仮定)です。このすべてが建物の冬のピークに重なると、契約電力が25kW増えます。業務用電力の2026年11月1日実施の基本料金(予定)は1kWあたり2,970円10銭なので、次のようになります。
基本料金の増加 = 増える契約電力 × 基本料金単価 × 12か月
仮定:25kW × 2,970円10銭 × 12か月 = 891,030円/年(力率割引は考えない)
ロードヒーティングの運転が建物のピークと重ならなければ、この増加はありません。上の仮定は、重なった場合の上限に近い例です。ピークがいつ出ているかは、30分ごとの使用量のデータで確認します。契約電力の決まり方と下げ方は、「電気のデマンドとは?」で解説しています。
契約電力は最大の30分で決まるため、暖房の立ち上がりと同時刻に運転を始めない、系統を分けて時間をずらして立ち上げる、といった運用でピークを抑えられる可能性があります(推測。実際に使える制御かは設備による)。電気式を増設する場合は、受電設備の容量に余裕があるかも設計の段階で確認します。
8. 点検・故障の注意点
ロードヒーティングは冬に動いてはじめて不具合が分かる設備で、故障に気づくのが遅れると雪が積もった後の対応になります。公共の設備の点検の例が参考になります。
点検の時期と項目
札幌市の電気式ロードヒーティング設備保守点検業務の仕様書(令和7年度)では、運転を終えた後の4月に終了点検、運転を始める10月に開始点検を行います。開始点検は、早期稼動の箇所は10月15日まで、その他は11月1日までに完了し、電源を入れて運転できる状態にします。12月〜3月は運転と故障の監視、通年で緊急対応があります。電気式の主な点検項目は次のとおりです。
| 部位 | 電気式の点検項目の例(札幌市の仕様書) |
|---|---|
| 発熱体・舗装 | 各ユニットの絶縁抵抗と抵抗値の測定。舗装面のクラック・ポットホール・摩耗 |
| 制御分電盤 | 外観、リレーの動作、主幹電流(相バランス)、接地抵抗、端子の緩みと増し締め、表示灯・ヒューズ |
| センサー | 外観、埋設レベルの測定、動作確認、抵抗値(断線の有無) |
| 自動制御装置 | 設定値の確認、センサーの水分・温度の情報を正確に把握しているかの動作・機能の確認 |
表:電気式ロードヒーティングの点検項目の例(札幌市建設局土木部道路設備課「電気式ロードヒーティング設備保守点検業務(中央区)仕様書」令和7年度より)
小樽市の計画は、毎年の保守点検の項目として、電気方式では分電盤の内部、センサー類、漏電の有無を、ガス・灯油方式では熱源機(ボイラー)、制御装置、温水循環システム(ポンプ・配水管)を挙げています。このほか、概ね5年に1回の定期点検で、舗装、制御盤の外観、融雪能力などを確認します。
寿命と更新
小樽市の計画は、耐用年数の目安を15年とし、令和3年3月時点で、管理する232か所のうち215か所(約93%)が新設または更新後15年を超えているとしています。すべてを更新するのは費用的にも時間的にも難しいとして、部分的な更新や施設の規模の見直しで更新費用を抑える方針です。
故障の原因になりやすい点
- センサー:路面より低く埋まって水没する、路面より高く出て除雪機械で壊れる、路肩に近く雪が積もる、といった設置位置の問題(寒地土木研究所の資料)。割れや破損、動作の異常は、小樽市の損傷度の判定でも点検項目になっている
- 盤内への雨水の侵入:小樽市の判定基準では、盤内への雨水の侵入による漏電の危険性がある状態を、損傷度が最も大きい区分に含めている
- 他の工事の影響:札幌市の仕様書は、道路工事などで設備に支障が出るおそれがあるとき、事前の調査・立会い、埋設位置のマーキングを求めている。敷地の掘削工事の前に、埋設位置の図面を確認する
- 灯油式の燃料切れ:温水式は燃料の残量管理が必要。灯油タンクの設置基準は「灯油タンクの設置基準|札幌市の少量危険物の届出・防油堤・屋内設置」を参照
札幌市の仕様書は、冬期(11月下旬〜3月)の故障は、昼夜を問わず、直ちに現場の状況確認と仮処置を行い、報告することを求めています。民間の敷地でも、故障時の連絡先と、仮の除雪の手順を、運転開始前に決めておくと対応が遅れません。
9. よくある質問(FAQ)
A. 電気式なら、路面に与える年間の熱量(kWh)に電力量単価を掛け、基本料金(契約電力×単価)を足します。たとえば仮定で、100㎡・年間20,000kWh・25円/kWhなら、電力量の部分は500,000円です。基本料金は、建物のピークに重なるかで変わります。面積、降雪量、制御、契約で大きく変わるため、数字は自分の条件に置き換えてください。
A. 寒地土木研究所の資料は、電気式は初期費用が低く運転費用が高い、温水式は初期費用が高く運転費用が低い、と傾向を整理しています。小樽市の令和元年度の実績でも、面積あたりの使用料金は電気方式のほうが高めでした。効率、単価、制御で変わるため、初期費用を耐用年数で割った年間コストで比べます。
A. 北海道電力は、公道などの融雪のために電気式ロードヒーティングを使うお客さま向けとし、同一の需要場所に他の契約が併存しない場合に限るとしています。高圧は、融雪用の小型機器または動力を使う需要で、契約電力が原則50kW以上2,000kW未満、協議が整った場合が約款上の対象です。低圧は自治体などが対象です。民間の敷地で使えるかは、北海道電力に確認してください。
A. 入れません。融雪用電力A〜D(ホットタイム19・22・19エコ・22エコ)は2017年10月31日で、融雪用電力Lは2017年3月31日で、それぞれ新規加入の受付を終了しています。センサー割引も、低圧は2026年4月分料金まで、高圧は2026年3月分料金までで終了しました。
A. 一律の正解はありません。降雪検知は安価で主流ですが、積雪がなくても動く無駄が出ます。積雪(路面)検知は無駄を抑えられますが、降雪初期に残雪が出やすく、初期費用も高めです。どの方式でも、センサーの位置と設定の見直しが前提です。
A. 札幌市の電気式の例では、10月の開始点検と4月の終了点検の年2回に加え、12月〜3月の運転・故障の監視を行っています。小樽市は、毎年の保守点検と、概ね5年に1回の定期点検です。これらを参考に、設備の設置年数に合わせて決めます。
10. まとめ
- 費用は、初期費用・運転費用・維持費用に分け、年間コスト(減価償却費+運転費用+維持費用)で比べる。初期費用の相場は条件で大きく変わるため、見積りを項目ごとに比べる
- 運転費用は「路面に与える熱量 ÷ 効率 × 単価」。札幌市の推計では、12〜2月の必要熱量は4年平均で206kWh/㎡、設計発熱量は道央で250W/㎡(公共の道路の値)
- 電気式は基本料金(契約電力)が加わる。エネとくスノープランは同一の需要場所に他の契約が併存しない場合に限られ、融雪用電力の新規受付とセンサー割引は終了済み。2026年11月1日の見直しは予定
- 運転制御は電力量に効く。降雪検知から積雪検知に変えると消費熱が半分以下になるというシミュレーションがあるが、残雪の出方も変わる。センサーの位置と設定も含めて検討する
- 電気式の容量は契約電力に影響する。運転開始を建物のピークと重ねない運用が有効な可能性がある
- 運転開始前の10月と終了後の4月に点検し、センサー・盤・発熱体の状態を確認する。耐用年数の目安は小樽市の資料で15年
記事情報
公開日:2025年2月2日
最終更新日:2026年10月28日(全面改訂)
参照資料:
・北海道電力「エネとくスノープラン(高圧)オプション契約約款」2026年11月1日実施(PDF)、同2025年10月1日実施(PDF)
・北海道電力「電気料金単価表(高圧受電のお客さま)2026年11月1日実施」(PDF)
・北海道電力「料金表(高圧)」2026年11月1日実施(PDF)
・北海道電力「電力契約標準約款(高圧)」2026年11月1日実施(PDF)
・北海道電力「料金メニュー(高圧6,000V)」(北海道電力)
・北海道電力「エネとくスノープラン」低圧(北海道電力)
・北海道電力「ホットeプラス(オプション契約約款)」2024年4月1日実施(PDF)
・北海道電力「融雪用電力」(北海道電力)、「新規加入の受付を終了したメニュー」(北海道電力)、「電気料金メニューの割引終了について」(北海道電力)
・北海道電力「各種約款」(北海道電力)、「融雪用電力 ご契約に関する重要事項」2026年11月1日以降(PDF)
・国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所「融雪施設の維持管理のためのガイドライン(案)—エネルギーの効率的な活用—」2016年3月(PDF)
・上村靖司・善哉広大「路面融雪装置の設計熱負荷 第3報:サービス水準と消費熱の総合評価指標の提案」日本雪氷学会誌「雪氷」81巻6号、2019年(J-STAGE)
・環境省 温室効果ガス排出削減等指針 参考資料「導入効果の試算方法・条件」(PDF)
・札幌市「融雪施設設置資金融資あっせん制度」2026年6月30日更新(札幌市)
・札幌市建設局土木部道路設備課「電気式ロードヒーティング設備保守点検業務(中央区)仕様書」令和7年度(PDF)
・小樽市「ロードヒーティング長寿命化計画」令和3年10月(PDF)
・三菱電機「MELSNOWの特長」(三菱電機)
※2026年10月28日時点の情報です。2026年11月1日実施の北海道電力の料金は実施前の予定で、実施後に変わる場合があります。単価は消費税等相当額を含み、燃料費等調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金は含みません。計算例の数字(面積、熱量、効率、単価、削減率)はすべて仮定です。契約の可否・条件は北海道電力に、設備の設計・点検はメーカーや設備業者にご確認ください。
